ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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二ヵ月以上放置してしまいました。
申し訳ない。
気が付けば投稿開始から二年を超えました。
果たして読んでくれる人はいるのでしょうか。


彼は彼女を知らずとも感じている

 状況を整理しよう。

 正直展開とか説明とかがぶっ飛びすぎててついていけねぇ。

 時は、大遊戯時代。

 場所は、東部連合巫鳫(かんながり)のとある一室。

 この部屋にいるのは俺を含め三人。言わずもがな、他二人はゲーマー兄妹。

 さて、俺は彼らにやっかいな話を持ち掛けられた。

 それは、エルキアの王としてゲームをクリアしろ。何言ってんだと思う?何言ってんだろうな。

 そもそも彼らがエルキアの王と女王なのに、俺に王になれとか言ってます。

 日本一の高校生になるとか、一週間でシュート二万本とかとは訳が違う。安西先生も言わねぇよそんな無茶ぶり。

 これだけでも意味がだいぶ分からないのだが、話は更にややこしくなる。

 クリアしなければならないゲーム。これはある二種族の存亡を賭けたものだ。

 吸血種(ダンピール)水棲種(セイレーン)。どちらも『十の盟約』によって繁殖を大きく妨害された種族なのだ。

 で、彼らは互いに力を合わせて生きていこうとしたが、片方が危機的状況だと理解しておらず、契約が破綻。

 どうにか救いを求めた結果、水棲種(セイレーン)の女王が誕生した。

 が、その女王は深い眠りについた。真実の愛を探すため。

 その結果、二つの種族は絶滅の危機に瀕してる。

 ……いや、おい。

 俺が言う前に散々言われただろうけど、敢えて言うわ。

 どうしてこうなった。

 共存を求めて裏切られ、救いを求めて眠られて。吸血種(ダンピール)が不憫すぎる。

 水棲種(セイレーン)もひどいわ。なんで危機感ないんだよ。せめてルールーブックくらいは読んで理解してくれ。

 もうここまでくると、その女王にツッコむ気も失せてきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、話は現在に戻る。くうはくの謎発言の現場だ。

