ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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言い訳です。
本来は書こうとも思ってなかった話です。
そのためグダグダ感がいつもより多めです。
ご了承ください。



彼の苦労は終わらず

 初デートに遅れてくる彼女について、俺のいた現代世界では賛否両論に語られている。

 では、男の方が遅れたらどうなるか。あくまで彼女なんてできたことのない俺の予想ではあるが、ほぼ確実にキレられる。

 少々飛躍した例えではあったが、俺の現状を説明するなら最もわかりやすいはずだ。俺の責任ではないと信じたいが、どう考えてもクラミーとフィーが納得してくれる状態が想像できない。また土下座かな?⋯⋯俺は何回あの二人に頭を下げればいいのか。

「ジブリール⋯⋯」

「なんでしょうか」

「俺を転移で送ってくれ」

「地獄への移動をご希望で?」

「うん、ある意味あってる」

 ほんとは行きたくないんだけどね。しかし約束を反故にしたのは俺だし、行かないわけにもいかない。誰か俺を保護してくれない?

 距離的には今から走ってもただ遅くなるだけだ。わざわざ犯してもいない罪を重ねるほど俺は馬鹿じゃない。現状の最適解はやはり便利種族のジブリールに頼むことだ。

「ジブリール、さっきの要求変えていいか?」

「私が頷くとでも?」

 ですよねぇ、知ってた。

「じゃあ普通に頼む」

「なぜ私がそこまでしなければならないのでしょうか」

「そこをなんとか」

「⋯⋯では、帰ってからマスターにもマックスコーヒーを作っていただけますか?」

「ああ」

「承知しました。場所は、前に彼女たちと会ったところでよろしいでしょうか」

 恐ろしく早い変わり身。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 頷いた俺を見て、ジブリールはお馴染みの転移の準備へ入る。ジブリールが指した“前に”とは、あの存在強奪オセロの時のことだ。

「ところで、いづなはどこ行った?」

「先ほどあなたが頭を抱えている間に下へ。ドラちゃんに昼食を貰うと言っていましたね」

 そういや昼でしたね。そう思うとなんか腹減ってきたな。俺が昼飯にありつけるのは、もう少し先だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったわね」

 仁王立ちの彼女は身長差をものともせず、俺を見下している。

「えっと、森に迷いまして」

「その割に現れたのは転移による移動だったのですよ~」

 クラミーの隣に立っているフィーもまた、不機嫌を隠さずにこちらを見ている。

「いや、言い訳するわけじゃないが、なんで木に置手紙ならぬ巻き手紙してんだよ」

 俺たちがいつも待ち合わせに使っている場所転移に転移で移動したのはよかったが、なぜかそこにはポイント変更を知らせる紙が木の幹に紐を使って巻かれていた。今俺たちがいるのは、かつてクラミーたちと再会した湖の岸だ。気まぐれで一緒に来ていたジブリールに俺が方角を伝え、高く上昇した彼女が指定の場所を視界に入れて転移させてもらった。ジブリールはこの場所には来たことがなかったからな。

「それを差し置いても遅かったと思うわよ?」

「念のために申し上げておくと、彼は考えうる最善で最速の方法でここへ来ました」

「ということは~普通に遅刻したということなのですよ」

 あのジブリールさん?弁護のつもりが一転してるよ?立場悪くしてるよ?

「すまん、城でいろいろあってな」

「いろいろって?」

「鬼ごっこを二時間ほど」

「おい、いろいろとおい」

 俺の隣にいるどっかの誰かさんが唐突に爆弾を投下した。それに対し彼女らは――

 

「「へぇ~」」

 

 おいこら、何してくれてんだ。二人の視線が倍くらい冷たくなったぞ。こいつ俺になにか恨みでもあんのか?

「いや、ほんとに何してくれてんの?」

「及ばずながら弁護をと」

「⋯⋯本音は?」

「負けた腹いせです」

 マジぶれねぇ。そんで俺嫌われすぎだろ。大丈夫です、慣れてます。

 にしても⋯⋯やだなぁ、顔向けたくないなぁ。だって絶対怒ってるもん。それもほぼほぼ俺悪くないのに、俺に対して怒ってる。いや認めるよ?確かに忘れてたし、鬼ごっこでも時間について交渉もしなかったよ。結果十分ほど遅れたよ。けど、殺意まで持つほどキレられるのは違うくないか?

