ノーゲーム・俺ガイル   作:江波界司

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ご愛読ありがとうございます!
感想や高評価が嬉しくて、頑張って更新中です。
この作品、SSにあるまじきモヤモヤ感があるんだと感想を頂いて気付きました。
ノゲノラのような心理戦と俺ガイルのようなもどかしさを求めた結果でしょうか…。
どうぞモヤモヤ感にご注意ください。


しかし彼女は彼を侮る

 時は少し遡る。

 ビーチで遊ぶという青春の真似事にも飽きた頃。

 巫女さんはジブリールとの鬼ごっこの為に『血壊』を使い、その反動で横になっている。相当に疲れたらしい。

 そんな隙だらけの彼女を見逃すはずのない変人兄妹は、彼女をモフり続けていた。

 日焼け止めを塗っていても日の下に居続けるのは苦痛なので、俺とジブリールは日陰に避難中である。

「つか、なんでお前巫女さんから水着盗めたんだ?」

 水着を取られた本人の前でこんな話はできないので、それなりに離れたところでそんなことを聞く。

 水着を取った本人のジブリールは、静かに応えた。

「それはもちろん、許可があったからですが」

「許可って、何をどうしたら許可すんだよ」

「空様の指示がありました。先程の戯れもその一つです」

 なんで一つ質問したら疑問が二つになるんだろ。不思議だな〜。

 空の指示なのがもうおかしいし、あの巫女さんとの鬼ごっこを戯れって言えるのもいとおかし。残念、それは趣があるです。

「どういうことだよそれ」

「空様曰く、二種族攻略には巫女の『血壊』を海中で発動することが必須だそうです。それも、発動自体は隠せるようにと」

「隠すってのは、あの赤い筋が出ないようにってことか」

「はい。あれは血の流れ、すなわち血管が浮き出たものです。ならば、水圧によってその表面化を防げないかと試していました」

 うむ、わからん。

 わからんが、血圧と水圧を上手く調整すると血管が浮き出なくなるとかそんな感じだろう。わからんけど。

「それ以前に、何故あなたがそれを知らないのでしょうか」

「ゲーム攻略は空と白に任せてる。俺の役目は別だ」

「というと?」

「この勝負には、情報が要る」

 女王を起こすゲーム。その確かな勝利条件とプラム達の本当の狙い。

 東部連合で話した限りではボロが出なかったことも考えると、正攻法ではゲームクリアは不可能だろう。

 で、情報を集める上で最も効果的な場所はどこか。

 答え、図書館だ。

 過去の記録を遡れば謎解きのヒントくらいにはなるはず。希望的な観測だが、逆に言うとこれくらいしか頼れるところがない。

「情報を集めるなら天翼種(フリューゲル)の図書館を借りるのが一番。と、これは空のセリフだけど」

「まさか、あなた一人でアヴァント・ヘイムの天翼種(フリューゲル)全員を相手にするおつもりで?」

「まさかにも程があるな。そんな条件なら神速のリザイン決めるわ」

「では、一体何をしでかす気でしょう?」

「聞き方に悪意しかねぇ……」

 俺が何かをしでかすって前提なのかよ。

 ゲーマー未満の分際で天翼種(フリューゲル)に喧嘩売るって考えたら、あー、普通にやらかしてるな。知り合いだったら精神科か外科の診断を勧めるまである。

「何を企んでいるにせよ、あなた一人ではアヴァント・ヘイムには入ることすらできません。私に、頼むことがあるのでは?」

「アヴァント・ヘイムに関することは取り敢えず置いとくが、頼みがあるのはそうだな」

「では、なんなりと」

 そういう催促の仕方は嫌なのだと正直に言えたらどれだけ楽か。

 一応、今はエルキアの王様って設定を守らねばならない以上、できる限り『  』の言動とスタンスを真似ておかなければならない。なんでこんな所に気を使わねばならないのか。

