ギフテッド   作:龍翠

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プロトタイプを投稿している最中ではありますが、もちろんこちらも投稿するですよ!
のんびりほのぼの、日常です。盛り上がりなんてない!


日なたぼっこ

 

 ある晴れの日の昼下がり。シュウとシュテルは自宅の側の公園に来ていた。いつものベンチに腰掛けて、二人揃って本を読んでいる。特に目的などはない。強いて上げるなら、散歩に近いものだろうか。

 今朝方、せっかくいい天気なのだからどこかに行かないかとシュテルたちを誘ってみたのだが、全員がとても複雑そうな表情をしていた。ディアーチェから聞いた話では、大きな仕事が入りこれから全員出かけるとのことだった。

 その後、ディアーチェの、少し待て、という言葉に従い、四人が出かけた後にリビングで待機する。すぐに終わる仕事なのだろうかとぼんやりと待っていると、程なくしてシュテルが戻ってきた。その時に聞いた話では、シュテルの担当を別の人に依頼してきたらしい。

「そんな無理しなくても……。良かったの?」

「構いません。物量が多いだけで、危険な仕事というわけでもありませんし」

 そんな会話の後に、シュテルはキッチンへと向かった。何かを作り始めたようなので、そのまま大人しく待つ。そして戻ってきたシュテルの手には、二つの弁当箱があった。

 そして今、ベンチに座る二人の側にはその弁当箱がある。

 シュウ自身、出かけようと言ったものの何か計画があったわけではない。申し訳なく思いながらもそれを告げると、ではいつもの場所へ、ということでこの公園に来ているというわけだ。

 シュウは読みかけの本を閉じた。欠伸をしつつ天を仰ぐ。太陽の光が降り注ぐ。もう肌寒い季節だが、太陽の光のおかげが少し温かく感じる。それがとても心地よく、強い睡魔に襲われてしまう。

 少しぐらい寝てもいいかな、と誘惑に負けそうになった時、不意に肩に重みを感じた。一瞬何が起こったのか分からずに首を傾げ、隣を見る。本気で我が目を疑った。

 シュウの肩にシュテルの頭がある。静かに目を閉じ、整った寝息を立てていた。本当に、本当に珍しいことがあるものだ。あまりの衝撃に、シュウの眠気は一気に吹き飛んでしまっていた。そして心の中で決める。シュテルが起きるまでは動かない、と。

 そう考えてから十分ほどが経過し、早くもシュウは再度眠気に襲われていた。太陽の温かさに加え、隣で気持ちよさそうに眠っている人がいるとなぜか自分も眠たくなってくる。何度も欠伸をしながらも、必死になって意識をつなぎ止める。

 ちらりとシュテルの表情を見る。変わらず眠る少女。出会ってから半年は経っているが、シュテルが眠る姿などほとんど見たことがない。もちろん毎晩自宅で寝ているのは分かっているのだが、シュウの目の前で眠ることが少ないので、とても新鮮な感じがする。

 この機会にシュテルの寝顔をもっと見ようかなと漠然と思ったところで、シュウもついに意識を手放し、眠りに落ちた。

 

 目を覚ましたのは二人同時だった。お互いに体重を預けていた二人は同時に顔を上げ、シュウはゆっくり伸びをして欠伸をする。シュテルは、起きてすぐに唖然としていた。おそらく、自分でもうたた寝をしてしまったことが信じられないのだろう。

「おはよう、シュテル」

 その様子が少しおかしくて笑いながら声をかけると、シュテルはシュウへと向き直る、そして小さく頭を下げた。そのことに少し驚くシュウ。

「すみません、迷惑をかけてしまいました」

「いやいや、迷惑じゃないから! 珍しいなって思ったぐらいだよ!」

 慌ててそう告げる。本当に迷惑など思っていない。驚きはしたが、それだけだ。ただ、それでも気になることはあるが。

「疲れてるの? もう少し寝ていてもいいと思うよ?」

 純粋に心配してしまう。シュテルがあんな無防備に眠ることなどほとんどない。だからこそ、シュウが知らないだけでシュテルには疲れが溜まっているのではないかと。告げられたシュテルは、少し考える素振りを見せてから首を振る。

「確かに忙しいことも多いですが、疲れが溜まるほどではないと思います。それに、単純に気持ちが良かっただけです」

 シュテルが顔を上げる。シュウも同じように顔を上げて、光を放ち続ける太陽を見る。ぽかぽかと気持ちが良く、またしても眠気が襲ってくる。シュテルに言う前に、自分が眠ってしまいそうだ。

「シュウ。少し遅くなりましたが、昼食にしましょうか」

 昼食、と聞いてシュウは眠気を頭から追い出す。シュテルから渡された弁当箱を受け取り、ふたを開ける。唐揚げやハンバーグ、おにぎりなどが詰まっていた。

「急だったので有り合わせの材料で作ったものですが……」

「十分だと思うけど」

 唐揚げをつまみ、口に入れる。いつもの味だ。満足そうに頷いて、シュテルに笑顔を向ける。

「うん。おいしいよ」

「そうですか」

 シュテルの返事は短かったが、どこか安堵のような雰囲気を感じられた。

 

