ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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(更新日)逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ
どうも。
小三で二号機がトラウマ、江波界司です。
早く完結して欲しいですよね、新劇場版。
完結目指して、私も更新頑張ります。
そんなわけで本編です。


新たな出会いを受け彼らは宣告する

 SF。少し不思議でもすごく不思議でもない。人類が、人が想像する未来。その存在は、文字通り異世界を含む全世界共通なのかもしれない。

 なればこそ、そもそもファンタジーのこの世界でのSFとはなにか。

 

「なんでエンパイア・ステート・ビルが建ってんだ」

 

 俺が目にしたのは完全にビル、ファンタジー感ガン無視の建造物だ。

 場所は東部連合の大使館――そして元エルキア王城である。

「いやいやいや、なんでこうなった?」

 ここは他国。つまり領土侵犯でしかない。もちろんそんなことをこいつらがするわけはないが。

「そうですのっ!ここは東部連合の領土ですのっ、領土侵犯ですの」

「ん?ちゃんとアポはとったよ?」

 俺が聞きたいのはそこじゃない。もちろんどうやってアポを取ったかとかでもない。

 

「なんで関係ない俺まで来る必要がないのにここにいるかって事だ」

 

 だってそうだろ。東部連合を攻め落とそうが、獣耳っ娘王国を支配しようが、それはこいつらの目標であって、俺の目標じゃない。

 それにいくら見届けると言っても、一緒になってゲームをするってわけじゃない。クラミーとの勝負の時は完全に余計なお節介をしてしまったが、俺は別にこいつらと共闘しようとは思っていない。あくまで俺の目的はこいつらの行く末を知ることなのだから。

「なんでって、そりゃ八も会いたいだろ?獣耳っ娘」

「俺をお前と同等な欲の塊みたいに言うな」

「前から思ってたけど、お前ホントに男か?欲無さ過ぎだろ」

「お前があり過ぎるんだよ。お前は何教の大罪司教様だ。絶対強欲だろ」

「いえいえいえいえ、むしろ怠惰担当……デス」

「無駄に似てる……」

 マジで似すぎてて一瞬引きそうになった。これがリアル『引っキー』ですね。何言ってんだ俺。

 その後空はまぁそのうち分かる、と誤魔化して正面を見る。

「取り敢えずそろそろ入れてもらおうかな。なぁ?獣人種(ワービースト)さん?」

 ビルから出てきたのは犬のような耳を頭から生やした白髪の老人。丸いメガネを掛け、口から覗く牙を動かしながら彼は言う。

「ようこそおいでくださいました。エルキア国王、空様、女王、白様。お初にお目にかかります。東部連合・現エルキア次席大使―初瀬いのです」

 マジもんの外交官、というかベテラン感が漂うジジイが出てきた。

 書籍によれば、獣人種(ワービースト)には心を読む第六感があるらしい。まぁその事についてはステフの爺さんが解明してるけど、それでもかなり機能の高い五感を持ち合わせているのも事実だ。

 そんな相手に、『  』(こいつら)は外交戦を始めようとしている。これから繰り広げるのは二手三手先を読み合う、超人的な心理戦。もはや俺なんかが立ち入れる程のレベルではない。いくらぼっち故の人間観察力が高いと言っても、所詮は人間が出来る範囲内。あいつらみたいな人外級のスペックじゃないからな。

 

 

 

 

 

 

【十の盟約】が定められ、この世界は一人の人間が生まれて死ぬまでの時間とは比べものにならない程の時間が経過したらしい。

 にも関わらず

 

「なんでこんなに仲悪いんだ」

「永遠に続くとされてるほど争っていた種族が突然争いを止められたんですわ。禍根も残りますの」

「お前ら力封じられて正解だよ」

 

 俺たちが入った狭いエレベーターでは、空間とは?とでも嘲笑うが如き存在のジブリールと、さっきから下等種に対する侮蔑の視線が絶えないいのがひたすら言い合いを繰り広げている。

