ギフテッド   作:龍翠

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今回は全て主人公の出自に関わるお話です。日常感皆無です。非日常です。
日常系をお求めの方は次話までお待ちいただければと……!

あと当然主人公の出自関係なのでオリジナル色が今までで一番濃くなっています。
当然つまらないです笑
それでも良いという奇特な方は、このままお読みくださいませ。


第十話 縛鎖

「あ! 流れ星!」

 車の中。隣で嬉しそうに叫ぶ妹。呆れる自分。

「何言ってるの。今は昼だよ」

「ほんとだよ! ほんとに流れ星だよ! ほら!」

 必死な声。窓の外を示す小さな手。そちらへと目をやる自分。そして見つける、こちらへと向かってくる光の塊。

 そして……。

 

「っ!」

 シュウはかっと目を見開き、飛び起きた。混乱した頭で周囲を見回す。見慣れた自分の部屋で、窓からは朝日が差し込んでいる。少しだけ寝過ごしてしまったらしい。

「……夢、か……」

 忘れたくても忘れられない、昔のこと。時折夢に見ては、こうやって飛び起きる。忘れるなという警告だろうか。そんなものなどなくても、忘れられるはずがないというのに。

 気分のいい目覚めだとは到底言えない。もう一度寝ようかとも思ったが、朝日を見てしまうと寝ようとも思えなくなってしまう。仕方なくシュウは着替え始める。が、途中で動きを止めた。頭痛がひどい。

「あー……。まあ、そうだよね……」

 あの日の夢を見た後はいつもこうだ。だが普段は我慢できる痛みなのだが、今日はひどい。あまりの痛みで、立ち上がろうとした時に意識が飛びかけた。立ち上がるだけでこれなら、歩くとどうなるのか。考えるだけでも嫌になる。

 シュウはまたため息をつくと、ゆっくりとした動作でちゃぶ台に置いている携帯電話に手を伸ばした。

 ――学校は……休もう……。

 休む旨を連絡した後、再び布団に横になる。だが、何かを忘れている気がする。そしてそれはすぐに思い出した。

 呼び鈴が押される。部屋に音が響く。シュテルが弁当を持ってきてくれたのだろう。シュウはのろのろと立ち上がると、頭痛がひどくならないように注意しながら玄関へと向かう。ドアを開けると、果たしてシュテルがそこにいた。

「おはようございます、シュウ……。大丈夫ですか?」

 シュウの顔を見た瞬間、シュテルがわずかに眉を寄せる。シュウはどうにか笑顔を作ると、

「おはよう、シュテル。大丈夫だよ。元気」

「無理しないでください。上がりますよ」

 シュテルは靴を脱ぐと、シュウをすぐに支える。そしてそのまま部屋の中へ。無理をしているのがすぐにばれてしまったらしい。

 ――かなわないなあ……。

 心の中で苦笑して、シュテルに連れられて布団に座る。

「風邪……ではないようですね。熱もありませんし」

「うん。ただの頭痛だよ。ちょっと昔の夢を見て……」

「昔の夢、ですか」

 シュテルの表情がかすかに曇る。そのことには気づかず、シュウは続ける。

「ちょっと嫌なことを思い出しただけだよ。あまり気にしないで」

 シュテルはしばらく黙っていたが、やがて小さな声で、分かりましたと返事をした。立ち上がり、流しに向かってコップに水を入れる。それをちゃぶ台に置いて、シュテルはすぐにきびすを返した。

「朝食でも買ってきましょう。何がいいですか?」

「じゃあお言葉に甘えて……。あ、でも任せるよ」

「分かりました」

 シュテルが部屋を出て、ドアの閉まる音が続いて聞こえてくる。シュウは力なくため息をつくと、布団に横になった。心配させまいと強がってみたが、逆に心配させてしまったようだ。

「どうにも……だめだなあ……」

 自分はシュテルの隣にいてもいいのだろうか。離れた方がいいのでは。そんなことばかり考えてしまう。シュテルが聞けばきっと呆れられてしまうのだろうが。そんなことを考えている間に、シュウは再び眠りに落ちた。

 

 

