ギフテッド   作:龍翠

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シュテルメインですが、空気です。
今回は出自です。ひたすらに出自です。長いです。つまらないです。
興味のない方はとばすことを強く推奨します。
読んで後悔しても知りませんよー!


第二十話 真実

 

 暗い闇の中、彼は目的もなく漂っていた。行きたいところも何もない。ただ、流れに任せてそれは進んでいく。時空の流れに身を任せて。

 やがて彼はたどり着いた。どこかの世界。名前など知るはずもない。興味もない。興味があるのは、願いだけだ。最初で最後のマスターの命令を唯々遂行するのみ。やがて彼は、二人の人間を見つける。つい先ほどまで泣いていたのか、二人とも目が赤い。二人の心の内を探り、彼らの願いを聞こうとする。

 その瞬間、流れ込んできたのは深い悲しみだった。体が引き裂かれそうな悲しみ。そして叶うはずもない願い。あまりに悲壮で切実な願い。その願いを聞いて、彼は悩む。彼には無から有を生み出すことはできない。だが、どうしても二人の願いを叶えてやりたい。

 だから彼は、決断した。

 

「ん……」

 シュウはゆっくりと目を開く。最初に視界に入ったのは、鈍色の天井だ。当然自分の部屋ではなく、シュテルたちのマンションでもない。

 ――夢、かな……。何の夢だったっけ……。

 思い出そうとするが、ほとんど思い出せない。暗い場所にいた気がするが、それだけだ。

 ――いや、今は夢のことよりも……。

 周囲を確認する。ベッドだけがある部屋で、シュウはその部屋に寝かされていた。ドアは一つだけで、そのドアの形状からここがアースラの中だろうことは分かる。次に疑問に思うのは、どうして自分がここにいるのか、ということだ。

 目を閉じ、記憶を掘り起こす。シュテルと別れた後、シュウは帰りの切符を買って、ホームで電車を待っていた。そこで声をかけられて、振り返ると、

「ディアーチェと……ユーリ……」

 二人がいたのは覚えている。ディアーチェは不機嫌そうな表情で、ユーリは申し訳なさそうな表情だった。それを認識した瞬間に意識が途切れたはずだ。つまりは、彼女たちが自分に対して何かをしたのだろう。

 なぜ、と思うが考えても答えが出ないことは分かっている。シュウはすぐに思考を中断すると、ドアへと向かう。だが、どうやってもドアは開かなかった。

「……なんで?」

 首を傾げ、ベッドへと戻る。先ほどは気がつかなかったが、ベッドの側には小さなテーブルがあり、水とお菓子、果物が用意されていた。しばらくここにいろ、というような意図が伝わってくる。シュウは苦笑しつつもベッドに腰掛けて、誰かが来るのを待つことにした。

 水を飲んだところで、唐突に中空にモニターが出現し、驚いているシュウの目の前で別室の映像が流れ始めた。

 

 

 Side:Stern

 テーブルといすがあるだけの部屋にシュテルはいた。テーブルの反対側には二人、シュウの父親ケインと、母親のさくらがいる。ここまで二人は特に抵抗することもなく、大人しくついてきていた。

 二人の向かい側に座るのはリンディとクロノだ。シュテルはその側で立って、シュウの両親の様子を観察している。

 やがて、ケインが口を開いた。

「どういうつもりかな? 管理局」

 どこか不機嫌そうな声だが、緊張の色もある。リンディはそのケインに対し、笑顔で答える。

「少しお話を聞かせていただきたくお呼びいたしました。秀一君のことについてです」

「あれが何かしましたかな? あれとはほとんど絶縁状態ですが、まあ一応親だ。責任ぐらいはとりましょう」

 おいくらで? とケインが薄く笑いながら聞いてくる。あまりに不快な言い方だが、さすがと言うべきか、リンディとクロノは表情を変えなかった。

「いえ、特に何もしていません。ただ秀一君のことについて聞きたいだけです」

「ふむ。生活のことですかな? これは親子の問題。あなたたちが気にすることではないはずですが」

 その通りだとは思う。ただし、普通の親子なら、という前提条件があるが。

 リンディがシュテルへと目配せする。シュテルは一つうなずいて、少し前まで自分が読んでいた資料を二人に差し出した。怪訝そうな表情でそれを受け取った二人だが、それを読んで表情を険しくする。やがて、シュテルを睨み付けてきた。

