ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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こんにちは、先・輩。
どうも。
あざとすは勘弁、江波界司です。
早いもので30話、お気に入りも1000件を超えました。
なかなか進まない物語……それでも書きます終わるまで。
と、いうわけで本編だにゃ〜。


されど彼と彼女は未だ交わらない

 妹とは不思議なものである。

「リアル妹なんて」とよく聞くが、待って欲しい。それはそいつの見方の問題ではないだろうか。

 例えば恋人。いずれ結婚して家族を目指す間柄だからこそ、相手に対して優しく深く理解し付き合える。

 ならば最初から家族の妹はそれを超える存在ではないか。家族を愛するのは当たり前のことで、だからこそ妹を愛するのも当たり前な事なのだ。

 つまり全世界の妹のいる兄、姉はシスコンであり、それは正しく、あるべき姿であると言える。

 やはり俺がシスコンなのは間違っていない。

 

「さぁ妹について語り合うにゃっ!」

「パス」

「にゃ!?」

 

 しかしどうだ?

 なんで俺は初対面の怪しい奴に小町の良さを伝えなければならないのだ。

 

「必要性が感じられん」

 

 当たり前だ。だってあの世界の妹小町だぞ?それはもう異世界にすら通用するレベル。そうなれば語り合う間でもなく『小町こそ至高』という結論が出る。

 

「だから語り合う必要なし、証明終了」

 

「何も言ってないのに何かの結論が出たにゃ……」

 

 あれ?言ってなかった?まぁいいわ。

 つーか早くジブリール来ねぇかな、帰りたいんだけど。

 ジブリールの用事というのがどんなものなのかは知らないが、まさか俺をここに長時間放置する程のものだとは考え……れるから怖いな。

「まったく〜本当にジブちゃんとはどんな関係なんだにゃ」

 あとこいつ、しつこいな。それはさっき言ったろうに。

 アホリールがうざったいので適当に言葉を返しながら、既に三十分は経っている。ハァ……帰りたい。

「ジブリールが言うには同業者らしい」

「でもジブちゃんがそんなどうでもいい奴を連れてくるはずないにゃ」

「嫌がらせなんだと」

「ジブちゃんを倒した人類種(イマニティ)……の従者って、ジブちゃんがいれば完璧いらない子にゃ。なのになんで君がここに来るにゃ」

 なんで俺はアホの子に罵倒されなきゃならないのか。

「てかジブリールが天翼種(フリューゲル)の用事があるって言ってたのに、お前はここにいていいのかよ」

 一応アホの子でも天翼種(フリューゲル)、当然ジブリールの用事に全く無関係とはならないだろう。

 アホリールは俺の言葉に笑顔で、むしろ胸を張りながら答える。

 

「ああ、心配ないにゃ。うちが行くまで会議は始まらないにゃ」

「おい、ふざけんなよ」

 

 

 

 

 

 

 

「お〜やっと話す気になったにゃ?じゃあ早速ジブちゃんの良さについて……」

「じゃなくてさっさと会議に行けよアホリール」

「誰がアホリールにゃ!うちはアズリールにゃ、ジブちゃんのお姉ちゃんにゃ!」

 なんかこいつの言うのこと全てが信用できなくなってきた。

「なんでジブリールの姉がアホなんだよ」

「アホじゃないにゃ。うちは天翼種(フリューゲル)の全翼代理者、つまりジブちゃんの姉にふさわしい存在にゃ」

 嘘くせぇ。なんでこんな奴に全権任せてんの?空たちを全権代理者にした人類が言うことじゃないが、大丈夫かよ天翼種(フリューゲル)

「ん〜でも、ここまで完璧に否定するってことは、君は本当にジブちゃんのマスターじゃないんじゃないかにゃ?」

「だからずっとそう言ってんだろ」

「それはそうにゃ、ジブちゃんが君みたいな平凡な人類種(イマニティ)に負けるはずも仕えるはずもないにゃ」

 喧嘩売ってんのかこいつ。

「でもそれだとジブちゃんが君を呼んだ理由が本当に分からないにゃ」

「だから嫌がらせで連れて来られたって言ってんだろ」

「そこが分からないにゃ」

 は?

