どうも。
腐るなよ、江波界司です。
オリ展開って、難しいですね。
人のふんどしどころか土俵まで借りて相撲をとる身としてはなかなかの重労働に感じます。
愚痴です。
関係ないから本編なんだよ
なんの脈絡もなくジャンケンをしよう。
当然巫女さんも困惑している。
だがすぐに冷静さを取り戻してこちらを見る。この切り替えの早さとか、ほんとに百戦錬磨って感じだな。
「なんやゲームをする気はないみたいなこと言うとった割に、いきなりジャンケンて、どうゆうことやの?」
「別に何かを賭けて勝負しろってわけじゃねぇよ。ただ誓って欲しい」
「誓い?」
この世界で一番重く強い誓いは盟約。だからそれを利用すればいい。
「盟約に誓って、さっきの交渉がしたいって事だ」
その言葉に巫女の雰囲気が少し変わる。今までは小手調べだったのか、こちらに向いている敵意は一層濃く、疑いを隠さぬ目線は更に鋭い。だがそれ以外にも何か……
「つまり?」
「これからジャンケンをする。俺とあんたは両方がパーを出して引き分け。互いに交渉する際の約束を守るって条件を相手に出して、それを呑んで貰う」
「なるほど。ゲームを約束守るためだけに使うと。また随分な奇策やねぇ。けど、忘れてひんか?こっちが裏切ってあんただけ負ける可能性があるってこと」
「ああ、だからルール追加だ。パー以外を出したら負けとする」
「あんた、それはもう」
「そうだ、ゲームじゃない」
俺がこれからやるのはただの儀式だ。
絶対遵守のルールを使った完全なる契約。それこそがこのジャンケン。
「どうだ巫女さん」
「……」
だが裏を返せば、それだけ怪しい行動ということだ。
現に彼女もまだ完全にこちらに釣れてはいない。
次はどうするか。考えを巡らせるべく意識的に思考を始めると同時、彼女は口を開いた。
「ええよ」
へ?
今なんて言った?了承?
なぜだ?こんな怪しい取引、普通ならそう簡単には答えを出さない。これが今までのキャリアから導き出された巫女の答え?どういうこと?
「いいのか?」
「かまへんよ。どうせ互いに約束を破るつもりはない。ただ形式上その確信が欲しいだけやろ?なら別にやってもええ」
さも当然の様に言う巫女。
しかしそれが何とも胡散臭い。まさかこちらの狙いがバレた?いやだとしたらそもそも乗って来ることすらないはず。
「どうしたん?やるんやないの?」
「ああ、もうちょっと悩むと思ってただけだ」
しかし考えても仕方ない。
仮に彼女が俺を舐めてこんなことをしているなら、それはむしろチャンスと言える。
「じゃあ」
「「【盟約に誓って】」」
互いに宣言し、掛け声とともに開かれた手を前に出した。
「これで交渉成立やね」
「ああ」
結果は勿論引き分けのパー。これで俺は自軍の手札を開示、あちらは話し合いの時間を設けることが約束された。
「話し合いっちゅんは、すぐがええの?」
「できれば今日中に終わりたいな」
「そうか。なら順番はどうする気やの?」
「こっちが先に話す」
「別に気使う必要あらへんよ?双方が盟約で縛られてる以上、裏切りはないわけやし」
「単にその方が都合がいいだけだ」
そうか、と言って彼女は居住まいを正す。いつでも聞ける準備は整っているということだろう。
「じゃあこっちのカードを一つ教える」
一度場にいる全員の顔を見回してから、深呼吸を一つした後、俺は巫女に向かう。そして親指で指しながら
「俺たちの手札は――
巫女は聞いて目を見開く。当然俺に指されたジブリールも驚いているだろうが、大きなリアクションはない。
「貴様何をっ!?」
逆に大きく反応したのはいの。中腰になりながらこちらを威嚇する。
「なんだよ爺さん、不満か?」
「当たり前だっ!貴様らが
