どうも。
強化外骨格薄過ぎ、江波界司です。
早く最終巻が見たいですよね俺ガイル(原作)。
こちらも完結目指して頑張ってます。
そんなわけで超本編です。
かつて争いが絶えず、戦火に巻かれていた種族を、僅か半世紀でまとめあげた巫女。まさしく東部連合のボス。
そんな相手にほぼ一人で交渉しに行くというのだから、無謀も磨きがかかれば奇策に見えてくる。
なんて強がりを混ぜながら相手をたてて、どれだけ分の悪い勝負に出たかをわかりやすく整理しては見たが、ここにはそもそものミスリードがある。
俺は勝負しに来たわけじゃない。
この世界は全ての争いはゲームで決まる。ならば争いでなければどうだ。
俺がこれからするのは交渉、つまり勝負でも争いでもゲームでもない。この世界に沿って言うなら前準備の段階だ。
まぁその準備ってのもゲームをする必要があるんだが。
それにだが、そもそも俺たちがここに来れている時点でおおよその結果が見えていたりする。俺たちがここにいる、つまり俺の送った手紙をあちら側が信じた事になるからだ。
もちろん俺にはどっかの詐欺師のような技術はない。しかしそれでも出来ることがあるのでないか。それがたとえ取り柄は性格の悪さしかない俺でも。
「なんて、ネガティブかポジティブがよく分からんことも考えたが……まだか?」
まだか、とは迎えの事だ。
別にジブリールに置いてかれたわけじゃないぞ?ほんとだよ?
さっきから鳥居の下で誰かが来るのを待っているのだが、かれこれ十分誰も出てこない。
「なに?勝手に入っていいの?インターフォンとかないの?」
まぁ仮にあっても押さないけど。だっていい思い出がないし。
呼ばれたと思って友達(だと思ってたやつ)の家のインターフォン押したら、スピーカーから小さく「え、だれ?」「お前呼んだ?」「しらねぇよ、あいつなんでいんの?」みたいな会話を聞いてからかなり抵抗がある。
だから俺はスピーカー付きのインターフォンと前野と田中と渡辺は許さない。
「あいつらもうちょっと気使えよ」
「何を目を腐らせながらブツブツと……それに、やっとお出ましの様です」
ジブリールの声で現実に戻ってきた俺は前を向く。
そこにはいつか見た白髪丸メガネの犬耳爺さんがいた。
「お久しぶりと申しておきましょうか。次会うのは少々先だと思っていましたが、まさかこんなに早く再会する事になるとは」
「寒空の下客人を待たせてからそのセリフが聞けるとは流石犬っころ。小さな小屋の中で野外に繋がれることに慣れた種族は言うことが違いますね」
「これはまた随分なことを言いになる。現在進行形でハゲザルに首を繋がれた抜け殻人形のセリフとは思いませんでしたな」
「位階序列という狭い視野で見たもので下位の種族を蔑む事しか出来ない凝り固まった脳みその獣は随分と見苦しゅうごさいますね」
「はっはっ耳が痛い。ご自分をアヴァント・ヘイムより遥かに高く棚に上げて言われては返す言葉もない」
「話進まねぇからちょっと黙れよ、お前ら」
だから仲悪すぎだろ、この世界の奴ら。
ジブリールに関してはどことならいいんだよ。え?俺もいないだろって?分かってるよ、ブーメランなのは。
てかそろそろ中入りたいんだけど。やっぱ冷えるだよ外は。
「とりあえず入れてもらっていいか?手紙を読んだってことは、要件は分かってんだろ?」
「あくまでも読んだのは巫女様、私めはあなた方を案内しろとだけ言われているので」
「あ、そう」
いのはついてこいと言ってから振り返って歩いていく。それについていきながら俺は思う。
それにしても巫女ってのはどんな奴なんだ?