 ゆっくりと顔を向け、視界に入れる内の一人の顔はいい笑顔でした。うん、ほんといい笑顔。もう良すぎて怖い。だって笑ってるのに怒ってんのが分かるんだもん。それに対してもう一人は、なんか悩み顔で「鬼ごっこ⋯⋯」とか漏らしてる。クラミーのやつ、どうした?いや、それよりもまずはフィーのほうだ。

「待て、言い訳をさせてくれ」

「却下よ。でもそうね、ゲームで勝ったら許してあげるわ」

「ゲーム?」

「私たちとの“鬼ごっこ”よ」

「え?いや、あの⋯⋯俺今日、てかさっきしたんだけど」

「ええ聞いたわ。その上でよ」

 さいですかぁ。そうなると俺はたった一日で天翼種(フリューゲル)獣人種(ワービースト)森精種(エルフ)、そして人類種(イマニティ)とゲームするのことになるな。なんかのチャレンジなのか?

 まぁそれはともかくとして、え、何?また鬼ごっこ?なんで?

「いろいろと聞きたいんだがまず、なにを賭けるんだよ」

「そうね⋯⋯ここに二日分のコミルの実があるわ。私たちが勝ったら、この実は渡さない。あなたが勝ったら三日分にしてあげる」

 なんかもっともらしい条件がでてきた。これ「はい」選ぶまで終わらないやつじゃね?クラミーはとりあえず頷いた俺を見て続ける。

「ルールは私たちが鬼、あなたが逃げ手。範囲はこの森、時間は十分。殺傷性がなければ魔法もあり」

「私たちが鬼って、お前とフィーがってことか?」

「ええ」

「俺、魔法とか使えないんだけど」

「あらそう。それは残念ね」

 うん、わかった。よくわかった。これは単なる嫌がらせだ。それもさんざん逃げ惑った挙句コミルの実が貰えないって結末まで見えてるなかなかのものだ。こいつら、というかこの世界のゲーマーってほんと良い性格してる。

「これ、拒否権ないよな」

 独り言と判断したのだろう。ほかの三人は何も応えず俺の反応を待っている。

 実際には拒否権は存在する。だがそうすると今日から当分マッ缶がお預けとなってしまう。それは勘弁願いたい。――と俺個人の感情もあるが、一番の理由は隣にいる彼女だ。今回は空たちにコーヒーを作る交換条件で転移させてもらった。となると、ここでゲームを降りたら一方的な裏切りになってしまう。あとが怖いし、それは避けたい。

 ハァとため息をつき、俺はクラミーにゲームを受けることを伝える。

「けど俺は先にスタートしたい。鬼は一分後にスタートでどうだ?」

「ええ、いいわよ。時間は私たちが動き始めてからカウントね」

「では、時間は私が」

 ジブリールは次元の穴からDSPを取り出して告げる。クラミーやフィーにはゲーム機の機能は理解できていないだろうが、彼女の進言に頷いた。

「じゃあ、始めるわよ?」

 

「「「「【盟約に誓って】」」」」

 

 嫌がらせにも公正を期す律義さには頭が下がる。

 時間はきっちり十分。ジブリールがカウントを引き受けた以上、それは揺るがないだろう。

 いくら魔法があれど、これは鬼ごっこ。そして相手は女の子が二人。クラミーが設定したフィールドだが、この森の広さは東京ドームの球場部分と大差ない。これだけ広いうえに木々で見通しも悪い。これだけ条件がそろえば、十分間逃げきるのも難しくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なんて、思ってた俺が馬鹿だった。

 ジブリールが鬼の行動開始を告げてからわずか数分で、俺は早くもクラミーの射程範囲もとい捕獲範囲に入れられてしまった。

 いくら帰宅部とはいえ、もともと自転車通学の上にここ最近はランニングもしていた。そんな俺が脚力で劣るクラミーに早くも捕捉された。その要因を推察するのは容易く、犯人はフィーだ。前にジブリールが魔法で空気中に透明な液晶を出現させて、離れた場所をライブしていたことがあった。魔法が得意な森精種(エルフ)なら、それと同種のものが使えてもおかしくない。

