ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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俺は今までに書いた誤字の回数を覚えているか……
どうも。
スタンドよりも波紋使いたい派の江波界司です。
でもお気に入りはホル・ホースという。
頂いた感想がモチベーションの全てです。今後ともどうぞよろしく。
と、前置きは手短に。
本編です。


彼と彼女は宣言し、彼はそれを見届ける

 一日まるっと休日が出来たら何をするか。買い物?ゲーセン?日帰り旅行?確かに好きな人にはたまらないものだが、全てには共通した欠点がある。

 そう、金がかかる。

 どれをしようにも金はかかるし、しかも後始末がめんどくさい。なにより、そんなのはわざわざ休日にやる事じゃない。全てが歩くなり走るなり話しかけるなり労力がかかるのだ。それは一種の労働ではないか。

 つまり、休日にすべきは金がかからず、後始末も手間がなく、無駄な労力を使わないことなのだ。

 結論

 

「俺が休日に本を読むのはまちがっていない」

 

 Q.E.D.

「いきなりなんなのでしょうか」

 こちらを見ることもなく隣で呟く美少女。位階序列6位の天翼種(フリューゲル)、毒舌天使のジブリールは現在、俺の持ってきた異世界の書(ライトノベル)を人類種(イマニティ)語の資料を使いながら読んでいる。

 基本となる音声言語は共通するため、あとはその中身を照らし合わせる作業になる。もちろん物語文学故に楽しめているかは分からないが、そもそも好奇心優先で読んでいる彼女には関係がないのかもしれない。

「これは水を表すという意味でいいのでしょうか?」

「それは固有名詞な」

「なるほど」

 あとたまに分からないところを聞いてくる。教えると言った以上断ることはしないし、むしろそれ以外は静かに本を読めるというのがまたありがたい。

 それに、この状況は似ている気がする。あの空間に。

 

 

 

 

 流石に三時間程度ではできる範囲にも限界があるだろう。しかし

「まさか1巻を半分まで読み進めるとは」

 あれ?かなり遅くね?と思った方想像してほしい。全く知らない言語の本を目の前に出されて、「資料をやるから解読しろ」なんて言われたらどうか。むしろこれはかなりのハイスピードだと思うぞ。

 ん?白ならできる?確かにあいつなら日本語から人類種(イマニティ)語を数分で習得したから、もしかしたら出来るかもしれない。

 しかし逆はどうだ?日本語は簡単じゃない。慣れればそうでもないが、平仮名片仮名漢字と三種類の文字を使い分ける高難易度言語といって差し支えない。更にここに英語みたいな他国の言葉も入ってくる。それを三時間程度で100ページ越えを果たす彼女はまさしく化物ではないだろうか。

 窓から外を見ると、もう空が紅い。そろそろ戻った方がいいだろう。これ以上ステフに心配事増やすと倒れそうだ。それに誰にも何も言わずに出てきちゃったしな。

「そろそろ帰るわ」

「そうですか。もう少し時間があれば、残りも読みきれましたのに」

 残念そうに言うジブリール。良くある「本は一緒にいたい建前でした」みたいなラブコメがあるが、そんなのは幻想だ。もし本当にそんなことが起これば、まずはその幻想をぶt……

 何が言いたいかというと、彼女が言ったことは正真正銘本音であり、それ以上もそれ以下もないのだ。

 だから俺は自意識過剰に反応したりはしない。ただ落ち着ける場所が見つかったと、その程度しか感じないし、それ以上は求めない。

「暇ならまた来る」

「そうですか。それでは、次はもっと沢山の異世界の書をぜひ……」

 ヨダレ垂れてるぞおい。

 それにちょっとそれはきついですね。何せもうあっちには帰れないし、これ以上は持ち込めていない。

「それじゃ」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

「ただま〜」

 駄女神風の帰宅をする俺を迎えるやつはいなかった。

 朝に寄った部屋を見ると、未だに2人がゲームを続けている。ステフもなんか忙しそうだな。

 城のメイドさんにパンを貰って、俺は自室に入る。そういえば、結局今日は読めてなかったと思い出し、ラノベの1ページ目を開いた。

 あと、『  』(あいつら)早く王決めろよ。まぁどうでもいいけど。

 

 

 

 翌日だ。

 最終全権代理者決定戦(勝手に命名)は30時間を越え、未だゲーマー兄妹は意地とプライドにかけてトランプを持つ。

 まだ決まらないのか。

 今日も今日とて城を出る。一応ステフに書き置きも残したし、昨日より遅くなっても大丈夫だろう。あと、ついでにパンも買っていく。

 

