フクイデ先生   作:フクイデスト

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何故か書けてしまったので投稿
因みに一話から書き溜めはしていません
きっと、この投稿スピードもベリアル様の加護でしょう


レストア・メモリーズ

 「………………」

 

 その日伏井出ケイは『GEED』二巻の執筆に取り掛かっていた。だが、その指先は『GEED』二巻の最終話の終盤で止まっている。

 

 「気分が乗らないな…まだ、私が過去との折り合いを付けられていないということか…」

 

 そのシーンは序盤からの黒幕である大物小説家と主人公が決着を付けるシーンだ。

 

 

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 黒幕の変身した最強の合成怪獣と少年の変身した崇高な戦士がぶつかり合う。

 

 「所詮、作られた存在の貴様に何が出来る!跪け!地を舐めろ!額を擦り付けて許しを乞うんだァ!!」

 

 だが、合成怪獣は最早暴走状態にあり、その行き場のないエネルギーを辺り一面にまき散らす。それを戦士はバリアで防ぐことで周囲への影響も防いでいる。

 

 「終わる時が来た!お前の首をあのお方への手土産とする!」

 

 「くぅ!!やっぱり、様子が変だ。暴走しているのか!」

 

 『はい、その様です。あれほどのエネルギーは個人が制御できるものではありません。暴走状態であると推測できます』

 

 リクの発言にレムが計測データから黒幕の状態を推測する。

 

 「貴様の価値はァ!あのお方の遺伝子を持っていること!それ以外の価値はない!貴様は模造品だァ!!」

 

 「僕は模造品なんかじゃない!僕の名前はリク、朝倉リク!それが、僕の名前だあァ!!」

 

 再度、戦士と合成怪獣の闘いが始まる。その余波で周囲の建物は吹き飛ぶほどの衝撃が出されている。

 

 「貴様の人生に価値などない!!お前という肉片に生命を与えたのはこの私だァ!お前が生まれる前にこの手で捻り潰すことも出来た!」

 

 「貴方には分からないんだ!人の幸せがァ!僕には仲間がいる!帰る場所も!!僕は僕の人生を生きているんだァ!誰にも価値がないなんて言わせない」

 

 「貴様が価値あるものと信じているものは所詮与えられただけの屑だァ!薄っぺらい存在の貴様にはお似合いだがなァ!」

 

 「かわいそうな人だ、貴方には何もない。空っぽだ」

 

 「なんだとォ!!」

 

 

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 小説はそこで止まっている。あとは黒幕の小説家が崇高な戦士から必殺技を受け、倒されるというお約束のシーンだ。

 

 「かわいそうな人、空っぽか…………。少し気分転換に外へ出てみましょうかね…。ん?」

 

 ふと、机の上のスマホを取ろうとすると、通知を知らせる緑のランプが点灯している。

 

 「珍しい、誰からでしょう…。正宗君からですか?一体どんなことでしょう」

 

 SNSを開いてみるとそこには

 

 『先生、企画書の作り方を教えていただけませんか?』

 

 「……彼も何を考えているかわかりませんが、今は気分転換のためにもいいかもしれませんね」

 

 『いいですよ、何処で落ち合いましょうか?』

 

 そう、返信した。

 

 

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 「あああぁ!!本当に大丈夫か!俺!いや、まさか先生も本気で来るつもりなのか?!」

 

 ここ和泉家の玄関で焦っている人物がいる。それは家主である和泉正宗に他ならない。何故、家主である彼がが玄関口で苦悶しているかというと、1時間程前に伏井出ケイに相談をSNSで送った。そこまではよかった、彼が冗談で相談場所として

 

 『それじゃあ、僕の家なんてどうですか?美味しいお菓子も用意しますよ?』

 

 と冗談で返信すると

 

 『いいですね。マサムネ先生のお宅は何処にあるのでしょうか?』

 

 と返ってきたことで、そのままの流れで彼の家で相談をすることになったのだった。彼はNOとは言えない日本人なのかもしれない。

 

 「そろそろ着く頃かな?ああ…緊張してきた」

 

 ピンポーンと家のチャイムが鳴る。

 