 結論としては、俺は常に監視されているということになる。当然身を隠すこともできないし、場合によってはルートを先読みされてフィーに待ち伏せをくらう可能性もある。

 分かっていたことではあるが、なんとも不利。不公平すぎて、ほんと不幸だ。

 だが、これはまだ救いのある状況だ。

 現状を客観的に見ても分かる通り、単純なスピードはやはり俺の方が上。先の展開にさえ気を遣えば特に問題はない。

 

「⋯⋯とでも、思ってる?」

 

 聞こえた声は、俺を追う後ろの少女のセリフだった。

 それがトリガーとなるように、突如として目の前の木が俺の進行方向を遮るようにして倒れる。予想外すぎる現象に戸惑いながらも、俺は一瞬の減速とともに倒れた木と反対方向、右へと曲がった。

 唐突な倒木。一体何が起こったというのか。クラミーの意味ありげなセリフを踏まえると、あれはあちら側の作戦だと考えられる。だがクラミーが何かモーションを起こしたようには感じなかった。だとしたら――いやしかし

「攻撃魔法は反則じゃねぇのかよ」

 物理的に考えて、実行可能なのはフィーの魔法だ。物理なのに魔法とはこれ如何に。

 だが実際にはそれは物理的なもののはずだ。例えば風の刃。不可視な上に切り込み次第で倒れる方向を調整できる。けどそれは攻撃魔法だろ。バギだろ、バギクロスだろ。

「直接の危害は加えていないため、反則ではありません」

 ご丁寧に説明してくれたのは上空のジブリール。終了を告げる者としては、プレイヤーの近くにいた方がいいとの判断だろう。

「それは、審判としての、公正なジャッジか?それとも⋯⋯」

「おそらく後者です」

 主観的な判断か。言う前に答えたなこいつ。ぶっちゃけツッコミ入れる気にもならん。走りながら話すの結構きついんだよ。

「⋯⋯それに⋯⋯」

 次々と倒れ、逃走コースを塞ぐ木々。俺とは違いそれを先に察知しているクラミーは、少しずつだが間を詰めて来ている。確かあの湖は森のほぼ中心に位置していた。フィーがまだ移動していないとしたら、円周上に広がるこの森の全体が魔法の効果範囲。まさしく死角がない。

 時間とともに逃げ場は減っていく。さすがに森を更地にするようなことはしないだろうが、的確に倒れた木が重なり合いながら効率的に俺を追い詰めている。もちろん横になっている木を跨いで進むこともできるが、それ自体が直接減速につながるため善策とはいえないのだ。

「ったく⋯⋯厄介な」

 いつの間にか追ってきていた足音が聞こえなくなっている。振り向けば、どうやらクラミーは一度姿を隠したらしい。体力的な部分を考えても妥当な作戦だな。

 第一波は互角、いや俺が少々劣勢か。

 俺は立ち止まって自問自答の作戦会議を始める。――さてどうするか。

「差し当たっては、魔法の方だな」

 ダメージ系統の魔法はないため、一番避けたい展開はバフ効果による追跡。唯一の有利な点が足だってのに、そこも負けちゃどうしようもなくなる。今のところ対処法はないが、マッ缶のためだ、どうにかしよう。

 

「五分経過です」

 ジブリールの時報、時報リールを聞いて残り時間が半分まで来たことを知る。だがその事実を味わう暇もなく、また彼女が俺の視界に入る。走り出す二人、草木を踏みながらも木々を躱しながら進んでゆく。

 これじゃただ森を周回してるだけで時間稼ぎでしかない。もちろん時間稼ぎ万歳だが、やりようによっては相手の脚力強化を引き出しかねない。

「ちっ⋯⋯」

 舌打ちが漏れたが、そんなことに労力を割いてるのがもったいないな。

 半ばあきらめかけながらも、なぜか始まった本日二度目の鬼ごっこは続く――。

 

 

 

 

 

 

 




遅くなってすみません。
これから少々忙しくなるので、また更新がまちまちになるかと思います。
それはそれとして、いつも感想ありがとうございます。
今回は感想にあったものをアドバイスとして受け取り、書かせていただきました。
これからもできれば感想、誤字報告よろしくお願いします。

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