ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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メロスは激怒した
どうも。
身代わりの友すらいない、江波界司です。
メロスよりもセリヌンティウスの方がずっと勇者ですよね。
そんな勇者に八幡はなれるのか……
前置きは無視して本編ですの。


彼女らと和解し彼は来た道を振り返る

 砕ける空間。流れる記憶。そして現れた存在。

 それらが意味するのは、行われたゲームとその結末。

 

 

 

 

 いつもの朝だった。

 ランニングを兼ねながら待ち合わせの場所に向かい、いつも通りフィーからコミルの実を受け取る……はずだった。

 しかしそこにはいつもはいない彼女、クラミーの姿があった。

「あなたのボスに用があるわ」

 明らかな敵対心を出しながらクラミーは俺に言う。

 あの、ボスって誰?この世界のラスボス?テト?

「連れて行って貰える?」

 だからどこにだよ。

 そう聞こうとした瞬間、俺の目の前に羽根を生やした少女が現れる。

「かしこまりました。では、私にお掴まり下さい」

「待て、お前どうやってここに来た」

「私の転移は“視界に入る全て”が範囲なので」

「ル〇ラより便利だな」

 つまり見てたのか。てか、つけて来たの?

「あなたストーカー?迷惑防止条例って知ってる?」

「何やら声色を変えて、誰かの真似でしょうか?もちろん存じ上げていますが、こちらの世界にその条例はありませんので」

 おっとユキペディアさんが負けた。負けたの俺だな。

 まぁそんなわけで、俺たちはジブリールの転移で城へと向かう。

 ……ねぇ?コミルの実は?俺のマックスコーヒーは?

 

 

「それじゃゲームをしよう」

 種のコマを賭けた空を止めるべく挑むクラミー。それに対して空も堂々と応じる。

 ゲームはオセロ。ただし、コマにそれぞれ自分を構成する情報を乗せて、それを奪い合うというもの。数字が小さくなるほど、それが重要な要素ということらしい。

「それとこのゲームにはパスはない。たとえ取れなくともコマを置いてもらう」

 つまりそれだけ奪われるリスクが上がるのだ。

「そしてもう一つ……このゲームは存在、つまり体の神経や脳の情報も賭ける。だから最後の一手を打つまでは代打ちも可能とする。あんたの場合はその森精種(エルフ)で、俺の場合は後ろにいるこいつらになるな」

 そのためこの場にいる全員、つまりステフやジブリール、俺も含めて【盟約に誓って】のゲームとなる。

 勝利者には、二つの絶対要求権が与えられる。

 そしてその場にいる全員がそれを了承し、宣言する。

【盟約に誓って】と。

 

 

 

 と、回想は終了して現在に戻る。

 現状を分かりやすく伝えるなら、十一歳の少女が十八歳の兄に涙を零しながら抱き着いている。

「盟約とはいえ、マスターの事を忘れてしまったなんて…」

「一体、何がどうなったんですの?」

 俺と同じく記憶が戻った様だ。ステフとジブリールも困惑しながらも状況を呑み込んでいる。

「よ、よし白。殴っていいぞ、覚悟はできてる……」

 たとえ目的があって、それに了解を得たとはいえ、彼は妹を泣かせたのだ。その分の報いは受けるべきだろう。

 しかしそんなことをする気は無いように、白はただ空にしがみついている。

「よし、じゃあこっちで代打ちしよう」

「八、久々の再会の第一声がそれかよ」

「同じお兄ちゃんとしての情だ」

「お、おう。んじゃ頼む」

「おーけー」

 俺は右手をぶらぶらと動かし

「ジブリール、マスターの頼みだ。一発かましてやれ」

「待て待て待て待てっ!死ぬからっ!次こそいなくなっちゃうからっ!」

 ふむ、帰ってきたばっかりにしては随分元気だな。なんかこいつと軽口を言い合うのも久しぶりな気もする。

「まぁその事は後でいいし、まずはそっちだな」

 そう言った俺の指指す方向を見て、空は頷く。

 彼の視線の先、そこにいるのは横たわるクラミーと彼女に寄り添う森精種(エルフ)のフィーだ。

「そうだな……白」

 彼が胸の中にいる白を呼ぶと、彼女は顔を上げて頷く。そして手を繋ぎながら二人は立ち上がって、彼女たちの元へ向かう。

「……さて」

 そろそろ、いいか。

 俺はジブリールに一度視線を送ってから部屋を出る。

 理由か?

