ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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倍返しだぁ〜!
どうも。
これでEz8想像した人とは気が合いそう、江波界司です。
銃身が焼き切れるまで撃ち続けたいこの頃です。
気にせず本編だよってエバはエバは本当のことを告げてみたり。


彼は動き出し彼女は迷いを捨てる

 既に日は落ち、周囲は完全に夜となっている。

 現代的な町の一角、街灯で照らされた公園。そこには三人の影が見えた。

「ちくしょう……白、こっからはアドリブだぞ」

「……うん」

「あの男、こんな時にすら姿を見せないとは……次会ったらどうして差し上げましょうか」

 明らかに独り言なのに被害者が出そうなセリフが聞こえたが、気の所為だな、気にしたら負けだ。

 俺は律儀に公園の入り口から彼らに近付いていく。

「おう」

「八か」

「ようやく来ましたか」

 そう言った二人は俺に銃口を向ける。え、なんで?

「おい、まてタイムっ」

 だが二人が静止することはなく、複数の弾が俺に向かって発射された。

「回避行動。やはり寝返っていましたか」

「よしジブリール、周囲警戒。八は俺が撃っとく」

「了解」

「まてまてまて、違うから。まだ俺いづなと会ってもないから」

 一応姿は見たけど、あれは一方的に見ただけで会ったとは言わないからな。

「そんなことを信じるとでも?」

「寝返ってたらこんな正気な訳ないだろ」

「んーまぁそうか」

「一応撃っておきましょう」

「だからやめろってのっ」

 どうにか弾を躱す。てか、普通はよけれんだろこんなの。

「八お前どうやって弾避けたんだよ。なに?獣人種(ワービースト)か何かなの?」

「いや向けられた銃口から体逸らしてるだけだが」

 ぼっちは視線に敏感なんだよ。だから相手の視線からどこに撃つかを推測することも不可能じゃない。まぁ普通にやったらそんな余裕ないからまず無理だけど。

「まぁそれはともかく、どんな調子だ?」

「察しろよ八」

 うん、だよね。

 現在白は公園の砂を黒板替わりに何やら数式を並べている。

 そして三人ともゲーム開始の時より装備している服が少ない。何度か着弾を防ぐために使ったのだろう。そう考えるといづなの着物の厚着も一種の対策みたいになってんのかな。

「作戦とかは?」

「今は白がやってくれてる。それでも順調とは言えねぇ」

「白ならお前ら三人でも勝てる手を出せるのか?」

「出来る。俺にできないことは白ができた。今までも、これからもそうだ」

 ノータイムで返した空。彼の目には確信めいた何が覗けた。

 なら、俺がすべきことは決まったな。

「んじゃ、もうちょい時間稼ぎして来る」

「一人でか?」

「その方がいいって言ったろ」

 こいつらならゲームに負けることはない。それは例えチートを相手が使って来てもだ。彼らはその上で正攻法でねじ伏せる。

 それに対して俺は、違う。彼らが正攻法なら俺は邪道をいく。もっと汚く、卑屈に最低に陰湿に。

 俺が出来るのはそれだけだから。

「何か策が?」

「まぁねぇことはねぇな」

「なら、勝てると?」

「そりゃ無理だ」

「それでは、ただ相手の手駒になりに行くので?」

「まぁ形の上では、な」

 よくよく考えたらバカみたいだな。多分四人でかかった方が勝率は高いかもしれん。

 けど、と俺はジブリールに告げる。

 

「俺は裏切らねぇ」

 

 いつかも言った一言。

 彼女はそれ以上追求することはなかった。

「んじゃ」

 いい残して俺は公園を後にした。

 今回のゲームは、はっきり言って負けたら俺にも被害がくる。それも人権完全消滅とかシャレにならない。

 俺が動く理由はある。そして勝つ理由もある。

 勝つのはあいつらの役目だ。

 

 だから、負けるのは俺の役目だ。

 

 

 

 

 ―other side―

 

 

 

 道路を照らす電灯。しかしその数と光の強さから、そこまでの見通しの良さは期待できない。

 そんな薄暗い道を歩く影が一つ。中肉中背で少し猫背、アホ毛のたった男がたった一人でいる。

 そしてその姿を注視している二人。一人はゲームプレイヤーのいづな。公園から彼が離れた時点からあとをつけている彼女。

 もう一人はゲームマスターのいの。常に相手を含む全プレイヤーを把握している彼だ。

 この二人が警戒していた相手は、当初は天翼種(フリューゲル)のジブリールだった。いくら制限を付けたとはいえ、その身体能力は異質。現に何度か仕掛けた攻撃も、空や白を仕留めるまで至っていないのは彼女の力が大きい。

