ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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ふザケルなぁ
どうも。
ガッシュはアニメで最後までやって欲しかった、江波界司です。
他の俺ガイルクロスオーバーをはじめ、作品を書いている皆様、本当に尊敬します。
あんな長期連載できる気がしません。
なんてことは気にせず本編を。


そして彼女はもう一つの光を見る

 ― 白 side―

 

 

 怖い

 にぃがいなかった過去が。

 怖い。

 にぃがいない今が。

 怖い。

 にぃがいない未来が。

 あのにぃと出会う前の、真っ白だった世界が……怖い

 

「……にぃは……しろの……すべて……」

 

 言って自覚する。

 心と体が誤作動を起こしていることを。

 にぃは、“空”は確かにいた。そして今もどこかにいる。

 体の震えが止まらない。

 はちが言ったことが、体の至るところに響いて苦しい。

 あれ以上は聞けなかった、聞きたくなかった。

 はちだってにぃを嫌いなわけじゃなはず。にぃもはちを信じてた。しろだってはちを信じてる。

 だからこそ、怖かった。

 まるで裏切られたような気がしたから。

 怖かった。

 はちの言ったことが本当かもしれないと思ったから。

 怖かった。

 本当に、にぃはいないのかもしれないと思ったから。

 

「…………でも……」

 

 そんなことない。

 にぃはいる。にぃはしろを一人にしない。にぃはしろを信じてる。

 ならしろも、にぃを信じる。

 

 頬から滴り落ちる涙を拭ってベッドの上に立つ。

 

「……にぃは……いる……」

 

 にぃは確かにいる。必ずどこかにいて、何かを成そうとしてる。

 でも、しろにはそれが分からない。

 にぃはいつもそうだった。しろじゃ思いつきもしないことを、いつも平然とやってのけた。

 にぃにできない事はしろができる。しろができない事はにぃができる。

 なら、しろじゃにぃがする事はできない。しろじゃにぃにはなれない。

 もしにぃがこの状況をつくったなら、それはしろじゃ解けない。

 

「……しろは……にぃじゃない、から……」

 

 にぃのやり方でしろはできない。

 “空”が使うのは答えから逆算する、どんな数式にも公式にも当てはまらない計算式。それを解けるのも、理解できるのもにぃだけ。

 

「……ちが……う」

 

 違う。いる、いるのだ。一人だけ。

 にぃを真似て、まるでにぃの様に振る舞い、にぃの様にゲームし、にぃの様に勝った彼が、彼なら。

 

「マスター、これから私と……」

「……ジブリールっ」

「っは、はいっ!なんでございましょう!?」

 

 ジブリールが何を言いかけたのか分からない。分かんなくてもいい。

 そんなのどうでもいい。

 

 彼ならきっと、にぃを見つける。

 彼なら、信じれる気がする。理由は分からない。にぃに似ているから?そんなこともないと思う。

 でも…信じる

 かつてにぃが、しろの、白の世界に『色』をくれたように。

 はちも、その『色』を見るための『光』をくれると。

 

 だから……だから今は

 

 

「……はちを……つれてきて」

 

 

 

 

 ―白 side out―

 

 

 

 

 

 

 

 意識的に何かを考えるのは難しい。

 本来人間の脳は常に完全かつ万全で動けるわけではないのだ。

 故に、俺はこうして虚ろな意識のなか、ただ流れる白い雲と佇む青い空を眺めている。

 体に当たる暖かい日と、時折そよぐ涼しい風がまた心地いい。このまま身を預けてしまおうか。

 しかしそんな考えを理性が止める。

 こんな柔らかく穏やかな空間のなかで、尚も眠れないとは。数学の授業中の俺ってどうやって寝てたっけ。

 もはや眠り方すら忘れ始め、しっかりとした自我のなかで、意識だけが薄くなってゆく。

 

「マスターが大変だと言うのに、いいご身分ですね」

 

 どこからか声がする。

 いつも聞く皮肉混じりの台詞。その声の主は、見ずともわかる。

 てかここに飛ばしたのお前だろ。

「あいにく俺は金髪幼女でもロリ奴隷でもないからな。俺に主様はいない」

「そもそも性別が違うので間違うはずもございませんが」

 伝わらないか、そりゃそうだ。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。

「何か用か?」

 白にあんな事したんだ、一発殴らせろくらいはあるかな。……多分一発で一生が一瞬で終わるけど。まぁ、文句の二つや三つは聞こう。

 

「マスターがあなたを連れて来い、と」

 

 白がか?

