フクイデ先生   作:フクイデスト

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ヒロイン回です
季節性のカオスヘッダーに感染したので
投稿スピードが落ちています

でも、寝ながらウルトラ見て、エロマンガ先生読んでいると
書きたくなるんですから仕方ないね


乙女の眠り

 ある日の昼、伏井出は電話で会話しながら荷造りをしていた。電話の相手は正宗だった。

 

 「ああ、すまないな。正宗君」

 

 『いいえ、こっちこそ急な話ですみません。エルフの思い付き企画で、日にちを決めていなかったもので…』

 

 『なんで私のせいなのよ!』

 

 正宗が言っている企画というのは、『夏の取材&執筆合宿』というもの。パスポートを持っていない正宗の為に、エルフが所有する島へ連れて行ってくれるというもの。

 

 「私も執筆活動に余裕が出来たものだから。もう一度、全国の伝承を集めようと思っているんだ。前回、企画が中止になった時に全国から伝承の情報が集まったんだ。その中のいくつかが気になる伝承があったからね」

 

 『あれって、結局出版されるんですか?』

 

 「いや、短編集として出すかは決まっていない。ただ週刊誌で毎週掲載することになった。その反応を見てどうするか決めるらしい」

 

 前回出版が中止になった伝奇物は顧客の反応を見てから、出版するか決めることになった。

 

 『なるほど、週刊誌で連載して好評なら出版ですか…』

 

 「ああ、私としても勿体ないと思っていたから嬉しい限りだよ」

 

 『ああ、そういえば。僕が行っている間、紗霧の面倒を優さんが見てくれるそうですね。妹も一人では寂しいでしょうから、優さんのような人が一緒なら安心です』

 

 「それは優の方も同じだと思うよ。今も泊まる為の洋服選びとかをしていた。それに丁度友人たちも夏休みの家族旅行で居なくて暇らしいからね」

 

 「先生!ちょっといいですか?」

 

 「すまない、優が呼んでいる。また、今度何かあったら呼んでくれ」

 

 『わかりました、伏井出先生も取材気を付けてくださいね』

 

 通話を終えると優の寝室に向かう。扉をノックすると返事がすぐに返って来る。

 

 「入ってきても大丈夫ですよ!」

 

 「優?先程呼んでいたが一体なに…を…」

 

 「えへへ…先生どうですか?」

 

 「ああ、見惚れるほど可愛らしいよ」

 

 「――――ッ!?あ、相変わらず先生は素面でそういうことを言うんですから…嬉しいですけど…」

 

 部屋に入った瞬間、伏井出の目に映ったのは純白のワンピースを着た優だった。彼女は体があまり強くなく、日差しの強い夏に肌を出すような服を着ることが少ない。

 

 ワンピースといえば清純なイメージだが、優の大人びたスタイルでワンピースを着て街に出るというのは周囲の男性の目を集めてしまうだろう。

 

 「それを着て、紗霧君の所へ行くのかい?あまり、肌を露出させる格好はおススメしないが」

 

 「もしかして、嫉妬ですか?私が他の男にそういう目で見られるのが嫌とか?」

 

 揶揄うようにニヤニヤしながら問う優に伏井出はあっさりと返答する。

 

 「そうだな、確かに優が他の男にそういう目で見られるのは私としては好ましくない」

 

 「……ふぇっ」

 

 「それとも優は私以外の男にそういう目で見られたいのかい?」

 

 「あ、あわわわ…いえ!そういうのではなくてですね…。こ、これは先生の為に買ったものなので…他の人に見せるつもりは…ううう…」

 

 あのキス以降、少し行動が大胆になった優だが、伏井出にこの様にあっさりと返り討ちにされることの方が多い。

 

 彼は優からの好意には好意で返す。その為、返された好意に優は耐えきれず顔を真っ赤にして恥ずかしがる。

 

 「ははは、揶揄っただけだ。私にその姿を見せたかったのだろう?」

 

 「私って普段は厚手の服を着てるじゃないですか?だから、せめて家の中だけでもいいから、先生にこういう女の子らしい服を着ているのを見て欲しくて…」

 

 「先程も言ったが見惚れるほど可愛らしい」

 

 「ありがとうございます♪あれ?そういえば、先生?」

 

 「ん?何かな?」

 

 「そろそろ新幹線の時間じゃないですか?」

 

 「ああ…そうだな。部屋から荷物も持ってくるよ」

 

