いつもよりほのぼの感が多めですよー。
そして短いですよー。過去最短かもです。すみません。
ある日の昼下がり。シュウはシュテルと一緒に高町家に向かっていた。シュテルと並び、のんびりと歩いて行く。
数日前、なのはからシュテルに念話での連絡があったらしい。曰く、ケーキを焼いてみたいので作り方を教えてほしい、とのことだ。母に聞けばいいのではと思ったが、仕事で忙しいだろうからと話してすらいないとのことだった。
特に予定もなかったそうでシュテルは引き受けたそうだ。その時の条件として、なぜかシュウの同行の許可を求めたそうだが、理由は分からない。
高町家に到着すると、すぐになのはが出迎えてくれた。笑顔でいらっしゃい、と言ってくれる。
「ごめんね、シュテル。こんなこと頼んじゃって」
「構いません。この程度ならいつでも引き受けられます」
二人がそんな会話を交わしながら廊下を歩く。シュウはその少し後をついて行く。やはり自分が来た意味が分からなくなる。自分がいない方がいいのではないだろうか。
リビングに入ると、すでに先客がいた。見たことのない男の子だ。こちらに気がつくと、笑顔で手を上げてくる。
「師匠も来ていたのですか」
シュテルの言葉にシュウが目を見開いた。男の子をもう一度見る。年は自分と同じぐらいに見えるし、とても大人しそうだ。この子がシュテルの先生なのか。
「いや違うから! いい加減それやめないかな!」
「なのはの師匠なら私の師匠でもあります」
「何度も言ってるけどその理屈が分からない……!」
なるほど、とシュウは納得した。シュテルの表情をよくよく観察すると、どこか楽しげな印象を受ける。本気で言っているのかまでは分からないが、どうやらいつものやり取りらしい。
「シュウ君。紹介するね。こちらユーノ君。私に魔法を教えてくれた人」
なのはがユーノの隣に立ってそう言って、次にシュウへと手を向ける。
「ユーノ君。こちらが秀一君。シュテルが助けた子」
「ああ、そうか。君が……」
ユーノが少し驚いて、すぐに笑った。立ち上がって、シュウへと歩いてくる。手を差し出して、
「初めまして。ユーノ・スクライアです」
「あ、ご丁寧にどうも。西崎秀一です。親しい人からはシュウと呼ばれています」
差し出された手をシュウもしっかりと握り返す。
「では僕もシュウと呼ばせてもらってもいいですか?」
「もちろん。あ、あと敬語もなしで。疲れてきた」
「あはは。了解」
二人で笑い合う。ユーノとは気が合いそうだと感じた。その二人を見てシュテルとなのはがどこか満足そうにしていたのだが、そんなことに二人は気がつかなかった。
シュテルとなのはがキッチンへ向かってからは、シュウはユーノとの談笑を続けていた。どうやらユーノはなのはから自分のことをそれなりに詳しく聞いているらしく、シュウも気兼ねなく話すことができた。
「無限書庫だっけ。たくさん本があるんだね。どれぐらいあるの?」
「さあ……。まだまだ整理が追いついてなくて、把握できてないんだ」
へえ、とシュウはどんな場所なのだろうかとイメージする。大きな図書館のようなものをイメージしているのだが、ユーノの話からすると違うのだろうか。どれほどの量の本があるか分からないが、とても興味がある。
「いつか行ってみたいな。他の世界の本とかすごく魅力的だし」
「そうだね……。もしも来る時が決まったら案内するから、その時は連絡して。僕も休みを取るから」
ユーノの言葉にシュウは顔を綻ばせた。そんな機会があるのかすら今はまだ分からないが、いつかきっと行こうとは思う。
「ユーノも次にこっちに来る時は連絡してよ。他の世界の話とか、いろいろ聞きたい。アースラの人たちはいつも忙しそうだから、そういった話ができないから」
「分かった。僕もシュウと話をするのは楽しいから、ちゃんと時間を作ってまた連絡するよ」
何となくだが、ユーノとはやはり気が合うようだ。ユーノもそう思ってくれているらしく、快く約束をしてくれる。同じ男相手ということもあり、気兼ねなくいろいろと話ができそうだと思う。今日は残念ながらあまり時間がないようだが、いずれもっとゆっくりと話したいものだ。