 あんなことあってからそんなに経ってないぞ。

 いや、とっくに体内時計も体感時間も狂ってるからな、実は結構経ったのか?

「実は知らぬ間に一週間くらい寝てた?」

「一時間どころか十分もたっていませんが」

 まじか。

 だとしたらホントに何用?俺殺されるんじゃね?悪いのは俺だから何も言えねぇな。

 ……正直、しばらく顔合わせたくないんだけど。

 

「ちなみに、拒否権は?」

「強制的に転移させないだけでも、十分好意的に要件をお伝えしたつもりですが?」

「ですよね」

 

 うん、知ってた。

 しかしどんな顔して会えばいいのやら。

 

「……考えても、仕方ねぇか」

 

 取り敢えず、会ったら即土下座だけは決まったな。

 

「ジブリール、頼む」

 

 また、俺の視界が風景ごと変化する。

 

 

 

 

 

 

 

「……おそい」

「申し訳ありません、マスター。なにぶん抵抗に会いまして」

「してないよね?結構すんなり了承したよね?」

 

 転移が完了した瞬間、俺の目の前にはご立腹の白がいた。目線が同じだったし、ベッドの上に立つっているのだろう。

 てかジブリールよ。そこで抵抗とか言うのやめてね?なんか俺に誠意がないみたいに聞こえるから。

 しかしいざ向かうと何を言えばいいのか。

「あ……あー、えっと……」

「……ハァ……いい……はち、こっちくる」

 白はため息を一つつくと、組んでいた手を解いて手招きする。

 彼女の手の動きが止むまで進み、指定の位置まで来ると目を瞑れ、とのこと。

 流石に拒否するわけにもいかず、俺は素直にそれに応じる。

 そして

 

 パァァァン、という破裂音。

 

 更に左の頬に叩かれた様な痛みが。

 ちっちぇな、なんて不謹慎だが、それ程彼女の手は小さかった。

 けれど、何よりも痛いビンタだった。

 

「……これで、チャラ……だから……」

 

 恐る恐る目を開けると、白は俯きながら言った。

 そして今度は目を合わせて彼女は言う。

 

「……はち……手伝って……にぃを、見つけて」

 

 チャラなんて言ったが、全くずるい。

 その要求に拒否権はなく、そしてチャラと言いながら俺の罪悪感につけ込んでいる。

 ったく、詐欺師かよ。

 

「ああ。でも……」

 

 力になれるか分からないぞ。

 そう言いかけた俺の言葉に白は重ねる。

 

「……だめ、手伝う……」

「いや、それは分かったって。了解した。けど……」

「……だからめっ!……そういうのは、後……今は、こっち……」

 

 言い訳はなしってことか。なんか、いい様に使われてる気がする。

 でも、それでもいい。

 もしこれで、さっきの分がながなくなるなら、罪滅ぼしになるなら、俺はやろう。

 

「ハァ……」

 

 思わずため息が出た。

 こうやって理由がないと動けないのは、まだ治りそうにない。

 

 

 

 

 

 

「で、白?俺は何をすればいい」

 一息ついて、というか俺と白のあれこれは取り敢えず置いといて、今は白の目的を果たすことにした。

 俺は白が指した通りベッドに座り込んで、対面の白に問いかける。

「……にぃの、考えを……知る」

「白よ。簡単に言うが、知らない奴の考えをどう読めと?」

 知っているやつなら出来るかもしれない。仮に知らなくても、観察すればヒントを得られるかもしれない。

 けど俺は知らないし、観察することすらできないのだ。それをどうやって?

