ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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どうも。
C級書き手、サイドエフェクトは“駄文制作”の江波界司です。
ワールドトリガーの2期を未だに待っているんですよね。
感想を頂いて気付いたんですが、この作品ヒロイン不在ですね。
そして未定なんです。誰か意見を…
では、長くならないようここら辺で。
本編をどうぞ。


報復者― リベンジャー ―

 大きな観音開きの扉。時間的には間もなくだろう。

 今から、エルキア王国次代国王の戴冠式が始まる。もちろん、ただでは終わらない。

 会場の入口、扉の前では既にスタンバイしている集団。

 白髪の天才少女にして11歳のコミュ障、白。その兄にして『  』(空白)の片割れ、空。前国王の孫娘にしてアホの子、ステフ。ぼっちにして空白と引き分けた男、八幡。

 そうそうたるメンツが、最強の国王候補に挑む。

 いや多分最強はこいつらなんだけどな。

「んじゃこっからは別行動だな」

 ステフがなにやら困惑してる気がするが、無視だな。

 まずは俺のすべきことをしよう。こいつらが戦いやすいような場を作ってやろう。それが見届けると決めた俺の役目だ。

 ……多分、一段落付いたらあのセリフ黒歴史だな。今夜は枕を濡らそう。

 俺は扉をそっと開け、3人を置いて中に入る。

 

 え?なんで別行動かって?ぼっちだからだよ、言わせんな。

 

 

 

 

 

 戴冠式会場。司会?を務める男が式を進める。

 俺は周囲を見渡し、目的の人物を見つける。オート発動のぼっちスキルで人混みを躱しながら進む。あの時見たフードと同じ格好。背丈も感覚だが一致する。こいつがクラミーの協力者だろう。

 俺はバレないようにそいつの後に陣取る。

 

「では、この者、クラミー・ツェルが次期国王として立候補したが、他に挑戦する者はないか」

 

 クラミーの戴冠がまさにはじまるその瞬間

 

「異議あり!」

 

 勢いよく扉が開かれ、その声が館内にコダマする。

 大衆が声の主を探し、集まった視線の先にいたのは空白の2人と、ついでにステフ。

 驚きとどよめきが広がり、騒がしい人混みの真ん中を突っ切り、2人+1人は進んでいく。

 高台にいるクラミーと空、白は再び視線を交わす。

「あら?あなた達はステファニー・ドーラの従者達のようね。自分が負けたら今度は従者を送ってくる。その上で負けたのに、懲りないものね」

「いやいやぁ俺達も本当は参加する気はなかったんだけどねぇ。流石にこれは見逃せないよなぁ」

 参加しない気なんざ微塵もなかったくせによく言う。って、そろそろ仕事かな。はぁ仕事したくないわぁ。

「例えば、エルフと結託して、魔法使って王様になったなんて事になったら、この国は終わりだよなぁ」

 空は周辺に聞こえるほどの大声で言い放つ。その効果はテキメン、民衆はざわめき出す。

「……私が、魔法を使ってイカサマしたと?」

「やだなぁ、例えばって言ったじゃん。それともぉ、なにか心当たりがぁ?」

 挑発的な声で空はクラミーを煽る。遠目だが、僅かに表情が歪んだのが俺でもわかる。空が分からないわけがないな。

「それともぉ、逃げる?」

「いいわ。異議があるというなら受けて立つわ」

 逃げ場なんてない。クラミーは受けるしかない。でもその前に

「でも、ポーカーをしたいなら、

 

 そこの協力者さんには退場を願おうかな」

 

 一瞬で声色を変え、低く威圧的に言い放つ。

 もちろん、空はクラミーから目を離していない。だが、そこと言い表した。静まり返る城内、協力者という存在を探す民衆。

 この時、突然行動を取るとどうなるか。

 

 俺は目の前の人物のフードを勢いよく取る。

 

 ざわめきと共に、民衆の視線は一点に集まる。

 そこにいたのは長い耳と金髪、白い肌が特徴の少女。その姿はまさしく森精種(エルフ)。クラミーが協力を得ただろう、魔法を得意とする種族だった。

 

「あれあれ?お友達を助けなくていいの?」

 

