ギフテッド   作:龍翠

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プロトタイプの二話目ですよー。


第二話 道

本音を言えば、のんびりと暮らしていきたいと思っている。

でも、なぜだろう。

君を見ていたら、別にいいかと思えるんだ。

 

『道』

 

「これ、買ってきたよ」

そう言って、シュウは目の前に座る少女に大きな袋を渡した。

目の前の少女、星光の殲滅者と呼ばれているらしい少女は、それを受け取って首を傾げた。

「これは、何ですか?」

「服。さすがにそのままじゃまずいでしょ?」

少女の衣服は、黒いバリアジャケットのままだった。

このまま出歩かれると、管理局に見つけてくださいと言っているようなものだ。

少女は得心したようにうなずき、袋の中をのぞき込んだ。

「女の子が着るような服が分からないから、適当に選んできたんだけど……」

中に入っていたのは、白いシャツと黒を基調としたパーカー、それに黒色のスカートだった。

シュウは何かを言い訳するように、言葉を探しながら言い続ける。

「その、僕自身あまりファッションとか気にしたことなくて、それで、えっと……」

言いながら少女の方を見ると、シュウを見つめる少女の目と目が合った。

少女は無表情のまま、小さく頭を下げる。

「ありがとうございます」

少女にとっても、最近生まれたばかりなのだからファッションなど知るはずもなく。

それ故に単純に買ってきてもらったことに対するお礼だと分かってはいるのだが、

その言葉でシュウの気持ちは少し軽くなっていた。

「ずっと家にいても仕方ないだろうし、着替えたら外に行ってみよう」

「はい」

素直にうなずく少女。

そしておもむろに服を脱ぎ始めた。

「なああぁぁぁ!?」

慌てて首をそらし、玄関の方へと視線を向ける。

少女が首を傾げた気配が伝わってきたが、シュウは何も言えなかった。

――恥ずかしいとかそういうのは、ないのかな……。

なのはの記憶が少しあるようだが、感情は伴っていないらしい。

シュウは真っ赤になりながら、少女が着替え終わるのを待った。

しばらくして衣擦れの音が途切れたので振り返ってみると、

シュウが買ってきた服を着た少女が自分の姿を不思議そうに見ていた。

「えっと……。それじゃあ、ちょっと外に行こうか」

「はい」

少女はシュウの方へと顔を向け、小さくうなずいた。

 

特に目的地などはないので、シュウはとりあえずいつもの本屋へ行ってみることにした。

少女を連れて、本屋までの道を歩いていく。

少女は民家やコンビニ、公園などを見かけるたびに、興味深そうに視線を向けていた。

「どうしたの?」

「いえ、知識としてはありますが、実際に見たことはないので……」

そこで言葉が途切れた。

見ると、公園でサッカーをしている子供達へと視線を向けている。

その横顔はどこか寂しそうに見えた。

だが、シュウに見られていることに気づくと、すぐにいつもの無表情に戻ってしまった。

「君にも友達はいたの?」

「友達……ではなく、仲間はいました。

 今はもう、消えてしまっているでしょうが」

わずかに少女の表情がかげる。

――何を聞いているんだ、僕は。

仲間がいたとしても、すでに処理されているだろうことは容易に想像がつく。

それなのに無神経なことを聞いてしまった。

「ごめん……」

「……なぜ謝るのです?」

対する少女は、小さく首を傾げているだけだった。

「いや、気にしないで……。

 ところで、君のことは何て呼べばいいかな?」

「お好きなように」

「……それが困るんだけどね……」

少女に名前がないことは分かっているが、それだと何と呼べばいいのか困る。

星光の殲滅者と毎回呼ぶわけにもいかない。

本屋へと歩きだしながら、シュウは手をあごに当てて考えていた。

その後ろを、少女は黙ってついていく。

「……本当に何でもいいの?」

「はい。構いません」

「……じゃあ、星光って呼ぶね」

シュウがそう提案して振り返ると、少女は相変わらずの無表情でシュウを見ていた。

小さく吐息し、言う。

「どうぞ」

「うわ! なんか冷たいよ! すごく!」

その後も何かいい案はないかと考え続けていたが、結局思い浮かぶことはなかった。

「……ネーミングセンス皆無で、ごめん」

それを聞いた少女の顔は、どこか苦笑めいたものを浮かべていた。

 