「……しろは、にぃを知ってる……でも、にぃになれない」

「は?」

「……はちは、にぃを知らない……でも、にぃになれる」

「いやなれねぇよ」

 俺に変身機能でもついてるとですか?

 誰がメタ〇ンだよ。しかもあいつだって見ないとなれないし。

「……しろが、にぃを教える……はちは、にぃになればいい……」

 なに簡単に、超無茶振りしてくれてんだよ、白。

 誰かが誰かになれるわけがないだろ。それこそ魔法でも使わない限り。

 ……あーこの世界、魔法あったわ。

「いや……」

 だが、言いかけて俺は止まった。

 どうせやるしかないのだ。ならすべきだと。

「ハァ……分かった。ってもどうするよ、実際」

「…………」

 ノープランかよ。

 俺の問いかけに白は熟考する。

 彼女はスーパーコンピュータークラスの計算能力を持っている。当然記憶力も相当なものだ。彼女が最強ゲーマーになるのも納得できる。

 そんな彼女ならすぐに答えを出すだろう。

 しかし、だ。

 コンピューターの計算にも間違いはある。バグもそうだが、もっと頻繁で単純なこと。

 計算式や数字が間違えている事だ。

 電卓は、正しい数字と計算式を当てはめて初めて機能する。

 なら、もし彼女もそうなら?

 今までは、彼女だけでは判断しきれない数式を誰かが教えてくれていたとしたら?

 もしそれが“ソラ”という、白の兄だとしたら?

 

「白、お前の兄ちゃん……“ソラ”は、ずっとお前と一緒に戦って来たのか?」

 

 突然の問に白はやや動揺するが、確かな目でこちらを見ながら頷く。

 白の兄、“ソラ”。今までパートナーとして一緒にゲームをしてきたそいつが、何故消えた。それも、白以外から記憶を消して。

 

「……にぃは言った……最後のピースを取りに行こう、って……」

 

 思考の最中、白は俺に向かって呟く。

 最後のピース……つまり何かの要素。

 今の俺たちの状況から察するに、それは東部連合との勝負に関わるもののはずだ。

 

「仮定、“ソラ”は東部連合とのゲームに勝つために、他の誰かとゲームをした」

 

 その言葉を聞いて白は、言う。

 

「……にぃは言った……東部連合に、“チェックメイト”と」

 

 チェックメイト……つまり勝ちという宣言。

 なら、最後のピースとは勝つためのものではなく、その後のため?

 仮に東部連合とのゲームに勝ったら、その後はどうなるか。

 “ソラ”の目的が白と同様に東部連合を手に入れるだとして、大陸領土を手に入れたからといって東部連合を手にいれた事にはならない。それに人材も島の方へ送られれば、事実上手に入るのは領土のみ。

 

「最後のピースってのは、東部連合の逃げ場を封じるためのもの……」

 

 口に出すと考えがまとまると言うが、今言った台詞の中に何かを感じた。

 東部連合が危惧していたこと。それは他国にゲーム内容がバレること。

 ゲーム内容がバラされている事、それを直接的でありながら間接的に東部連合に伝えるとしたら?

 間者……誰?どこの?

 東部連合に挑んだ国はジブリールを抜けば二つ。

 エルキアと……エルヴン・ガルド――森精種(エルフ)っ!

 だとすれば――。

 

「相手はクラミーかフィー、あるいはその両方」

 

 白はそれを聞いてハッとした。何か気が付いたのか?

「……ジブリール、存在を奪い合うゲーム……作れる?」

 白のその問にジブリールは気まずそうに答えた。

「残念ながら、そこまでの複雑な術式を組むことは、私にはできません」

「……森精種(エルフ)と、合作なら……?」

 合作…なるほど、ジブリールの技術と森精種(エルフ)の魔法なら

「あ、あんなゴミ虫の様な種族と私が……」

「……ジブリールっ……」

「……理論上は、可能でしょう」

 つまり、“ソラ”はクラミーとフィーとゲームをして、存在を奪われた?

