どうも。
『 』がSAOにいたら1年で帰ってきそう、江波界司です。
作品も早いもので20話過ぎてました。
ってまだまだ短い方だと思いますが。
何はともあれ本編です。
「そうだっ!俺が女になればいいんだっ!」
「お前そんな趣味があったのか」
東部連合に対し宣戦布告した翌日。なんの脈絡もなく空は自らの特殊性癖を発表する。
「いきなりなんなんですの、この男」
ステフ、テンプレートな反応ありがとう。
「空よ、お前どんだけ変態なの?」
「ちっげぇぇぇよっ!」
「なるほどマスター、女同士の戯れは女同士のもの。なれば己が女になれば、その領域に足を踏み入れるもなんら不思議はないと」
ジブリールくん?何を感心してんですか?
「いや何言ってんの?」
「つまりだっ!俺が女ならあの花園でのキャッキャウフフも、全てが体験出来るということだっ!さぁ白、兄ちゃんとゲームをしよう。そして勝ってくれっ!」
こいつ……馬鹿なのか。いや、色んな意味で。
それに
「いや無理だろ」
「へ?」
「……にぃ、それ……多分できない」
「ほ?」
二人がかりのツイン否定。さすがの空も困惑気味のよう。
「どうだ?ジブリール」
「はい。白様と、誠に遺憾ながらあなたの言う通りにございます」
「何その遺憾の意」
いちいち俺を否定しねぇと会話出来ねぇのかドSリール。分かり難いな。
しかしこの意見に賛同したくない奴が一人、空である。
「なんで?ステフを惚れさせたり、ジブリールを所有したり、盟約は絶対遵守だろ」
この世界のルール上はそうだ。だが空よ、それにも限度があるだろ。
「その理論で言ったら、“テトを倒してこい”って言ったらこの世界終了だろ」
「あーそれもそうか」
「はい。つまりその要求に対して全力は尽くすでしょうが、実力以上のことはできません」
故に性転換も不可能ってこと。まぁこの世界魔法があるし、究極的には出来ないこともないだろうが。
「じゃあなにか?もし俺が万が一、いや天文学的確率でステフに負けてリア充になったとして?」
「なんで引き合いに出された挙句詰られてるんですのわたくし」
「あーリア充になってる気分にはなるんじゃね?」
「リア充気取りの引きこもり童貞ニートゲーマーとかイタすぎるッ!」
うん。それはもうイタい。
どれくらいイタいかって言うと、BGM抜いた二刀流の黒の剣士くらいイタい。あれ絶対に現実にいたらただの厨二だよな。剣豪将軍みたい?誰だよそいつ。
「てか、なんでそんな話を?」
「……にぃ、おふろ……のぞけない」
「白よ、もし空がそれやってみろ。マジで犯罪だぞ」
実の妹の、それも十一歳の裸覗くとかいよいよだろ。
空によると、仲間が増える度お風呂で親交を深めるのだそう。ジブリールの時もやったらしい。
「なるほど……これは盟約の限界を測っておく必要があるな」
空の一言にステフの目がゴミを見る目に変化する。あー俺がいつも向けられてた目ですね。俺どんだけヘヴィーな人生送ってたんだよ。
「……限定的な、性格改変……とか……」
なるほど分かりやすい。限界というのは個人の実力まで。逆に言えばその実力のどこまで干渉できるかという測定になるわけだ。
「分かりやすいな妹よ。てなわけで八、よろしく」
「ちょっと待て、なんで俺だ。ステフにやらせろよ」
「なんでわたくしなんですのっ!」
お前でいいじゃん。むしろなんで俺がやる必要があんだよ。ないな。これは誰でもいい。なら俺じゃなくてもいい。証明終了。
「別に誰でもいいけど、まぁ八の方が面白そうだし?」
「そんな理由で俺を選ぶな。お前はどこの神様だ」
まさにこの世界の神様と同じこと言ってるからね?君。
しかしなんだ。もう否定するのもめんどくさい。これ以上の否定はむしろエネルギー効率が悪いな。
「はぁ……やらなくてもいいことはやらない、やらなければならないことは手短に、だ」
「OK、じゃあジャンケンな。俺はパーで八がグー。俺が勝ったら『八の三十分間の“空化”』、八が勝ったら、まぁ『あめ玉あげる』でいいや」
【盟約に誓って】の合図とともに、俺はグーを出す。
―Other side―
「なぁジブリール」
「何でしょうかマスター」
「なんでこうなった?」
空が言う状況。それを説明するには、およそ五分前に遡る。
【盟約に誓って】のゲームは決着が付き、“八幡”は“空”になった。
「さてと……暇だし白、ゲームしようぜ」
八幡はそう言ってなんの躊躇いもなく白の隣に座りDSPを手に持つ。
「あーじゃあ俺、防具無し縛りな?白は……じゃあ射撃禁の爆弾、トラップ縛りで」
「……へ……?」
あまりの突然の出来事に驚きを隠せない白。だが、仕掛けられたゲームから逃げることはなく、白もDSPを持ち直す。