 「玄関まで見送りますね」

 

 部屋から荷物を持った伏井出が玄関へ向かうと優が待っている。

 

 「駅までのタクシーは呼んであります。これなら急がなくても大丈夫です」

 

 「すまないな、そこまでしてくれて」

 

 「いえいえ、先生のお役に立てるのなら嬉しいです。そういえば、今回はどんな場所へ取材に行くんですか?」

 

 「ああ、子供にしか見えないという山童。ファンタジーランドで写真を撮ると映りこむ妖精。戦によって引き裂かれた姫と武将の怨霊を封じ込めた石。都市伝説のようなものもあるが目撃情報が多いのも興味深い」

 

 「気を付けてくださいね?危ないことには関わらないように心掛けてください」

 

 優は心配そうに伏井出を見詰める。本当なら、危険な事には一切関わって欲しくはないだろう。

 

 「優が教えてくれたからな。私が死んで悲しむのは私だけではない」

 

 「ええ、何より私が悲しみます。私を泣かせたくなかったら、絶対に帰ってきてください」

 

 「約束する、私は必ず優の元へ帰って来る。それは君と初めて会った時からの約束だ」

 

 『ケイさんは私が絵を描いても居なくならない?』

 

 『ああ、私は君の前からいなくならない』

 

 初めて会ったあの日、絵をまた描けるようになったあの日。それは優の中でも一番大切な思い出として、未だ色褪せることはない。

 

 「覚えていてくれたんですね、先生」

 

 「忘れる筈がない、大事な約束だ。…どうやら、タクシーが到着したようだ」

 

 「いってらっしゃい、先生!」

 

 「ああ、いってきます」

 

 その姿は正に出張の夫を見送る妻のようだった。

 

 「いってらっしゃいのキスは流石に無理だなぁ…。さーて、私もお泊りの準備を始めようかな!」

 

 

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 正宗と紗霧は南の島へ出発する直前、紗霧の部屋で二人は話している。

 

 「じゃあ、俺はもう行くからな。優さんに迷惑を掛けるなよ?」

 

 「か、かけないもん!優ちゃんは私が和泉家の代表として丁重におもてなしするから!」

 

 「まともに部屋から出れないのにどうやって…まあ、前よりも外出(部屋の外)時間は増えているけど」

 

 「だ、大丈夫。兄さんや優ちゃんならギリギリ大丈夫だから…伏井出先生はまだ怖いけど…」

 

 「そうか?俺は大人の男性って感じで結構憧れなんだけどな」

 

 「兄さんに伏井出先生みたいなクール・ミステリアス系は似合わないから止めて」

 

 紗霧の頭の中ではスーツに身を包み、ミステリアスな雰囲気を纏う正宗が浮かぶ。正直言って、クールというよりクール(笑)だ。似合っていないにもほどがある。

 

 「辛辣ゥ!!…じゃあ、留守番頼んだぞ、紗霧」

 

 「うん!任された!」

 

 「それじゃあ、いってきます」

 

 「いってらっしゃい、兄さん」

 

 正宗は荷物を持つと部屋を出て行った。その後、正宗が家を出ていく様子を紗霧は部屋の窓から眺めている。

 

 「優さんが来るのは昼過ぎだから…何しようかな…。お絵描き配信でもしようかなー」

 

 優が来るまで5時間以上の時間がある。紗霧はお面を被り、フード付きのパーカーを着ることでエロマンガ先生に変わった。

 

 エロマンガ先生としてのスイッチが入った紗霧はニヤニヤ生放送でお絵描き放送を始めた。

 

 「よし…おーい!お前ら、『エロマンガ先生のお絵描き配信』始めるぞー!」

 

 

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 日差しが照り付ける道中を優は日傘を差しながら歩いている。腕はオペラ・グローブのような長い手袋をして、スカートも長め、頭には麦わら帽子と完全防備だった。

 

 優の令嬢のような美しい姿に道行く人々は足を止めて彼女の姿を追っていた。

 

 「熱いなぁ…熱波襲来ってね…。あっ、自転車屋台のおじさんだ」

 

 公園を見るとおじさんが子供たちにアイスを売っていた。他にはラムネなどのジュースも販売している。

 

 彼は夏になるとアイスやラムネ、冬になると石焼き芋を販売している。ここらでは名物となっている屋台のおじさんだ。

 