「ようこそおいでくださいました、下等な人類種(イマニティ)殿。確か名前はヒキ……ヒキニート様だったでしょうか」

「開口一番覚えたての言葉使ってまで罵倒すんのやめてね?あと俺の名前は比企谷だから」

 初っ端からキレキレのジブリール。図書館に入ってまずこれだよ。

 歓迎するのはラノベであって俺じゃないと言いたいんですね分かってます。

「しかし、もはや詰られるのは分かっていましょうに。それでもここに来るというのは、もしやそういったご趣味をお持ちで?」

「人をマゾみたいに言うな違う」

「では私を付きまとっているのでしょうか?残念ながら劣等種に欲情するような性癖もなければ、そもそも恋愛感情という概念すら私には理解し難いものですので」

「なんで俺がお前に好意を向けてる前提なんだよ」

 それいつか誰かとしたからいいよ、そういうのは。

 俺は昨日と同じようにラノベをジブリールに差し出す。それを受け取った彼女は奥へと進み、また複数の資料を用意してから本を開く。

「栞とか挟んで無かったけど大丈夫か?」

人類種(イマニティ)ごときと同等の記憶力だと心配されること程屈辱的なものもそうはございません。一緒にしないで頂けますでしょうか?」

 おっと目が笑ってないですね。悪かったよ、怖いから睨むな。目だけで数人殺せるくらい怖い。

 俺も目当ての本を持って昨日と同じところに座る。なんか自分から女の子の隣に座ったみたいになるのがすごい嫌だが、そもそもジブリールに教える時もあるためこの方がいい。効率重視だ、他意はない。むしろ、こんな化物に対して恋愛感情を持てという方が無理だ。ここに入っただけで何回罵倒されたんだよ俺。

 

 どれくらい時間が経っただろうか。俺は分厚い本を置いて違う本に手を伸ばし、既にジブリールも2巻に突入してしばらく経つ。

「おや?何やら騒がしいですね」

「あん?なにが……」

 俺の質問が届くわけもなく、ジブリールは本を置くと手の平に眩い光の塊を集める。頭の上に浮かぶ光輪も霞むほどの輝き。それはまさしく魔法の発動だろうと容易に想像がついた。

 ジブリールはそれを両手ですくうように持つと、そのまま腕ごと左右に大きく広げる。それに連動するが如く、光の塊は空中に楕円形を描いて展開される。そこに写っているのはエルキア王国の王城と、そこに集まる大勢の国民達だった。

「なんかあったのか?」

「なぜ人類種(イマニティ)であるあなたが知らないのでしょう?エルキアの次代国王、人類種(イマニティ)の全権代理者が決定し、これから演説をするようですね」

 誰も教えてくれなかったんだよ、なんて言えないな。

 てか思ったより早かったな。もうちょっとくらいあの二人ゲームを続けて俺の連休を続けさせて欲しかったよ。

「あなたは行かなくても良いのですか?」

「興味ないね」

 ファイナルなファンタジーの某主人公風に言っては見たが、いや伝わらないのは分かってましたよ、本当です。

「別に行かなくてもここいれば聴けるみたいだし」

「なぜ私があなたにもこれを見せる必要が?」

「おーけー分かった、帰ろう。ラノベ(この本)は持って帰るもう来ない」

「冗談です、だからそこに座っていてください少なくとも私が読み終わるまでは」

 まくし立てて必死に止めるジブリール。務めて冷静を装っているが、なんか慌ててんの初めて見た気がすんな。って会って二日も経ってないのに俺は何を言っているのか。

 ジブリールが広げた魔法式液晶を覗くと、民衆は静かに何かを待っている。すると城の上段、民を望めるだろうその場所に2人の影が現れる。

 1人はやや痩せ気味中背の男。ボサボサの髪はそのままで、いつか見たI ♡ 人類のTシャツにGパン、左腕の肘より上には、風紀委員よろしく王冠をはめている。

 1人は小柄な少女。現代世界の制服を身にまとい、長く白い髪を王冠を髪留めのようにして揃えた、幼いながらも特別な存在感を発する美少女。

 互いの手を握りあって登場した2人。男は大勢の民衆の前で口を開く。

 

『あー……んっ、んぅ〜っ。えー御機嫌よう』

 

 緊張だろうか上ずった声で、記念すべき王の第一声を飾ったのは(ニート)だった。

 少しの間を置き、空は再び息を吸って、口を開く。

 

『敬愛する国民――いや“人類種(イマニティ)同胞”諸君!』

 

 さっきとは違う、自信と勇気に満ち溢れた表情で彼は言う。

 

『我々人類種(イマニティ)は……【十の盟約】のもと、戦争のないこの世界において負け続け、最後の国家・最後の都市を残すのみとなっているが――何故だッ!』

 