「ずいぶんと調べたようだね。こんな個人的なことまで調べられるとはさすがに思わなかったよ」

 口調が、変わった。いや違う、とシュテルは内心で否定する。。口調が戻ったと捉えるべきだろう。おそらくはこれが本来の彼であり、シュウの前でのあの態度は、仮面を被ったものだ。

「改めて、お話を聞かせていただきます」

 シュテルがそう言うと、ケインはため息をついてうなずいた。

「貴方たちにはロストロギアの無断使用の疑いがあります。理由などあれば聞きますので、正直に話してください」

 そう言ったのはリンディだ。ケインとさくらがうなずく。

「管理局が調べた記録では、貴方方のお子さんは生まれることなく亡くなっているそうですね。秀一君は養子ですか?」

 リンディが聞いて、ケインとさくらが首を振った。二人で目配せして、今度はさくらが口を開く。

「養子じゃないわ。そんなことは調べているはずでしょう?」

 そこまで言ってから、さくらは不機嫌そうに眉をひそめた。三人を順番に睨み付ける。

「ある程度の予想をしているのなら、先にそちらを話してほしいわね」

 その言葉に、分かりましたとリンディがうなずいた。

 

 

 Side:Hero

「…………」

 シュウは黙ってモニターに映る映像を、食い入るように見つめていた。モニターに映る映像は、別室での光景だろう。なぜここに両親がいるのか、とは思うが、会話の流れから察するにどうやら魔法の関係者だったらしい。全く気がつかなかった。

「シュウ。入るぞ」

 部屋のドアが開かれ、ディアーチェが入ってくる。シュウは力なく笑うと、いらっしゃいと出迎えた。その表情を見て、ディアーチェが一瞬だけ言葉に詰まるが、すぐに鼻を鳴らしてシュウの側まで来た。

「先ほどはすまなかった。納得させてから連れてくるべきなのであろうが……」

「いいよ。気にしないで」

 シュウの言葉にディアーチェは少し黙ると、分かったと小さくうなずいた。そしてシュウにクリップで留められた紙束を差し出してくる。受け取り、内容を見る。自分の両親について書かれたものだ。少しだけ驚き、モニターに再び視線を向ける。

「シュウにはつらい内容になるだろう。聞かない、という選択肢もある。我らは強制はせぬ」

「……大丈夫。聞くよ」

「……そうか」

 ディアーチェはそれきり黙り込んだ。だが退室するわけでもなく、側にいてくれる。何も言ってくれないが、側に誰かがいるというだけで心強い。シュウはディアーチェに感謝しつつ、モニターの音を聞きながら手元の資料に目を落とした。

 

 

 Side:Stern

「貴方たちが願いを叶えるロストロギア、ギフテッドを調べ始めたのはお子さんが亡くなってからですね?」

 リンディの言葉に、ケインとさくらがうなずいた。二人とも神妙な面持ちだが、別段取り乱す様子はない。

「どういった手段かは分かりませんが、貴方方はギフテッドを手に入れた。そして、その研究を始めた。管理局などの然るべき機関に提出しなかったのは、それを利用するため」

 またもうなずく二人。だが今度は少し時間がかかった。答えることをしたくないかのように。

「貴方方がギフテッドを利用する目的は……。お子さんの蘇生、ですね? その結果が秀一君であり、つまりは秀一君はギフテッドによって蘇生された子。こんな推測をとりあえずは立てましたが、間違いはありますか?」

「いや、ない。見事に正解ですよ」

 ケインがやれやれと苦笑しつつ首を振る。さくらも諦めたようにため息をついて笑った。

「まああれの存在が知られた時点ですぐにばれるとは思っていましたけどね。それにしても、手が早い。それで、私たちはどうすればいいです?」

 ケインの問いかけに、リンディとクロノは少し呆気にとられた。今ある情報で簡単に推察しただけのものが正解だとは思わなかった。だが二人はそれを認めている上に、自分にある罪とはしっかりと向き合うつもりのようだ。今はこれ以上を求めるべきではないかもしれない。

 事実確認や裏を取るのは後でさらに詳しくするとして、今はとりあえず二人にもっと詳しく話を聞くことが先決だろう。リンディはそう判断して、これからのことを提案しようとして、

