ああ、僕には帰る場所がある。こんなに嬉しいことはない……!
ということでモチベが上がりまくってます。
皆様、今回はイマジネーションをフルにユーズしてリード下さい。
眩しい日差し、煌めく波。
広がる砂浜に、吹き抜ける潮風。
青春を謳歌するに相応しいロケーションに、一同は脱力する。
「「海、滅べ」」
いっそ清々しい程に、犬と猿はこぼした。
なんで来たんだよ。
どうせ海に行くなら、楽しむべきだろう。
そう結論付けた空の提案で、東部連合のメンバーも連れて俺達は海辺まで来ていた。
プラムとの打ち合わせが終わって、翌日。
オーシェンドからの迎えを待つ間、俺達は海を満喫する。
……予定だった。
開口一番、犬猿の中である初瀬いのと空が言ったように、残念ながらここに海が好きなメンバーはほとんどいないのだ。
東部連合は獣耳っ娘王国と呼ばれるくらいなのだから、泳げるとしても積極的に水には入らない。
エルキア国王のゲーマー兄妹はそもそもが引き籠り体質であり、ジブリールは人並みの楽しさを知らない。
そんなわけで、恐らく海をまともに楽しめるのは常識人のステフくらいだろう。
俺?俺はこの後のことで頭一杯だっての。別に海でテンションとか上がらんし、なんなら今すぐ帰ってステイホームしたい。
晴れ晴れとした海岸の演出も、主観というフィルターを通せば地獄絵図だ。
熱射病の権化たる日差し、眩しいだけの波。
焼けるよな砂浜に、肌と癇にさわる潮風。
……どうやってこれでテンションを上げろと?
太陽の光がそもそも嫌いな空は
これはひどい。
ちなみにプラムは直射日光=死なので宝箱の中に入ってる。傍からみたら、ひとくいばこかミミックかパンドラボックスだ。
と、ここまで本日のマイナス点を挙げてみたが、メインイベントはここからだ。
もちろんゲームのことではなく、この海水浴のイベント。
すなわち、水着である。
そも、この海水浴の始まりは空と白のこんな会話からだ。
「夏だ!海だ!水着イベントだ〜!」
「……ポロ、リ、は……なし……?」
「はっはー!なしなわけないだろう妹よ!このメンツで水着イベントとポロリイベントをスキップできる訳がなかろうっ!」
……と、まぁ、そういうことだ。
この海水浴にはエルキアと東部連合のメインキャストがフル参加している。
戦力的に必要なジブリールやいづなはもちろん、本来裏方に徹するいの、ステフ。さらにはあの巫女さんすら足を運んだ。
そう、海はここからなのだ。
いやね、俺も男だから。ここで期待してないとかは言わないよ。
さすがに空みたく騒げはしないが、失礼にならない程度には反応しようと心掛けている。
何故なら、この水着イベントの最大の立役者は空ではなく、ステフだからだ。
俺たちがプラムとゲームに関する会議を進めている中、ステフは空に注文された水着をひたすら作っていた。
いの以外の全員、計7人分。俺と空のパーカーまで仕上げてくれた。頭が下がるし、今すぐハーゲ〇ダッツで労ってあげたい。
「ソ、ソラ!準備、できましたわよ……」
そんなステフは、自ら作った水着姿で現れた。
つまり、ステフが着ているフリル付きのピンクを基調としたビキニは、空がステフに渡した現世の知識をアレンジしたものだろう。
いつも叫んで泣いて魂抜けてるから忘れるけど、この子普通に高スペックだよな。顔も身体も整ってるし常識あるし家事とコミュスキルはほぼカンストだもん。
そのあまりのパフォーマンスに、空は戦慄していた。
ただ、見ただけでバストサイズが分かるお前の脳内スカウターはおかしい。あとそれ普通にセクハラなのでは?それで赤面してるステフもおかしいけど。
「ん、ソラ。なんで騒いでやがる、です」
ステフの後ろから、いづなが続く。
コーディネートしたのはもちろん空。いづなが身にまとうは、ジャパニーズスクール水着。性癖暴露もいいとこだな……。
いのと空が何かしら言い合ってるが、どうでもいい。
状況が飲み込めないのだろう。いづなな大人しく座っている俺の方へ来た。
「ハチ、いづなの服、おかしーか、です?」
「いやおかしくないし、普通に似合ってるぞ」
「そーか、です。ならなんで、ソラとじーじ騒いでやがる、です」
「そりゃあれだ、あの二人はデフォで仲が悪い」
「そーか、です」
こんなことを思うのはあれだが、やっぱ華があるな。
さっきまで蒸し風呂に筋肉の塊と童貞二人だったのが、ステフといづなのおかげでだいぶ眺めても不快にならない景色になった。
「やぁやぁ、はしゃいどるな〜」
そんな眺めるだけの目を、巫女さんは一瞬でクギ付けにする。
大人びた巫女さんのビキニ姿は、ステフやいづなの可愛らさとは対極の極地。すなわち、美しさの極だ。どんだけ極めてんだよ。身勝手なの?