「じゃあ、あれだ。お前の先輩、アズリールを図書館に呼んでくれ」

「……それは、アヴァント・ヘイムへのアポイントということでしょうか?」

「ん?ああ悪い、そうじゃねぇ。呼ぶのはエルキアの図書館」

「……それは、一体どういうことでしょうか?」

 珍しくジブリールが困惑している。無理もないか。途中の説明、全省きだし。

 順を追って説明する。

 まず、昨日の段階で俺と『  』間の方針は決定している。

『  』は女王強制起床ゲームの攻略、俺は情報収集と担当を決めた。

 当初の空と白の予定では、俺がゲーム開始直後にドタキャンしてプラム達の嘘を暴くつもりだった。

 プラム達の狙いは、十中八九エルキア国王だと踏んでいる。

 エルキアを罠にはめるなら、人類種(イマニティ)の全権すなわち『種のコマ』を持っている奴を狙うのが最も効果的だからな。

 その辺を空達と話して分かったのが、クリア条件の不明瞭なところ。

 ここを解決するためには大きく二つの選択肢がある。

 一つは、全員で情報を集めてゲームを攻略。

 もう一つは、ゲームを攻略しつつ情報収集を同時に行うこと。

 情報を集めるためには天翼種(フリューゲル)の図書館を利用したい。

 だが、海の二種族と天の天翼種(フリューゲル)を順番に攻略するのは時間も体力もかかり過ぎる。

「説明する前に、確認したいことがいくつかある。まず、アヴァント・ヘイムに言った場合、図書館の利用は可能かという問題だ」

「それは可能です。忌々しい法が存在しますので」

「じゃあ、その本は全て読めるか」

「規制はありません。ですが、世界中の言語で記されていることを考えれば、不可能かと」

「それを翻訳してる時間はねぇな。他の天翼種(フリューゲル)に手伝って貰うとかってできそうか?」

「全ての天翼種(フリューゲル)が協力するということはないでしょうが、私が布教している者達ならあるいは」

「布教?」

「空様と白様の活躍を綴った日記(きょうてん)をアヴァント・ヘイムで配っていますので、その読者ですね」

「……それ、人数的にはどんくらい?」

「100を超えますでしょうか」

「空達人気あり過ぎだろ」

「当然です。更に言うなら、外伝として書いたあなたに関する調査書も中々の売れ行きですし♡」

「ちょっと?どさくさ紛れに何売ってくれてるのん?」

 調査書とか売れるものでもないし、なんなら売るもんじゃない。

 そもそもなんで俺を調査してんだって話だが。

「おや、お忘れで?」

「何をだよ」

「私たちの契約についてです」

「契約……そんなのしたか?」

「記憶力の自己評価を見直してはいかがでしょう」

 そこまでいうなら、まぁ契約はしたんだろう。

 しかし覚えがないし、俺はそれで何を得た?魔法少女にもなってないしサーヴァントも貰ってない。

 あーでも、現在進行形でマスターだわ俺。ジブリールがサーヴァントとか、余裕で願望器獲れそう。やっちゃえバーサーカー。

 いや、そういえば貰ったな。願望器ではないが、願望故にそうしてもらったことがある。

「図書館のことか」

「はい。ようやく思い出されたようで」

「思い出したが、あれ続いてたのかよ」

「期限は私が満足するまでですので♡」

 契約と呼べるほど仰々しいものだったかはともかく、二ヵ月以上前だぞ。こんなことを覚えてるのは、俺か天翼種(フリューゲル)か白くらいだ。結構いるじゃん。

 俺がジブリールと初めて会った日。俺は図書館の使用を彼女に求めた。

 見返りは、異世界人の情報。俺という存在が長期にわたり近くにいるというのは、それだけでジブリールの知的好奇心を満たす。

 その時に話したのは、俺は人類種(イマニティ)に分類されるのか否か、だったか。

 だが、それがどうして天空の城で天翼種(フリューゲル)に売りさばかれることになる?

「調べてもいいとは言ったが、それを広めることをまで許した覚えはねぇぞ」

「はて?ではいつ、その行為を禁止されたのでしょう♡」

 こいつ……。

 本当に嫌だわ。何がって、別に怒りもないしジブリールならそうするかと納得してしまうのが特に。

 なんで遥か年上にお兄ちゃんスキルが発動してるんですかね。

 ……いやお兄ちゃんスキルでもないわ。悪口書かれたノートを回されたら流石に小町にもキレる。キレて説教して泣かれて親父にボコられる。なにこれ理不尽。

「もうそれはいいや。んで、さっきの話だ」

「先輩をエルキアの図書館に呼ぶと。簡単に釣られるとは思えませんが、方法は考えているので?」

「そりゃ、相手は自称でもなんでも——お姉ちゃんだからな」

 (ジブリール)は、(アズリール)を釣る最高の手札だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を戻そう!