本屋で軽く立ち読みをして、店員に挨拶をして店を出る。

立ち読みの間、少女もシュウの隣で適当な本を選んで読んでいた。

シュウが驚くほど集中して読んでいて、シュウの声にもほとんど反応しないほどだった。

「本、好きなの?」

気になってたずねてみる。

「嫌いではないですね。……買っていただいて、ありがとうございます」

少女の手には、本屋の紙袋がある。

シュウが店を出る際に買ったもので、少女がずっと立ち読みをしていた本だ。

せっかく興味のある本があったのにこのまま帰るというのも悪い気がしたので、

遠慮する少女を無視して購入した。

現在二人が歩いているのは、近くの公園の道だ。

道の左右は木々が生い茂り、側には小さな池もある。

シュウのお気に入りの公園だった。

「きれいな場所ですね」

「そう? そう言ってもらえると、嬉しいかな」

少し照れくさそうに頬をかく。

ふと前方を見ると、アイスクリーム屋の屋台あった。

まだ肌寒い季節だというのに、買う人はいるのだろうか。

少女がその屋台を指差して聞く。

「あれは何ですか?」

「アイスクリーム屋。アイスクリームは……知ってる?」

「いえ……。知りません」

そっか、とシュウはうなずくと、少女をその場で待たせ屋台へと走っていった。

 

 

少女が怪訝そうな表情で待つこと数分。

アイスを二つ持ったシュウが、小走りで戻ってきた。

「はい」

「え……? いいのですか?」

「うん」

シュウからアイスを受け取り、しばらくそれを眺めていた。

シュウがアイスを口に含むのを見て、少女も同じように口に含む。

その冷たさにわずかに驚き、その甘さに頬がゆるんだ。

「おいしい?」

シュウが笑顔で聞いて、少女が一度だけうなずく。

「はい。とてもおいしいです」

「そっか。それは良かった」

「でも……。この季節に食べるものではありませんね」

「……まあ、そうだね」

シュウは苦笑して歩きだす。

アイスを頬張りながら、少女もその後ろを歩いていった。

公園の道を、のんびりとだが黙々と歩く。

その間、少女はずっと少年の後ろ姿を見つめていた。

――なぜ、この少年は私を助けてくれるのでしょう。

少年に何かメリットがあるとは思えない。

最初、このまま管理局に引き渡されるかとも思ったが、どうやらそれもなさそうだ。

ならば、なぜ自分を助けてくれるのだろうか。

「……どうしてですか?」

気づけば、口に出していた。

「へ? 何が?」

「私を助けても、貴方にいいことなんてないでしょう。

 それなのに、なぜ私を助けてくれるのですか?」

その問いを聞いて、少年は天を仰いだ。

言おうか言うまいか悩むように、その体勢のままうなっている。

やがて、どこか照れた笑みを浮かべながら少女を見た。

「僕と似ているような気がして」

「似ている? 私が、貴方に?」

「うん、そう」

言って、シュウは歩き始める。

少女はその後ろ姿を追い、少年の言葉の続きを待つ。

「僕は、少し前まで一人だった。

 悩みをうち明けられるような友達もいなくて、ずっと孤独だと思っていたんだ」

まっすぐな道を二人は歩く。

木々の間の道を、歩き続ける。

「でも、いろんな人達と出会って、いろんなことがあって……。

 今は、僕は一人じゃない。いろんな友達がいて、助け合うことができる」

シュウが振り返った。屈託のない、満面の笑顔。

「みんなが僕を助けてくれたように、僕も君を助けたいんだ。

 一人で抱え込むより、二人で助け合った方がいいと思わない?」

そっと、シュウは手を差し伸べた。

目の前に出された手に、少女はわずかに戸惑った。

この手を取っていいのだろうか。

この少年に迷惑をかけてしまうことになるのに。

「ねえ、星光」

呼ばれ、少女は顔を上げた。

優しく微笑む少年の顔を見た。

「僕と、友達になろうよ」

その言葉で、この少年がどんな人か、分かったような気がした。

きっと、自分が拒んでも、この少年は自分に関わろうとしてくるだろう。

だから少女は、薄く微笑んだ。

生まれて初めて、笑顔を浮かべた。

その自覚もないままにそっと握った少年の手は、とても温かかった。

「……はい。よろしくお願いします」

それを聞いた少年の表情は、どこか嬉しそうだった。

再び道を歩きだす。太陽に照らされた明るい道を。

だが。

少女は知っている。

自分の道は、決して明るくはない。

自分は人間でないどころか、闇の書の闇を復活させようとしていた存在だ。

今後、その意志がよみがえらないとも限らない。

――それでも……。

今は、この少年の側にいたい。

この温もりに触れていたい。

シュウの手を握りながら。

星光の殲滅者は、そう強く願っていた。

 




ファイルを探していたら、ファイルの更新年月日が2010年2月2日でした。
もう3年以上も前かとちょっと感慨深いです。
そんな豆情報。情報じゃないですね!

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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