「仮に、億が一ジブちゃんがマスターと認めた相手がいるとしてにゃ」

 どんだけ低い確率なんだよ。

 

「そのマスターですらない相手にジブちゃんが気を回す事なんて考えられないにゃ」

 

 アズリールの言葉にはそれなりの説得力があった。

 確かにジブリールは主に対して従順で、マスターへの愛は惜しみない。あいつはマスター資本主義なのだから、当たり前と言えば当たり前だ。

 しかしそんな奴が俺に特別な感情を寄せているだと?

 いや、それだけはないとはっきり言える。

 あいつが求めているのは『答え』であって、あいつが敬愛するのはそれを示すマスター。そこに俺が入り込む隙はない。

 もし仮にジブリールが俺に何かしらの感情を向けているとしたら、それは無知故の無力さや、求めるが手に入れることの出来ない不器用さ、そんな自己嫌悪に近い悪感情に他ならない。

 誰もが他人以上に自分を受け入れられない。それを受け入れるようになるのが成長ならば四百年もの間、変化のない人生を送り続けた彼女がその境地にいるはずがない。

「あんたの言うことも一理あるが、気の回し方にも種類があることを見落としてねぇか?」

「にゃ?」

「あいつが俺に向けてる感情は、愛とか言う綺麗なもんじゃねぇよ」

 そう、あれは親愛でも敬愛でも、ましてや純愛でもない、もっとおぞましい何かだ。俺にはその正体が何なのかは分からない。けれども、それが『本物』ではないことだけは知っている。

「またまた〜実はジブちゃんと色々あったんだにゃ?そろそろ教えてくれてもい……」

 

「理解が早くて助かりますね、暇ガヤサン?」

 

 今いる場所より遥か上より、聞き慣れた皮肉混じりの声が館内に響く。

「ジブリールか」

「随分と仲が良いみたいですし、どうです?もう二百年ほどここにいますか?」

天翼種(フリューゲル)限定のブラックジョークはやめろ。俺のいた所でも平均寿命は八十前後だぞ」

 頭のおかしい終身刑を提案するジブリールに俺の言葉が届くとほぼ同時、激しい暴風をつくりながら目の前にいた存在がジブリールへと突撃する。

「ジブちゃんだにゃ〜!」

「それで本は見つかりましたか?」

 アズリールのジェット機越えの高速抱擁を躱しながらジブリールは淡々と聞いてくる。

 当然ブレーキを考えていなかったアホリールは天井へ頭から突き刺さった。

「やっぱわざとかアレ」

「私がそんなヘマをすると?今日は嫌がらせで呼んでいると予め言っていたはずですが」

「了承した覚えはねぇ」

「答えは聞いてません」

「さいで」

 まぁ別にそれはいいんだけど。

「お前の姉ちゃん、頭から埋まってるけどいいの?」

「誰のことでしょうか?」

「いやそこの」

「誰のことでしょうか?」

「だか……」

「誰のことでしょうか?」

 聞く気ないのな。拒絶の目とオーラがすごい、そろそろキレんじゃね?もしくはもうキレてる。

「ところでアズリール先輩はどこですか?」

「いやそいつだよそいつ」

「先・輩はどこですか?」

 頑なに姉ではないと。

「お前より上で頭天井に埋めてる」

「ああここにいましたか」

「ひどいにゃ〜!」

 強引に頭を引き抜きながらアズリールが嘆いた。

「アズリール先輩、会議で決を取るので早く来てください」

「にゃ!?なんで会議が始まってるにゃ!?」

 むしろ終わりに差し掛かってるな。

「ジブリール、そいつ天翼種(フリューゲル)の全権代理者じゃねえのか?」

「全然違います。会議に来ていない時点、いえここにあの男を放置させに来た時点で先輩がここにいたのは知っていましたが、どうせ会議の結果も目に見えていたので無視させて頂きました」

 俺への説明は全くせず、ジブリールは先輩の方を見て弁明している。いやただの報告か?

