ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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文が浮かばない……。
前は向かえば何となくで書けていたのですが、最近全然文字が出てこないんです。遅くなってすみません。
今回も難産というか納得のいく感じになっていませんがどうかお許しを。


だが彼はまだ探し続ける

 こと読み合いに関して、空という人物はバケモノだと言える。

 いづな、ひいてはチートし放題の東部連合の思考を全て見透かしたように、あのバケモノは獣人種(ばけもの)相手に一歩も引かなかった。

 とはいえ、それでも完璧に全てを予測しきることは不可能だ。だから俺はある種の伏線を張った。

「さてさてさぁて、一段落か。とりあえずジブリールお疲れ」

「不甲斐ない限りです」

 ジブリールの追跡は撒かれたという形に終わり、現在は四人が集結している。場所は見通しのいい公園の中央。

 白の体力が戻るまで、今は行動を避けるようだ。空とジブリール、俺を含む三人は周囲を警戒しつつ視線も合わせずに会話を楽しんでいる。いや楽しんではねぇな。

「欲を言えば、やっぱさっきので仕留めたかったなこれ」

「恐らく理由はめんどくさいから、などでしょうが」

「なんで分かるんだよ。魔法でも使えんの?」

「ええ、現実でならば如何様にも」

 でしたねそういえば。イメージじゃ魔法ってより破壊法だけども。

 というか、なんかジブリールの機嫌がすこぶる悪い。まぁ理由はわからんでもないな。一応下位の獣人種(いづな)に勝てなかったし、今も劣勢だし。マスターにその責任を問いたくないとなれば、残るは自分か俺への八つ当たりだろう。

「それはともかく、八の気持ちも分からんくはねぇわ」

「やっぱお前もめんどくさいとか思ってんのな」

「そっちじゃねぇよ」

 違うのか。せっかく同志が見つかったと思ったんだが。いやシスコンって意味ではそうなんですかね。

 一向に俺の視界で肩だけが見える空は、けどと否定的な接続で続ける。

「あれで終わるわけはないな」

 だしょうね。それは俺も理解している。

 いづなはまだ奥の手を使っていない。むしろ、あの場でギリギリまで追い詰めていたら逆に全滅もありえた。今回は失敗が成功だったのか。

「むしろ私としては、貴方が上手く立ち回ったことに驚きを隠せませんが」

「なら最小限驚いた表情しろよ」

 ジブリールが言う立ち回りとは、俺が空の考えを理解して動いたことについてだろう。

 このゲームはあちら側のホームであり、圧倒的に不利な条件で行われている。その一つが、音声の傍受だ。

 まぁ観客がいる以上、音声を外側に伝えることは必要なわけだが、東部連合はその声を聞いてこちらの動きを把握することができる。

 だからこそ、空の言葉に違和感があった。

 空は俺の問いに「白は大丈夫」、「狙われる可能性は孤立した奴が高い」、「俺は一度孤立する」と答えた。これは暗に、いづなの狙いを自分に向けさせるということを言っている。

