ギフテッド   作:龍翠

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今回はレヴィメインです。


第十三話 フェイト

 

 ある休日の昼前。シュウは今日もシュテルたちのマンションにいる。今日はゆっくり来ようと思っていたのだが、書店に向かう途中にレヴィに見つかり、半ば強制的に連行されて今に至る。シュウを連行した張本人であるレヴィは、連れてきたことで満足したのかテレビ番組に夢中になっていた。

 テレビに流れているのは、最近話題の特撮だ。先ほど聞いた話では、休日ということもあり一話から一挙放送しているらしい。特にすることもないシュウも、レヴィの隣で一緒に見ている。

「でね! でね! 次の敵がすっごくかっこいいんだ! でも大幹部が変なことするせいで……」

 ネタバレ全開である。佳境を迎える頃にはどのように決着がつくか分かってしまう。それでも見ていておもしろいと感じるのは、番組の出来がいいためか。

 やがて正午になり、その特撮の特集番組が終わる。おもしろかったー、と言ってレヴィが立ち上がる。

「さて! 行こう、シュウ!」

「いやどこに? というより聞きそびれていたんだけど、今日はレヴィ一人なの?」

 現在、部屋にはシュウとレヴィの二人きり。他の三人の姿は見えない。それを聞くと、レヴィはうなずいて答えてくれる。

「うん。シュテるんはアースラに行ってて、王様とユーリは子鴉っちに会いに行ってる。ボクはシュウが来たら……えっと……。おもてなし? しろって言われてる!」

「へえ……。じゃあ一人でお留守番か。でもさっきは出歩いてたね」

「シュウを迎えに行ったの! そしたら家にいないし! 探したんだからね!」

「あ、はい。すみません」

 なぜか怒られた。少し理不尽だと思うが、悪い気はしないので気にしないでおく。

「それで、どこに行くの?」

 シュウの言葉を聞きながら、レヴィは出かける準備をする。その際に小さな紙片を握りしめて、それに書かれていることを何度も確認している。シュテルかディアーチェにでも持たされているのだろうか。やがてレヴィは出かける準備を終え、シュウに向き直った。

「オリジナルのところ!」

 

 レヴィのオリジナル。つまりはフェイト・テスタロッサ。聞いた話によれば、レヴィが一人で留守番すると聞いたフェイトが心配して、レヴィを自宅に招待したらしい。さらに後で聞いた話によれば、最初は渋っていたレヴィだったが、フェイトの、カレーもあるよ? の一言で即決したそうだ。

 シュウはフェイトの自宅を知らないのでレヴィに案内してもらう。先導するレヴィは鼻歌を歌い、とても機嫌が良いようだ。鼻歌は先ほどまで見ていた特撮のテーマソング。

 しばらく歩き続け、やがてマンションが見えてくる。どうやらそこがフェイトの自宅らしい。

 レヴィに続いてエレベーターに乗り、上階へ。インターホンを押すと、エプロンを着用しているフェイトが出迎えてくれた。

「おいーっす! 遊びに来たよ、オリジナル!」

 レヴィが元気よく挨拶する。フェイトも笑顔になって言う。

「うん。いらっしゃい、レヴィ。それにシュウも」

「僕まで来てごめんね。迷惑じゃないかな?」

「ちっとも。気にしないで上がって」

 フェイトが先に中へと戻り、レヴィとシュウがそれに続く。奥からはカレーの香りが漂ってきた。レヴィが嬉しそうに笑顔になる。

「カレーだー!」

「もうすぐできるから、待っててね」

 フェイトはそう言うと、キッチンへと向かう。シュウはレヴィと一緒にリビングへ。リビングには見知らぬ女性がテーブルを拭いていた。

「……えっと。お邪魔します? 初めまして?」

 シュウがそう言うと、女性は苦笑する。

「アルフだよ。この姿で会うのは初めてだけどね」

「ああ……。なるほど」

 使い魔であるアルフは犬の形態と人間の形態があるとは聞いていたが、人間の姿を見るのは初めてだ。言われて見れば、確かに犬の時と同じ特徴がいくつもある。むしろ知っていながらなぜ気づかなかったのか、自分が少し恥ずかしい。