 女王を目覚めさせるためのゲームを、彼らはクリアできないらしい。

 理由は、リア充なにそれおいしいの?だから。

 十の盟約がなかったら、強制力が発動するレベルの言葉の暴力で文句言ってたまである。よかったな、盟約があって。

 空達の最終目標である盤上の世界(ディスボード)攻略には、全種族の協力が必要。

 頭が可哀想な種族も、存在が可哀想な種族も救わなければならない。

 救うためにはゲームクリア、ゲームクリアのためには俺が王になる必要があるという。

 ダメだ、整理しても何言ってんのか分かんねぇ。

「ちゃんとした説明を求む」

「乗り気になってくれてうれしいねぇ」

「ノリは良い方じゃねぇぞ」

「そうか?オタクな話には結構ノリノリだったぞ」

「俺はオタクじゃねぇよ。オタク名乗るほど命燃やしてねぇから。本職の方に失礼だから」

「なぜそこまで本気なんだよ」

 こっちこそ何でだから。何故お前に呆れられなきゃならないんだっての。

 つかそれ以前に話が進んでないんだけど。

 白も同じことを考えたようで、袖をひいて空に促した。

「これから話すことは、全部推測だ」

「いきなりな注釈だな」

「あくまで確定した証明がないってだけ。予想ってことだな」

「それで?」

「ああ。奴らは俺達を嵌めようとしてる」

 ……なんか、うん。

 驚くところなんだろうけど、妙に納得できてしまった。

 この世界に生きてる奴ら、歪み過ぎじゃない?罠とか嘘とか嵌め技とかされても普通に感じちゃってる俺がいるもん。

 究極的にはじゃんけんで国が亡ぶ世界だし、今更騙し合いだよって言われてもそうですよねって感じ。このゲームには必勝法とかありそう。

 空は予想と注釈しているが、根拠もなくこういうことを言うやつじゃない。ソースは過去の実績。

 コンギョを言えってことで聞くと、空は三本の指を見せる。

「一つ。女王のゲームには報酬が設定されていない」

「それが判断材料になるのか」

「……二つ……助けてもらう、メリット……プラムたち……ない」

「メリットはあると思うが……いや、なるほど」

「そんで三つ。果たして吸血種(ダンピール)は本当に事故で詰んだのか」

 ここまでの要素を踏まえて仮説を立てるなら。

 吸血種(ダンピール)水棲種(セイレーン)は結託して俺達を取り込もうとしている。

 白が言ったメリットの話。あれは、助けてもらうより騙して全部奪った方が得ってことだ。こういう考え方は空みたいだし、とっくにこいつらの中で話し合いは終わってるんだろう。

 だが、遡っていくと俺の知らない話があった。

「待て、報酬がないってどういうことだ?」

「正確に言うなら、プラムからその話がされていない」

「まだゲームの本質については俺知らないんだけど」

「八とステフ以外は知ってる話だ。んで、プラムは助けてと言った際、オーシェンドの水資源の譲渡とプラム自身の身柄を差し出した」

「初耳だ」

「今初めて伝えた。で八、この話、おかしいと思わないか?」

「そうか?まぁ、確かに女王を起こした報酬としては足りない気もするが」

「そうじゃない。この報酬は、どこから出てきたものかって話だ」

「……理解した」

 報酬の出所は恐らく水棲種(セイレーン)の住んでいる水の都オーシェンド。その女王だからと思えば疑いはいなかった。

 空はその話に違和感を突き付けた。

 女王様は、何を賭けて眠ったのかと。

 この女王様を起こすゲーム。このゲームのポストは女王自身だ。

 彼女は何年も前から眠っている。そんなやつが、ここまでエルキアに都合のいい条件を設定するか?

 明らかにおかしい。

 ということは、この報酬は今女王の代わりをしている誰かの設定したもの。

「罠じゃない訳ねぇな」

「だろ?」

「……だ、ろ……?」

 だわ。

 ここまで誘ってると分かってるんだし、もうオーシェンドに行く気とか起きないよね。行かないよね。俺要らないよね。

 ただ、行かないと詰みなんだよな。

 さっき整理して百も承知なんだが、ゲームクリアのためには全種族の『種のコマ』が必要だ。

 必要である以上、空達はこのゲームを降りられない。ついでに俺も、さきの裁判ゲームの制約がある。

 罠だと分かっていて逃げられない。

 この追い詰められた状況下で出来る選択は二つに一つ。諦めるか、抗うか。

 窮鼠も猫を前にこんな選択を迫られていたのなら気の毒もいいところだ。諦めることの方が何倍も楽なのに、どうせやられるならと猫を噛んでるわけだからな。ほんと、疲れるだろうに。