そうして白と対戦を始めた八幡。流石に呆気に取られていた空がようやく機能する。
「おい八?」
「おいこら空、それ以上白に近付いてみろ。身ぐるみ剥ぐぞ」
「えっなんでっ!?」
八幡に話しかけるため形の上では白との距離を詰めた空。しかしその行動に“空”となっている八幡は怒りにも似た感情を向ける。
「……はち、にぃに……威嚇、だめ……」
「そうかぁ白。でもなぁ?あんまり無防備にすんなよ。じゃねぇと兄ちゃん、道行く男共全員にレーザーポインター当てにゃならん」
そう言って八幡は白の頭を撫でる。白はその行動に拒絶は示さず、むしろ嬉嬉として撫でを味わう。
そして気を取り直してゲームへと向かう二人。
その光景に、流石の空もツッコミを我慢出来ない。
「うぇいとウェイトWait、なにこれ。てか八、なんでいきなりお兄ちゃん宣言してんだ、ふざけんなよ」
そんな空の一言に、八幡はゲーム機から目を離さずに応える。
「何がだよ。俺は空だぞ?そして白は空の妹。つまり俺は兄で白は妹、ここまでおーけー?」
「おーけーなわけでねぇだろ」
「おいおいそんな怒んなよ。前にステフに沸点が低いだの、短絡的だの言ったのは誰だよ。もしかしてお前の方が余っ程短絡的で幼稚なんじゃねぇの?」
「なっ」
「お?青ざめたな?ズバリ当たってしまったか…なァ?」
ポーズで画面を止めこちらを向いた八幡は、再び白とのゲームに戻る。
かつて八幡が詐欺師と呼んだ空。しかしその空さえも翻弄しかねない口撃と攻撃。
今まで飄々と相手を欺き、裏をかき、誘導してきた空。そんな彼が一対一の心理戦で押されている。たとえ事実はそうでなかったとしても、その光景にステフとジブリールは驚きを隠せない。
「あのソラが……」
「こんなことが……」
感嘆の声を漏らす二人を見向きもせず、八幡は白とのゲームを続けている。
だがこの場で一番の驚きを感じていたのは、白だった。
「……にぃ……?」
「へ?」
呼ばれたのかと思い声を出す空。しかしそうではないと一瞬で察した彼は白が持つゲーム画面を覗く。
さっきは文句を言った八幡だったが、一度白に言われているためか、特に何も反応は示さなかった。
そして画面を見た空は驚く。それは白と同等の勝負を繰り広げている事にもそうだが、その戦略と戦術が、まるで空と同じだったからだ。
「……なん、で……」
「マジかよ八……このゲーム少し前に白と俺でボコボコにしたばっかのゲームだろ」
二人が驚くのは当然のことだった。
端的に言って八幡はこのゲームに関しては素人。良くてもそれに少し毛が生えた程度のはずだった。
しかし彼はこのゲームを極めた白を相手に、たとえ縛りがあるとはいえ互角に渡り合っている。
いや、と空は思考する。
(八が提示した縛り。あれは白の状況を狂わせるためのもの)
そう仮定すると全てが理解できた。
まず縛りにより白が得意とする射撃を完全に封じる。そして自分に縛りを加えることで、先の条件を呑みやすく、更にフェアに見せる。
(だが、この交換条件はフェアじゃない)
白の圧倒的な計算力により導き出される精密かつ強力な射撃。それを完全に封じただけでなく、本来なら一撃でライフ全損の爆弾やトラップ。その性質を逆手に取って八幡は防御力をゼロにした。互いがマイナスに見えるが、デメリットは白だけ。何とも恐ろしい手法。
そしてこれは空が得意とする戦法。状況から相手の苦手な方へと誘導して、できた心の隙を突く、まさしく詐欺師の様な手口。
「何が詐欺師だ。お前の方が、だろ」
「何言ってんだ。俺は空だぞ?これくらいするだろ」
目は離さず、ゲームに一切の油断をつくらず彼は答えた。
そして場面は“五分後”に戻る。
先のゲームで負けた白はリベンジを申し込み、八幡の脚の上に座って再戦を繰り広げている。
「なぁ白よ。普通の縛りなしで俺が勝てるわけなくね?」
「……はち、ズルした……しろの言うこと、聞く……」
「へいへい」
どこか諦めた声を出しながらも意気揚々とゲームをする八幡と白。
それを周りで見ている三人はどこか複雑な表情を浮かべていた。
「これ…まるでホントにソラが二人いるみたいですの」
「マスターとあれだけ近くにいられる……ああ、あの役を私が請け負っていればっ!」
「いや言いたいことは色々あんだけど……」
自分でつくっておきながら、最もこの状況に納得のいかない空は声を上げる。
「なんで俺のステが“シスコン”だけカンストしてんだぁ!」
―Other side out―
「はっ!」
なんか今まで正気を失っていたような。
そういや空とゲームして、三十分間“空化”したんだっけか。意識飛んじゃうのかよ。
すると突然『ゲームオーバー』という音声が俺の耳に入る。なに?誰か死んだの?