 大量の天翼種(フリューゲル)を相手にするなど不可能だ。

 逆説的に、究極的なまでに少量なら相手にはなる、かもしれない。

「君が、ジブちゃんに言わせたのかにゃ」

「そうだな。ジブリールの全権を取り返すチャンスだってのは確かだろ?」

 こいつは、アズリールは俺の事を知らない。いや、俺だけでなく『  』のことも深くは知らないだろう。

 普通はここで、罠だと疑う。

 疑うが、こいつはここに来た。何故か。

 俺がジブリールに頼んだ伝言、今ジブリールの全権は本来のマスターから

 離れた。

 これは嘘でも冗談でもなく、チャンスである。

 例え相手が『  』だとしても、アズリールは勝負を望んだだろう。それがシスコンの性だ。

 まぁ、今回は少しばかり特殊だが。

「なるほど、確かにうちを釣るには持ってこいにゃ。それで?」

「なんだよ」

「きみは、ジブちゃんをエサにしてまでうちに何を要求するんだにゃ?」

 ごもっともな話だ。

 これはバレバレの誘導で、挑発で、宣戦布告だ。それ相応の対価を賭けねばならないと、アズリールは覚悟して来たはず。

 覚悟はいいか俺は出来てるところ悪いが、ジブリールの全権とは釣り合わない類の要求を俺は口にする。

「力を貸してほしい。あんたができる最大限の協力ってところか」

「具体的には?」

「それは言えん」

「……きみ、ゲームを始める気があるのかにゃ」

「俺から始める気はねぇよ」

 ここからが、本当の勝負だ。

 無論、ゲームはまだ始まっていない。これはこの世界の法則ともいえる話。

 いかにゲームを始めるか。それが今、そしてこれからも重要な要素だ。

 双方が賭ける以上、負けるリスクは負いたくない。

 逆に言えば、ゲームを始めた段階でおおよその結末は決まってくるということだ。東部連合のやつは、『  』(あのふたり)が例外なだけ。

 俺はゲーマーじゃない。

 それでも、やり様はある。

 ゲームじゃないなら、勝ち目はある。

「俺は別に、お前の協力が必要なわけじゃない。あればいいくらいの、要はサブプランだ」

 互いに動揺はない。俺は嘘をついていないし、あっちも分かってるんだろう。

「なら、うちがここで帰っても問題はないということだにゃ」

「そりゃ、止める権利はねぇな」

 心理戦、駆け引き。

 その気もないことを言うアズリールと、ただただ事実を言う俺。

 話は進まない。

「うちからゲームを仕掛けて欲しいのはわかるにゃ。でも、目的が分からない。万に一つもないけれど、うちを倒せる策があるのかもしれないにゃ」

 語尾ににゃあにゃあ付けるのは萌えるはずなんだが、今は何も感じねぇな。

 そんなことを思うくらいは、心の余裕がある。天翼種(フリューゲル)を相手取るのは初めてじゃないし、その辺ジブリールには感謝すべきかね。ないな、ない。

「策か。少なくとも、考えなしに勝負はしかけないな」

「ならせめて話してくれないかにゃ。うちに何をして欲しいのかにゃ?」

「だから言わんて。けど、強いて言うならあれだ。ついでだ」

「ついで?」

 食いついたというよりは、純粋な疑問だな。

 アズリールは僅かに表情を曇らせている。

「たまたま、お前を釣る餌が手に入った。それだけだ」

「じゃあ、なんで今なんだにゃ」

「今しかねぇんだ。俺がジブリールの全権を持っていられるのは、そう長くない」

 俺が名義上のエルキア国王でいられる時間は、もう24時間をきっている。

 そのことをこいつは知らない。

 アズリールは、無言で俺を睨む。

 これはゲームではない。商談だ。

 俺が提示したメリットは、彼女に被るリスクに見合うか。

 このまま迷ってくれても一向に構わない。なんなら制限いっぱいここで待ってくれて欲しい。

 だが、そうはならない。

「いいにゃ——きみの口車に乗ってあげるにゃ」

 アズリールは笑顔で告げる。

 時間制限、手札不明、宣戦布告、敵地、不利。

 あらゆる圧力を受けてなお、彼女は微塵の動揺も見せない。

 規格外だな。基本スペックも、心臓も。

「いいのか?」

「きみがどんな策を持っているかは、この際どうでもいいにゃ。ジブちゃんを元に戻せるなら、リスクを負うにたるにゃ」

 元にって、あいつはずっと素だと思うが……。

 それとも、何かが変わった姿が今の彼女なのだろうか。

 人はそう簡単には変わらないだろう。人外も、多分そうだ。

 ましてや、変わったというのはあのジブリールだと。あいつの性格を考えると、世界がぶっ壊れるくらいしないと変化も何もないんじゃないか?

「それで、うちが君に勝負を仕掛ける以上、君にゲームを決める権利があるにゃ」

「ああ、そうだな」

 あぶねぇ、上の空だった。意識を切り替えようと、一度目線を切りながら頭を掻く。

 下げた視線の先には、左胸に付いている白い羽があった。

 ジブリールの作ったパーカーの数少ない飾り。これなかったら完全に無地だ。

 ……ああ、そういや、これ作ったのあいつだった。

 くそ、変に意識しちまうだろ……。

 ジブリールの話題で意識が逸れたはそのせいだな。俺は悪くない。

 邪念を振り払って、深呼吸する。

「ゲームは、ノージャンルだ」

 そして、できるかぎり不敵に告げた。

 ビビってくれないかな。

 

 

 

 

 

 




Q,今回はアズリールとの心理戦が魅力ですか?
A,いいえ、八ジブ回です。

なぜこうなってしまったのか、私自身理解できません。
さわり程度に準備段階の話を書こうと思っていたら、この二人が勝手にいちゃこらしてました。
この作品、どこに向かっているのでしょう・・・。

感想など頂けると嬉しいです。

あと、番外編がネタ切れ中です。
活動報告にて、助けて欲しいです(切実)

番外編 エルキア王国奉仕部ラジオは必要ですか?

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