「お待たせ」
キッチンからなのはが戻ってきた。その手にはホールケーキ。テーブルに置くと、それを丁寧に四等分する。シュテルもすぐに出てきて、こちらはジュースを用意していた。
「どうぞ、ユーノ君」
なのはがユーノへとケーキとジュースを差し出す。シュテルの方は無言だが、いつものように自分に差し出してくれる。二人は笑顔で礼を言って受け取り、なのはとシュテルの準備が終わるのを待つ。
「感想聞きたいから食べてほしいかな」
なのはのその言葉に、シュウとユーノはケーキを口に運んだ。しっかりと味わう。シュウにとってのいつものケーキの味に近いが、少しだけ違いがあるのはなのはがいるからだろう。いつもより甘さがほんの少しだけ強い。もちろんこれはこれで美味しいが。
「うん。美味しい」
シュウとユーノが同じ感想を口にすると、なのはが嬉しそうな笑顔になった。良かった、と胸をなで下ろしているようだ。
「ところで、どうして急にケーキを?」
着席したなのはに聞いてみると、なのはは照れくさそうに、
「ユーノ君が遊びに来ることになったから、せっかくだからと思って……」
それを聞いたユーノが少し驚いたように目を開き、なのはを見るが、
「大切なお友達だから」
なのはの言葉に肩を落としていた。それを見てシュウは何となくユーノの気持ちを察する。どうやらなのはは自分に向けられる好意にはかなり鈍感なようだ。
「ユーノ。がんばれ」
小声でそう言うと、ユーノは小さくため息をつきながらうなずいた。
「シュウもね」
ユーノがちらりとシュテルを見る。黙々とケーキを食べ続け、いつからそうしていたのか、手元に置いたメモ用紙に何かを書き連ねていた。内容から察するに改善点だろうか。その間、シュテルはこちらを一度たりとも見ていない。
シュウとユーノは視線を合わせると、お互いに長いため息をついた。
帰宅後。シュウはシュテルに頼まれ、自分の部屋に彼女を招き入れていた。自室といってもリビングだが。そこでシュテルは小さなケーキを取り出し、シュウへと差し出してきた。
「いつものものですが」
「おお。ありがとう!」
嬉しそうにシュテルのケーキを食べ始めるシュウ。こちらはシュウの好みの味だ。幸せそうな表情で、シュウはケーキを食べ進める。
「さすがシュテル。すごく美味しい!」
「光栄です」
シュテルもシュウの隣でケーキを食べ始める。二人だけでのんびりと。
シュテルは自分のことをどう思っているのだろうか。本人からしっかりと聞けたことはないので気になるところではあるが、聞く勇気もシュウにはない。ただ、それでもこうしてよく一緒にいることが多いのはユーノの立場と違うところだろう。そう考えると、ユーノと違って自分はきっと恵まれている方だろう。
好きな人と一緒にいられるのだ。十分すぎるほどに幸せだ。
「機嫌がよさそうですね。どうかしましたか?」
シュテルが首を傾げながら聞いてくる。シュウは笑顔のまま首を振った。
「何でも無いよ。気にしないで」
「そうですか」
今日もシュテルと一緒にいられる。今日は新しい友達ができた。今日もとてもいい日だ。
そしてシュテルのケーキを味わいながら、シュウは新しい友人へと心の中でエールを送る。
がんばれ、と。
そう思うのと同時に、自分もがんばらないとなと思わず苦笑してしまった。
ユーノ君登場回です。再登場するかは分かりませんが^^;
立ち位置的にどうしても彼の出番は少なくなりますね……。
性格など似ているところもあるので、きっと主人公とは大人になったらいい酒が飲めるでしょう。
……それ故に同時に書くのが難しいですが。
今回短いのも会話にやり取りに納得いかなかったためですし……。
今もまだ納得できていないので、いずれ機会があれば修正したいですね。
誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。