 俺はやらなくてもいいことはやりたくないし、やるべきこともできればやりたくない。

 だが、やるべき理由があるのならやらないわけにはいかなくなる。これが真理なら世界は滅べばいい。

 その観点から言えば、俺はこの提案に賛同できない。

 賛同し、参加し、参戦する理由がないからだ。

「ふざけんな。仮にその罠ごとひっくり返せる手があるとしても、俺がゲームに参加する理由はないだろ」

「おいおいおい、ついさっきその理由を作ってやったじゃねぇか。これで最後だってことで」

「これでって、ここまで入ってるのかよ」

「じゃなきゃわざわざ選手宣誓させねぇよ」

 先見の明というより、最初から手の上だったって感じだな。斉天大聖ってこんな気分だったのか。オスッ、オラヒッキー。誰だ。

 どこまで強制力が働くか分からないが、誓ったからにはやらなければならないか。ならせめて手短に終わらせたい。

「……作戦、聞かせろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お待ちしてましたぁ~」

 少々の作戦会議の後、ジブリールを呼んで俺たちは他のメンバーが集合している部屋へと戻った。

 プラム、吸血種(ダンピール)の少女はそれはもう胡麻を擦りながら俺を迎えた。やめろ、引くから。

「それでぇ、お話はどうなりましたかぁ?」

「そうだな。取り合えず、巫女さん」

「なんや?」

「プラムの出した条件には、東部連合の頭としてどう考えてる」

「そやね。ま、悪くないと思うとるよ。こん子が言うには、必勝策もあるようやし」

「必勝策?」

「はいぃ~!これはボクたちの見つけた、まさしく最強の策ですぅ!」

 説明を促すとプラムはその必勝策の秘密を語る。

 女王を起こすゲームの勝利条件は、女王を惚れさせる事。今まで幾多の挑戦者が敗れた無理ゲーへの回答。

 それは、魔法で惚れさせればいい、ということだ。

 うん、暴論。

 だが、同時に現実的だった。

 プラムたち吸血種(ダンピール)は偽装や幻惑系の魔法に秀でた種族。その力量は森精種(エルフ)をも凌ぐらしい。

 そんな彼らなら、惚れたという感情に偽装をかけることもできるという。

「それ、どうなんだ。盟約とか、色々と」

「危害を加える気がなければ可能かと。何より魚類王は惚れたいと明言していますし、間接的な承認になるのでは?」

「まぁ、そうか。しかし、ホントにできるんだろうな。実験無しの不確定魔法とか怖すぎるんだけど」

 そんなことを言いながら空達を見る。

 こればかりはまだ確認を取っているわけではないらしく、兄妹は揃って首を振った。

「それなら、試しますかぁ~?」

 プラムの提案は即時承認された。

 確認を取ったが、魔法の発動と解除は自由で永久型のものではない。

 かなりぶっ壊れの魔法だが万能ではないらしく、あくまでも生物のみの発動が可能。

 で、発動のスイッチは、胸を揉むこと。

 ……。

 …………は?

「いやいやいや、お前何言ってんの?」

「ただのモーションですよぉ~。それにぃ、惚れさせればこっちのものですぅ」

 だからって、もうちょっとどうにかならなかったの?

 ほら見ろ、女性陣が軒並み引いてんじゃねぇか。

 いづなは啞然とし、白は目を見開き、巫女さんはごみを見る目をしている。ジブリールに至っては真顔だ。最後のが一番怖い。

 ちなみにステフは空に何かを頼まれてどっか行った。

 試す、といった以上この三人の内の誰かが生贄になるのだからそりゃこうなる。

「それでぇ、誰にしますぅ~?」

「誰にもできねぇよふざけんな。名前呼ぶだけでセクハラになるんだぞこれ」

「なぁ、八」

「んだよ……」

「これ、ジブリールが適任じゃね?」

「何お前、俺に死ねと申す?」

 しゃあしゃあとそんなことを言ってくる空。許されるならマジ殴りしたい。

 ギギギと錆びたロボのように首を回すと、ジブリールと目が合った。

 すっげぇ真顔だった。

「……って意見が出ましたけれど」

「なるほど。愛や羞恥心以前に動物的な感情に疎い私は、確かに適任ですね」

「まぁ、ロジックだけならな……」

「なんにせよ、私はマスターの意志に従うのみです」

 そういうことは言わないでほしかった。

 それはそれとして。いつの間にか、試す役が俺になってるのおかしくない?