 白い部屋で眠る妹。二度と立ち上がることのできなくなった妹。自分を薄気味悪いもののように見る両親。運ばれていく棺。泣き崩れる知らない人々。走馬燈のような光景。

 ――夢だ……。

 なんて分かりやすい夢だろうか。過去のものばかり見せて、何の嫌がらせだろう。

 目の前に並び立つ知らない大人たち。友人だと思っていたクラスメイトたち。そして、自分の両親。

 気味悪い……。

 呪われた子だ……。

 疫病神め……。

 聞きたくない。だが耳をふさいでも聞こえてくる。当然だ。これは夢なのだから。なんてたちの悪い夢だ。

 最後に目の前に立つのは、いや、目の前で這いつくばっているのは、自分の妹。恨みがましく睨み付け、呪詛を吐き出す。

 ――いやだ……。聞きたくない……。

 お兄ちゃんなんかいなければ……。

 

 

 Side:Stern

 シュウの部屋に戻ると、ひどくうなされた声が聞こえてきた。慌ててシュウに駆け寄ると、苦しそうに喘いでいる。目からは涙が流れ、息も荒い。とてもではないが、黙って見ていることなどできない。

「シュウ」

 シュウの肩を握り、軽く揺さぶって呼びかける。だが治まらない。

「シュウ!」

 強く、叫ぶように呼びかけ、頬を軽く叩く。するとシュウがゆっくりを目を開き、シュテルを見る。焦点が合っていない。

「シュウ、大丈夫ですか……?」

 問いかけ、少し待つと、シュウの瞳の焦点がようやく合ってきた。シュテルの姿を認めたのか、安堵の表情を浮かべる。

「シュウ……」

 もう一度呼びかけると、シュウはシュテルの手を掴んできた。少し驚いてしまい、だがシュウの手が震えていることに気がついて首を傾げる。

「ごめん、シュテル……。ちょっとだけ、このままで……」

 弱々しい声がシュテルの耳に届く。シュテルはわずかに困惑しながらも、シュウの手をしっかりと握り返した。

「はい。私はちゃんとここにいますよ」

 

 十分近くもそのままの体勢で過ごし、やがてシュウがゆっくりと体を起こした。

「もう大丈夫ですか?」

「うん。ごめんね」

 申し訳なさそうに謝る少年。その姿はとても儚く見えて、今にも消えてしまいそうに思える。

「ちょっと昔の夢で……。こんなにひどいのは久しぶりだけど……って、ああそうか……。今日は何日だっけ」

 シュテルは首を傾げながらも日付を答えると、シュウは得心したようにうなずいた。

「それでか……。去年と同じだ。去年の今日も、頭痛と夢がひどかったから」

 仕方ないね、と自嘲する。心の底から自分を嫌悪しているような笑みだ。自分の存在を否定してしまうような笑み。

「今日が、どうかしたのですか?」

 おそるおそる聞いてみると、シュウが小さく首を振る。

「ただの事故。二年前にね。まあそれが発端で僕は追い出されたわけだけど」

「事故が原因で? 何故?」

 シュウが無表情にシュテルを見つめてくる。踏み込みすぎただろうか、と不安になっていると、やがてシュウは悲しげに微笑んだ。

「つまらない話だよ? どこにでもあるような、そんな話」

 それでも聞きたい? と視線で問いかけてくる。シュテルは迷わずうなずいた。

「はい。教えてください。貴方のことを」

 

 

 Side:Past

 最初は本当に些細なことだった。シュウがまだ四歳の頃、保育園で両親が迎えに来るのを待っていた。いつもの日常。いつもの光景。シュウは友達と一緒に保育園の遊具で遊んでいた。

 そこに降ってきたのは小さな石。どこから飛来したかも未だ分かっていない。その石はシュウたちの保育園へと落ち、小さいながらも爆発を引き起こす。石の落下地点の側にいた園児数名が重軽傷を負う。シュウもその中にいたが、幸い擦り傷程度だった。

 これが、一回目。

 それから数ヶ月後、再び同様の事件が起こる。今回は日曜の公園で。子供を連れて遊びにきている人などが大勢いた中に、また石が落ちてきて小規模な爆発を起こす。幸い死者などはいなかったが、人が大勢いたために被害は前回よりも多くなった。その時もシュウは両親に連れられてそこにいて、擦り傷だった。

 それが、二回目。

 一度や二度ならまだいい。誰もが不運な事故だと思う。二度も被害にあった被害者だと皆が同情する。

 だが、三回目からは周囲の反応は変わってきた。

 三回目はデパートの屋上。遊戯コーナーがあり、そこに落ちた。そこにはまたしてもシュウが居合わせる。三回の落石の事故に必ず居合わせる子供。それに最初に気づいたのは、幼稚園での友人だった。