いや、こういう反応はおかしくない。男なら普通に綺麗だって思うに決まっている。むしろこれは見ないのが失礼なのではと思うほどに神々しい。
空といのに至っては、得体の知れない何かを拝んでいる。
「意味わかんねー、です」
「……まぁ、俺もあそこまでは分からん」
「──はて?全身を舐め回すように凝視しておいて、何を言っているのでしょうか」
「おい、そこまで変態的なことしてね……」
背後から、いつも通りの暴言を、アイスピックで貫通させるかの如く放つジブリール。声とセリフだけで俺の後ろにいるやつがすぐ分かったわ。
背中越しに言われるのも、皮肉を言われるのもいつも通りだと思えるくらいに慣れてしまった感がある。
だが、そこにいたのはいつも通りのジブリールではなかった。
「……え?」
「何か?」
「……えっと、誰?」
「あなたの脳はクーリ〇シュか何かで?」
なんでお前俺の地元のアイス知ってんの。
いや、その前にこの人誰?というか人?
ジブリールの水着は、白いワンピースのような露出を抑えたものだった。普段着の方が肌出してるのおかしい。
恐らく空も、その部分をあえて変えようとしてのコーディネートなのだろう。大胆なイメチェンだ。
イメージチェンジとは大体失敗して、長い時間をかけて慣れていくものだと思う。
そんなイメチェンに対するイメージも、ジブリールという一人のイメージもぶっ壊れた。
言動も服装も概念すら人間味のないジブリールが、人らしい服を着ている。
このアンバランスな矛盾を、ギャップと呼べばいいのだろうか。
「こういう際は感想を伝える、というのがあなたの世界での常識なのでは?」
「……あー、えっと。似合ってる、と、思うぞ」
「なんでハチ、ことばつまってやがる、です?」
「……いや、ほら、下手なこと言ったら俺殺される」
「今すぐ死にたいようで」
あっぶねぇ、いづながいなかったら気まずさで海に投身してたまである。
いMG!いMG!いづな・まじ・ぐっちょぶ!
ジブリールさん、その蔑んだ目をやめて下さいごめんなさい。心臓潰されるような感覚で言葉に詰まったんです。それなんてバルス?
「はぁ……そちらもサイズが合ったようで。寝ている間に採寸した甲斐がありましたね」
「ああ、このパーカーか。……おい待て今なんつった?」
思い返せば、俺はステフに自分のサイズを言った覚えがない。城での生活は更衣室にある服を自分で選んで着てたからな。
で、ジブリールは俺が寝ている間にサイズを調べたと。
それ個人情報保護とかどうなの?権利侵略にならないの?盟約さん仕事してよ。
「水着を制作する上で必要だっただけですが、何か?」
「いやまぁ、ステフにこれ以上手間を掛けてもらうのもアレだしな。そういうことなら別に殺意とかないか」
「はい。ですから真っ先に手を抜けるあなたの水着は私が制作しました」
「……は?」
「あなたの着ている服は私が作ったものです」
「…………いや、は?」
全然分かんない、意味が伝達してこない。一体どういうことだってばよ!?
「すまん、何言ってるのか全く分からん」
「本人に確認した結果、ドラちゃんでも一日で7人分の水着を作るのは無理と結論が出ました」
「おう」
「当然、このままでは空様が企画した水着イベントなるものが崩壊します」
「おう」
「そこで、一番イベントに関係ないでなろうあなたの服については、私が知識とドラちゃんの方法をトレースして制作しました」
「おう?」
「もとより
「おう……」
駄目だ、理解するより先にジブリールの変なスイッチが入った。もう止められる気がしねぇ。ここで変なこと言ったら殺る気スイッチ入るまである。
性癖が暴走し始めたジブリールは、自分を待ちかねている空の元へと向かうようだ。
遠くには、白の水着姿に困惑している空が見える。
よく見てようやく分かる程度だが。空の着ているパーカーはデザインが似ているが、俺の方が質素な気がする。
その辺、オシャレなステフと機能性重視ならジブリールの違いだろうか。
遠くからは「「海、最高!!」」という男たちの叫び声が聞こえる。
それから、俺たちは海を満喫し尽くした。
海が嫌いではあるが、まぁせっかくだしと言った具合に騒いだのだ。楽しいかこれ。
空と白がいづなとゲームをし、ステフが叫ぶ。
海に出て戯れる彼らは、本気でビーチバレーに興じた。
ジブリールと巫女さんが鬼ごっこをし、みんなが立ち尽くす。
水着を強奪したジブリールを追う巫女さん。物理法則をねじ曲げる両者の戦いは、もうほのぼのと見ていられるものではなかった。
これ、本当に満喫できたか?