 しかしだ。相手側からのファーストアタックから、いづなはその警戒対象を増やしている。つまり、空と白も警戒に値すると評価した。

 だからこそ現在、この中では一番目立ったところのない八幡を狙っている。例え一人でも増えれば、盾にも囮にも使える。あの三人のうち、誰か一人でも仲間に入れれるだけでも十分。なら、ここで八幡を手駒に入れるのが一番効率的といえる。

 

「いづな、サシでやろう」

 

 いづなが隙を伺う中、八幡が周囲に聞こえるように声を上げた。

 当然いづなは警戒する。彼のセリフは見られていること、最低でも聞こえていることを前提にしている。なら既に存在はバレていることになるからだ。

 

「言っとくが、俺は空と白に引き分けた男だぞ。あんまり舐めんなよ」

 

 いのはその言葉に反応を示すことはなかった。

 しかしいづなは違う。いづなは彼が自分に会いに来た時に言ったセリフを思い出す。

「いづなじゃ、あいつらには勝てねぇ、です」

 この二つのセリフを繋げるなら、彼は空と白と戦ったことがある。そしてそれに引き分けたことがあるとなる。

 それが事実かブラフか、それを確かめる術は今のいづなにはない。いや必要がないのだ。どちらにせよ、八幡が彼女にとって警戒するべき対象だということには違いないのだから。

 いづなは八幡の背後に降りるが、距離は数メートル程ある。迂闊に近付くのを避けたのは、警戒心故だ。

 できる限り消した着地音。だがその気配だけで八幡はいづなの存在を認め、こちらを向いてきた。

 

「よう」

 

 八幡の声掛けに、いづなは応えず銃を構える。

 彼の行動の全てに警戒しながら、彼女は引き金を引いた。

 いづなの撃った桃色の弾丸、それが八幡を捉えることはなく、彼は近くにあったビルへと逃げていった。

 もし、八幡の行動が陽動と見るなら早々に片を付ける必要がある。

「逃がさねぇ、です」

 八幡が逃げたのは窓ガラスの割れた廃墟のようなビルだった。しかしいづなは何も怯むことはない。

 光が殆どない、背の低いビルへといづなは足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 暗く視界の悪い建物。床にはガラス片が散乱し、一歩先に進む度に足音とは違う音が鳴る。

「八はどこだ、です」

 廃墟の中にはいづなの踏み出す音だけが響く。

 この暗さでは、姿をまともに捉えることは出来ない。当然隠れるならもってこい、時間稼ぎが目的なら相当な好条件だ。姿が見えない相手に銃弾を当てるのは至難である。

「このくれぇ関係ねぇ、です」

 だがそれは人類なら、である。

 獣人種(ワービースト)の視力はある程度なら夜目も効く。それに聴力を駆使して相手の居場所を探ることも可能。普通に考えれば八幡が不利なのは目に見えている。

 どこに隠れているか分からない以上、いづなは耳を頼りに八幡を探す。集中した鼓膜に、僅かな心音が聞こえる。

「見つけた、です」

 前方に走りながら八幡を目指すいづな。だが進行方向から聞こえる何かが弾ける音。

 音の正体は、八幡が放った弾丸だった。

 間一髪躱したいづなは、再び聴力に集中する。こちらの動きに気付いたのだろう、八幡はビルの奥へと走って行く。

 その方角目掛けて数発の弾を撃つが、着弾はなかった。

 そしてそこからは視界ゼロの鬼ごっことなった。

 追ういづなと逃げる八幡。いづなが距離を詰めれば、すぐに八幡は奥へと逃げる。まるでこちらの動きを察知しているかのようだといづなは感じ始める。

 本来ならそんなことはできるはずがない。獣人種(ワービースト)ならまだしも、普通の人類種(イマニティ)の聴力で相手の場所を察知するなど不可能なはずなのだ。

 そう、普通なら出来ない。普通なら、だ。

 そしてここは特殊な条件下であることにいづなは気付く。

「ガラスの音で察知してんのか、です」

 改めて考えるとおかしい。このゲームのフィールドは自由に設定できる。なのにたった一つのビルだけをいのが廃墟にした意図が分からない。そうなればここは八幡が作ったフィールドということになる。