 皆それぞれ意見はあるだろう。前国王の失策、魔法が使えない、魔法を感知できない。

 それを思ってか大衆はただの沈黙を続ける。

 

『先王が失敗したからか?我々が十六位(さいかい)だからか?魔法が使えないからか?最も劣等な種族だからか?我々は無力に滅ぶ運命にあるからかっ!?――否だッ!』

 

 今までよりも力強く、空は叫ぶ。

 

『かつて、古の神々の大戦において、神々が、魔族が――森精種(エルフ)が、獣人種(ワービースト)が、多くの種族が争う中、我々は戦い、そして生き残ったっ!かつてはこの大陸全土をすら、人類の国家が占めていたのは、ならば何故だッ!』

 

 彼は民に、その歴史に問いかける。

 

『我らが暴力を得意とする種族だからかっ!戦いに特化した種族だからか!?森精種(エルフ)のような多彩な魔法を使えず、獣人種(ワービースト)ような身体能力もなく、天翼種(フリューゲル)のように長大な寿命もない――そんな我々が、かつてこの大陸を支配したのは我らが戦いに特化していたからか?――断じて否だっ!!』

 

 そう、誰もが分かることだ。そんなものを人類は、人類種(イマニティ)は持ち合わせてはいない。故に思うのだ――何故だと。

 

『我らが戦い、生き残ったのは、我らが“弱者”だったからだ!何時の時代、何処の世界でも、強者は牙を、弱者は知恵を磨く!我らが何故、今追い詰められているか――それは【十の盟約】によって、強者が牙をもがれ知恵を磨くことを覚えたからに他ならないッ!我らが弱者の専売特許であったはずの、知略を、戦略を、戦術を、生き残るための力をッ!強者が手にしたからだッ!我らの武器(ちえ)は強者に奪われ同じ武器で強者を相手にした――それがこの惨状だッ!』

 

 絶望的な現実、それを躊躇いなく突きつける王と、それを聞き押し黙る民。

 人類の希望となり得る存在は、その絶望から目を逸らすことはなく

 

『――皆のもの答えよ、何故に頭を垂れるのか』

 

 今までとは一転し、優しく彼は問いかける。

 

『繰り返そう、我らは、弱者だ。そう、今もなお―かつてもそうだったように――』

 

 彼の言葉に気付いたものは顔をあげる。あくまで我らは弱者だと、言い続ける彼の言葉を理解した者は、あるいはできなかった者も、未だ力強く拳を握る彼にその答えを求める。

 

『――そう…なにも変わってなどおらぬではないかッ!強者が弱者(われら)を真似て振るう武器(ちえ)はその本領を発揮しないッ!何故なら弱者(われら)の武器の本質にあるのは―卑屈なまでの弱さ故の、臆病さだからだッ!臆病故に目を耳を、知恵を磨き、生き残ることを【学んだ】それが我ら人類種(にんげん)だッ!』

 

 もはや国民にその言葉を聞いて、弱者とは絶望だと考える者はいないだろう。何故なら彼は言うのだから。弱者とは、臆病さとは、この上ない武器であり、力だと。

 

人類種(われら)に魔法は使えん。察知することすら出来ぬ―だが臆病故に我らには魔法から逃れる知恵も、見破る知恵もある!我らに超常的な感覚はない。だが臆病故に【学習】と【経験】から生じる未来予知にすら到達しうる知恵を持っているッ!三度繰り返すッ!我らは弱者だ、いつの世も、強者であることにあぐらをかいた者どもの喉を食いちぎってきた――誇り高き【弱者】だッ!』

 

 奪われ続けてきた人類の前で、大きく暗い絶望の中で、彼はそれでも抗い勝つと

 

『我と我が妹は、ここに二十五代エルキア国王、女王として戴冠したことを宣言する』

 

 民を導く希望であると

 

『我ら二人は、弱者として生き、弱者らしく戦い、そして弱者らしく強者を屠ることをここに宣言するッ!かつてそうだったように――これからもそうであるようにッ!認めよッ!我ら、最弱の種族!歴史は何度だって繰り返し―肥大した強者を食い潰すものに他ならぬッ!誇れッ!我らこそ人類種(さいじゃく)――我らこそ最も持たざる者ッ!何も持って生まれぬ故に―何モノにもなれる――最弱(さいきょう)の種族であることをッ!』

 

 彼は豪語し、誕生する。

 人類の新たな希望が、国王が。

 その存在を祝う様に、民は、大衆は、国民は声をあげる。今までの苦痛と屈辱の日々が、逆に着火材となって燃え上がるが如く、エルキア領土は嵐のような歓声によって包まれる。

