おいおいおいおいおいおいおい。なんだこの状況。何がどうなってる。なんで扉を開けたら女の子がいるのん?扉開けて雪だるまつくる予定はなかったですよ?
いや待て落ち着け。こういった類の女は知っている。美人局だ。何せ伊達に17年もあのクソ親父に育てられてない。こういう女は信用するな。これが、比企谷家の教えだ。だから大丈夫。俺には効かない。聞かないし、聴かない。壺を買って欲しいとか、そんな言葉は聞かない。
「あの……」
長々と現実逃避していたが、当事者である彼女の声で現実にフェードアウト。どうも比企谷八幡です。
てか、よく見たらこいつ、あのクラミーに負けた子か。
「何の用だ?」
「えっと……ここにわたくしにイカサマされていると教えてくれた方がいると……」
そう言えば空がこの子になんか呟いてたな。その事だろうか。
「多分俺の連れだな。まぁ入れよ」
女の子を自室に迎えることになるとは。いや、でも泊まってる部屋だし。そもそも自室じゃないし。用があるのは空にだし。
「あーえっと……誰?」
「ステファニー・ドーラですわ!さっきイカサマされていると教えて頂いた」
確かこの子前国王の孫娘だよな?なんでそんな格好を。あの、目のやり場に困るんでやめて欲しいのだが。
「ああ。それで、なんの用?」
「なぜイカサマの内容を教えてくださらなかったのですか。それさえ分かっていれば勝てましたのに」
なるほど確かに。
「たしか盟約その8だったか?」
ゲーム中の不正発覚は敗北とみなす……か。
「そうですわ!」
ふむふむと呟く空。あーあの表情見たことあるわ〜。
「えっとつまり?」
「……負けて悔しいから……八つ当たり……?」
白起きてたのかよ。それにその言葉遣い……ソファに座っている俺からでもステファニーの顔は見えるが、おいその反応はないだろ。
(かかった)
とか思ってんだろうなぁ、空。
「あの程度のイカサマを見破れないだけでなく、負けた腹いせに八つ当たりとか、人類が負けが込むのも納得だわ」
いやイカサマの内容自体はお前も見破れてないだろ。だが、現状その事実に意味は無い。あるのは、前国王の孫娘であるステファニー・ドーラが、負けてここにいるという一点だけ。
「何を……」
「そりゃこんなのが愚王の孫娘とくれば、当の本人もたかが知れる」
彼女にとって、王家の血筋とはいわば誇りであり、同時に地雷原でもある。
「わたくしのことはともかく……お爺様のことを言うのは許せませんわ!」
そして、天才
「オマケに沸点も低い。短絡的で幼稚な思考回路。愚王を愚王呼ばわりして何が悪い。それとも、反論できるだけの材料でもあんの?」
「――っ」
目を見開き、怒りに表情を歪ませて、ステフは空に迫る。振りかぶられた彼女の手が、空に向かって振られ
パァンという破裂音。
そして
「じゃあ、ゲームをしよう」
自らの両手を打ち鳴らしたは空は、笑顔でそう言った。
「んで、どんなゲームを?」
激高間近のステフを一度空から離して、俺は場を整える。寝たフリの女子小学生と笑顔の詐欺師と悲惨な格好の美少女。カオス過ぎるんですよ。
「ジャンケンをしよう。ただし、俺はパーしか出さない」
精一杯の表現で言う空。だが、俺の観察眼は騙せない。その表現の奥にある感情。こんなの、雪ノ下さんと会話するより余っ程感情が分かる。
「それで……どうなりますの?」
「俺がパー以外を出したら負け。そっちがチョキを出して俺に勝っても、俺の負け」
「あなたがパー以外で私が負けたら?」
「その場合は引き分け。それでいい?」
「分かりましたわ。ではなにをかけますの」
「俺が負けたら、あんたの出す条件を全て呑もう。イカサマのことも教えるし、愚王を愚王呼ばわりしたことが許せないなら、死ねでもいい」
「な!?」
愚王にとんでもなくアクセント付けて言いやがったな。まぁそこがミソか。ほんと挑発が上手いと思う。
「そんで、俺が勝ったらこっちの要求を全て呑んで貰う。こっちはたかがゲームに命かけてんだ。その位はいいだろ?」
「もし引き分けたら?」
「俺達はイカサマのヒントだけ教える。その代わり、些細な願いを一つ聞いてくれ。現状俺達この金尽きたら泊まるとこも食い物も宛がないんだ」
「……つまり、宿を提供しろと?」
ステフの質問に、空は恥ずかしそうに舌を出してニッコリ笑う。こいつどんな表情筋してんだ。俺にはできないな、あーいうの。
「分かりましたわ。では」
「「【盟約に誓って】」」
あーあー始まった。多分これ、空の一人勝ちだろ。
結果から言えば、その通りだった。
ステフはチョキ、空はグー。本来なら引き分けだが、この勝負の要はそこじゃない。
「いいですわ。宿代くらい」
「違うよ」
「え?」
そう違う。空の出した条件は
「白よ、兄ちゃんが出した条件は?」
「些細な願いを一つ聞いてくれ」
「八、その内容は?」
「言ってないな」
「はァァァ!?」
驚きのあまりに声を上げるステフ。まぁそりゃそうか。
「そんな、わたくしちゃんと確認しましたわ」
「その時俺はうんとか、はいとか、Yes I am!とか言った?」
「な!?」
そう、言っていない。あくまで舌を出して笑っただけだ。いやなんとも悪どい。
「それじゃあいこうか。出させてもらうぞ、俺の条件を」
うわ〜嫌な予感。もうマジでこいつ詐欺師にしか見えない。きっと色んなことから教訓を得るタイプの人間だな。
「俺に……
惚れろっ!」
……。
エコーがかかったように響く、残酷な命令。いや、それはマジでないわ。引くわ。
「ま、待って欲しいですの。それのどこが些細な願いなんですの!?」