「しゅういちくん、またなの? さんかいとも、ぜんぶだね!」

 聞いたのは、その子の母親。それを聞いた母親は周囲に警告を発する。あの子は危ない、と。最初は誰も相手にしなかったが、四回目、五回目と続くと同調する人が増えてきた。

 そして、シュウが五歳になる頃には、シュウに近づく人は誰もいなくなっていた。よく遊んだ友人ですら、シュウに近づくことはない。保育士ですら極力関わろうとはしてこない。どこに行っても、孤独になった。

 唯一の例外が両親と妹だった。両親は、気にすることはない、いつか分かってくれるとシュウを慰め、妹はまだよく分かっていないこともあったのだろう、純粋にシュウと遊んでくれていた。数少ない味方だった。

 小学生になってもそれは変わらない。両親はシュウがいじめられるかもと不安に思っていたらしいが、まず近づくことを忌避されるがためにそれすらもなかった。

 孤独のまま、ただ家族と共に過ごす時間が流れ。シュウの妹ももうシュウのことを理解していたが、それでも一緒にいてくれていた。

 二年生に進級してからの休日。家族で山へとピクニックに行く予定だったが、急な仕事で両親は一緒に行けなくなった。その代わりに、隣に住む親切な人が一緒に行ってくれることになった。周囲と同調してシュウを避けてはいるが、そこまで気にしていない数少ない人物。その人が運転する車で山道を登る。

「あ! 流れ星!」

 車の中。隣で嬉しそうに叫ぶ妹。呆れる自分。

「何言ってるの。今は昼だよ」

「ほんとだよ! ほんとに流れ星だよ! ほら!」

 必死な声。窓の外を示す小さな手。そちらへと目をやる自分。そして見つける、こちらへと向かってくる光の塊。

 そして……。

 石は車へと直撃した。車は道から逸れ、崖下へと転落する。回る視界。よく分からない浮遊感。次に目を覚ました時には、我が目を疑った。

 運転席の人は、死んでいた。どんな死に方をしていたかは覚えていない。思い出そうとすると吐き気を催す。おそらくとても悲惨な死に方だったと思う。

 隣の妹は、両足が折れ曲がった車のボディに潰されていた。呼吸はあるため、死んではいない。

 そして自分は。

 かすり傷だった。腕や足をすりむいただけ。ただ、それだけ。

 幼心にも異常性を感じてしまう。同乗している二人だけが被害を受け、自分はほぼ無傷。運がいい、とはとてもではないが思えない。

 助けを求め車から出ようとしたが、ひしゃげた車内から出ることはできなかった。

 それから数時間が経過して。

 駆けつけてきたのは両親だった。どうやって知ったかは分からないが、シュウと妹の二人を助け出すと、さめざめと泣いていた。その腕の中で、シュウは安心して眠りへと落ちていった。

 

 病室で目を覚ました時には、状況は一変していた。

 両親までもが、シュウを避けるようになっていた。退院の時に迎えに来た時も、最低限の会話しか交わさなかった。

 シュウはすぐに退院して、向かった先は、葬儀場。誰の葬式かは、言わなくても分かる。運転をしていたあの人だ。家族だろうか、みんなが泣いていて、シュウに気づいた多くの人が敵意をむき出しにしてシュウを睨んできた。ひそひそと、シュウに聞こえない声で会話を交わす。時折漏れ聞こえてくる声は、死神、呪われた子、など。

 唐突に一人の女性が立って、

「あんたさえ……あんたさえいなければ……!」

 女性は周囲の大人が取り押さえ、シュウ自身も周りの大人に連れ出されていた。

 病院では妹が目を覚ましていた。シュウを見て、妹は不可解なものを見るかのように目を細める。そして言った。

「どうしてお兄ちゃんは元気なの?」

「どうして私だけこんななの?」

「どうして私だけ、歩けないの?」

 シュウは何も答えられない。ただただ黙ってうつむいて。

「お兄ちゃんさえいなければ、私は元気だったの?」

 幼い妹の言葉。ただそれだけ。ただそれだけのはずなのに、今までで一番心を抉った。

 自分さえいなければ。その時は本気でそう思った。

 そして自宅ではさらに追い打ちをかけられる。

「住むところと金は用意してやる。学校も手配しよう。明日には家を出ろ」

 父の言葉。

「貴方がいると、わたしたちの家までが壊れちゃうのよ。分かるでしょう?」

 母の言葉。

 味方は誰もいなくなった。

 