 今回は俺の悪癖が役に立った。空の言動が気になり、あいつの裏を読もうとした結果がこれだ。

「で、こっからはどうするんだ?」

「……あー、まぁ大丈夫だ」

「いや何が?」

「勝てる」

「だからどうやって?」

「それは白の分野になった」

「……は?」

 なにそのぶん投げ。ノーコン主義かよ。意味違うし。

 空ピッチャーの完全な暴投に、息を整えた白が応えた。

「……しろに無理なら、にぃが……にぃに無理なら、白が……やる」

「そういうこと」

 つまり、役割の問題か。

 空は基本的に参謀として動くが、ゲームが始まれば戦略も戦術も二人でやる。どちらかがミスすればもう片方がそれを補う、ということだろう。

 しかし正直、白が空ほどの策謀型には思えない。やり方は違うのは当たり前だろうし、作戦も根本から違うと考えていた方がいいか。

「んじゃあ、その辺は任せていいんだよな?」

「……もち」

「なに?八もなんかしてくれんの?」

「いや、むしろ逆なんだが」

 俺が仕掛けた分は既に消化されてしまった。だからもう無理です。

 ジブリールに言ったらブチ切れなのが目に浮かぶので口にはしないが、俺は空たちが一度くらいミスることを前提に動いていた。

 俺が張った罠は、飾って言うならミスディレクション。視線や意識を誘導するものだ。

 もしも何らかの作戦がミスした時、いづなの反撃にあう。それに即座に対応できるように、相手の狙いを絞らせてやろうと俺は考えた。

 いくつか案を考えておいたが、一番手っ取り早いのが『空を狙わせる』ことだという結論に至る。

 そのため、ここまでに何度か空を参謀と呼び、こちらの要であることをあちら側にそれとなくアピールしていた。敵の頭から叩くのは戦法として当たり前の選択肢だし、現にいづなは俺と白のペアよりも先に空とジブリールの方を攻めた。

 結果的にいづなを退けることにも成功したし、俺の作戦は成功だろう。……多分、恐らく、成功したんじゃないかな?

 ちなみに標的を空にさせたのは、俺が単独で行う作戦だったから。自分で自分を強いぞアピールとかイタすぎるし、意味がない。ミスディレクションオーバーフローとかできるわけねぇっての。

 勝手な印象だが、空と白を比べると臨機応変に動く事に関しては空の方に分があると思っている。ジブリールでも良かったが、一度負かした相手を中々本気で警戒はできないだろう。

 というわけで消去法で空に囮物語してもらった。どんなストーリーだよ。

 な?ジブリールに話せる内容じゃねぇだろ?

「逆とはどういう意味で?」

「俺は何も出来ねぇぞってことだ」

「無能宣言ですか」

「まぁ、それは八を味方に迎える前に言ってたから気にしねぇよ」

 気にしないっすか。それ、俺が無能だって暗に言っちゃってるんですけど、そうっすか。まぁ否定はできないんだが。

 大凡の方針が決まると、白が木の枝をペン代わりに地面に何かを描き始める。難しい数式は全く分からんが、図のようなものは……地図?

「まさかとは思うが、このゲームのフィールドか?」

「そのまさかだよ」

 有り得ねぇだろ。際限まで知り尽くした訳ではないようだが、今までに動いて見た道や建物を全て暗記してるってのか?それはもうマッピングというよりグーグル先生の域だろ。

「お前の妹、前世はスーパーコンピュータじゃねぇの?」

「めっちゃ頭のいいアンドロイドだったりって?」

 そんで左手にサイコガン付けた男と宇宙を飛び回ってたとかな。それなんてレディ。

 白が作戦を練り上げるまで、俺達は時間稼ぎに徹することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―other side―

 

 

 

 エルキア陣営の動きをほぼ完全に把握している東部連合サイド。

 司令塔であるいのは、いづなに今すぐ攻めるべきだと伝えた。

 それには彼女も同意である。

 ついさっき、あちら側の思惑を妨害するように動いたにも関わらず、最終的には追い詰められた。あちらは二手三手、それ以上先を見据えて策を練ってくる。

(考える時間はやらねぇ、です)

 ならば長期戦は不利になる。

 敵の余裕を削るように、いづなは数発間のヒット&アウェイで空達を襲った。

 ジブリールがいるとはいえ、完全無防備に近い白を庇いながらいづなの猛攻を全て凌ぐにはやはり無理がある。

 空はいち早くそれを察し、移動しながらいづなを避けて時間を稼ぐ方法にシフトチェンジ。白の作った即席のルートに従って、どうにか計八回に渡る攻撃を凌いだ。

 とはいえ、全員が無傷ではない。

 もう一度例の公園に戻って来た彼らの装備は、弾除けに使った為大分減っている。八幡と白は上がYシャツだけになっており、空もTシャツ一枚。ジブリールも数少ない衣服をマスターの盾に使っていた。