 マックスコーヒーに決まってんだろ。

 

 

 

 その後城中に響いた泣き声は、なんか三人分聞こえた気がするが…まぁいいか。

 

 

 

 

 

 

 城の屋外。ついさっきまで俺がいたところだ。

 別に深い意味はない。ただ静かな場所を探していただけで、俺は持ち運び型擬似マッ缶を持ってここにいる。

 また空を見上げて、頭と過去の記憶を整理する。

 

「ハァ……」

 

 理由も分からないが、無意識にため息が出た。

 今日俺がやった事、俺がやろうとした事。

 白に頼まれた俺は、自分が出来ることをした。その結果、空を見つけるに至ったわけだ。

 それが、テトの言う俺の『才能』なのだろうか。

 違うな……

 空を見つけること。それは俺じゃなくても、もしかしたら白一人でも出来たかもしれない。

 もし『才能』をそいつだけが持つ力と定義するなら、俺がした事はごく普通の、代わりも変わりも効く事だ。

 なら俺の『才能』は……?

 超人的計算能力でも、人外的心理誘導でもないもの。そしてそれは、テトが言う『反則(チート)』。

 俺はいつか、テトの言う結末を見ることになるだろう。

 その時、俺は誰かといるのだろうか。

 あの時空は言った。“チートは使わない”と。

 なら俺と彼らは、最後の最後にどうしようもなく相容れないのではないか?

 だとしたら、俺は彼らと同じ道を進むことはできないのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで、二つの要求の内、一つは奪ったものの返還と記憶の定着、二つ目がフィーの記憶改竄の権利としたってこと」

 ジブリールから呼ばれ、俺は他の奴らが集まっているテーブルに足を運んだ。

 あの後、王室でどんなやり取りをしたのかを俺は知らない。

 そこで空がクラミーにした要求の内容を聞き、今の状況を確認させて貰っているわけだ。

「まぁ大体分かった」

 つまりクラミーにイカサマ防止の監視者の役割を頼むってことらしい。

 俺が出した仮説は概ね合っていた事になる。

 しかしその説明だけでは足りないのだ。

「で、これはなんだ?」

 俺が聞きたいのはただ一つ。

 なぜここに全員が集められたか、である。

「何って、懇親会に決まってるだろ」

 決まってねぇよ。

 俺の事はお構い無しに空は話を始める。まぁその方がスムーズだし、いいんだけどね。

「これから俺たちは裏表なく信頼だけで協力し合うわけだ。そのためにここいらで蟠りは無くしておこうってわけ。共闘する上では大事だろ?」

 蟠り、ねぇ。

「じゃあまずは……」

「そ、ジブリール」

「え?わ、私ですか?」

 お前以外に誰がいるんだよ。

 あのゲームの構造を作る際、ジブリールとフィーはケンカしまくっていた。

 それもう、喧嘩するほど仲がいいとか言ってられないほどに。

「もう面倒だし、ジブリールがフィーに謝って終りで良くないか?」

「なぜ私があの忌々しい下等種に謝罪を?身の程知らずに対空魔法を張っていなければ、私も『天撃』を撃つことはありませんでした」

「ジブリール、その際のお前の被害は?」

「タンコブができました」

「フィー、そっちは?」

「首都が壊滅したのです。一体何人の同胞が死んだか分からないのですよ〜」

「ジャッジ、空白」

「「ジブリール……ギルティッ!」」

「なっ!」

 いやいや当然だろ。

 ハンムラビ法典とかのレベルじゃねぇよ。

「頭打ったから首都撃つとか、等価交換無視し過ぎだから」

 もうちょっと錬金術学ぼうか?取り敢えず真理の扉見てこようか?