 それにしても凄い。東部連合の技術は元からすごいと聞いていたが、まさかテレビやエレベーターまで作っているとは。なるほど、これが魔法にすら対抗できる術というわけか。

 そう言えば空がジブリールに何やら聞いてたが、まぁどうでもいいか。

 待ち合い室に通された俺たちは、初瀬いづなを連れてくると言って奥へと消えたいのを待つ暇つぶし代わりに、今日のアポ取りのタネ明かしをしてもらう事になった。

 ジブリールが防音魔法を貼り、その中で会話を続ける。なるほど。

「ジブリールでも使ったか?」

「いや?」

「マジか。もしかして白ってマサイ族ばりの視力も持ってんのか」

「いやいやいやないから」

 空は言いながらスマホを取り出す。どうやらスーパーズームでどうにか視界に捉え、身振り手振りで伝えた様だ。

 そりゃそうですよね。ずっとゲームばっかしてる奴が視力いい筈がないですよね。

 待つこと数分、俺達が入って来た扉が開く。

 そこにはさっきあった老人いのと、着物を着た猫耳幼女がいた。

 

「初瀬いづなにございます」

 

「「キング・クリムゾンっ!」」

 

 ありのまま今起こったことを話すぜっ。気付いたら俺の真横にいた二人が消えていて、数メートル先にいる獣耳っ娘幼女をそいつらが二人がかりで愛でている。何を言っているか分からねーと思うが、俺も何を言っているか分からねぇ。超スピードとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

「何をやっているんですの……あの二人……」

 おっとあまりの超常現象につい奇妙な冒険でポルナってしまった。

 いのに紹介されて入ってきた初瀬いづな。フェネックのような猫耳、黒髪は短く切られ、背中にはリスの様に大きな尻尾が見える。

 かの天翼種(フリューゲル)をも喘がせた空、とその妹。その撫具合に対していづなは

 

「なに気安く触ってんだ猿が、です」

 

 その見た目の愛らしさを見失わせる一言を投下した。

 もちろんその言葉を無防備で受ける『  』(二人)。凄まじい速度で後退りし、フルフルと怯えている。

「え?」

「……くちわるい……可愛さマイナス50ポイン……」

 流石に臆する空と白。しかしそんな二人にいづなは続ける。

 

「何やめてんです、早く続けろや、です」

 

 まさかのおかわり要求。マジで何が起こったか分からないのはむしろ二人。

 おずおずと空はいいのか?と聞く。

「さっきは驚いただけだろ、です。イヤなんて言ってねぇ、です」

 聞くや否やまたナデナデを再開する二人。もちろんされている側のいづなも満面の笑み。さながら顎を突き出す猫の様だ。

「……ギャップもえ……プラス100ポイン」

「お前らハゲザルのくせにじいじより撫でるのうめぇ、です」

「ハッハーそうかそうか。ならずっと撫で続けてやろーう」

「それはやめろ話進まん」

「そうですな。今日の要件を早々に済ませましょうぞ」

 俺の言葉に続けていういの。彼はさらにそれと、と空たちに向かう。

 

「なに人の可愛い孫娘に手ぇ出してんだ死にてぇのかハゲザルがぁ、と言われるような行動は今後控えて頂けますかな?」

 

 一瞬で気迫の有無が変わる白髪ジジイ。うん、なんかいづなが時々口悪いなぁとか思ったけど

 

「お前のせいかよ」

「うぜぇ」

「……ジジイきもい……あいつマイナス二万ポイン」

「単位すげぇな白」

 

 そのあまりのウザさについ俺も口出しちまった。

 ついでだ、いづなにも言っておこう。

「なぁいづな、ですって付ければ全部敬語にはならないからな」

「そうなのか、です」

「そそ、あとハゲザルもやめような。俺は空、こっちが白。あとあっちの目が腐ってんのが八な?」

「空、白、八。うん、覚えた、です」

「まぁなんでもいいけど、俺の名前比企谷八幡だからな?」

 最近ハチって呼ばれ過ぎてそろそろ自分の名前忘れそうだった。やばい、このまま湯屋で働かされちゃう。だれか助けて、白い竜呼んできてっ。

 