仮にも他国からの使い、その内容が記された書面を貰えば信用の置ける奴には内容を教えてもいいと思うのだが。
不思議に思った理由はいくつかあるが、最初に違和感があったのはいのの存在だ。
本来は大使館にいるはずの彼が案内役としてここにいる。それは巫女からそれなりの信頼を得ているともとれる。しかし彼は俺たちが来た要件も目的も知らない、つまり手紙の内容を開示されていないということになる。
いや可能性はもう一つあるか。
「なぁ爺さん」
「何でしょうかなヒキガヤ殿」
おお、この世界に来て最後にそう呼ばれたのっていつだっけ?まぁいいや。
「あんたこんなところにいて、いづなはいいのか?」
「何を心配されているのかは判断しかねますが、共にこちらへ来ているのでご安心をと申しておきます」
「そうか」
ふむ、これは困ったな。
いや目的達成のためには良いことかもしれんが、もしかしたら既に巫女にこっちの狙いがバレてる可能性があるな。
ハナからフェアじゃない交渉はやるべきじゃない。自分が劣勢の時は鉄則だが、今はまだ判断しかねる辺りが少々やりずらい。
いや、そこまで含めてのこの状況だろうか。巫女という人物がますます分かんなくなっていく。それも底知れなさだけを伝えながら。
「こちらにございます」
いのによって案内された扉の前。
彼は開ける準備をしながらこちらへ確認をとる。暗に覚悟はいいか、と。
「ジブリール」
「私に確認が必要だと?」
「一応な」
備えるに越したことはない。これから相対するのはそれくらいヤバめの相手だ。
俺は頷き、ジブリールもまたそれに続く。
いのは両手を使って引き戸を開ける。
そして眼前には、花魁を彷彿とさせる妖艶な女性。狐の様な耳と金色の長い尾と髪を持つ、美しさを体現したような女史。
彼女は細く艶やかな視線に僅かに敵意と懐疑を乗せながらこちらを見ている。
「よう来たねぇエルキアの大使さん?あてが巫女、あんたらのお目当ての人物よ」
「お初にお目にかかる、って言えばいいか?」
「かまへんよ、肩苦しいのはあても好きじゃあらんし」
「そうか、助かる。知ってると思うが俺が比企谷八幡、こっちがジブリールだ。それでえっと……」
「ん?ああ、巫女でええよ。そんな大層な名前もあるわけやないし」
話してて思う。本当に掴めないやつだと。
軽い口調と態度で話しながらも一切の油断がない。腹の探り合いに関してもあちらが一枚上手だろう。
だが、それがどうした?こっちのやることは変わらない。
「それにしても八幡……面白い名前やね」
「変わってるとはよく言われるな」
「変わってるのは名前だけとあらへんみたいやね」
「ああ、主に目とかな」
「……自分で言いよるん?」
「よく言われるんだよ」
疑いの目は晴れない。何よりもそれを隠そうとしないのが、彼女の踏んできた場数の多さを感じさせる。
「とまぁ挨拶はこのくらいにしといて」
「せやね、本件に移ろか」
「ああ」
相手のテリトリー、完全なアウェーの中の交渉。
ジブリールは俺の左後ろに正座している。
そして俺の正面には依然とした態度で座る巫女。
俺と巫女の間、その中間地点にかつ俺たちの正面には入らぬ様に位置をとっているいの。
「じゃあとりあえず、手紙は読んで貰えたって事でいいのか?」
「ああ、読んだよ?それであんたらとの会合はあてらにメリットがあると判断して呼んだんよ」
「じゃあこっちがしたいこともおおよそ分かってる、ってことか」
「まぁそやね。ある程度は想像はできてるけど」
俺が東部連合に出した手紙。
その内容は至って単純なもの。
「随分気前がええんとちゃうか?『自分から手の内晒してくれる』てのは」
巫女と交渉がしたい。こちらが提示するのはこっちのカードの一部公開。
これから空たちとやるゲームが有利になるということになる。
「まぁそれくらいの事ではあるんだよ。それで、こっちの要求は呑んで貰えるのか?」
「それは内容次第やね。こっちにはまだなんの情報も提示されとらんし」
手紙にはこちらが出すカードしか記していない。分からなければ当然行動も制限されるし、臆病にもなる。
だからこそ交渉の余地がある。
「こっちの要求は、一対一で話す時間と機会が欲しい」
静まり返る室内。
要求された巫女とその同陣営のいの、こちら側の陣営であるジブリールも口を閉じてその言葉の意味を吟味する。
そして、その沈黙を破ったのは巫女だった。
「どういうことなんか説明してもらってええ?」
まぁ当然の反応だな。
「結論から言うとだな、俺たちは今回そっちに降伏して貰いに来たんだよ」
そう告げた俺をいのは明らかな怒気を含んだ視線で睨む。
当然だ。大陸領土を賭けたこのゲーム、やる前から負けを認めるなんて事を出来るはずがない。
そしてそれは誰もが分かっていることであり、現に巫女も俺に問う。
「つまりなに?あてを説得して不戦勝でも狙っとると?」
「まぁ出来ればそうして欲しいところだな」