そりゃそうだ。
なんせ大使館に行った時もジブリールはいたんだからな。
けど
「いんや、いの。その怒りはお門違いや」
激昂するいのを止めたのは巫女の一声だった。流石に話が早いな。
「あんたは分かったか」
「まぁね。あんたは何も、あてらの知らん手札を見せるとは言うてない」
そういうことだ。俺が出した条件は手の内を晒すこと。しかしそれは何も東部連合に隠しているものとは言っていない。そしてどんなカードを教えるかもこちらが決めている。なら盟約にも違反していない。
「しかし、そんな屁理屈を」
「ああ、大したもんや。よもや
これが第二の方法。嘘ではなく、本当の事を情報を隠しながら伝える。
不明瞭な部分は嘘ではなく、ただ隠しているだけ。当然あちらからも感知はされない。深く追求される可能性はあったが、それを別の部分で隠しているため、今回はそれもなかった。
「まぁそういうことだ爺さん」
「あんた、いのと大使館で話してる時はあんまり活躍はせんかったらしいけど、なんや手慣れとるな。詐欺師にでも弟子入りしとるん?」
「当たらずとも遠からずってとこか」
今回の作戦、その殆どが空をベースに考えている。
騙し合い、探り合い、心理誘導に関してあいつ以上の手練はそういない。人間観察が得意な俺だ、当然あいつの事も見て学んでいる。
人の振り見て我が振り直せというが、ぼっちはその系統は得意なんだよ。ぼっちの学習能力舐めんよ。
「なかなかの手やったよ。不明瞭な部分をつくってあんたの目的に意識を向けさせ、手の内を晒すっちゅう方から注意をそらさせた、て感じかなぁ」
「マジでバレバレじゃねぇか」
「これも結果論よ」
巫女が言った通りだ。
これだけ怪しい取引となれば、当然相手の狙いが気になる。だからこそ引き換えの条件がお留守になる。
しかし……
「騙された、って割には余裕だな」
「まぁね。別に小一時間話し合うだけや。それに負けてくれ頼まれても聞く気もない。特に焦ることもないっちゅうことや。まぁなに?口説きに来たゆうなら、こっちもそれ相応の対応はするとこやけど」
「チキンハートの俺にそこまでのことはできねぇよ」
「これだけのギャンブルしといてチキンはないやろ」
確かに確実性というならかなり低い手。普通は思いついてもやらない。なら、なんで俺はこんなことを?
いやそんな事を考えてる場合じゃない。
「まぁとりあえずだ」
「そやね、ならちゃっちゃと話そか。二人には退場してもらって……」
「いや退場するのは、三人だ」
三度訪れる驚き故の静寂。だが彼女だけは未だペースを崩さない。
「どういうことや?」
「俺はなにも、“あんた”と話し合うとは言ってないだろ」
また裏をかかれたばかりにいのは表情を変える。
「なんや釣れないなぁ」
「そういうのはいい、分かってたんだろ?」
「ある程度予想は、なぁ」
やはりバレていたか。彼女程の者がこんな言葉遊びに二回も引っかかるわけがない。
巫女は俺から目線を外して、俺たちが入って来たとは別の方角。その戸に向かって声をかける。
「いづな、お呼びや」
巫女の視線の先、その戸が開かれて黒髪猫耳の少女が現れる。
「何から何までって感じだな」
「そうかねぇ。あくまで可能性を潰していっただけやけど」
俺が東部連合で面識を持っているのは三人だ。
そして今いるジブリールを合わせて三人を退場させるとすれば、残りは自ずと絞られてくるということか。
「貴様、いづなに何を言うつもりだっ」
「少なくともあんたみたいな罵詈雑言はないから安心しろ」
「さて役者も揃うたところやし、改めてかねぇ」
「ああ、そうだな。いづなと一対一で話す。部屋は別にどこでもいいけど」
「時間は?」
「三十分あればいい」
