ギフテッド   作:龍翠

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今回はレヴィメインです。
……あまりメインという感じはしませんが……。


第七話 ヒーローショー

 

 ある日の放課後、学校からの帰り道。シュウはいつも通りに着替えるために自宅へ帰るところだった。この後は普段通りシュテルたちの家で夕食をご馳走になる予定だ。正直自分でもかなり依存してしまっているとは思う。

「ん?」

 車が頻繁に行き交う大きな路地の歩道を歩いていると、向かい側から見覚えのある人影が走ってきた。人影はフェイトにうり二つだが、まとう雰囲気は全くの別物。ならば答えは一つだけ。

「レヴィ?」

 レヴィはシュウに気づくことなく横を通り過ぎていく。しかしすぐにはっとしたように振り返り、シュウの姿をその目にとらえた。

「シュウ! いいところで会った!」

「は?」

「一緒に来て!」

「え?」

 レヴィの勢いに流されるまま、シュウは右手を捕まれてレヴィと一緒に走る。何が何だか分からないが、緊急事態なのかもしれないと思い、レヴィについて行くことにした。

 

 そしてたどり着いたのはデパートの屋上。そこで行われているのは、期間限定のヒーローショーだ。日曜日の朝に放送されている特撮番組らしいが、詳しいことはシュウには分からない。ヒーローが怪人に何かを叫び、躍りかかる。歓声を上げる子供たち。そしてレヴィ。

「いっけー! そこだー!」

 レヴィはとても楽しそうにしている。きっとこれを見るために来たのだろう。それは分かるが、なぜ自分が連れてこられたのかが分からない。

「ねえ、レヴィ。僕が来る必要って……」

「今いいところ!」

「あ、ごめん……」

 怒られたことに少し落ち込む。とりあえずは自分もショーを見るが、元となっている番組を知らないのでいまいちコンセプトが分からない。ただ集まっている子供の人数と歓声の大きさからして、それなりに人気のある番組なのだろうことは分かる。

 三十分ほどしてショーは終わった。そしてアナウンスが流れる。

『期間限定販売のお菓子はステージ横での販売となります。このショー限定の販売となりますのでお見逃しなく……』

 アナウンスが流れ始めた直後、レヴィはまたシュウの手を取るとステージへと走る。どうやら期間限定のお菓子というのも目的らしい。だがやはり自分は関係ないのではと思ったが、すぐに謎が解けた。

『なお、お一人様一個の販売となりますのでご注意ください』

 つまりはお菓子を買うための頭数。少し残念に思ってしまうのはなぜだろう。

 レヴィと一緒に列に並び、目的のお菓子を購入する。お菓子を受け取ったレヴィの表情はとても嬉しそうで、見た目の年相応の幼さだ。

「はい」

 ステージから少し離れたところで、レヴィに自分が購入した分を差し出した。するとレヴィはぱっと顔を輝かせたが、すぐに表情を曇らせて上目遣いに自分を見てくる。どうしたのかと首を傾げると、

「いいの……? 勢いで連れてきちゃったけど、シュウも欲しいんじゃない?」

 どうやら自分のことを考えてくれていたらしい。シュウは思わず笑顔を浮かべると、首を振った。

「僕は大丈夫。この番組、知らないしね。僕の分はレヴィに上げるよ」

 今度こそレヴィに笑顔の花が開いた。シュウからお菓子を受け取り、大切そうにお菓子を抱きしめる。えへへ、と無邪気に笑う。

「ありがと! じゃあボクの分はユーリに上げようかな」

「ん? ユーリに?」

「うん。ユーリも好きなの、これ」

 レヴィの話によると、本当はユーリと引率のディアーチェも一緒に見に来る予定だったらしい。だがディアーチェとユーリに予定が入り、シュテルも買い出しのために同行できず、仕方なくレヴィ一人で見に来たというわけだ。

「ユーリは今日のショーを楽しみにしてたから……。せめてお土産だけでもって思ってたんだ」

「そっか……。レヴィは優しいね」

 そう言って頭を撫でてやる。見た目は同年代なので普通は嫌がられそうなものだが、レヴィは頭を撫でてもらうことが好きらしい。にへら、とだらしなく笑うと、

「そうかなー。えへへ、もっと撫でてー」

 子犬か子猫のように甘えてくる。シュウは苦笑しながらも、レヴィが満足するまで撫でてやった。

 

 デパートから出た二人はそのまま家路につく。レヴィの手にはビニール袋が握られていて、中に入っているのはもちろんあのショーのお菓子だ。シュウは先に一度自宅に戻ろうかとも思ったが、わざわざ着替えに戻るのも面倒になったのでこのまま一緒に行くことにした。

 デパートへ向かった時とは対照的に、のんびりと歩く。レヴィはデパートからずっと上機嫌で、鼻歌など歌っているほどだ。例の特撮番組の主題歌らしいが、見たこともないシュウには当然分かるはずもない。