「そんなことが出来るはずなかろうがハゲザルがぁ!」
流石にいのが口を挟む。まぁ怒るのもその反応も予想通りだから何も感じないが。
「この交渉はこの男と巫女さんのもの。もし口を挟まれるというなら、ともにご退席致しますか?犬っころ」
「ぬっ!?」
俺はジブリールに一言も話すなとは言っていない。故にこのタイミングの援護は彼女の判断であり、正直助かる。
「で、どうだ?」
無言で俺の言葉の意味を考察する巫女。
彼女の目は何かを見透かしそうで落ち着かない。実際に嘘を看破できるわけだし、あながち間違ってもいないな。
「あんた、何が目的なん?」
「目的?だから降参してくれないかって」
「確かに嘘はついてへん。やけど手の内明かすだけで降伏してくれは、ちと欲張り過ぎやないの?何よりそれは、こっちに負ける可能性があるから頼むっていうてる様にしか聞こえんのよ」
確かに、どう考えても負けたくないから負けてくれと言っているみたいだな。
けど、あんたは一個見落としてる。いや一個だけじゃないが。
「俺は降伏してくれと頼む気ではあるが、一番は話し合いがしたいって言ってんだ」
「つまり?こちらに勝てない理由を見せつけてやろって魂胆やの?」
簡単に言えば俺が提示するこちらのカードが、既に東部連合に勝ちはないと悟らせる程のものなのかという事だ。
「それ以上は俺の条件を呑むって事でいいんだな」
「……」
ここで動揺してはならない。
体の微妙な動き、仕草。視線や流れる汗の一滴まで神経をすり減らしてでも隠せ。たった一つの挙動でも、
「なんや考えも読めんし、こっちにばっかり利があるのが怪しいんよ」
「互いに利がなきゃ交渉なんてしねぇよ」
「それもそうやね。ところでやけど……」
続きを口にする寸前、声色だけでなくこの場の雰囲気さえ一変させる程の圧が俺にかかる。
「――あんた、何もんなん?」
無意識に吹き出る冷汗を拭わずに俺は間を開けないように言葉を吐き出す。
「どういう意味だよ」
「いやな。『種のコマ』を賭けられたゲーム、それを仕掛ける相手に自陣の手札晒すって、ほんに理解できんのよ。だから聞いた、あんたは何もんなん?て」
詰まるな。どれだけ些細でもスキを見せるな。
自分に言い聞かせながら、俺は即席で応答を繋ぐ。
「知ってると思うが、俺とそれからエルキア国王女王は異世界人なんだよ」
「それについてはいのから聞いとったよ」
「つまり正確には俺たちは
「なんだとッ!?」
明らかな爆弾発言にいのが声を上げた。
ジブリールの証言ではあったが、根拠がないわけじゃない。
「つまり『種のコマ』がなくなろうとも」
「あんたらに影響はない、と?」
「だから負けてもいいとは言わないが、俺は面倒くさがりだからな。極力苦労は減らしたいんだよ」
嘘は言っていない。
「つまり、あんたは結果にはそこまでのこだわりはあらへん。やけどどうせなら楽に決着をつけたい、と」
「まぁそこらへんも含めての話し合い、って考えてるけどな」
嘘を見破る目を掻い潜る方法。
その一つは嘘ですらない嘘を言うこと。
俺や空たちはテトによってこの世界に呼ばれた。つまりこの世界ではイレギュラーな存在となる。そして恐らく作為的にではあるが、俺たちは
ジブリールは構造だけは似ていると言っていたが、テトの采配次第では俺たちの人権も
しかしそうでない可能性もあるのだ。なら、俺は後者の可能性を信じる。
二つの可能性があり、どっちが真実かなのかは分からない。ならばどちらの説を唱えようともそれは“嘘”にはならない。
敵を騙すにはまず味方からというが、最強の嘘は自分すら騙す。
それに自分自身にあれこれ言い訳すんのは、俺の得意技の一つだ。
「で、どうする?」
ここらが攻め時だろう。
これ以上時間をかけると気付かれる可能性がある。だからこそ催促で余裕を少しでも削る必要がある。
「ふむ……」
顎に手をやり思考する巫女。
そんな彼女は一度いのを見た後、こちらを向いて口を開く。
「少なくともこちらに致命的なデメリットはあらへん。むしろ手札を見せて貰えるんわ願ってもないこと。やからその申し出を受けるのは、やぶさかじゃあないなぁ」
「じゃあ、交渉成立でいいんだな?」
「ああ、ええよ」
釣れた。
いやまだ気は抜けない。むしろここからと言ってもいい。
俺が出した条件は、後出しでこそ効果がある。つまりこちらが提示した瞬間に手の平返しを喰らう可能性がかなりでかい。
互いに交渉成立を宣言したが、口約束にそこまでの拘束力はない。だからそこに絶対性をつくる必要がある。
「よしなら、ジャンケンをしよう」
「……はぁ?」
八幡VS巫女、後半へ続く。
なんか八幡が強過ぎる気がしますねぇ。
気のせいですね、そうですね。
都合の悪いことはスルーして、感想や考察、誤字報告お待ちしております。
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