 さらに言えば、体力的にも劣勢である。

 八幡が背負っていた白はともかく、人一人をおぶって移動した八幡やニート体質の空はスタミナの限界が近い。戦力的には完全にジブリール頼りになっている。

 その状況をモニター越しに見る二人――ステフとクラミーは不安を拭い切れない。

「空、白……」

「…………」

 エルキア全国民が息を飲んで見守る。それ程までに彼らは追い詰められている。

 だが、東部連合側――いづなもまた、焦っていた。

 あれだけ攻めても有能打がない。あちらが時間稼ぎに徹しているのであれば、白に十分な時間を与えてしまったことになる。

 歯痒さにいづなはビルの壁を叩く。

「もう……やるしかねぇ、です」

 なりふり構ってられない。

 そう結論付けた彼女は、そびえる壁より遥か高く飛び上がった。

 

 

 

 

 ―other side out―

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 息が重い。呼吸の一つ一つの動作が絶え間なく苦しい。

 ここまで自分を追い込んで走ったのは初めてかもしれん。マラソン大会が優しく思えてくる。

 単純な戦力差を考えて空ではなく俺が白をおぶったが、これマジでキツかった。赤ちゃん肩に乗せて喧嘩するのとどっちが楽だろ。どっちもどっちか。

 いづなの追撃は止み、銃を構える俺たち三人の周りには白の動かす木の枝の音だけが響く。

 ……静かだ。

 台風の前には静寂があるというが、これはまさにその一時の静けさのようだ。

 できるなら来て欲しくないな。自然災害も、人為的災害も。

「…………」

 俺の願いは叶わないらしい。

 発砲音が聞こえ、俺は感覚的に一歩後ろに下がる。

 威嚇射撃らしく、直接狙ったわけではないようだ。弾は俺が元いた場所すら通らずにどこかへと消える。

 隣で地面を踏みしめる音が聞こえた。ジブリールが臨戦態勢に入ったのだろう。さっきの弾の弾道からいづなの位置は逆算できる。ジブリールなら次弾以降は迎撃するはず。

「ジブリ――」

 ――だが、空の声はその先より続かなかった。

 着弾音が、背中越しに聞こえる。

 誰かが撃たれた。今?誰に?誰が?

 思考がまとまらない。俺の目の前でジブリールも驚きの表情を浮かべている。

「……にぃ……?」

 倒れ込むような音と細い白の声が重なる。

 俺が振り向いた時、空は既に地面に横になっていた。

 それを目視した瞬間――俺と白の間に赤い閃光が舞う。

 何かは分からない。視認することすら叶わないそれは、僅かに移動を止める。

 これ、いやこいつは――。

「……い、づな……たん」

 白の声は、着弾音によってかき消される。

 再び赤い光が散乱し、目の前にいたはずのいづなは姿を消す。……俺がそう認識した時には既に、白は倒れていた。

「な……」

 ようやく機能し始めた頭で、俺は撃たれた二人を上書きしようとトリガーに指を掛ける。

「んごっ……」

 だがそれを引くことはできず、腹部に当たった衝撃と共に俺は飛んだ。

 恐らくジブリールに抱えられているのだろう。

 自分の状況を完全に理解した頃には、空達が見えない程に公園から遠ざかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジブリールの咄嗟の判断により、何とか全滅は間逃れた。今は高いビルの屋上に避難している。

 しかし『  』の二人はいづなによって戦闘不能、どころか相手側になってしまった。事態はおよそ最悪だろう。

 だから、悪いニュースは先に知っておきたかったんだ。空達が動けないならまだしも、敵になるとかやってられん。

 寄りかかった背中が壁にそって降りる。完全に座り込み、俺は空を仰いだ。

『  』は敵の手中、戦力はトータルで見ても負けている。策もないし、あっても東部連合から察知されずに伝える手段がない。

 ……ゲームオーバーだろ、これ。

 

 




GGO編はもう少し続きます。

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