「……ねえ、アルフ」

 シュウが声をかける。アルフが顔をそむける。

「…………」

「……はあ。分かったよ……」

 アルフは小さくため息をつくと、子犬になった。すぐにシュウが笑顔になり、子犬のアルフを抱きかかえ、撫でる。

「うん。いい撫で心地だ」

「どうも」

「……むー」

 それを不満そうに見ているのはレヴィだ。拗ねたようにシュウをじっと見ている。それに気づいたのはアルフで、内心で苦笑しつつシュウに言った。

「ほら、もういいだろ? フェイトを手伝いたいんだ」

「ん。分かった。ありがとう」

 シュウが解放すると、アルフは人間形態に戻って、じゃあねと軽く手を振る。そしてキッチンへと消えていった。アルフを見送ってから、シュウはやっとレヴィが自分を見ていることに気づいた。

「ん? どうしたの? レヴィ」

「……何でもない」

 ちぇー、と口をとがらせ、いすに座るレヴィ。シュウは首を傾げるだけだった。

 

「お待たせ!」

 フェイトがカレーを四人前持ってくる。皿をテーブルに置き、いすに座る。シュウとレヴィが隣同士で、フェイトとアルフはそれぞれの向かい側に座った。四人同時に手を合わせ、いただきますと口にする。

 レヴィがすぐにカレーを口に運んだ。しっかりと味わって、呑み込む。すぐに満面の笑顔になった。

「おいしい! さすがオリジナル! すごい!」

「あはは。ありがとう」

 フェイトは楽しげに笑い、自分も食べ始める。シュウも一連のやり取りを眺めてから、食べ始める。

「ん。おいしい。甘口?」

「うん。レヴィが甘口でないと食べられないから」

 なるほど、とシュウはうなずく。そう言えばシュテルたちの家でカレーが出てきた時も、レヴィはハチミチをたっぷり入れた特製のものだった。シュウは中辛程度がほどよくて好きなのだが、誤って食べてしまったレヴィはそれすら悶絶していたほどだ。

 シュウは何度かうなずいて、レヴィに言った。

「子供だね」

「なんだとー! これでもボクはマテリアルだぞ! 偉いんだぞ!」

 味覚と知識は関係ないけど、と思いつつも、シュウはごめんごめんと笑いながらレヴィを撫でる。それだけでレヴィは気分が良くなったのか、だらしのない笑みを浮かべると、

「分かればいいんだよ。えへへー、もっと撫でてー」

「うん。なでなで」

 レヴィはご機嫌になって、大好きなカレーを食べることすら忘れてしまっている。シュウの方はレヴィを撫でながら、器用に片手で食べていた。そんな二人の様子を見ながら、フェイトは微笑む。アルフもどこか感心したような表情をしていた。

「二人とも、すごく仲がいいよね。びっくり」

「そうかな? でもフェイトもだよね? こうしてレヴィが遊びに来るくらいだし」

「カレーで釣ってるような気もするけどね」

 フェイトはレヴィの横に移動すると、手をどけたシュウの代わりになで始める。お? とレヴィが首を傾げ、フェイトを見る。

「どうしたの? オリジナル」

「ううん。何でも無いよ。ちょっと撫でていてもいいかな?」

「いいよいいよ、もっと撫でて」

 嬉しそうなレヴィ。カレーを思い出したのか、鼻歌を歌いながら食べ始める。そんな様子のレヴィを見ながら、フェイトは優しく微笑んだ。

「こうして見ていると双子の姉妹だね」

「奇遇だね、シュウ。アタシもそう思うよ」

 アルフもうなずく。それを聞いたフェイトは、そうかな、と照れくさそうに笑い、レヴィの方は無反応。カレーに夢中だ。

「フェイトがお姉ちゃんで、レヴィが妹かな? 手のかかる妹?」

「手のかかる、は分からないけど……。でもかわいいよ?」

「お姉ちゃんの感想だよねそれ」

 三人でそんな話をして、笑う。カレーを食べ終えたレヴィが皿を前に出した。

「お代わり!」

「はい。ちょっと待ってね」

 フェイトは受け取ると、すぐにお代わりを用意する。受け取ったレヴィがまた食べ始める。とても美味しそうに食べるレヴィは見ていて飽きない。

「そう言えば、レヴィ」

「ん? なに?」

 シュウが呼ぶと、口を動かしながら振り向いた。スプーンは口に入れたままだ。

「どうしてフェイトをオリジナルって呼ぶの? なのはとかは名前で呼ぶのに」

「めんどくさいから」

「……分かった。分からないことが分かった」

 呼ぶ気も覚える気もないらしい。ある意味レヴィらしいが、それ故に何を言っても無駄だろう。それにレヴィは人のことをよく愛称で呼ぶ。オリジナル、というのも愛称のつもりなのかもしれない。