そりゃ怒りますよね。でも仕方ないんだよ。
「些細な、なんてのは人それぞれだ。一口頂戴って言って、一口で全部食って、はいっ一口、なんてな」
「そんな……」
ここはあいつのセリフを借りよう。
「些細なことなんて主観でしかない。つまりこの場において、あいつが言うことが全てで正しい」
言ってみると分かるが、なかなかの暴論だよなこれ。人に屁理屈言うなとか言えないよな、あいつ。
「どうだ皆の衆。この俺のパーフェクトプランはっ。惚れさせてしまえば勝手にあれこれ貢いでくれるという寸法だっ」
うん、ひどいとしか言いようがない。
ただ…なんだろう。さっきから感じる寒気は。その悪寒の感じる方を向くと、見るからに不機嫌な白が、凄まじい目付きで空を見ている。
「……にぃ……おれの所有物になれなら……ぜんぶ手に入った……」
「へ?」
うん、それある。もうそれしか言えない。てか何も言えない。言いたくない。白さんまじ怖い。
「……にぃ、願望入った……」
白の言葉で残酷な現実を見せられたのか、空は頭を抱える。
「ぬあぁぁぁぁぁ!このチャンスを逃したら一生彼女が出来ないというコンプレックスが、俺の判断を狂わせたというのかあぁぁぁぁぁ!」
騒ぐ空。そんな彼に、妹は更なる追撃を放つ。
「にぃ……しろがいればいいって……言った」
うん、流石シスコン。
白の言葉に空はフリーズ。そして思考力が戻ったか、ゆっくりと体を動かし
「強がってましたぁぁぁスイマセンでしたぁぁぁ」
それはもう綺麗な土下座を決行した。
「だって、妹に手出せないじゃん!?それに11歳だし、お兄ちゃんだって年頃じゃん!?性欲だって性欲だって性欲だってあるじゃん!?」
言い訳が酷すぎる。そもそも妹に手を出すって発想がもうな。
その光景に何を思ったか、ステフは壁を殴り始める。うわ〜この部屋更にカオス。もう帰りたい。あ、帰れないや。
どうにか落ち着きを取り戻した現在。
「とりあえずステフって呼んでいい?」
「はいですの♡」
「違うのですわぁぁぁぁ」
叫びながらヘッドバッドするステフ。はは、全然落ち着いてねぇ。
「なあステフ」
「はいですの♡」
特にこの変わり様は、ちょっと見てて面白い気もするが、流石に気の毒だな。
「王宮に住ませて?」
「喜んで♡」
「ちっがぁぁぁう」
依然ヘッドバッドを繰り返すステフをよそに、俺達は今後の算段を立てる。
「とりあえず寝床は確保したが、その後はどうする?」
「まずは情報集めだな。でもそれはあしたからだとして、これどうするか」
そのセリフは絶対に成功しないダイエットフラグだけど、こいつらはやるだろう。ゲームのためなら。
これとは、ステフの事だろうが、いやほんとにどうすんのこれ。
「白さん、意見を伺っても?」
「……にぃ、童貞卒業……おめっ」
グーっと親指を突き立て言う白。そのセリフでその場が完全に止まる。これなんてザ・ワールド?てかおい小学生。なんつー事言ってんだ。
「待て待て待て、白。却下だ。妹の前で18禁展開は禁止です」
「……しろ……気にしない」
いや、しろよ。してください。
「兄ちゃんはするの」
「……じゃあ……ギリギリ健全の範囲で……」
言いながら、白はスマホを準備する。
「白さん、それは何を?」
「……だって……にぃ、おかず……いらない?」
「ありがとうございますっ」
おい空。お前実の妹にどんな教育してんだ。
「……じゃあまずは……」
カメラモードのスマホを構え、白は空の背中を一蹴する。
「……不可抗力からの……乳もみ」
「不可抗力っ!」
その言葉を聞いた空はあからさまにステフを巻き込んで倒れ込む。
「オットバランスガー」
「きゃあ」
そして、押し倒しながら、その双丘をその手に捉える。
何やってんだろこの
付き合ってられないと思い、俺はドアノブに手をかける。
「……乳もみからの……」
「パンティラ」
もう発音良すぎて聞き取れなかった。
外に出て少し涼もう。そう思って扉を開けると
「今はらっめえぇぇぇぇぇぇ!」
少女の悲鳴と共に人間大の質量が背中にぶち当たる。恐らく空だ。俺達は転がりながら前方の壁に衝突した。
「いててて…おい、大丈夫か?」
声をかけた先には
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいだってこうでもしないとこの先おっぱいなんて触れないと思ったんですほんの出来心なんですごめんなさい俺とかほんと人間のくずですごみです許してくださいごめんなさい…」
もう廃人一歩手前の青年がそこにはいた。
「どうなってますの!?」
ステフが扉の向こうから出てくる。僅かに見える部屋の奥では、白がひどい表情で震えている。
「もしかして、2人でいないとこうなるのか」
「し〜ろ〜」
「にぃ〜」
ひしっとばかりに抱き合う2人。それを見たら当然こうなる。
「「なんなんだ(ですの)この兄妹」」
これが天才ゲーマー
相変わらずの駄文ですが目を瞑ってください。
原作通りのところは空白や相手の心理描写があまりかけませんので、ご想像にお任せします。
それでは感想、誤字指摘待ってます。
…誤字がある前提なんです。
番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?
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もっと見たい
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別にいらない