マキアちゃん逆行   作:テトテトテト

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この話は本編にあんま関わりないというか、読まなくてもいい話です。(断言)
ただ書いてしまったので、せっかくだし投稿します。
いつもより更に殴り書きなので、変な表現多いかもです。
要らないって声が多そうだったら消します。


第4話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 マキアは真剣な表情でエリアルと向き合っている。明らかに緊張していて、しゃがんでいるだけなのに足が少し震えている。

 

「…どうだ?」

 

 エリアルの腰を支えているラングも、横から様子を見ているデオルも、ここにいる人間はみな、エリアルを除いて顔を強張らせている。

 

「…いいよ、離してみて。」

 

 ラングがマキアの許可を取ってからエリアルの腰から手を離す。デオルの握りこぶしに力が入る。マキアはエリアルの姿勢が安定したのを確認し、そしてエリアルの手から自らの手を離した。

 

 その結果。

 

「あ、うぁー」

「ほら、こっちだよエリアル!頑張って!」

「…歩いてる、歩いてるぞ!」

「すげー!!!エリアル、すげーじゃん!!!」

 

 支えを完全に取られたエリアルは、一歩ずつ、しかし確かに自らの足で歩き始めた。

 ラングやデオルはその光景に大興奮して騒いでいる。

 マキアは一度通った道ではあるが、嬉しいものは嬉しい。よって、前回と大して変わらない喜び方をしていた。

 それはすなわち大はしゃぎの大喜びである。

 

「あはははっ凄いよエリアルぅ!よく頑張ったね!」

 

 そして何歩か歩いたところでマキアの元にたどり着いたエリアルを満面の笑みで抱き上げ、くるくると回り出した。歩いた本人であるエリアルはなんの感慨もないようで、高いところで回されて無邪気に喜んでいる。

 公道でこんな事をやっているので、当然通りがかった村人にはその姿が目撃された。

 

「あらあら、歩けるようになったの?良かったわねえ。大変な時期はもうちょっとだから、頑張ってね。」

「若いのに一端の母親してるじゃない。でも、分からないこともあるでしょう?私達も先達としてアドバイスもできると思うから、何かあったら遠慮せず相談してね。」

「はい!ありがとうございます!」

 

 エリアルを抱えたまま草花が咲いている道のはずれで寝転ぶと、村人から声がかかる。

 そのどれもが肯定的な声で、ヒソヒソと噂されていた前回とは大違いだ。

 マキアが隣に寝転んでいるラングに嬉しそうに話しかける。

 

「ラング、私母親やれてるって!」

「おう、ちょっと頼りないけど、かーちゃんやれてると思うぜ。それに、エリアルのことになるとおっかねーもんな、マキアは!」

 

 前回では「こんな頼りないかーちゃんなんていねえよ!」とまで言われたため、母親をやれていると言われて嬉しかった。しかし、自分では他人を怖がらせているなんて思ってもいなかったため、慌てて否定する。

 

「こ、怖くなんてないよ!」

「どうだか。この間悪ガキどもに絡まれたときなんて、エリアルの悪口言われた途端、鬼みてーな顔になってたぜ?」

「え、嘘⁈」

「ほんとほんと!オレとかラング兄ちゃんが助ける前に、あっちの方がびびって逃げてたもんね!」

 

 前にマキアがエリアルを背負ってミドの商品を届けに行ったとき、ラングと同じくらいの子供達がマキアに突っかかってきた。

 そして、自分たちと見た目の歳が変わらないのにエリアルを育てているマキアのことをからかってきたのだ。

 実際は子供の時期特有の、好きな子ほどいじめたくなるアレなのだが、マキアは当然そんなことには気づかないので、煩わしく思っていた。

 それでも、自分が悪く言われるだけならばマキアはそこまで怒らなかった。400年を生きたマキアでも、15を過ぎたばかりの子供が赤ん坊を育てるのはおかしいと思っていたし、実際マキアは途中まで悪口を黙って聞いていた。大人とは違って子供に理屈で話しても通じないし、相手をするだけ無駄だと思っていたからだ。

 しかし、子供達の中の1人がエリアルのことを「変な赤ん坊」と言ってしまったことでマキアは急変した。

 マキアはピタリと動きを止め、ゆっくりと子供達のほうに振り向く。その顔は能面を貼り付けたかのような冷たい無表情だ。

 そこに恐ろしいものを感じた子供達は足を震わせ、先ほどまで元気に動いていた口すらも閉ざしてしまう。

 

「変な赤ん坊…?こんなに可愛いエリアルの、どこが変だというの?さっきから黙って聞いてれば、私やエリアルのことを変だ何だと…。いい加減にしなさい…私は誰が何と言おうとエリアルの母です。そして、母の役目は子供を守ること。そのためなら私は全てを捨てて鬼にでもなる。だからいくらあなた達が子供でも、エリアルに危害を加えようと思っているなら私は容赦しない…!!」

 

 急に低い声と威圧感を出し始め、だんだんと恐ろしい表情に変わっていくマキアに、子供達は完全に恐怖で心を塗りつぶされて折られ、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった。