 混乱が城内を包む中、空の声はしっかりとクラミーの耳に聞こえたようだ。

 数秒の沈黙。

 クラミーは目を閉じたまま

「なるほど。適当な森精種(エルフ)と結託して私を悪者に仕立て上げようって魂胆ね」

 いい答えだ。即興の割にはなかなかのクオリティだな。

「面白い言い訳考えるねぇ。それともぉ、あらかじめ用意してた?」

 その可能性もありましたね。

「ではそこの森精種(エルフ)には出ていって貰おうかしら。もちろん勝負は受けるわ。イカサマの介入する余地なんてない、公正なゲームでね」

 クラミーが言うと、目の前にいた協力者は走り去って、部屋を出る。

 盟約その5、ゲーム内容は挑まれた方が決定権を有するだったか。

「ここでポーカーを選ばない所を突っ込まないあたり、俺やさしい」

 空はスマホをかざしてクラミーにシャッターを切る。

「おたく、写真写り悪いよ?もうちょっと笑えば?」

 クラミーの表情が何かを疑っているのは明らか。大方、あのスマホが魔法を感知する機械だとでも思っているのだろう。

 これは空が仕掛けたブラフ。魔法が簡単には使えないという意識を植え付けるためのハッタリだ。

 だが、今回はそれが大いに役に立つ。あくまで相手がこちらの思惑通りに動いていればだが。

 

 

 

 

 

 クラミーは準備するために席を外すとのこと。

 会場は城内の広い部屋。集まった観客の前で勝負をするらしい。

 俺達は城の外側にあるベンチに集合し、今後の算段を立てる。もっとも、今回は空白(2人)に任せるしかないが。

「どういうことですの?」

 未だ状況が呑み込めていないステフに、俺を含む3人はため息を一つ。

「いいか、できる限り分かりやすく簡単に説明するぞ」

 空は呆れ半分怒り半分落胆半分でステフに言う。あ、パーセンテージ超えちゃってる。

「まず、この国王選定戦。これが欠点だらけだ。参加条件は人類種(イマニティ)全員。裏を返せば、他の種族から干渉され放題だ。つまりこれは国交戦、外交戦略に他ならない。ここまでおーけー?」

 何ノ下さんレベルでまくし立てる空。ステフもふるふるとした態度を見せながらも頷く。

「え、ええ」

「じゃあ次、八。パス」

「おい」

 めんどくさい。ただ話が進まないと時間来ちゃうし、仕方ないか。

「では相手、クラミーについてだ。相手は森精種(エルフ)と結託して魔法を使って勝ってきている」

「ではわたくしも魔法を使われたんですの?」

「正解」

 俺も使われたからな。そこは保証できる。空達と話して検証も済んでるから、ほとんど確実だ。

「では、魔法を使ったとイカサマを証明できれば……」

 うん

 

「「「それ無理」」」

 

「は?」

 無理なんだよ。そもそも人類種(イマニティ)

 魔法を感知することすらできない。だから証明もこもない。

「では……その機械で魔法を感知するのではないんですの?」

 スマホの事だろう。

「あのなぁ。これはクラミーが魔法を使うことを躊躇わせるブラフ!そもそも人類種(イマニティ)は魔法感知ができないんだろ?」

 ステフですら勘違いしてるんだ。当然クラミーもしている…

「なあ、このブラフ大丈夫か?」

「え?なんで?」

 だってそうだろ。

「だってアホの子のステフが引っかかる様な罠だぞ」

 聞いた2人、空と白は徐々に青ざめていく。

「俺としたことがステフの頭を基準に話を進めてしまっていた……」

「……にぃ……これ、やばい……」

「納得いかないですのぉぉぉ」

 落胆する兄妹、絶叫する王族の娘、平和だなぁ。勝負を前に俺はそんなことを思うのだった。

 

「ま、それは置いといてだ」

「置いとけないですの」

 せっかく話を区切ったんだから茶々入れんなよ。

「俺達は魔法を使われたら基本的に負けだ」

「その通り。『記憶改竄』とか『伏せ札書き換え』とかされたら証明も出来ないし負け確定だ」

「ではどうしますの」

 マジですか?ここまで説明して?ほんとに由比ヶ浜の生まれ変わりじゃねぇのか?あいつ死んでないけど。

「だ・か・ら、それを避けたんだろうが」

 へ?と間抜けな声をあげるステフにさらに俺が続ける。

「さっき言ったブラフだ。相手はスマホのおかげで簡単には魔法が使えない。それこそ、俺達に直接干渉するような魔法は避けるはずだ」

「けど魔法を使わないって訳じゃない。でもまぁ、ここまでくればもう大丈夫だ」

「なんでですの?」

 ここからは『  』(こいつら)の領分だ。俺は2人を見据える。

「ここからやるのは魔法一つでひっくり返るほど単純じゃない、複雑でイカサマのバレにくいゲーム。つまり」

「……表向きは、公正なゲーム……」

「だからなんなんですの?」

 そう表向きは、だ。こっちの不利は揺るがない。だが、2人の目に恐れはない。

「原理的に勝てないゲームじゃなけりゃ「 『  』(空白)に敗北の二文字はないっ」」

 平然と、悠々と、2人は言う。

 