 「おじさん、ラムネください」

 

 「おう、伏井出先生とこの嬢ちゃん。そんな格好して今日はどうしたんだい。先生とデートでもするのかい?」

 

 「残念、先生は出張中です。今日は友人の家へ泊まりに行くの」

 

 「そうか、気を付けていけよ!嬢ちゃんは可愛いから、変な連中が絡んでくるかもしれん」

 

 「そこら辺のナンパ男には負ける気はしませんけど。忠告ありがとね、おじさん」

 

 公園を後にし、駅へ向かう。駅で電車に乗り、和泉家最寄りの駅に降りる。

 

 その後もそこそこ長い時間を歩き続け、ようやく優は和泉家へ辿り着いた。

 

 

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 「今日は気分が乗ってきたぞ!お前ら、何かリクエストはあるか?」

 

 『転生の銀狼のヒロイン!』

 『エッチな子なら何でもいい』

 『エロマンガ先生』

 『あれ?生放送の最初の方に今日は誰か来るって言ってなかった?』

 

 生放送では多くのコメントが右から左へと流れていく。その中の一つのコメントで紗霧は思い出した。

 

 「……ああああ!そうだった、もう直ぐ友達が来る!」

 

 『えっ!先生って友達いたの?』

 『イマジナリーフレンドだろ、察してやれ…』

 『寂しさから幻覚を見始めたか…』

 『家族は何故こんなことになるまで放っておいたんだ!』

 

 「友達くらい、ちゃんとおるわい!」

 

 そんなやり取りをリスナーとしていると、玄関のチャイムが鳴る。

 

 「やっば!今日の放送は終わり!じゃあな!」

 

 『…マジで終わりか…誰が来たんだ?』

 『可愛い女の子かもしれん』

 『エロマンガ先生っておっさんだろ?』

 『逮捕案件ktkr!』

 

 完全に放送が終了するまでの数分間、エロマンガ先生の友人とは誰かという議論が続いた。

 

 「紗霧ちゃん?いるよね?そもそもあの子この家から出られないんだし」

 

 「ご、ごめんなさい!今、開けます…」

 

 扉の奥でバタバタと音がしたかと思うと、次には扉が開かれた。

 

 「打ち上げ以来だね」

 

 「うん、優ちゃん久しぶり。えへへ…あれから、ちょっとずつ(室)外に出れるようになったんだよ?」

 

 「確かに進歩はしてるね。まあ、先に中へ入らせて貰っていいかな?暑くて仕方ないんだ」

 

 「入って、入って。冷蔵庫に麦茶があるから…それを飲もう」

 

 「いいね、正直暑さでヘトヘトなんだよね」

 

 二人は家への中へ入り、リビングへ向かう。キッチンには正宗が作っておいたのであろう大きな鍋のシチューがいい匂いを室内に漂わせている。

 

 「どうぞ、麦茶です」

 

 「ありがとうー、今晩のご飯はシチューだね」

 

 「兄さんが作ってくれたみたい」

 

 「お兄さんといえば…。紗霧ちゃん、正宗君との関係はその後どうなったの?」

 

 「ど、どうなったも何も……変わってないよ……あれ以降、兄さんは私を妹として私を見てる…と思う」

 

 「そんな事ないと思うけどなぁ…紗霧ちゃんがラノベヒロイン並みの言い回しをするからラノベ主人公な正宗君の勘違いが解けないんだよ」

 

 「そ、そういう優ちゃんはどうなのさ!6年間も一緒に住んでて何も進展ないんでしょ!私と一緒じゃない!」

 

 しかし、優はその言葉を待っていましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる。

 

 「え…もしかして…」

 

 「ふふふ…そうなんだよ。紗霧ちゃん、私は先生との関係を一歩進めたんだ!」

 

 「ど、どうせ、手を繋いでデートしたとかでしょ?それでも私は羨ましいけど…」

 

 「聞いて驚くなかれ!打ち上げ会の帰り、花火を背にしてキスをしたんだよ!ロマンチックだろ!」

 

 「鱚?魚?」

 

 「チューだよ!チュー!まあ、唇ではないけど…」

 

 「………………え、え、えええええええ!!!伏井出先生とキスしたの?!どっちから?」

 

 優が伏井出とキスをしたのだと理解するまでに、数秒間フリーズした紗霧だったが理解した途端興味津々に訊いてくる。

 