 いや、だが違和感がある。

 だとしたら何故白だけは覚えている。そもそも何故そんなことを?

 東部連合を追い詰めるためにはクラミーとフィーを味方につける必要がある。その為に、仮に盟約での縛りを使わないとすれば、必要なのは…信頼。

 存在とは、自分を構成するものの集合体。それは肉体であり、思考であり、記憶。

 つまり……。

 

「“ソラ”は記憶をわざと取らせて信頼を得ようとした……」

 

 確かに、理論上は可能だ。けど、どうやって勝つ?

 いやそもそも“ソラ”は存在が消えている。

 可能性と推測、そして本来読めるはずのない思考、感情。

 そんな無数の条件と思考材料を吟味していき、一つの仮説を得る。もし、それを証明するとしたら……

 

「……全く、皮肉なもんだな」

 

 数学は苦手だってのに。

 いや、これは国語の分野だ。

 台詞や場面から登場人物を考察する、文章読解。

 なら、得意分野だ。

 

「白、二つ質問がある」

「……な、に?」

 

「“ソラ”は、ゲームに負けるような奴か?」

 

 最強ゲーマーの兄、いや“片割れ”と表現しようか。

 もしそいつが白の様に、だが白とは違う方法でゲームに勝つなら。

 

「……にぃは、負けない……『  』(くうはく)に……敗北は、ない……」

 

 負けない。つまりこの状況は負けを意味せず、しかし勝ってもいない。

 仮に引き分けでもないとするなら―ゲームはまだ続いている。

 

 それにもう一つ、聞いておくことがある。

 

「白、“ソラ”ってのは、お前の“お兄ちゃん”か?」

 

「…………っ!」

 

 ここまで“にぃ”と呼ばれた“ソラ”。

 もし彼が“お兄ちゃん”だとすれば

 

「……うんっ……」

 

 “お兄ちゃん(ソラ)”は“()”を、一人にしない。

 

「ジブリール、この部屋に魔法の反応は?」

「っ!……少々お待ちを――」

 

 数秒の間をおいて、彼女は魔法の反応、その存在を肯定した。

 

「白……こっからはお前の番だ」

 

 その言葉を聞いた白は、一瞬の戸惑いを振り払い、ベッドから降りる。

 そして段差のある床を進みながら、迷いなくある場所に座り込む。

 ふと目を向けると、彼女の手には白黒が表裏一体の石が三つ――。

「オセロ……ですの?」

 今まで完全に空気だったステフが呟いた。

 俺には、俺たちにはそのオセロの盤も、相手も見えない。

 しかし白は少し微笑んで、その三つを地面へと打ち付ける。

 

 

 

 ―白 side―

 

 

 

 にぃは怒るかな?

 ごめんなさい、はちに頼っちゃって。

 でも、それでもにぃに早く会いたかった。会って安心したかった。

 もう一人にしないで、一人は嫌だから。

 もういなくならないで、いないのが辛いから。

 もう離れないで、一緒にいないと苦しいから。

 だから

 

 だから

 

「……にぃっ……帰って、来てッ!」

 

 最後の一手を打った直後、周りの空間が音を立てて崩壊した。

 

 

 

 

 ―白 side out―

 

 

 

 

 

 

 まるで世界の終わりかの様に轟く壊音。

 そして今白の隣には――。

 

「っかはっ!」

 

 呼吸をようやく思い出したが如く乾いた声を上げ、横たわる『空』がいた。

 

「……にぃ〜!」

 

 突然現れた彼に抱きつく白。

 だがまぁ、それは仕方のないことで。

 

 時間にして約一日ぶり、本来離れる事すら致命傷の二人は、ようやく再会した。

 

 

 




なんと…まだクラミーが登場しないっ!
引き伸ばしますねぇ〜というか完全に白の回でした。
そう言えば、かなり前のマックコーヒー回。
今振り返ると、結構好評だったりする…のかな?
嬉しい限りです。
…なんで私の周辺の自動販売機にはマッ缶がないのか。
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