「そうか、なら隣の部屋を使い。もちろんあてらはここにおる、そこの
「盟約で縛ってる。まぁジブリールはここに置いてくけどな」
俺がジブリールに視線を送ると、彼女はこちらを見ながら頷いた。あいつ本当に頭がいいから助かるな。どっかの猫型ロボットとはえらい違いだ。
アホの子も青の子もな。
「じゃあいづな、いいか?」
目を合わせて頷くいづな。その目には、やはり空たちに向けたものと同じ強い敵意が見える。
俺たちは空いた戸から部屋を移動し、すぐに戸を閉めた。
―いの side―
あのハゲザル、何を考えている。巫女様を前にしながらいづなと対話。全くもって読めん。
「それにしても、ホンマに面白い子やねぇ」
「ここまでされて賞賛とは、何をお考えで?」
「そんに怖い顔せんでも、裏はないよ?ただの感想や」
「騙されたにしては随分と上機嫌のようですが。まぁいいでしょう。それと老犬、聞き耳を立てても無駄だと教えておきます、防音魔法を展開しているので」
「……」
読まれていた――いや、当然の配慮か。奴らは我らの特性を知っていたなら備えは怠るまい。
「なんや準備がええな」
「獅子は兎を狩るのにも全力を、との言葉をご存知で?」
「面白いなぁ。ならあてらは狩られる兎やと?」
「少なくとも獅子のように気高くは見えませんね」
「ハゲザルに仕える身でよく言うなぁ」
「そのサルにすら遅れをとるなら、指し詰めあなた方は地を這う鼠でしょうか」
「負けて従ったと違うん?あんたも羽のない飛べぬ鳥、不様さはどっちが上やろね」
「飛べなければ走る、走れなければ泳ぐまでのこと」
「負け惜しみかなんかなん?」
「いえ覚悟の話にございます。もし私が地に落ちた鳥なら、他の方法で道を進むと」
「なんやよう分からんな」
「既に地に伏せている鼠には少々難しかったようで。学ぶことはおすすめします」
「ほな、あんたはサルから何かを学んだと?」
「それはあなたもいずれ知るでしょう。我がマスターと、その従者の力を」
だが、巫女様のあの表情は一体?
あの男を評価し、その下に仕える
―いの side out―
「八、なんの用だ、です」
「怖い顔すんなよ」
ジブリールや巫女のいる部屋の隣、音声はジブリールがどうにかしてくれるだろう。俺は気兼ねなくいづなと話せる。
「いづな、これからお前は空たちとゲームをするよな?」
「それがなんだ、です」
「それ、棄権してくれないか?」
「何言ってんだ、です。そんな事出来るわけねぇだろ、です」
だろうな、期待してなかったから大丈夫。
さて、ここからが本題だな。
意図的に声を低くして、俺は彼女の名前を呼ぶ。
「お前、俺たちを殺す気か?」
え?と口からこぼれたいづな。その表情には驚きよりも怯えがある。
「『種のコマ』が無くなる、それがどんなことを意味するかはいづななら分かるだろ」
「……奴隷になる、です……」
「つまり生物的な死を意味する。そしてそれを実行しようとしているのは、いづな」
「なっ!それはちげぇ、ですっ!」
「確かに、『種のコマ』を賭けたのは空だ。けどその空たちとゲームで戦って、仮にもだが倒すのは、誰だ?」
「っ!……」
いづなは俯いて口を紡ぐ。彼女には辛い現実だろう。
俺がやっているのは脅迫だ。それも十歳にもならない少女を相手に数万単位の命を天秤にかけさせているのだから質が悪い。
「……でも、負けねぇ、です……」
だが彼女は、まだ信念を曲げない。たとえ相手を事実的に殺すことになろうとも。
本来これは彼女のような、幼い少女がする決断じゃない。
そう、彼女もまた異常なのだ。彼女はこのふざけた世界の被害者で、その身に余る程の重荷を自ら背負って戦っているのだ。
そしてその重荷とはこのゲームの賭け金。