「なんかジブちゃんが冷たいにゃ。誰のせいにゃ、そいつかにゃ」

「少なくともマスターのせいではないことだけは言えます」

「それは暗に俺が悪いと言いたいのか」

「被害妄想が過ぎると思いますよ、自意識過剰ガヤさん?」

「語呂悪いし。てかなんで雪ノ下から言われたあだ名知ってんだよ」

「全く存じ上げませんが、事実だからなのでは?」

「自意識が高いのは認めるがそれを揶揄されるのは勘弁して欲しい」

「随分勝手ですね」

「なんだ〜仲いいにゃ〜」

「「それはない(です)」」

「ほら〜息ぴったりにゃ〜」

 デジャブ感があるからやだな。

 てか色々と聞きたいことがあり過ぎるんだが、えっとまずは。

「てか結局お前らって姉妹なの?」

「もちろんにゃ」

「違います」

 おう、息ぴったり。ほぼ同時に言った二人、その片方のジブリールはアネリールを睨む。

「そもそも天翼種(フリューゲル)に繁殖はありません。単に生まれが早いか遅いかの差です」

「つまり親は同じ、だから先に生まれたうちは後に生まれたジブちゃんのお姉ちゃんにゃ」

 なるほど、分からん。

「えっと?」

「アズリール先輩が私の姉ではないという事実さえ伝われば問題はありません」

「へぇ」

 つまりアズリールはアネリールではなくアホリールだと。俺何言ってんだろ。

「じゃあアホリールが全権代理者とかそうじゃないとかは?」

「それは、マスターがいる次の機会にでも」

「あーそう」

「さっきからうちが蚊帳の外にゃ……ってなんでアホリールでジブちゃんに伝わってるにゃっ!」

「アホ……アズリール先輩、そろそろ会議に」

「ジブちゃん今なんて言いかけたにゃ?」

「早く行きましょう」

「ねぇ?ジブちゃん?」

 それに答えることなくジブリールは姿を消す。アズリールもそれを追うように転移して行った。

 することもないし、色々あって吹っ飛んだ本を拾ってそれを読み始める。

 ……帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 ふと浮かんだ顔は雪ノ下雪乃だった。

 自分の持つ信じている何かを貫きながら、たとえ衝突しても曲げない強さのある女の子。そんな姿が、誰かに似ていたのか。あるいはそんな姿に誰が似ていたのか。

 いや似ていない、俺も彼女も全く似ていない。

 ただ、俺は雪ノ下のあり方が強く、そして気高く見えた。自分を曲げず真っ直ぐに進むその姿は美しくさえあった。

 そしてそれは俺にはないものだ。

 何か一つを信じて進み、何があっても曲げない意志をもつ。そんな事ができていたら、俺はここにはいない。

 

『うまく言えなくてもどかしいのだけれど……あなたのそのやり方、とても嫌い』

 

 あの真っ直ぐで美しい彼女にとって、俺のやり方は酷く歪で醜く見えたのかもしれない。

 しかしそんな事も、俺が思うただの推測で、推察で、根拠もなければ形もない、ただの幻。そんなものに意味はなく、俺が求めたものには程遠い。

 

 あの時、俺にはそれ以外の方法がなかった。それはいつものことで、当然のことで、だからあの結果も俺の責任だ。

 ならばあの言葉も、あの涙も、あの変わりつつある空間も、全ては俺の責任で、けれどそこに俺の意志はあったのか……

 俺は未だに、どこかで動く理由を探している。

 俺が何かをする理由、俺があの場所にいる理由、そしてあの場所を守る理由。そんな見つかるはずもないものを俺はまだ探している。

 そして、そんな馬鹿馬鹿しく滑稽なことを、四百年繰り返したやつがいる。そいつはまだそれを見つけることができずにいる。

 