 と、ここで足音がきこえてくる。

 クラミーが来たようだ。

「単刀直入に聞くわ。あなた達、どこの国の間者?」

 例えそうでも答えるわけがないだろ。

「えっとー僕達はどこどこのーって答えるわけないだろ、バカなの?しぬの?」

 空の挑発は今日も冴え渡っているようだ。

「……白状するわ。私は森精種(エルフ)と結託しているわ。でもそれは、森精種(エルフ)の庇護下で人類種(イマニティ)の生存権を得るためよ。傀儡になんて絶対にさせないわ」

「「う〜わ」」

 思わず声に出しちゃったが、どうやら白とハモってしまったらしい。

「白、八。わざわざ口に出さなくていい」

 どうやら空さんも同じ考えのようですね。

「それで?」

 思ったよりも低い声が出たな。俺はクラミーに続き要求し、彼女もそれに従う。

「これから先人類種(イマニティ)が生きる道は強い勢力の庇護下で生存権を確保し、その後一切のゲームを断るしかないわ。分かるでしょ?」

 ステフに問いかけられたその言葉を、彼女は無言で肯定する。

 確かに俺達は最弱種族かもしれないが、流石の俺もそこまで卑屈じゃないぞ。

「どの種族も森精種(エルフ)の魔法には勝てやしない。あなた達が相手でもそれは例外ではないわ」

 だからと、クラミーは続ける。

「少しでも、人類種(イマニティ)として、この国を大切に思うなら……」

 今までとは違う、慈愛に満ちた笑顔で彼女は言う。

 

「この勝負を降りて」

 

 他の種族の庇護下で鎖国政策。悪くない。それはこいつらも同じく思ったことだろう。

 現に

「なるほど、悪くない考えだ」

 空はクラミーに言う。

 けど、俺はこの先の展開が読めている。あいつらならきっと言うだろう。

「……次のお前らのセリフは」

 俺はぼそっと、空達を見ながら言う。

「だが断る、だ」

 

「「だが断る」」

 

 テンションが上がったのか白も声を揃えて言う。

「……理由を聞いても?」

「なぜなら……」

 元ネタの知らないクラミーは空達に、俺も含まれているかもしれないが、続きを求める。

「さらに次のセリフは」

 

「「この『  』(空白)が最も好きな事のひとつは「自分が絶対的優位にいると思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ……ッ」」」

 

 俺達は声を揃えて言った、あの言葉を。

 ステフとクラミーは呆気に取られている。それに対しこちらは、

「リアルに言いたい台詞第4位、リアルに言えたな」

「……にぃ……おめが、ぐっちょぶ……」

「でも八はずるいよな。なんでそれも使っちゃうかなぁ」

「いいだろ。お前らに来た質問なんだからよ」

「……はち、ずるい………マイナス10ポイン……」

「悪かったよ」

「……ん…·撫でるの気持ちいい……プラス15ポイン……」

「おいこら、白を洗脳するなロリコン」

「ロリコンじゃない、シスコンだ」

 俺たち3人は、明らかに場違いテンションで互いを讃え合う。いや讃え合ってないな。でもしょうがない。だってテンション上がるよね?あっちの世界だと誰も通用しないんだよ。てか、誰とも話さないから今まで使えた試しがないんだよ。

 呆気に取られたクラミーは咳払い1つで俺達の意識を向けさせる。そして

「分かったわ、完膚なきまでに叩きのめしてあげる」

 準備が出来ているのだろう。会場の方へ歩いていく。

「行くか」

 『  』(空白)の2人は頷き、クラミーが歩いた道をなぞって進む。

 その3歩後ろを追うように、俺とステフは歩き出す。

 

 さて、見せてもらおうか。

 天才ゲーマーの実力とやらを

 

 

 

 

 

 

 




ご愛読の皆様ありがとうございます。
前書きでもあった通り、ヒロインが不在です。
意見があればどうぞよろしくお願いします。
そもそも登場キャラがまだまだ少ないのでなんとも言えませんが、とりあえず白メインで話は進めたいと思います。
感想、批判、意見に誤字報告待っています。

追記
台詞ほんの少しだけ直しました。流石にパロディで台詞ミスはダメですよね。

番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?

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