 このとき近くにいたラングやデオルが騒動を聞きつけて止めようとしていたが、マキアの鬼のような形相に「あ、これは必要ないな」と感じて、何かあったときのために一応見るだけ見ていたが、予想通り必要なかった。

 なお、マキアから直接その怒気をぶつけられているわけでもないのに、ラング達は冷や汗が止まらなかったという。

 

「あー、あんときは怖かったなぁ…かーちゃんとどっこいだった。」

「わ、私そんなに怖くないよ⁈」

「いや普段はな?でもエリアルが絡むと急変するしなー。」

「えええええ、私が怒ってもミドみたいな迫力は出ないよ!」

「へえ、それは私が怒ると怖いってことかい?」

「それはもう……え?」

 

 ラングが後ろを振り返ると、腕を組んで仁王立ちしているミドが立っていた。

 口元はニンマリと笑っているが、明らかに目が笑っていない。背後からゴゴゴゴゴという効果音が聞こえてきそうだ。

 

「ち、ちなみにいつからおられましたか…」

「お前がマキアに、『エリアルのことになるとおっかねーもんな』って言ったあたりからかねぇ…」

「それって最初からじゃん!」

「もしかしなくても、私が言ったことも…」

「当然聞こえてたよ。」

「お、オレは言ってないから!」

「一緒に聞いて笑ってた時点で同罪に決まってるよ。さて3人とも…」

 

 ミドが笑顔の中に迫力を押し込めてずんずんと歩いてくる。上からのしかかってくるような圧力によって完全に動きを止められたマキア達3人は顔色が真っ青になり、側から見た様子はまるで死刑執行を待つ罪人のようだった。

 

「何か言い遺したことは?」

「「「ご、ごめんなさーい!!!」」」

 

 その後3人は真っ赤になる程お尻を叩かれ、更に罰として仕事の量を大幅に増やされた。

 死んだような表情をして仕事をする3人を見て、ミドとエリアルは一緒になって笑っていた。

 そしてエリアルが笑っているのを見て、「エリアルが笑ってるならいいか」と思ってしまったマキアはもう完全に子煩悩を通り越して親バカの域にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まま」

「え」

 

 いつものように布を織っていたマキアは、柵で囲われた範囲内でハイハイし続けているエリアルのその声でピタリと動きを止めた。

 今聞こえたのは幻聴ではないか。

 近くにいたラングに目配せする。聞き逃してはいなかったようで、ラングも驚いた顔でエリアルのほうを見ている。

 

「い、今…」

「いや、一度だけなら何かの間違いかもしれない。もう一度聞こえたなら…」

「エリアル!もう一回、もう一回言って!!ほら、ママだよ!」

 

 織物を途中で放り出してまでエリアルに迫っていくマキア。しかしそう都合よくはいかず、エリアルは意味のない喃語を話している。

 

「勘違いだったのかなぁ…」

「まあそうガッカリするなよ。きっと話し始めるのもそろそろだって母ちゃんが…」

「まま?」

「ほらぁ!今度こそ間違いないよ!ママって、ママって言ったよ!」

 

 マキアは久し振りにママ呼びされたことでテンションが振り切っていた。

 大げさに身振り手振りで喜びを表現し狂喜乱舞するマキアを見て、ラングは若干鬱陶しそうにしている。ラングはマキアに好意を持っているが、こうも露骨に狂乱されると流石に引く。

 

「はいはい良かったな。まぁマキアはずっとそばにいるし、しょっちゅう話しかけてるから最初に話すのがマキア関連だってのは分かってたことだろうに…」

「じゃあこれは?」

「人を指差すな!」

 

 ラングをこれ呼ばわりしてエリアルに問うマキア。ラングは邪魔くさそうにこっちに向いている指を振り払うが、喜びの感情がとうに上限をぶち抜いているマキアは気にした様子もなかった。

 

「あー、ぅー。」

「流石に無理かな…」

「ママほど単純な音でもないしな。それにラングだと3文字だから余計に難しいんじゃないか?」

「まぁいいよ。それに、しばらくは私だけが呼んでもらえたという優越感が…」

「ぁんぐ」

「え?」

 

 マキアとラングの耳には、聞き間違いでなければエリアルがラングと言ったように聞こえた。

 

「なぁ、今俺のこと…」

「今の嘘!まぁまって言ったの!」

「いや絶対違うだろ!いやぁ、エリアルは天才だな!もう俺の名前まで呼べるようになるなんてな!」

「違う!エリアルはラングなんて言ってないよね?ね⁈」

 

 エリアルを褒めちぎって高く掲げるラングからエリアルを奪い取り、ラングから隠すように半泣きでエリアルを抱きしめるマキア。

 ラングのほうをキッと睨みつけた後エリアルにずずいと迫って真偽を確認しようとするが、エリアルはきゃっきゃっと笑うだけで何も答えない。

 

「どうなの、エリアル!」

「あぅあはばぁあ」

「エリアルぅ!」

「うるさいよマキア!そんなに叫んだらエリアルも鬱陶しく思ってるだろうよ!ラング、あんたもニヤニヤしてないで仕事の続きしな!」

「ごめん母ちゃん!」

「ひええ、すいませんでしたぁ!」

 