 「それは私からだよ。まあ、今の先生なら私がキスしてって言ったらしてくれそうだけど。そんな事をされたら私の心臓が耐えられないね」

 

 「ううう……優ちゃんは私の仲間だと思ってたのに…」

 

 「正宗君なら紗霧ちゃんから迫れば、イチコロなのになぁ。エルフさん、ムラマサさん、紗霧ちゃんなら一番アドバンテージがあるのに…。このままじゃ、サブヒロイン√へ…」

 

 「それだけは嫌だー!!だ、大丈夫…落ち着け紗霧。兄さんの一番好きな人は私…大丈夫」

 

 そこへ更に発破を掛けるような言葉を優は投下する。

 

 「この取材期間中にエルフさんかムラマサさんが正宗君と一気に仲を深めるかもよ?エルフさんは大胆な行動でもしかしたら告白するかもしれない」

 

 「う゛っ!?」

 

 「ムラマサさんは天然な所があるけど、逆に本人が意図してないところで正宗君を魅了するかもよ?」

 

 「う゛っ!?う゛っ!?」

 

 「正宗君は敵意には強く対抗できるのに、善意には全く免疫ないよね?草食ではないけど、押しに弱いからなぁ」

 

 「う゛う゛う゛う゛う゛ぅ!!」

 

 「げっ…やり過ぎた…」

 

 優の発言に紗霧は目に涙を浮かべて、雨の日に捨てられた子犬のようになっている。

 

 「ご、ごめんね!正宗君は妹がいるのに妹とのラブコメを書いちゃうくらいにはシスコンだから心配ないよ…」

 

 「……違うの…優ちゃんは悪くない…。ただね、いままで兄さんに自分の想いをまともに伝えたことがないのに…。エルフちゃんやムラマサちゃんは兄さんに自分の想いを伝えてると思うと悔しくてね…情けなくてね…涙が止まらなかったの…」

 

 未だに完全には涙は止まっていない。だが、発破を掛けられた紗霧はある決意をした。

 

 「だからね、決めたの…」

 

 「何を?」

 

 「兄さんとの夢が叶ったら兄さんに真実を伝える………って事を言う」

 

 「ま、まあ、一歩前進かな?あと、正宗君にはもう少し優しくしてあげたらどうかな?」

 

 「そうする…でも、兄さんが変な事を言うからいけない…」

 

 「それも半分くらいは、紗霧ちゃんの妄想力のせいだよね…。流石の正宗君も前聞いたような、エッチな事は考えてないと思うよ?」

 

 「私…そんなにエッチかな…」

 

 「どうだろう?でも、中学生の女の子は初対面の人物にパンツ見せてとは言わないと思うよ」

 

 「うううぅぅ……」

 

 エルフやムラマサですらここまで紗霧と仲がいいわけではない。ここまで本音で話すのは優に心を開いている証拠だった。

 

 「優ちゃんはどうなの?伏井出先生が執筆の為に抱きしめさせてとか、頭撫でさせてとか言ってきたら?」

 

 「バッチこいですよ。小学生時代は褒める時に撫でてくれたのに、中学生になった頃から私に気を遣ったのかそういうのがなくなって悲しかったからね」

 

 「私には無理だよ…兄さんの手を握るのも恥ずかしいし…」

 

 「大丈夫だよ、紗霧ちゃんはちゃんと想いを伝えられれば、エルフさんやムラマサさんを置き去りにするほどの力があるんだからさ。自信もってね」

 

 「うん、わかった。ありがとう、優ちゃん…」

 

 「いえいえ、どういたしまして」

 

 時刻はもう五時過ぎ、もう夕方だ。しかし、太陽はまだ夕方というには高い位置にいる。

 

 「どうしよっか?ご飯にする?」

 

 「お風呂にする?それとも、わ・た・し?」

 

 「じゃあ、紗霧ちゃんで」

 

 「冗談だよ?女の子同士っていうのは興味ないし」

 

 「分かってるよ。興味ないのは嘘だ!美少女二人がキャッキャウフフしてたら、絶対に紗霧ちゃんはガン見するはず!」

 

 「し、しかたないじゃん!イラストレーターは美少女を見たら、目が離せなくなるの!」

 

 「ギルティ!私は美少女と先生が居たら、先生の方を見続ける!」

 

 「それも十分おかしいよ!」

 

 こうして、騒がしいお泊り会の初日が終わるのだった。

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