 しばらく歩いて公園にさしかかったところで、

「あれ? レヴィにシュウ?」

 公園の方から声をかけられた。見ると、フェイトが子犬のアルフと一緒にこちらへと歩いてくるところだった。アルフを見た瞬間にシュウが瞳を輝かせる。

「アルフ! 撫でさせて!」

「ええぇ……」

 アルフが思わず立ち止まり、シュウが少し傷ついたように落ち込む。それを見てアルフはどう思ったのか、仕方ないね、とつぶやいてシュウのところへとやってきた。

「少しだけだよ。あたしだって女の子なんだから恥ずかしいんだよ」

「了解!」

 シュウがアルフを抱きかかえて頭を撫でる。アルフはやれやれと首を振っていたが、抵抗はしなかった。

「オリジナル、オイッスー!」

「あはは。こんばんは、レヴィ」

 シュウがアルフに夢中になっているので、レヴィとフェイトは二人で話を始める。

「珍しい組み合わせだね。どこに行ってたの?」

「デパート! ちょっとヒーローショーを見に!」

「ああ……。好きだって言ってたね、特撮」

「うん! だってかっこいいし! こう、シュバッって! ピカッって!」

「そ、そうだね……」

 あまりに抽象的すぎてさすがに意味が分からない。隣で聞いていたシュウすら思わず苦笑していた。フェイトとは本当に対照的で、性格も表現もかなり子供っぽい。

 ――子供の自分が言うことでもないけど。

 ぼんやりとそんなことを考え、アルフを解放する。地面に下りたアルフは、振り返って聞いてくる。

「もう満足したのかい?」

「うん。いつもごめんね」

「撫でられるぐらいいいさ。ほどほどならね」

 アルフはそう言うと、フェイトのもとへと戻っていく。フェイトがそれを迎えて、頭を撫でていた。レヴィがそれを少し羨ましそうに見ているのはきっと気のせいだろう。

「……変身魔法でも覚えようかな」

「レヴィ……」

「冗談だよ、冗談!」

 レヴィが慌てたように言う。先ほどの声には真剣な色が帯びていたが、あえて何も言わないことにした。

「じゃあシュウ! そろそろ帰ろう! シュテるんに怒られちゃう!」

「それもそうだね……。それじゃあフェイト。また学校で」

「うん。またね、シュウ」

 シュウとレヴィが手を振って、フェイトも手を振る。今度こそ二人は家への道を歩き始める。

「ところでさ、レヴィ」

 レヴィと並んで歩きながら口を開く。レヴィは上機嫌を維持したまま鼻歌を歌っていたが、シュウに呼びかけられて中断した。

「なに?」

「そんなに撫でられたいの?」

 撫でられることが好きだとは聞いたが、わざわざ変身魔法を覚えてまでとは思っていなかった。問われたレヴィは笑顔でうなずく。

「うん。大好き!」

「なんで?」

「へ? なんでって……」

 理由を聞かれると、今度は返答に窮していた。首を傾げ、なんでだろ? と自問している。しばらく歩きながら考えていたようだったが、やがてレヴィは一度だけうなずいた。

「うん! 分かんない!」

「あはは……。予想はしてたよ」

 シュウは思わず笑みを浮かべた。深く考えすぎないところがレヴィのいいところでもある。感覚的なもので理屈で説明することはできないのだろう。

「レヴィ、わざわざ変身魔法を覚えなくてもさ」

「うん」

「僕でよければ、いつでも撫でてあげるよ」

 それを聞いたレヴィが、ふぇ? と間抜けな声を漏らして立ち止まった。呆けたように立ち止まっていたので、心配になって振り返る。レヴィはまだしばらく唖然としていたが、すぐに満面の笑顔になった。

「ホントに?」

「うん。もちろん」

「えへへー。約束だよ!」

 嬉しそうに笑いながらレヴィが走る。シュウは慌ててそれを追った。

 

「たっだいまー!」

「お邪魔します」

 レヴィの元気な声が室内に響き、シュウの控えめな声はそれにかき消される。少しして、シュテルとユーリが顔を出した。

「お帰りなさい、レヴィ。いらっしゃい、シュウ」

「レヴィ! ショーはどうでしたか!」

 挨拶もそこそこにユーリがレヴィのもとへと走る。レヴィはユーリへと身を乗り出して、

「すっごくおもしろかった! えっとね……」

 熱く語り出した。ユーリも熱心にそれを聞いているので、邪魔しないようにシュウは先に家に上がる。

「すみません、シュウ。レヴィがお世話になったみたいで」

「いや、僕も楽しかったよ」

「それならば良いのですが……。今王と夕食を作っているところなので、もう少々お待ちください」

「ん。分かった」

 シュテルがキッチンへと戻るのを見送って、シュウはリビングに入る。いつの間にか決まっていた自分の定位置に座り、ふう、とため息をついた。正直に言うと少しだけ疲れていたりもする。

 すぐにレヴィとユーリが入ってきて、ユーリが嬉しそうにシュウに駆け寄ってくる。

「シュウ! お菓子ありがとうございます! すごく嬉しいです!」

「あはは。どういたしまして」

 ここまで喜ばれるとは思ってもみなかった。どうやら本当に好きらしい。ユーリはその後すぐにキッチンへと行き、何かを話し始めている。

 レヴィはリビングに戻り、こちらも自分の定位置に座った。お菓子の袋を開けようとしたが、すぐに夕食が出てくるだろうことを思い出したのか部屋の隅に置く。それでも視線は頻繁にお菓子へと向いていたが、やがて諦めがついたのか小さくため息をついてシュウに向き直った。

「シュウ!」

「今日はほんとにありがと! 助かったよ!」

「一緒に行っただけだけどね……。まあ喜んでもらえてるなら、それでいいけど」

 レヴィの笑顔を見ていると、放課後を潰した甲斐はあったというものだ。こういうのも、たまになら悪くない。

「せっかくだからさ、レヴィ。僕にもそのヒーローのこと教えてよ」

「おお! シュウも興味あるっ? いいよいいよ教えてあげるー!」

 喜色満面に語り出すレヴィ。その屈託のない笑顔を見ながら、

 ――うん。悪くない。

 心からそう思った。

 




実はレヴィは書くのが苦手だったりします。
ユーリもレヴィに次いで苦手です。
キャラは好きなのですが、口調や性格をいまいち掴み切れていなくて……。
「レヴィはこんなキャラじゃない!」という苦情は正座してお聞きします……。
申し訳ないです……!
以上、言い訳?でした。

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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