 あまりにマキアがうるさいのでミドが怒鳴り込んできた。にやけていただけのラングもとばっちりで叱られていた。

 しかし、怒られた後だというのにマキアの視線はエリアルから離れない。

 それに呆れたように溜息をついたミドは、マキアに仕事に集中せざるを得ない環境を作ることにした。

 

「まったく、その状態じゃ仕事にならないだろう。その作業がひと段落つくまで、エリアルの面倒はあたしが見ておくよ。」

「え?」

 

 そう言うや否や、ミドは素早くマキアからエリアルを取り上げる。

 そのあまりのスムーズさにマキアは一瞬取られたことにすら気づかなかった。マキアの腕の中からミドの腕の中へと移動したエリアルには全く衝撃がいかなかったようで、場所が変わってもきゃいきゃいと喜んでいる。

 

「そんなぁ!」

「ほら、エリアルに構いたいならさっさと仕上げてしまいな。しっかり世話が出来てるのはいいけど、構いすぎなのも問題だね。おーよしよし。」

「うう…よろしくお願いします…」

「はいはい。わかったから早く終わらせな。」

 

 がっくりと肩を落としたマキアはミドが部屋から出て行くまでずっと見つめていたが、最後には諦めて仕事を再開した。

 

「ああ、エリアル…」

「いや自業自得だろう…それ、期限近いんじゃないのか?」

「そうだった…早くエリアルに会いたいし、ちゃっちゃと進めよう…」

 

 そうしてガタゴトと布を織り始めたマキア。

 

 しばらく無言の空間が広がっていたが、ラングがふと、純粋に思っていた言葉をマキアに投げかけた。

 

「なぁ、マキア。」

「なに?」

「マキアとエリアルって、血の繋がりはないんだろう?拾った子なんだっけ。」

「うん。でも、拾ったなんて言わないで。エリアルは、あんな姿になってまでエリアルを守っていた人から、育てる役目を譲ってもらっただけなの。」

「あぁ、ごめん…」

「ううん、いいよ。」

「そ、そうか。いや、単純に凄いなって思ったんだ。こう言っちゃアレだけど、マキアだって子供で、エリアルは赤の他人だったわけだろ?俺はまだ子育てってどういうものなのかちゃんとは分かんないけど、デオルが赤ん坊のときは、俺も大変だったし、母ちゃんはもっと大変そうだった。まぁマキアはここに来たときからちゃんと母ちゃんだったけどさ。家族全員でも大変だったのに、マキアは一人でやってたんだから。俺なんて、お兄ちゃんになるってことすら、デオルが生まれてしばらくしないと分かんなかったくらいだからさ…」

 

 ラングの言葉に、マキアは機織りの手を止める。それには思うところがあった。

 マキアだって、前回はエリアルに当たり散らしてしまうまで母親の自覚なんてなかった。ラングは兄の自覚を持つまでにしばらくかかったと言っているが、それを言ったらマキアなんて6年以上かかっている。

 

「私なんて、全然すごくないよ。初めは、この子もひとりぼっちなんだなって思ったから…子育てのことだって全部ミドの真似だったし、母親の自覚なんてなかった。子供を育てることがどんなに大変かなんて、全然分かってなかった。」

 

 ラングの知っているマキアは出会ったときから既に母親をしていたので、ミドから教わったというマキアの言葉とは矛盾している。しかしマキアがボソボソと言ったせいでラングには中盤以降の言葉がよく聞こえなかった。

 

「でも、約束したから。お母さんは泣かないって。私は、エリアルの前では強いお母さんでいるんだって。エリアルが笑っていられるなら、それでいいの。エリアルのためなら、私はどんなに辛くても生きていける。エリアルが呼んでくれるのなら、それがお母さんじゃなくても、ママじゃなくても、エリアルが呼んでくれた名前が私の名前になるの。」

 

 そう話すマキアはとても綺麗で。そしてどうしようもなくエリアルの母親だった。

 

「エリアルは、私のヒビオルなの。」

 

 エリアルのことを想っているのか、マキアの表情はとても穏やかで、優しいものだった。

 ラングは思わず息を止めて見惚れてしまう。エリアルのことを話すマキアはとても魅力的で、マキアを見ているだけでラングは顔に血がのぼるのが分かった。

 

「なんか、ちゃんとした言葉になってないかもしれないけど、ごめんね?」

「い、いや。やっぱりマキアはすげーよ。エリアルのこと話してるマキアは、すげーカッコよくて、それで、綺麗だっ…」

「え?」

「あ、な、何でもない!!俺、ヤギ小屋の掃除してくる!!!」

 

 ラングは顔を真っ赤にしてマキアの仕事部屋から慌てて出て行った。その後すぐに、何かがぶつかる音、そしてミドが怒鳴る声が聞こえた。

 

「え、あ、綺麗って、え?」

 

 残されたマキアは、ラングの直接的な表現に流石に顔を赤くしたのだった。

 




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