 

『さあ、ゲームを始めよう』

 

 彼は不敵に言う。

 それは誰に対してか。己か。民か。

 

『もう散々苦しんだろう。もう過剰に卑屈になったろう。もう飽きるほど辛酸も舐めただろう……もう、十分だろう?待たせたな、人類種(イマニティ)同胞諸君』

 

 否。

 彼は腕を空へと掲げ、言い放つ。

 

『今この瞬間!我がエルキアは―全世界の全ての国に対して宣戦布告するッ!』

 

 彼は言ってのける。世界全土を敵に回し

 

『反撃の狼煙を上げろ!我らの国境線、返して貰うぞ!』

 

 奪われた領土を、誇りを勝ち取ると。

 

 

 

 

 

 

 

「またこれは……人類種(サル)の分際で大きくでたものですね」

 驚きよりも呆れが大きいように、ジブリールは呟いた。まぁ普通はそうだ。本来は最弱種族、勝負を仕掛けること自体が不遜な相手。

「あいつらに興味はないのか?」

「そうですね、噂ではあのゴミのような種族で有りながら魔法の使用にだけは秀でた森精種(エルフ)の魔法を相手にし、ゲームに勝ったとか。一体どう言った方法で、あるいはどこの力を借りて看破したのか、気になるところではありますね」

 これを聞いて俺は思う。

 つまり空の狙いは上手く機能したということらしい。あいつの狙いは全世界を疑心暗鬼に落とすこと。どこの種族がバックにいるかわからない以上、簡単には手が出せない。それを利用してまずは国政の安定かあるいは。

 それはなんにせよ、こうして天翼種(フリューゲル)を騙せているのなら問題はないだろう。

 これから『  』(あいつら)は王様として国家レベルのゲームを挑んで行くのだろう。その先に何があるのか俺は分からないが、すべきことはもう決まっている。俺は見届ける、ただそれだけだ。

 だがもし、それでも『  』(彼ら)が進めないなんてことがあるなら、俺は…

 

「急に黙ってしまって、一体どうしたのでしょう?」

 ジブリールの一言で俺は現実へと帰ってくる。

「なんでもない。そっちこそなんかあんの?」

「質問に答えたにも関わらずその反応はいかがなものでしょうか。まぁ別によろしいんですが」

 ジブリールは興味を失ったように魔法のテレビを消し、また本に視線を移す。

「そうですか」

「ええ、生意気で小賢しい弱者(イマニティ)に対して礼儀作法を期待するのは無駄だと心得ております」

「他種族に礼儀云々なんぞ、特にお前には言われたくないな」

「そうですわね。そもそもこの生涯の内で下等生物と礼儀作法について話す事などありえませんので」

 いや今話してるのは違うんですかね?

天翼種(フリューゲル)って確か不老不死だったよな。つまり永遠にないと言いたいのか」

「そのつもりですがなにか?」

 はぁっとため息をつき、それ以降はまた静かな時間が過ぎる。

 互いに読む本に集中し、知識を深め合う。なにか特別なことでもないが、そんな時間が悪くないと思ってしまう。感覚的にゆっくりと、だが確実に流れる時間が心地いいと思ってしまう。

 なら俺と彼女は……

 

 

 なんてな。流石にここで友達になってくださいなんて言わない。雪ノ下相手に2回ほど玉砕してるし、俺は一週間ごとに記憶喪失する子相手に毎回友達宣言できるほどの精神力も持ち合わせてない。

 

 だから俺はこう告げる。

 

「なぁジブリール」

「なんでしょうか?」

 

「そろそろ帰りたいから本返せ」

 

「……あと5ページだけ……」

「いやそこせめて1ページだから。てか外大分暗いし、そろそろ帰らんと後々めんどくさいんだよ」

 特にステフが。

 どうにかジブリールから本を回収し、俺は帰路につく。

 

「王様、ね」

 

 これから起こる激戦は、想像しても出来るものじゃない。言ってしまえば世界大戦にすらなりうる事柄。ただし方法はゲームだが。

 『 』(あいつら)と同じ道を行くというなら腹を括らなければなるまい。

 そして、見つけよう――『本物』を。

 

 

 

 




原作のセリフを書くのって大変ですね。
ここからは更新が少々遅くなるかも知れません。
いえ、言い訳をするわけではないんですが、今までが早すぎたんです。1日平均1.5話投稿って言うのがそもそもおかしいわけで。言い訳ですね分かってます。
出来る限りの早い更新と投稿を心がけるのでこれからもよろしくお願いします。
感想や誤字報告など、お待ちしております。

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