頂点を回った太陽は沈みかけ、それでもプラムの言った迎えは来ない。
「つか、プラム。迎えとかいつ来るんだよ」
「日を跨いだあとですよぉ……皆さんが早く来すぎなんですぅ」
ようやく箱の蓋を僅かに開けられるプラム。まだ夕日が見えてるし危ないとも思うが。
空の作戦通りなら、そろそろ移動だ。
自分達を嵌めようしている奴らの迎えとか、三途の川下りと変わらねぇからな。
そんで、俺の仕事もここからだ。
本格的なオーシェンド攻略に向けて、大きな問題がある。
それは、勝利条件が不明であること。
プラムが言うには、女王が惚れるとゲームクリア。だけど誰にも俺はなかったからやってられない。
この論法は分かるが、プラム達には必殺のチートがある。
何故それを、今用意したのか。
普通に考えて、男が全滅する前に完成させるだろ。今は繁殖ができない男子が一人とか手遅れもいいところだ。
だが、もしもこのタイミングにすら意味があるとしたら。
このチートは罠にはめるための布石であり、実際に俺たちが試して信用させるのが狙い。
あのチートは、女王には効かない。あるいは、そもそも女王が惚れてもゲームクリアにならない。
大きくはこのどっちかだろう。
そして前者は、ぼぼ確実にない。
プラムは巫女さんの前で、必勝の手だと言った。罠をはるなら魔法は試しておかなければ作戦としては落第になる。
プラムは、嘘をついていない。
女王に効かないと分かっているなら、あの場面で必勝とは言えない。だが、そうなると後者もおかしいということになる。
なぜクリアできないと分かっているのに、必勝の手だと嘘がつけたのか。
巫女さんはプラムの言葉に嘘はないと言っている。じゃなきゃ賛成してここに来ない。
あまり考えたくないが、プラムの記憶を改ざんして寄越した可能性もある。
この辺りの謎解きをしないと勝てない。そのためには、やはり情報が必要だ。
『 』だけではできない。
どう足掻いても時間が足りない。
アイツらはゲーマーだ。
だから、ゲーマーにできない部分を俺がする。
「本当に、あんな馬鹿げた作戦を実行するので?」
……だからさ、お前背後から声かけんの好きな。
昼とは一転して、普段と変わらない声色のジブリール。ちなみに巫女さんの水着はかなり前に返してるから大丈夫だ、問題ない。
「馬鹿げたとか、ひでぇな」
「あなたの作戦ほどではありません」
「お前の口の悪さほどじゃないだろ」
お互いに、顔も合わせずそんなことを言い合う。
慣れたもんだな、色々と。現在のこいつの格好にはまだ慣れないけど。
それにしても、ジブリールが忠告みたいなことを言うのは珍しいな。いつもなら、俺が何かしたあとに文句を言ってくる流れだけど。
「お前から見て、勝率はどれくらいだ?」
「皆無です」
「手厳しいなおい」
「もとより、あなたに勝つ気などあるのでしょうか」
「負けようと思ってゲームするやつとか普通いないだろ」
「あなたのどこが普通だと?」
「おまいう」
正攻法じゃないのは認める。そんなのは空達も同じだし大したことじゃないけどな。
これの仕込みにはジブリールの協力が必要不可欠だったんで、巫女さんとの戯れる(?)が終わり次第色々と頼んだ。マスター権限超便利。
仕込みが終わったし、あとは調理して食べるだけ。癖の強い素材だけどアレルギーとか出ねぇよな……。
時間も頃合、覚悟もまぁできた。
のそのそと立ち上がると、パンドラボックスが少し開く。
「あのぉ……どこに行くんですかぁ……?」
「そうだな、ボス戦ってとこか」
「ボス……女王様ってとこですかぁ〜」
「いや、もうちょいランクが高い相手な」
暗くて分からないが、多分プラムは首を傾げているだろう。
「つーわけで、ジブリール」
「承知しました。こちらも手筈通りに」
「ああ」
ふわりと、周囲の空気がまとまったように動く。
いつもの空間転移の感覚だ。
視界にいるジブリールと箱入り娘が、無数の本棚へと変わる。
背景すら一瞬で変換されたそこは、見知った図書館。
オレンジ色に染まった夕日が窓から室内を照らしている。
中央の暖かな陽だまりに、彼女はいた。
「うちに何のようかにゃ──人間」
天使を思わせる翼、幾何学的な光輪。そして、艶やかな髪とともに生えた一本の角。
自称、ジブリールの姉にして重度のシスコン。
彼女は
今更ながら無理ゲーだと思うわ。
単身
開始前からクソゲー確定だが、やらなきゃやられるんだわ。
ということで、俺は最も強いと思う男を模して言う。
「ゲームをしようぜ、自称お姉さま?」
水着回!ノーゲーム・ノーイラスト!
作者には描けませんでした。いかにノゲノラ原作者さまが凄いのか分かりますね笑
いきなり急展開!ということで次回は、まさかのVSアズリール戦。
原作ファンの方なら、なんとなく先の展開が読めてしまうかも知れませんね。
その辺はオフレコで……。
感想や高評価頂けると嬉しいです。
2020/05/16
アンケートの結果、番外編も続編を書こうと思います。
ただし問題があり、ネタ切れ中です笑
詳しくは活動報告を読んで頂ければと思います。
番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?
-
もっと見たい
-
別にいらない