 俺は多分、彼女の求める『何か』を知っている。けれどそれは誰かに貰うものじゃない。それは自分で解くものだから。

 彼女が真に求めているのは問いに対する『答え』ではなく、『回答』だ。正しい結果や結末ではなく、己で考え解いて見つけた『何か』だ。

 もし彼女がそれを探すというなら、俺はそれに手を貸す。『回答』を教えるのではなく、まだ知らぬ『何か』を見つける手助けをする。その代わりに、俺が求める『本物』を見つけるために力を借りる。『  』(あいつら)と行動を共にすることで、見つかるかもしれない『もの』のために、俺と彼女は互いを利用し合う。

 故に、俺と彼女は……『本物』になりえない。

 

 

 

 

 

 

 ―ジブリール side―

 

 

 

 きっと誰でも良かった。

 それが誰であれ、得るものが何であれ、私の見る結末はきっと変わらないから。

 なら、なぜ私はこんなことを?

 ドラちゃんはあの時、それは主従愛だと言いましたね。では本当の愛とは?普通の愛とは?

 分からない、到底理解できない。

 もしも、この理解しえないものこそ私の探す『答え』を示すものだとしたら、きっと私では見つけられない。それは恐らく、マスターと共にいても。

 マスターは素晴らしいお方。きっと私の“求めた”『答え』を示してくれる存在。しかし、マスターでは私の“求める”『答え』を示してはくれない。これは主に対する侮蔑でも軽蔑でもない。私はマスターを裏切りはしない、できない。

 だから、私が彼に求めることはない。それを求めるべきところに私はいない。それを求める権利は今の私にはない。

 

 私と彼は似ていた。

 どちらも誰にも理解されず、それでも何かを欲し続けている。それは形もない漠然とした何かで、それ以上を知ることは叶わない。

 そして今、私と彼はそれを知る手掛かりを得た。私も彼もマスターと共に進む道を選び、欲する何かを求めると誓った。

 そんな二人の間には一つの約束がある。『目的のために、互いを信用する』、それが私と彼の関係。

 私はマスターに仕える。それは盟約によって結ばれた絶対遵守の契約。

 私は彼を利用し、彼に利用される。それは互いに遂行も反故も許された拘束力のない契約。

 どちらを優先するかなど考えるまでもない。

 しかしその先にある『答え』は、私の求めるものではない。否、求めているものではない。

 故に、私は彼に……『答え』を欲する。

 

 

 

 ―ジブリール side out―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人が仕事をして来たというのに、いいご身分ですね」

 

 暗い視界のなか、そんな声が鼓膜に届く。

 ジブリールか?なんであいつがここに?いや待て、ここはどこだ?

 霞む意識が徐々に光を取り込み始め、今いる状況と状態を知るに至る。

 顔の上に乗った本をどけて、俺は前方に視線を合わせた。

 そこには頭上に光輪を浮かせた天使、ではなくジブリールがいた。

「あいにく俺の将来は専業主夫だからな、仕事は家事であってそれ以外はない」

「それは文献にあったヒモというものでは?」

 地に横になっている俺と、それを空中から見下ろすジブリール。

 俺には彼女がクスっと小さく笑ったように見えた。

「既視感がございますね」

「あの時は俺寝てないけどな」

 あの時とは空が消え、白に俺が散々なことを言った時のことだ。

「もう終わったのか?用事」

「ご希望とあらば私一人で帰りますが」

「希望する、連れてけ」

 言いながら俺は立ち上がる。

 なんか最近こいつと軽口言い合うの増えたな。

「それでは」

「おう」

 恒例となった転移で現在の我が家、エルキア王城を目指す。

 そういえば、結局俺は何しに来たのだろうか。

 

 

 

 




あれ?これってラブコメか?
やはり俺の(書く)青春ラブコメはまちがっている。
どうしてもジブリール出すと会話増やしたくなって話が進まないですね、仕方ないです。
だって楽しいんだもん。
感情、誤字報告お待ちしております。

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