「「「「え!?」」」」

 

 何故か俺の一言に驚愕を表す一同。反応を示さないのは興味がないのだろう、いのとジブリール。

「いやいやいやいや、なんで驚いてんだよ」

「ハチって、ハチじゃありませんの?」

「いやハチだけど、本名な?お前のステフと同じ感じな?」

「ヒキ……ハチ……マン……です?」

「どうすんだ八っ!いづなたんが困惑してんじゃねぇかっ!」

「知らねぇよ、俺はただ本名名乗っただけだぞ」

「……ひきがや……だれ?」

「おい白?自己紹介してるよ?前に言ったよ?お前の記憶力どこいった?」

 なにこのカオス。なんで俺名乗っただけなのにこんな事に?俺って名乗っちゃいけないの?それなんてヴォルデモ〇ト?

 

 

 

 

 

 

 あれからしばらく現場の収集に時間を要し、ようやく俺たちは交渉の場についた。

「さて、それでは今回来られた理由をお聞きしましょうか」

「あらら?心読めんなら必要なくね?」

「ここは交渉の場、言葉に出すこと自体に意味を持ちますので」

「おーけー、じゃあ手短にいこう」

 ようやく本件を始める空といの。そして今回の要件、要求を空は口にする。

 

「いづなのパンツを賭けてゲームをしよう」

 

 あ、こっちはステフのパンツを賭ける、と空は付け足すが、いやいや何言ってんだお前。きっと二号機のパイロットがいたら躊躇なくあんたバカ?と言っているだろう。その言葉に両陣営が凍りつく。

「おいハゲザル、なにほざいてんだ、あぁ?」

 愛する孫娘の下着を賭けてゲームを申し込まれて半ギレのいの。まぁそうだよな。俺も小町のを賭けろって言われたら激昂するな。怒り過ぎて伝説の戦士に覚醒するまである。

「え?だめ?ならジブリールのを賭けるけど。あ、白のはダメだぞ?てか十一歳のパンツ欲しがるとか病気だぞ。それとも……まさか俺たちっ!?マジかーないわー」

「おいサル、本当の要件をいう気がないなら帰れ……」

「へぇ」

 おいジブリール、脱ごうとするな、やめろ。

 いのの言葉を遮って空はいつも見るようなあの表情を浮かべる。うん、間違いなく仕掛ける。

 

「あぁ爺さん?心読めるフリしてるとこ悪いけど、バレてるよ?」

 

 彼の一言にいのは僅かに硬直する。動揺、猜疑心。僅かにだったが、隠しきれていない。俺に分かるんだ、空に分からないわけがない。

 

「もし心が読めんなら、いづなのパンツで手を打ってるはずなんだよ。なんだって、あんたらはそのゲームの副賞――俺たちの記憶改竄をする必要があるんだからな」

 

 不敵に言い放つ空。なるほど、確かにな。俺たちは先王の記録で色々と知ってる。心が読めるならそれも分かるはずなのだ。

 それに対し未だ沈黙するいの。

 だが容赦なく空は続ける。

 

「さぁて、確認も取れたし、こいつがお望みの本題だ」

 

 さも宇宙の帝王の様に空は言う。

 そしてここからが本当の本件。空は立ち上がって、獣人種(ワービースト)の二人に宣言する。

 

「エルキア国王の権限を使い、東部連合に全領土を賭けた国家戦を申し込む。ああ、こっちの賭け金は引き続きステフのパンツな?」

 

 完全に頭のおかしい宣戦布告。勝負にすらならない要求。だがこの要求は序の口、既に勝負は始まり、空はその結果を言い放つ。

 

「悪ぃな爺さん、“チェック”だ――」

 

 彼は宣告する。お前らの負けだと。

 

 

 




短くてすいません。
一気に書きたいとも思うんですが、やっぱり更新が優先です。
八幡の活躍はもう少し待ってください。
今は完全にギャグパート係になってますが、どうにか主人公して貰うので。
感想、誤字報告お待ちしております。

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