「なぁいづな、お前自分が負けたら
「っ!?」
負ければ大陸領土を取られる。それは沢山の国民を支配されることと変わらない。当然狭い見方と偏見があれば、簡単に想像できる結末だ。
「空たちはそんな事しねぇから安心しろよ」
「そんなのっ!信じれるわけねぇだろ、です」
「まぁ確かにそうだな」
いつものあいつらを見てたら分かるけど、交渉や脅迫するあいつらしか知らなければそう考えるもの無理はない。
「まぁすぐに信じろとは言わねぇよ。だが少なくともそれはお前が気にすることじゃない」
「何言ってんだ、です。いづながやる事はいづなの責任だろ、です」
「そうだ、お前のやる事はお前の責任だ。けど、その先は違うだろ」
「その……先……?」
「この世界は普通殺し合いは出来ないようになってる。だから
「なんで、いづなが負けることが決まってんだ、です」
「お前じゃ勝てねぇからだよ」
「そんなの分かんねぇだろ、です」
「いや」
わかる。いづなは
「他のこと気にしてる今のいづなじゃ、ゲームの事だけ考えてる
負けたらどうするか、どうなるか。国の皆は、相手は。
そんなことを頭の片隅にでも考えている内は、あいつらには勝てない。何せあの二人は、勝つことしか考えてないのだから。負ける気など毛頭ない、万に一つも負けはない、全てを勝つために賭けれる。
そんな相手に優し過ぎる彼女が、ゲームで勝てるわけがない。
「だから、手を引け。もし空たちが何か悪業をするなら、俺が止めるとも言っておく」
いづなは答えない。
分かっている、これがどれだけ無茶な要求なのかは。
彼女にとってゲームとは戦い、誰かを倒して誰かを守るためのもの。それを守れないから諦めろと、そんな事が彼女に出来るはずがないのだ。
「……いやだ、です」
長い思考を止めて、いづなはその覚悟を目に宿らせながら俺に向かう。しかしその表情にはまだ固まらぬ思考と苦悩が見て取れる。まだ心のどこかで迷っているのだ、どちらが正しいのかと。
彼女はその答えが見つかるまで悩み続けるだろう。勝つことと、負けること、それで得るもの、失うもの、その先の結末。これからするゲームでいづなはそれを知れるだろうか。
それは俺には分からない。だがこうして話した事に意味がある。
「いづな、もし本当に空たちとゲームをやるなら、生半可な気持ちじゃただ負けるだけだぞ」
歯ぎしりする程歯を噛み締め、血が出るのではないかと思う程拳を握り、彼女はまだ出ぬ答えに悩みながら、それでも言う。
「言われるまでもねぇ、です」
強い子だ。優しい子だ。そして悲しい子だ。
今までと同じ、しかし今までとは遥かに違う重みの覚悟を彼女は決めなければならない。
なぜなら彼女は知ってしまったから。相手を、そしてその先を。
自らの行動によって起こる事がたった一つの結末だけでは終わらないことを。
「覚悟があるやつ、守るべきものがあるやつは強い」
「いきなりなんだ、です」
「けどな、何かを背負ったまま戦って、その荷物を全部失うのはただの馬鹿だ」
「……何が言いてぇか分かんねぇ、です」
「まだ難しかったか」
「……」
いや彼女にはわかるはずだ。今まで民の命を背負ってゲームをしてきた彼女なら。
――守るべきもの、か……
文才が欲しい(切実)
誤字報告ありがとうございます。
未だに無くならない辺り進歩がないですよね。
マッ缶が手に入ったため今日は清々しい気分です。
感想、考察、誤字報告よろしくお願いします。
番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?
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