「……待ってください」

 そこでシュテルは口を挟んだ。リンディがこちらへと振り向いてくる。シュテルはただ黙ってケインとさくらの様子を観察していた。今は二人とも、こちらを不思議そうに見つめている。

 考える。ケインとさくらはギフテッドを使用後もギフテッドに対する研究を続けていた。二人の経緯から疑われることは容易に想像できるだろうに、それでも続けることを選んだ。まだ手元にあるということだろうが、子供の蘇生以外に何かに使ったということか。

 手元にある、という条件なら、なぜ管理局に伝わるような公の場で研究を行ったのかも疑問だ。他のロストロギアの資料などは自由に手に入るのかもしれないが、ギフテッドそのものは彼らが保有している。そのものを研究した方が早いのではないだろうか。わざわざこの世界を離れなくても、ここで静かに研究を続けた方が確実では。

 つまりは、ギフテッドは彼らの手元にはない。もしくは。

 ――手元にあっても、容易に調べることができないか。

 先ほどまでの二人の様子を思い出す。罪を負うことを良しとしているような素振りだった気がする。自分たちに罪があると決まれば、それを急いで決めてしまいたそうな。そう思うと、さくらのあのため息は、諦めではなく安堵では。

 自分たちのことはどうでもいい、と。守るべきものが他にあるのか。

 少し前のことを思い出す。シュウの家にケインがやってきたことを。そのタイミングを。今まで放置されていたシュウの元へとやってきた理由。シュウの家の監視カメラ。そこから得られる情報で変わったことと言えば、

 ――私たちの存在。

 シュテルはまっすぐにケインとさくらを見る。二人はシュテルの考えを察したのか、わずかに顔を青ざめさせた。それでもシュテルは言う。

「これは私の勝手な推測です。貴方たちはギフテッドを使っていません」

 リンディがわずかに眉を持ち上げる。続けて、と手で合図を送ってくる。

「ギフテッドで願いを叶えたのではなく、ギフテッドが願いを叶えた。貴方たちは、いつの間にか願いを叶えられていただけです。違いますか?」

 押し黙る二人。シュテルは続ける。

「ギフテッドの研究をこの世界でしないのは、容易に利用することができないからです。それでも研究を続けるということは、利用できないだけで身近にあるのですね」

 ケインがシュテルを睨み付ける。さくらが顔を伏せる。シュテルはその様子に小さくため息をついた。

「西崎秀一という存在が、ギフテッドそのもの。違いますか」

 シュテルの言葉に、ケインとさくらは押し黙る。しばらくの間は無言の時間が流れたが、やがてケインが力なくうなずいた。それを見てさくらが驚くが、ケインが悲しげに微笑むとさくらも目を伏せてうなずいた。

「シュテルさん、だったね。君の推測通りだ。間違ってないよ」

 そうですか、と答えるだけにとどめ、シュテルはため息をついた。今の推測は、今ある情報から推測できるものの中で、ある意味で、自分にとって一番当たってほしくないものだった。

「詳しいお話を聞かせていただけますか?」

 黙り込んだシュテルに代わり、リンディが言う。ケインはうなずいて、ゆっくりと語り出した。

 

 

 Side:Past

 ある冬の日、ケインは公園のベンチで隣に座る妻を優しく慰めていた。妻は、さくらはもう数時間も前から泣き続けている。何度も何度も、自分と死んでしまった子に謝っている。ケインとさくらに捕まえられた犯罪者が、脱獄して逆恨みで二人を襲った。悪いのは相手であってさくらではないのだが、それでもずっと謝り続けている。

 特に、生まれてくるはずだった子に対して。

 ケインはさくらを立たせると、自宅へと向かって歩き出す。雪が降って積もっている。ここにいては風邪をひいてしまうだろう。さくらはなかなか立ち上がろうとしなかったが、ケインの懇願を聞き入れて重い腰を上げてくれた。

 それを見つけたのは、その帰り道でだ。

 道中に赤ん坊が捨てられていた。狭い道の隅に、裸の赤ん坊が雪の中にいた。ケインは驚きながらも慌てて赤ん坊を抱き寄せる。一体親はどうしたのか。周囲を見回しても誰もいない。