 とまぁそんなわけで、マスターの命令でジブリールはフィーの足を舐めながら謝罪し、フィーはそれを笑顔で許した。

 その光景に

「実はただジブリールに嫌がらせしたいだけに見えてきた」

「奇遇だな空、俺もだ」

 あまりの満面の笑みにそろそろ違う疑惑が出てきている。

 と、それはこいつも同じだが……

「あぁマスター。森精種(エルフ)の足を舐めるという屈辱を受けたにも関わらず、マスターの為と思うと何やら胸の奥からこみ上げるものが……」

 引くな。

 もういいや無視しよ。

 それは空も同じようで、他のやつに確認をとる。

「言いたいことなら私もありますわよっ」

 と手を上げたのはステフ。

 あぁ……一応聞くか。

「そこのクラミー、国王選定戦で魔法で私を騙しましたのっ!」

「騙される方が悪い」

「なんでですのっ!」

「……はちも、だまされた……でも、なにもいってない……ステフ、見習う」

「くっぬぅぅぅっ」

 即却下。でしょうね、知ってた。

 さて他にはないか。そう思って視線を移すと、ここでフィーが手を上げた。

「言いたいこと、というなら私にもあるのですよ」

「ほうほう、ではどうぞ」

「そこの男が〜クラミーの裸を見た事なのですよぉ」

 その言葉が静寂に包まれたこの部屋に響く。

 そして、それぞれが一様にこちらを向く。

 ある者は驚き、ある者は微笑み、ある者は侮蔑、ある者は邪推、ある者は怒り、ある者は……

「ってフィー、お前笑ってんじゃねぇよ。絶対わざとだろ」

「いえいえーなのですよ?」

 てかあれはクラミーがいいって言ったからもういいんじゃなかったのかよ。

「……はち……なにした、の?」

「へ?」

「……ハチ、あなた……」

「お、おい」

「まぁ所詮は雄、そういった欲望がなければそもそも生物ですらありませんね」

「おい、オスはやめろ。人を見境なしの獣みたいに言うな」

 違うから、事故だから。

 それより、ニコニコとこちらを見ている空が気になる。

 そう言えばクラミーと空は互いに記憶を奪い合って、その上で互いを理解し合ってんだよな?

 ってことは

「おい空、お前分かってるだろ」

「え?何のことぉ?」

 分かってるんですね、教えてくれてありがとう。

 おかしいなぁ?なんで本来いないはずの自陣営に敵がいるのかな?

 このままだと居場所までなくなる。元々あって無いようなもんだが。

 さてどうしよう。

 この場を収集出来るのは空か、あるいはクラミー本人か。それでもクラミーだと何かしらの疑念を残し兼ねない。

 という訳で交渉相手は空だな。しかし何をどうすれば…

 なんで俺はこんな事に頭を使わなければならんのか。

 

「空、動画を消すからこの場を頼む」

「ハイハイまいどー」

 

 俺が撮った空の黒歴史動画国王宣誓編を消す代わりに俺の濡れ衣を晴らす事を空は了承した。

 数分の後、クラミーの助力もあり何とかその場は収まった。

 なんか一層疲れた。

 そして

 

「自己紹介をしますっ!」

「順番おかしくねぇか空」

 

 いやほんとおかしいよ?なんでこのタイミング?わけわからん。

 それ全然分かんない、意味が伝達した来ない状態の中、空は続ける。

「いや〜本当は最初にやろうと思ってたんだけど、八をいじるのが先かと思ってな」

「性格が悪すぎる」

 なんで皆の自己紹介より俺を優先してんの?

 ぼっちはそういったことがないように細心の注意を払って生きてるのに、ほんとやめてよね?

 

 そんなわけで自己紹介だ。

 まずは

「んじゃどうぞ」

「クラミー・ツェルよ」

 終わったぁ。

 簡潔かつ最小限という、実に俺好みの回答だ。

 だが

「それは悪手だろ」

 感謝を忘れない最強爺さんを思い出しながら、俺はボソッと呟いた。

 それが誰かに聞こえた様子はなく、空は口を開く。

「えっとスリーサイズは上から……」

「ち、ちょっとっ!それはずるいわよっ!」

 空に記憶を渡してるんだ、どんな弱みを掴まれるかわかったもんじゃない。

 俺だったら黒歴史あり過ぎて奴隷になっちゃうレベル。

 空の説得(という名の脅し)を受けてクラミーは自己紹介を再開する。

 しかしそれにはフィー、本名フィール・ニルヴァレンの紹介が先とのこと。

 かなり要約するが、フィーはエルヴン・ガルドの次期選挙までの上院議員代行で、クラミーは彼女の幼馴染兼奴隷。エルヴン・ガルドでは奴隷制が存在し、フィーは奴隷解放運動を企てている、と。

 ここまで整理してわかると思うが……

 

「なんとも濃いメンツだな」

 

 社会不適合者の兄妹。

 愚王の孫娘。

 天翼種(フリューゲル)のはぐれ者。

 エルヴン・ガルドの異論者とその奴隷。

 そしてぼっち。

 こうも異端者共が集まるとは。

 なんか東部連合が可哀想になってきたわ。

 

 何故って、何かやらかすのは決まって異端児だからだ。

 

 




今になって三点リーダーの使い方を知りました。
誤字報告ありがとうございます。
一話から全部、特に白のセリフを直しています。
なんか中途半端ですが、今回はこの辺で。
感想、誤字報告お待ちしております。

番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?

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