 「すみません。ここが和泉正宗さんのお宅でしょうか」

 

 「あっ、はい。今開けます」

 

 その居たのはスーツ服に杖を持っているいつものスタイルの伏井出ケイだった。

 

 「伏井出先生、すみません。こんな遠くまで来て頂いて」

 

 「いえいえ、私の方も少し気分転換をしたかったものですから」

 

 「そう言って頂けると嬉しいです。さあ、中へ入ってください」

 

 「では、お言葉に甘えて」

 

 正宗が先導し、その後に伏井出が続いた。通されたのはリビングのようで、その扉を開けると…

 

 「こ、これでどうかしら?」

 

 スカートをたくし上げて、パソコンに向かって見せつけている山田エルフの姿が飛び込んできた。

 

 「ななな、何してんのォ!!」

 

 「貴女はそういう趣味なんですか?」

 

 正宗の大声にこちらの存在に気付いたようでエルフは顔を真っ赤にして顔だけ振り返った。

 

 「ままま、マサムネェ?!それに伏井出ケイ!」

 

 「本当に何してるのお前!」

 

 「い、いや、これは違うのよ」

 

 エルフは顔を赤らめながら弁明を始めた。

 

 「エロマンガ先生にパンツを見せてたの…」

 

 その発言で正宗の顔が真顔になる。恐らく脳の処理容量を超えたのだろう。

 

 「はぁ?えっと?どういうこと?」

 

 エルフが言うには彼女が自身の小説に登場するキャラクター絵を描くように頼むと、エロマンガ先生は描く代わりにパンツを見せることを交換条件にしたようだ。

 

 『か、かわいい子を見たらスカートの中のパンツも見たくなるのは、イラストレーターなら仕方ない。イラストレーターなら』

 

 パソコンの中で弁明するエロマンガ先生に対して、正宗は伏井出の方向を向く。すると伏井出は無言で首を左右に振る。

 

 「残念だ、エロマンガ先生。専属イラストレーター持ちの作家から判定が出た。結果はギルティ」

 

 『にゃぁぁぁああ!!』

 

 その後、エルフが仕事をする為に連れ去られたりしたが問題はなかった。

 

 「ようやく、ちゃんとした話ができる…」

 

 『で、マサムネ先生。どうやって、そんな大物と知り合ったんだ?講演会を頼むだけでもアンタじゃ破産するぞ?』

 

 「ちげーよ!今回は友人関係で頼んだら。快く承諾してくれたの!」

 

 「どうも初めまして、エロマンガ先生」

 

 『そ、そんな人知らない!』

 

 「あっ、気にしないでください。これは癖みたいなものですから」

 

 「マサムネ先生のライトノベルは拝読していますから、貴女の絵も見ていますよ。とても、可愛らしい絵だと思いました」

 

 『ううん、吉良沢優先生ほどではない』

 

 「おや、優の事を知っていましたか?」

 

 『…ネットや貴女の小説で何度も見た。あそこまで画力があって、守備範囲の広いイラストレーターはあの人くらい。私も憧れている』

 

 「それなら、私の方からSNSの番号を教えておきましょうか?私としては君と優は良い友人になりそうだ」

 

 『えっ!?でも、吉良沢先生に迷惑じゃないかな?それに男の人と話すのは怖いかな…』

 

 「あっ、エロマンガ先生。吉良沢先生は女性らしいぞ?」

 

 PCの中のエロマンガ先生が固まる。かなりの衝撃を受けているようだ。

 

 『ええぇぇ!!?だって、あんなグロテスクな絵や神秘的な絵を描ける人だよ?人生経験豊富な男性だと思うじゃん!』

 

 「俺と同じくらいの女子高生だから、人生経験もかなり怪しいぞ」

 

 『ネットの推測ほど当てにならないものはないね…』

 

 ネットというものは玉石混交。情報の整理をしないと使える情報というのはなかなか見つけられないものだ。

 

 『えっと、それならSNSでお話ししてみたいです。上手な絵の描き方とか可愛い女の子なら…』

 