 どうしたの? とさくらがケインの抱く赤ん坊を見る。驚くさくらに、ケインは言った。

 とりあえず警察に届け出よう、と。

 その後、この国の組織が手を尽くして赤ん坊の親を探したが、手がかりは一切なく、結局見つからなかった。その結果、養護施設に預けられることになったのだが、

 私たちが引き取ります。

 ケインとさくらは、その赤ん坊を引き取ることにした。

 自分が拾ったから放っておけない、というのがケインの理由であり、さくらは、死なせてしまった自分の子の分も生きてほしい、という思いがあった、とのことだ。

 自分の子に付けるはずだった名を、秀一という名を与え、我が子のように大切に育てた。その数年後に実子も生まれる。そして、異変が起き始めたのはそれからすぐのことだった。

 秀一の周囲でおかしなことが起こり始めた。悪い話ばかりが目立つが、実はもう一つある。秀一が知るはずもない誰かの落とし物をよく見つけてくるという些細なものだ。この二つを手がかりに、今まで二人の中で禁忌としてきた秀一に対する研究を始めた。

 

「その結果、秀一の存在に行き着いた。ギフテッドそのものだということに」

「よくその考えに至りましたね……。何か理由が?」

「ああ……。今はもうないが、その頃はまだ、秀一は微弱ながら魔力を持っていたんだ。秀一が探し物をする時にその魔力が少し大きくなる。そのデータを取って当てはまるデータがないか探していたところに、たまたま研究施設に居合わせた研究者が言ったんだ」

 

 ――ケインさん。お久しぶりです。何をお調べですか? ……おや、この魔力の波長……。どこかで見覚えがありますね。

 ――ああ、そうだ。思い出しました。確かロストロギアの中にそれと同じものがあったはずですよ。

 

 その言葉を頼りに管理局のデータベースからロストロギアを一つずつ調べていき、完全に一致したのが、一致してしまったのが、ギフテッドだった。

 次に調べるのは、なぜ秀一の周囲で異変が起こるのか。こればかりは最後まで分かることはなく、時間だけが流れていった。やがて、秀一にとって忘れられない運命の日が訪れる。人を死なせ、妹を巻き込んでしまった日。この事故のため、二人は最も有力視していた仮説を検証することにした。

 自分たちの魔力がギフテッドに何かしらの影響を与え、異変が起こっているのでは。

 この仮説を信じて、ケインとさくらはその対策に乗り出した。自分たちの魔力に反応するなら、自分たちから遠ざけておけばいい。魔力のない場所まで遠ざけてしまえばいい。その時から二人は仮面を被った。秀一の呪いを嫌う最低最悪な親の仮面。その仮面で感情を隠し、秀一を家から追い出した。避難させたのだった。

 

 

 Side:Stern

「そんな演技をする必要があったのですか?」

 ケインの話の後、シュテルが聞く。ケインは分からない、と首を振ったが、

「でも、ただ遠ざけるだけじゃだめだ。優しくしていれば、秀一は帰る家があると思ってしまう。帰ってきてしまう。その時に何か起こってからでは遅いんだ」

「だから、私たちはシュウを追い詰めた。精神的に追い詰めて、私たちが嫌いになるように」

 さくらが言葉を引き継ぐ。シュテルは、そうですか、とため息をついた。

「貴方たちが罪を被ろうとしたのは、シュウを守るためですね」

 さくらがうなずく。

「管理局はロストロギアを収集して安全に封印する。それは人の形を取っていても例外ではないでしょう。特に、実際に異変が起きてしまっているのなら」

 リンディは目を伏せて重くうなずいた。異変を起こすロストロギアならば封印しなければならない。例えそれが人の形を取っていても。

「だから俺たちが罪を被って秀一から注意が逸れるなら、それでいいと思ったんだ。……もう手遅れだけどね」

 自嘲気味に笑うケイン。シュテルは、そのケインを冷たく見据える。

「貴方たちはそれで満足でしょうが……。シュウの気持ちを考えたことがありますか?」

「……それは……」

「シュウは毎年、最後の事故の日を思い出すそうです。そのたびに体調が悪くなるそうです。たった一人でその苦しみに耐えているシュウの気持ちを、考えていますか?」

 考えているとは言わせません、とシュテルは先に相手の口を塞いだ。静かに冷たく相手を見据え、続ける。

「一つ、教えておきますが。魔力から避難させるために海鳴を選んだようですが……。この町には、先天的に魔力を持って生まれた子がいます。貴方たちを超える魔力資質を持った子が。当然訓練など受けていないのでかなりの量の魔力が漏れていたと思いますよ」