 そうしてシュウは、両親に連れられて遠くの土地へとやってきて。

 そこで一人残されて、今に至る。

 ただの、無知で不運な子供の話。

 

 

 Side:Hero

「こんなところ、かな」

 話し終えたシュウは、小さくため息をついた。シュテルは黙って聞いてくれていた。それがとてもありがたい。人に話したためか、少し気が楽になった気もする。

「そんなこんなで、僕は家族にも見捨てられて一人暮らし。ここに来た当初は、他人との関わりも絶ってたぐらいだよ」

 外に連れ出してくれたのは、今の学校の教師だ。不運すぎるが、君は無害だと無理矢理外に連れ出された。また誰かが傷つけば理解するだろう、そう思っていたが、妹との事故以来、石が降ってくることもなくなった。

「僕が引き寄せてたのか、ただの不運なのか、今でもそれは分からないけど……。少なくとも、僕と一緒に出かけなければ、あの人は死ぬことはなかったし、妹も不自由なことにならずにすんだとは思ってる。事故の後だから何とでも言えるだけかもしれないけど」

 シュウはシュテルの表情を見る。うつむいて、何かを考え込んでいた。シュウは苦笑する。

「もしこれ以上僕といるのが嫌になったなら、気にしなくていいよ。連絡しないようにするから、シュテルも……」

「それはないので気にしないでください」

 即答だった。何かを考え込んでいたはずなのに、あまりの返事の早さに思わず唖然としてしまう。自然と笑みがこぼれた。

「……ありがと」

「お礼を言われるようなことは何もしていませんが……」

 本気で意味が分かっていないようにシュテルは首を傾げていた。それが、そのことがとても嬉しい。

「ところで、シュウ」

「ん?」

 話し終えたところで空腹感を覚え、シュウはシュテルが持って帰ってきたビニール袋を見る。シュテルが無言で差し出して、シュウは恥ずかしそうにそれを受け取って中を漁る。

「ご両親のことですが」

「うん」

 おにぎりとプリン、ゼリーがあった。シュウはおにぎりを取り出して、包装をとって。口へと運び、

「本当にシュウを見捨てたのですか?」

 そこでぴたりと動きを止めた。

「……どういうこと?」

「この世界のことなので私は正確には知りませんが、私立の学校というのはとてもお金がかかるものだと聞いています。本当に見捨てたのなら、わざわざそんなお金を出すでしょうか。むしろそもそも、まあ質はともかくですが、住む場所まで用意して。体面もあるのかもしれませんが、少し不可解だと感じました」

「…………」

「シュウ。貴方のご両親は、そこまで貴方を嫌ってなどいないのでは……」

「やめて」

 力のないシュウの声。弱々しい声だったのに、シュテルはそれ以上続けることができなくなっていた。シュウは目を閉じ、小さく首を振る。

「これでも……割り切るのに苦労したんだよ。明日には迎えに来てくれるって、何度も思ったんだ。今更……そんな希望なんて……いらない、よ……」

 少しずつ、声がかすれていく。いつの間にか、涙が溢れていた。

 シュウは大人びているが、実際には普通の小学生だ。親が恋しくないはずがなければ、一人で寂しくないはずがない。今まで多くのことを耐えてきたのだろう。それを察したのか、シュテルは目を閉じ小さく頭を下げた。

「すみません。忘れてください」

「……うん。僕の方こそごめんね。心配してくれたのに」

 いえ、とシュテルは首を降った。

重たい沈黙が部屋を支配する。シュウは急いでおにぎりを食べてしまうと、努めて明るく言った。

「さあて! 今のことは忘れて! 今日は何しようかな!」

 シュテルはそんなシュウを見て、少しだけ寂しげに微笑んだ。

 

 昼食を食べて、その後は何もすることがないという理由で場所を移動することになった。向かうのはもちろんシュテルたちのマンションだ。しっかりと戸締まりを確認して、アパートを出る。