 「おい、吉良沢先生が可愛いかったとしても、初対面でパンツ見せてとか言うなよ…」

 

 『……い、イワナイヨー』

 

 「棒読みィ!!」

 

 「わかりました、後で優に伝えておきます。では連絡先を教えてください」

 

 エロマンガ先生から教えて貰ったSNSの連絡先を伏井出は手帳に記録した。

 

 「では、そろそろ本題に入りますか」

 

 『「本題?」』

 

 「貴方たちのライトノベルの企画書を作るのではないのですか?」

 

 『「あっ…」』

 

 その後、正宗は企画書の作り方を教わりながら時間を過ごした。ちゃんと理解できたかは微妙だったが、少なくともエルフに教わるよりは数十倍はよかったとだけ記しておこう。

 

 

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 「(靴がある…優はもう帰っているのか)ただいま」

 

 伏井出が帰宅の言葉を告げると、リビングの方からパタパタと足音が近づいてくる。

 

 「お帰りなさい、先生!珍しいですね、先生がこんな時間まで外に出歩いているなんて」

 

 リビングの扉を開けて出てきたのは、夕食を作っていたのかエプロン姿の優だった。エプロンは黒を基調とした大人びた落ち着いた色合いだった。

 

 そんなエプロンも長身で大人びた雰囲気がある優が付けると、新婚の妻が夫を出迎えたようにも見える。

 

 しかし、伏井出はそんな優の恰好を見慣れているので特に反応することもなく返答した。

 

 「ああ、ある人物に企画書の書き方を教えていたんだ」

 

 「ある人って…この前言っていたライトノベル作家さんですか?」

 

 「そうだ、その人物だ。それと優」

 

 伏井出がポケットから取り出したのはエロマンガ先生のSNSの連絡先が記してあるメモだった。

 

 「これはなんですか?」

 

 「その人物の絵を描いている人のSNSの番号だ。優と話がしてみたいそうだ」

 

 「私とですか?別に私はいいですけど…あのエッチな名前の人ですよね?男の人?」

 

 「いや、あれは女の子だろうな。しかも、君よりも年下の」

 

 「は、はぁ!?私よりも年下の女の子があんなエッチなペンネームでエッチな絵を描いているんですか!!」

 

 「本人も名前については気にしているようだから触れるのは止めてあげなさい」

 

 「まあ、わかりました。SNSで友達以外とお話しするのは初めてですけど。同じイラストレーターで、女の子なら大丈夫でしょう」

 

 「ああ、仲良くしてやってくれ。いい匂いだな、今日はカレーかい?」

 

 「はい、冷蔵庫に丁度具材がありましたから、カレーにしました」

 

 伏井出邸の食卓は暖かなものだった。伏井出ケイ自身が気付いているかは分からないが、自身が敗北する物語を書き始めた時点で彼の心に光は確かに灯り始めている。




―ちょっとした小話―

 次の日、休みだった優は先日伏井出から渡されたSNSの番号へ朝早くから連絡している。そう、その番号はエロマンガ先生のものだ。

 「あーあー、繫がったかな?」

 「はい…もしもし」

 通話に出たのは寝ぼけ眼の女の子だった。肌が色白で確かに彼女よりも幼いのだろう。

 「えーと、貴女がエロマンガ先生?」

 「そ、そんな人は知らない!」

 少女はその言葉で眠気が覚めたようで、いつも通りの返答をした。優もその返しは伏井出から聞いていたので予定調和として流す。

 「始めまして、私の名前は吉良沢優だよ」

 「えっ、吉良沢先生?」

 「うん、本人だよ?」

 「………」

 紗霧は驚いていた。吉良沢優が女性だとは聞いていたが、予想以上の美人だったからだ。胸もそこそこ大きく、色白。しかも、今まで見たこともない美人となれば、今モデルを探していた彼女がこんな言葉を言ってしまうのも予定調和かもしれなかった。

 「吉良沢先生…」

 「なに?」

 「後生です…パンツ見せてください!」

 「…………え、え、えええぇぇぇ!!?」

 こんな衝撃的な出会いを果たした二人だった。その後、問題なく友人関係になることが出来た。
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