「……っ! それは、つまり……」

「貴方たちはきっと、ここに送ってから異変が起きないから仮説は正しかった。そう思ったのでしょう。それはただの偶然です。仮説が正しかったのなら、被害が大きくなることはあってもなくなることはあり得ません。……まあ……。貴方たちの気持ちも嘘ではないでしょうし、私が貴方たちなら同じことをしたと思いますが」

 そこまで言って、シュテルはため息をついた。リンディへと向き直る。

「リンディ艦長。今後はどうなりますか?」

 突然話を振られたリンディが少し目を丸くするが、少し考えてすぐに答えた。

「シュウ君と異変との因果関係が分からない以上、まだ様子見になるでしょうね。とりあえず現状維持ができるように手を尽くすわ」

 ただ、とリンディの表情が暗くなる。シュテルから視線をそらし、ケインとさくらへと向ける。

「もしも因果関係が証明されて、なおかつそれを回避する手段がなければ……。可能な限り手は尽くしますが……」

「分かっています。私たちもできる限り協力します」

 シュウと異変の因果関係。すぐに分かるものではないと思うが、残されている時間も少ないかもしれない。シュテルは一礼すると、その部屋を退室した。

 ――楽観視はいけませんね。因果関係の証明はあの人たちに任せるとして、私は回避方法を探りましょう。

 今の生活を続けるために。シュテルは一人静かにうなずいた。

 

 

 Side:Hero

 シュウのいる部屋へと入ってきたシュテルは、真っ先に頭を下げて謝罪をした。勝手なことをした、と。

「いいよ。父さんと母さんの本音を聞けて、嬉しいから」

「すみません。……ああ、シュウが聞いていたことは話していません。今後どうするかは、シュウ自身が決めてください」

「うん。まあとりあえずは現状維持でいいかな。連れ戻されたくはないし」

 あはは、とシュウは笑う。その笑顔は少し寂しそうで、それを見ていたシュテルは少し目を細めた。

「でも、水くさいよねえ、血は繋がってないみたいだけど、親子なのに。話してくれたらいいのに」

「きっと貴方のことを想った上、ですよ」

 シュウが首を傾げる。シュテルは少し考える素振りを見せ、次いでどこか申し訳なさそうに目を伏せた。

「先ほどは感情的になってしまいましたが……。あの二人はシュウのことを本当に想っていたのだと想います。事実を話せば、あることが確定します。貴方はきっと、自分を責めるでしょう」

「……どういうこと?」

「異変が貴方が原因で起こったのなら、あの事故も貴方が原因と捉えることができます。あの二人はそう考えさせないためにもこの手段を取っていたと思いますよ」

 なるほどね、とシュウは苦笑した。ゆっくりとため息をつく。モニターでリンディたちと話す両親を見る。今まで見ていた無愛想な表情はなく、真剣に自分のために話し合ってくれている両親。少しだけ嬉しくなる。

「まあ、なるようになるか」

「そうですね。……できる限り手は尽くしますよ」

「ありがとう。僕にできることがあったら、言ってね」

 シュテルが真剣な表情でうなずく。シュテルを頼もしく思いながら、シュウはそれでも心に決める。

 ――これからは、もっと一日一日を大切にしよう。

「よし! シュテル、帰ろうか!」

「そうですね。帰って夕食にしましょう」

 立ち上がったシュウに差し出されるシュテルの手、シュウはその手をしっかりと握ると、シュテルと共にその部屋を後にした。

 

 後に残されたのは、音が流れるモニターだけ。やがてそのモニターも消え、電気すらも消えると、後には静かな闇が横たわった。

 




主人公の出自でした。これでだいたい全部語り終えましたかね!
それにしても無駄に長いです。過去最長です。どうしてこうなった。
一部独自設定があります。魔力の波長とか。多分。きっと。
いろいろと突っ込みどころ満載のご都合出自ですが、見逃してほしいであります……。
そしてクロノが空気。発言してない。やってしまいましたよー……。

さて、あとは終わりへ向かうだけですね!

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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