 白といづなに対象を任せるのは論外。残るは巫女さんとジブリールだが、男役を空に押し付けると必然的に巫女さんが対象となる。

 どれ選んでも地獄の選択肢。バッドエンドしかないマゾゲーとか、それはもうD〇Dだろ。

 以降沈黙を貫くジブリール。マジで命令しろってか……。

「あのぉ、どうしますぅ?」

 俺が聞きてぇよ。つかこの空気の原因君だからね。

 現状、俺はエルキアの国王だ。

 妄想でも妄言でもバグでもない。

 俺はついさっき、くうはくから制限時間付きである権利を譲渡されている。具体的には、最低限度の人権以外の全て。

 当然そこには、ジブリールの全権も含まれる。

 ここまで異常な譲渡をした理由。それはプラム達の罠にわざとかかるために、エルキア国王という肩書がどうしても必要だったからだ。

 つまりだ。俺には今、ジブリールへの命令権があるのだ。

 ほんと、嫌なんだけど。

 だってさ、これさ、揉ませてくださいっていうのと変わらないじゃん。セクハラどころか現行犯の痴漢じゃん。即ゴーポリスじゃん。

 だが、この検証は作戦会議の段階でやると決定した。これを外すと今度こそ詰みまである。断れる話じゃないのだ。

 空達の権利を返すのは48時間後。その時、ジブリールに殺される覚悟をしよう。

「……ジブリール」

「はい」

「…………やるぞ」

「はい」

「ではではぁ~、始めさせて頂きますぅ!」

 気の重い俺のことなど気にすることなく、プラムは幾何学的な魔方陣を展開した。

 さながら血〇戦線の如く、血色の線が空中で結ばれていく。

「それではぁハチさん!揉んじゃってくださいぃ~!」

 ジブリールは俺の眼前で微動だにしない。

「えっと、ほんとにすまん」

 心から謝罪し、構える。

 ほんとどうしてこうなった。

 俺はどこで間違えたのだろう。

 思えば今日一日、とんでもないことしか起きてない。

 朝っぱらから天翼種(フリューゲル)に拉致られ、人類最強ゲーマーとゲームをし、エルキア国王になって、セクハラしてる。

 こればっかりは死ねと言われても仕方ないと思うし、立場が違ったら俺も思ってた。

 だから精一杯の謝罪を口にして、触る。

 柔らかな感触と暖かな温度を感じる中、宙の魔方陣は強く輝く。

 真顔を貫いていたジブリールは魔法の発動を感じたのか、ピクリと体を動かす。

 そして、その表情はありえない程に穏やかな微笑みに変わり——。

 

「ああ、マスター。これが、これこそが愛——惚れるということなのですね」

 

 天使と呼ぶに相応しい笑顔を向けた。

 そんな顔をされれば、誰だって思う。

「誰か俺を殺してくれ」

 ……怖いと。

 いやマジで怖い。怖いを天文学的数で累乗しても足りないくらいこいつ怖い。

 膨大な量の情報がある辞書の中に優しさだけが欠如した奴の笑顔だぞ。睨むより怖いから。

「……プラム。解除してやってくれ」

「ソラ様?どうしたんですぅ?」

「人として、男としてあれは見てられねぇ……」

 プラムは返事をすると魔方陣を消滅させた。俺は光の速さでジブリールから離れる。

 そんな俺の肩に、空はそっと手を置いた。

 分かってくれるか。

 俺は初めてこいつを心の友と呼びたくなった。まぁ絶対呼ばないし、まず俺の辞書に友って単語がない。

「…………」

 魔法が解かれたジブリールは、珍しく放心状態だった。

 まぁ感情に干渉されるとか、普通に考えてわけわかんないもんな。そりゃそうなるわ。

「で、どうだジブリール。八に惚れたか?」

「はい、空様。言語化し辛いですが、確かに私はマスターに惚れました」

「そか。……あれで惚れてたのか」

「なぁ空。俺本当に生きてる?実は幽体だったりしない?」

「大丈夫だ八。お前はよく頑張った。ちゃんと生きて帰って来たんだ」

 軽口を言えるくらいには精神が安定してきた。もう少し解除が遅かったら本当に昇天してたまであるなこれ。

 余計な情報が消えた俺の思考は、先ほどまでのことを思い出す。

 他意はなく、俺はジブリールに触れて魔法をかけた。そのことは間違いない。ジブリール自身そう言ってるしな。

 だが、何故か。

 俺には、彼女の笑顔が本物だとは思えなかった。

 根拠も証拠もないけれど、これはただの思い込み以下の感覚に過ぎないけれど。

 あの表情は、いつも俺に向けている偽物のようだった。




読んで頂き、ありがとうございます。
これからまた忙しくなるので更新が遅くなるかもしれませんが、エタらないように地道に書いていこうと思います。

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