 入った時に気付いた散乱したガラス片は足音を聞こえやすくするためのもの。だから八幡はこっちより先に動いて逃げることが出来ている。

 だがしかし、といづなは考える。

 もしこのままのルートで八幡が逃げるとすれば、追い詰められるのは彼の方だ。

『いづな』

『分かってる、です』

 周りの音とは別の周波で耳に届いたいのの声。それが意味することは分かっている。

 いづなは再び走り出す。わざと足音を大きくたて、八幡を威圧するように。

 

 

 

 

 

「追い詰めたぞ、です」

 息をきらす八幡。その対面にはいづなが銃を構えている。壁を背にした彼にもう逃げ道はなく、逃走通路はいづなが塞いでいる部屋の入口しか残されていない。窓もないこの狭い部屋から逃げるには、いづなとの撃ち合いに勝つ以外には方法がないのだ。

 更に暗い部屋では八幡よりも夜目が効くいづなの方が有利。時間稼ぎという八幡の目的は達したが、いづなの配下になることは明白だった。

 それはゲーム画面を見ている観客、そしてステフやクラミーも否定することが出来なかった。

 だが、追い詰められて尚微かに笑う八幡の表情がいづなの目には映った。

 

「いづな、覚悟は決まったか?」

「……負けねぇ、です」

「そうか……」

 

 撹乱のつもりなら、それには乗らない。いづなは端的に返す。

 

獣人種(ワービースト)って目がいいんだよなぁ?」

 

 苦し紛れの時間稼ぎか、八幡は顔も見えないいづなに話しかける。当然彼女は応えない。気を逸らされるための口車に乗って隙を見せる訳にはいかい。

(空も白も、そして八も油断して勝てる相手じゃねぇ、です。)

 敵ながらもその評価は揺るがない。そんな心中をよそに八幡は続ける。

 

「そんな奴なら、強い光には、人類(俺達)より敏感だよな?」

「っ!?」

 

 視界もはっきりしない中、八幡は銃を持った右手を後ろの壁に叩きつける。そして何かを押した音とともに、暗く狭い部屋が照明によって照らされる。

 真っ暗な空間に慣れた目が、突如強い光を受ければ眩む。

 狭い上に床にばら撒かれたガラス片が更に光を反射して、照明をより強く輝かせる。

 暗視しながら八幡を見ていたいづなは、思わず目を隠す。しかし最初から目を閉じていた八幡が動かないわけがない。

(来る、です!)

 踏み出された足音が、八幡の進行を告げる。

 いづなの耳が捉えたのは二発の発射音。眩む目を微かに開きながらいづなは体を横にずらす。

 だが八幡の弾はいづなに対して向かってすらいない。

「なっ!?」

 いづなが薄目で見たのは右手に持った銃を隣の壁に向けている八幡の姿だった。

(銃弾の発射音はフェイク、です!?)

 いづなは咄嗟に八幡に銃を向けた。フェイクを入れたなら本命が来る。その本能的な反射行動が、いち早く状況に対応した。

 銃を持っていない八幡の左手からボムが投げられ、いづなは二発の銃弾を撃つ。

 一発目がボムを捉え、その場で爆風と爆煙を出しながらボムは無効化された。

 

 そして二発の銃弾が八幡の額を撃ち抜く。

 

 その様子をスクリーンで見ていた会場中が息を呑んだ。ステフもクラミーも、そしていのも声を上げない。

 いくらゲームを見るカメラがあっても爆煙の中では機能せず、八幡の安否を確認することは出来ない。

 だが、密かにある確信を得た者が一人、静かに画面を見つめていた。

 

 中々晴れない爆煙のなか、いづなは息をきらす。たった数分の間に神経を大きくすり減らした。だがそれは八幡も同じだろうと彼女は思う。

 そして小さな入口から煙が逃げ、ようやく開けた視界。

 

 いづなの先には、敵意を完全に見せない八幡がいた。

 

 

 ―other side out―

 

 

 

 

 

 

 




現実逃避だぁ〜。
はいはい、今日も現実逃避で更新です。
本当に私は何をしているんでしょうか。
八幡が頭使って戦いましたねぇ。基本的に八幡は頭がいい方だと勝手に思っているので、今回はこんな感じで。
そういえばこの作品って残酷さなくない?ってことでタグちょっと変えました。関係ないです。
感想、考察、誤字報告お待ちしております。

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