「……はち、もどった……?」
と、白が俺の方を向いて聞いてくる。
うん、それ自体は分かるよ?けどさ
「なんで俺の足に座ってんの?」
「…………いろいろ、あった……」
俺何したんだよっ!いつもより白の三点リーダー多くね!?
何がなんだか分からない。そしてもっと分からないのが
「なんで空は手ポキポキしながら近付いて来んの?」
「……よし八、一発殴らせろ」
「いや嫌だけど」
あれれ?おかしいぞー?
なんで空は怒ってんの?俺なんかしたの?でも俺意識なかったし、原因はあなたですよね?俺悪くないよね?
翌日だ。
なんてことない日常。なんてことない朝。
異世界転移という現実味ゼロの超常現象が起きたにも関わらず、俺はその環境に適応している。人は慣れる生き物というが、この適応度は少し異常ではないか。
まぁしかしだ。この世界での生活も悪くない。特に不自由もなければ、ひょっとしたらあちらよりも余っ程自由だ。特に学生でありながら学校に行かない辺りが最高。あれ?俺いつの間に不登校に成り下がった?
いや落ち着け。俺はこの城で仕事をしている、大丈夫だ。…仕事って?あれ?してなくない?
いやあれだ、俺は専業主夫としてこの城にいる。そう、俺は夢を叶えたのだ。あれ?でもこの城の大体がメイドさん達で成り立ってない?
「……俺って、どんな役職でここにいるんだ?」
今更だな。しかし考えてしまうと答えも出ない。まぁ王様に後で聞くか。
さて、何をしようか。
日が差し込む朝、社畜なら出勤しているとも言える時間帯。ここは世界観に沿ってモーニングコーヒーでも頂くか。もちろんマックスコーヒーだ。
そう思い立って厨房。いつも置いてある棚からコミルの実を出すが
「まずったな、これじゃ二杯が限界だな」
そう言えば補充すんの忘れてたな、あそこまで行くの遠いし。まぁ昼にでも取りに行くか。
本日一杯目のマックスコーヒー(仮)を作って、一口それを啜る。
と、そこで何故かステフが入って来た。いやなんで?
「おはようですわ、ハチ」
「おう」
「それは……あぁ、あの甘過ぎるコーヒーですわね」
ちょっと?なんでテンション下がったの?だってマックスコーヒーだよ?最高じゃん。むしろこれ以外はコーヒーじゃないじゃん。てかその反応、千葉県民の前でしたら怒られるじゃんよ。
寝起きの狂ったテンションで、とあるアンチスキルみたいになってしまった。
「そんなものばっかり飲んでいると、体を壊しますわよ?」
「壊さねぇよ。そんなヤバいモノ普通飲まないから」
まぁ糖尿病にはなるかもしれないが。
「そもそも、よくそんな甘いコーヒーを飲めますわね」
「世の中、辛くて苦く苦しいんだ。だからコーヒーくらいは甘くていい」
「なんでいい事言った、みたいな反応なんですの……」
いい事言ったろ。もうニーチェの隣に並べられるレベル。
うん、ないな。
「てかステフ、お前は何しに?」
「あぁ、シロを起こす前にお茶を入れようと思いまして」
言って彼女はいつもと変わらぬ動作でお茶をいれる。
もう起こすのか。いつものあいつの事を考えるとまだ早いんじゃないか、とも思うが真面目なステフからしたら遅いのかな。まぁあいつが素直に起きるとは思わないが、俺には関係ないな。
しかし何をしよう。予定もやる事もないし、ここは本の管理人に力をかりよう。
「ジブリールに適当に本、見繕って貰うか」
「お呼びでしょうか」
「っと!びっくりした」
お前背後に立つなよ。俺がスナイパーだったら撃ち抜いてるぞ。あ、返り討ちだわ。てか立ってすらなかった、飛んでるわ。
「危ねぇ、貴重なコーヒー零すとこだった」
「それは失礼しました。それで私が何か?」
「聞いてなかったのか」
「偶然こちらに来た時に名前だけ聞き取れたので」
「ってことは今まさに来たとこってことか。何用?」
「ドラちゃんがそろそろマスターを起こす頃だと思われたので」
あーこいつ本当従順。どんだけマスター好きなんだよ。ゆる百合はいいけどガチ百合はやめろよ?
まぁ恋愛感情皆無のこいつじゃ間違いは絶対ないだろうが。
「二人とも行きますわよ」
そう言ってステフは自分で入れた三人分のお茶を持って厨房を出る。
自分の分はともかく、いきなり現れたジブリールの分までいれてる辺り、ホントに気が利くやつだよな。俺の分なかったけどね。気にしてない、大丈夫だ。
てかジブリールはともかく、なんで俺も一緒に行くことになってんの?まぁいいんだけど。
俺の理念に基づき俺はステフの三歩後ろを歩きながら、白が寝ているらしい王室へと向かう。
あれ?クラミーは?
すいません、書いてたら楽しくなってまた伸びました。
あれです、オセロ編突入したってことで。
次回こそクラミー戦開始します。…多分。
感想、誤字報告お待ちしております。
追記
誤字報告にて、表現に誤りがあったため修正させて頂きました。
番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?
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