 弁当を食べ終えた二人は、そのまま読書を続けていた。時折会話を交わしつつ、のんびりとした時を過ごす。シュウにとっては、こういった時間はとても好きなものでもある。それに今は、暖かな光の中にいる。それがとても気持ちがいい。昼食直後のためか、先ほどよりも強い睡魔に襲われてしまうほどだ。

 思わず大きな欠伸をして、シュテルがこちらをじっと見つめていることに気がついた。シュウが驚いて少し慌てる中、シュテルはわずかに目を細めた。不機嫌そう、というわけではなく、どこかおかしそうな、優しさすら感じられる。

 シュテルはおもむろにデバイスを取り出すと、次の瞬間、周囲に結界が張られた。

「私も少し疲れました」

 シュテルの声。シュウが怪訝そうに眉をひそめる。

「せっかくの良い天気です。少し休ませていただきます」

 シュテルが本を閉じてシュウを見る。そして問うてくる。貴方はどうしますか、と。シュウは、気を遣わせてしまったかなと少し反省しつつも、シュテルの申し出をありがたく受けることにした。

「じゃあ、僕もちょっとお昼寝させてもらおうかな」

 本を閉じて伸びをする。そのままベンチに深く腰掛けると、シュウは日差しの温もりを感じながら目を閉じる。それだけで、眠気が一気に強くなり、シュウはまた欠伸をしてしまった。眠たい、と感じている時に寝られるというのは気持ちがいいものだ。

 横目でシュテルの方を見てみると、シュテルも同じようにベンチに深く腰掛け目を閉じていた。だがまだ眠ってはいないようだ。不意にシュテルの目が開き、シュウと視線が合った。

「どうかしましたか?」

「え? えっと……」

 唐突な問いかけに思わず言葉に詰まる。一言だけ言いたいことはあるが、必ず言わなければならないというわけでもない。このまま言わずにいようとも思っていたが、シュテルがじっとこちらの言葉を待っているので、仕方なくシュウは口を開いた。

「ごめんね。誘うならもっと何か計画しておくべきだったね」

 仕事の予定まで変更させてしまったのに、この有様では本当に申し訳ないと思ってしまう。そして、自分がこう言った後にシュテルがどう返答するか、そこまで予想できている。

「気にしないでください。十分楽しめていますから」

 予想通りの返答に、シュウは笑みをこぼす。お世辞にも聞こえそうだが、シュテルが嘘をついていないことぐらいは分かる、シュウはシュテルの言葉に、一先ず胸をなで下ろした。

「せっかくなのです。休みましょう、シュウ」

「うん。そうだね」

 シュテルの言葉にシュウは頷いて、また目を閉じる。

 今度こそ、二人揃って眠りに落ちた。

 

「で、結局寝て過ごした、と」

 シュテルたちの部屋のリビングで。夜、ディアーチェがため息とともにそう言った。それを聞いたシュウは、乾いた笑いを浮かべながら頭をかく。

「もう少し何かできたであろうに……。まあ、それで良いのなら我は何も言わぬが」

「あはは……。なんだか、ごめんね?」

 かまわん、とディアーチェがおもしろくなさそうにしながら手を振る。

 夕方、目を覚ましたシュウとシュテルは、買い物を済ませて帰宅した。そこにはすでにディアーチェたちが仕事から戻ってきており、早速今日のことを報告しろと命じられていたところだ。シュウの話の間に、シュテルはキッチンへと夕食を作りに行っている。

 ディアーチェは何かを期待していたようだったが、どうやらそれに応えることはできなかったらしい。一先ず謝罪を口にすると、ディアーチェは呆れたような目でこちらを見た後、やれやれと首を振っていた。

「まあ、それがシュウらしいとも言えるか……」

「どういうこと?」

「こちらの話だ」

 気にするな、とディアーチェが手を振る。シュウは怪訝そうに眉をひそめていたが、すぐに、まあいいかと話を終えた。

 

 その日もいつものように一日が過ぎる。代わり映えのしないいつもの一日。シュテルが料理を並べていくところを眺めながら、シュテルの寝顔を思い出してしまう。シュテルのあの顔もかわいいなと、ついそんなことを思ってしまう。

「シュウ。何か妙なことを考えていませんか?」

「か、考えてないよ!」

 ならばいいのですが、とシュテルが隣に座る。内心で驚きながらも、シュウは安堵のため息をつく。

 

 ゆっくりと一日が過ぎる。いつも通りの時間。シュテルたちとの時間。

 そのことに確かな幸せを感じながら、また誘いたいなと一人でそんなことを考えていた。

 




今回書きたかったのは、お互いに体を預けて眠っているシーンです。

一応こちらでも。明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
……新年の実感なんて欠片もわいていませんが……。

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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