 そして絶句した。

「どうしました? シュウ」

 目の前で立ち止まったシュウを心配してシュテルが声をかけてくる。続いてシュウの目の前にいる人物を見て、さらに首を傾げる。

 黒髪黒目、スーツ姿の男。年は自分の記憶に間違いがなければ三十五歳だ。

「……お父さん」

「……っ!」

 シュテルが驚いて目を見開く。シュウはただ黙って相手を見据える。今頃何しに来たとでも言うように。

「…………」

 父は何も言わない。ただ黙ってシュウを見ている。シュウも無言で睨み続ける。やがて父は、なぜか満足したようにうなずいた。

「生きているようで何より」

「…………」

「その子は友達か?」

 父がシュテルを見る。シュテルは小さく、どうも、と会釈をする。

「ふむ。私たちに多くの迷惑をかけてしぶとく生きているかと思えば、友達まで未だ懲りずに作っているとは」

 シュテルの目がゆっくりと細められる。不快感を露わにしているが、シュウは気にしないでと笑いかける。

「最低限のお金はもらっているので。いつも感謝しています。お父さん」

「当然だ。しかし……」

 尊大な態度を崩さない父。いつからこうなったのだろうか。昔はとても優しかったのに。父はシュテルを少し観察して、鼻で笑った。

「お前にはふさわしい友達だな。平日の昼間に遊びほうけるなど、くだらない人間……」

「黙れ」

 シュウの冷たい声。父が思わず言葉を止める。

「いろいろと迷惑をかけた、いや今もかけてるから、僕のことは好きに言っていいよ。でも、シュテルは僕の大事な人だ。あなたでも、悪く言うのは許さない」

 父を睨み付けて言い捨てるシュウ。父は驚いているようだったが、小馬鹿にするように鼻で笑う。シュウからシュテルへと視線を移し、

「……っ!」

 シュテルが目を大きく見開き、息を呑んだ。こんな反応を見るのは初めてだ。

「今日は少し確認しにきただけだ。これでも忙しいからな。せいぜいがんばることだ」

 父はそう言い残し、歩き去って行く。シュウはただ黙って見送るだけだった。

 

 

 Side:Stern

 マンションへと向かう途中、シュテルはシュウに鍵を預け、先に向かってもらうことにした。自身はシュウを見送った後、別の場所へと転移する。たどり着いたのは、アースラだ。

 ブリッジに向かうと、艦長のリンディがにこやかに出迎えてくれた。

「あら、いらっしゃいシュテルさん。今日は何も仕事がなかったはずだけど、どうかしたの?」

「はい。個人的に貴方にお願いしたいことがあります」

 私に? とリンディが驚いて聞き返す。シュテルからの個人的な依頼など滅多にないので驚くのも当然だろう。むしろリンディに対しては初めてかもしれない。

「ある人物のことを調べてもらいたいのです。管理局の過去の局員から含めて」

「誰かにもよるわね……」

「シュウの父親です」

 リンディが眉をひそめる。どういうこと? と真剣な表情で問いかけてきた。

「先ほど、シュウの父親とお会いしました。その時に……」

 そこで一度言葉を切り、目を閉じる。これを言えばもう引き返せないが、少しでも真実に近づけるなら。目を開き、告げる。

「『息子に関わるな』という念話を送られました」

「……っ!」

 リンディが息を呑む。信じられない、といった様子で。そしてシュテルは最後の言葉を告げた。

「シュウの父親は魔導師です」

 

 

 Side:Past

 事故の直後、自分と妹を抱く両親。暖かな白い光が自分たちを包んでいた。自分と妹の小さな傷がふさがっていく。それを見て、シュウは、どこか楽しそうに笑った。

 ――魔法みたいだ……。

 シュウがつぶやく。両親がそれに気づき、優しく微笑む。

 ――そうだよ、お父さんたちは魔法使いなんだ。

 優しい声。シュウはすごいなと笑う。

 ――だから安心しておやすみ。

 そこで突然シュウは眠りへと落ち、短い記憶は奥深くへと封じられた。

 




だらだらとしてますね。これは読んでいて苦痛になりそうです。
申し訳ありません……。

今回は主人公視点の過去回想です。
細々とした謎っぽいものを残しているので、いずれ回収したいですね。
だいたい20話ぐらいの時に。

次回から少し更新頻度が落ちます。そろそろ本気でつらくなってきました。
微妙に睡眠時間を削っていたりしていたので……。
月水土のどこかで、週に1回は更新したいなとは思います。

あと活動報告でこっそりネタ募集したり……しよう、かな……?


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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