「食べた食べた! ごちそうさま!」

 レヴィは満足したのか、スプーンを置く。そしてすでに食べ終わっていた他の三人のお皿も持ってキッチンへ向かう。流しにお皿を置くと戻ってきた。

「意外だ。偉いね、レヴィ」

「む! 当然じゃないか! だってやらないとシュテるんに怒られるから!」

「うん。納得した」

「でもちゃんと必ず片付けてくれるよ。たまに一緒に洗い物もしてくれるし」

「一人で待っててもつまんないから」

 それでも嬉しいよ、とフェイトが言うと、レヴィは少しだけ照れくさそうに笑った。

 

 その後は四人で他愛もない話をして、一緒にボードゲームをしたりする。フェイトとレヴィは端から見ていれば本当に姉妹のようだった。ただ、時折フェイトが少し悲しげな表情をすることが気になったが、何となく察しはつく。

 ――アリシア、だっけ……。

 フェイトの姉とも言える存在。少しだけレヴィに重ねているのだろうか。シュウはアリシアのことは知らないので憶測にもならないが。

「あ、もうこんな時間だ!」

 レヴィが声を出す。時計を見ると、午後五時を回っていた。太陽はしっかり傾いている。

「そろそろ帰ろう、シュウ」

「そうだね。遅くなったらシュテルに怒られるし。……レヴィが」

「あう……。帰るよ! 急いで帰るよ!」

 慌てて玄関へと走るレヴィ。シュウもそれを追って玄関へ。

「あ、待ってレヴィ。お土産」

 そう言ってフェイトが渡したのは、棒付きのキャンディ。大きな袋に入ったもので、中はいろいろな色のキャンディがある。

「まんまるみずいろ!」

 レヴィが嬉しそうに叫ぶと、すぐに包装を破って中から水色のキャンディを取りだした。それを口に入れ、うなずいて言う。

「おいしい! やっぱり水色に悪いものはないな!」

「あはは……。そうだね」

「はい、シュウ」

 シュウもレヴィからキャンディを受け取ると、口に入れる。甘い味が口の中に広がる。

「うん。おいしい。ありがとう、レヴィ。フェイトも」

「ううん。気をつけてね。またね、レヴィ、シュウ」

 フェイトの見送りを受けて、シュウとレヴィは帰路についた。

 

 

 Side:Fate

 二人を見送って、フェイトは静かにドアを閉めた。急に静かになった部屋を見回して、フェイトはため息をつく。寂しくないと言えば嘘になるが、言っても仕方のないことだ。リンディとクロノに心配をかけるわけにはいかない。

「それにしても、レヴィはまた一段と元気になってたね」

 洗い物を始めながらフェイトが言うと、それを手伝うアルフがうなずいた。

「そうだね。シュウに懐いてるみたいだったし」

「すごいよね。どうやって信頼を築いたのかな」

 もちろんシュウに打算などがないことは分かっている。シュウはいつも自然体だ。生活面でいろいろあることは知っているが、少なくとも自分が知る限り、交友関係ではいつも楽しそうにしている。それがあの子たちにいい影響を与えているのかもしれない。

「私も……見習おうかな……」

 フェイトがそうつぶやく。あの二人と遊んだ先ほどの時間を思い出しながら。

 自然と表情が柔らかくなり、笑顔が生まれていた。

 




リンディとクロノは仕事で家にいないことの方が多いのではという妄想。
ちなみに私はサウンドステージを聞いたことがなかったりします。
そのあたりの設定との違いがあればごめんなさい。
時間があれば修正したいとは思いますので、教えていただければと。

今回はレヴィのオリジナル、フェイトにも少しスポットを当ててみました。
……あまり料理上手なイメージはないですが、カレーなら作れますよ、ね……。
いや、普通に上手かもしれませんが。

ちょっとした裏設定。
レヴィが持っていた紙片。シュテルやディアーチェが、出かける前にチェックする項目を書いてくれています。
多分語られることがないのでここで書いておきます。

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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