魔法科高校にて境界を視ゆ 作:オガワハイム
「なにあの子、
「こんなに朝早くからもよろしく…………無駄なのにね」
(阿保らしい)
コソコソと小さな声で、然し乍らわざと聞こえるように意識しているような声で話す女子生徒二人。
実力主義であるこの学校では一科・ニ科制度が採用されている。ニ科生とは、例えば事故などで魔法が使えなくなってしまった一科生の穴埋め要員、つまるところの予備だ。大きな差としてあげられるのは教師による魔法実技の指導があるか否かだろうか。施設等の使用などについてはなんら差はないが、ニ科生はその実技指導を受けることができない。
一科生こそが真のエリート。そう信じてやまないものたちがこの学校にどれほどいるのだろうか。
一科生かニ科生かでいうのであれば、四季はエリートである一科生である。しかし、だからといって誰かを蔑んだり侮辱しようとも思わないし見下すつもりもない。自分よりも優れている人は意外と身近にいる。例えそれが格下のグループであったとしてもだ。四季はそれを嫌という程理解している。
自分の実力を信じ切って慢心したものほどニ科生のことを見下すのだ。その姿がどれほど不毛であるか。
そしてニ科生は自分はダメだと思い込み何もかもを諦める。
本当に阿保らしい。
悔しいなら悔しいなりに見返してやろうとは思わないのだろうか。
そんなニ科の蔑称が
そんな二人の視線の先には珍しいことに、ニ科生にして堂々と道の真ん中を歩く青年がいた。
切れ長で理知的な瞳、高身長にしまった体つきの青年だ。
こいつなんかやってんな
それが四季の司波達也に対する第一印象であった。
重心の移動、足の運び方。それらを観察し察するに武術系統のなにかしらを嗜んでいるのだろう。それも相当の練度で。
特別に受けさせられる一人入試テストは放課後だし、入学式までの時間は特に用事もない。
脳内で展開したスケジュールを確認するや否や
(ついてってみるか)
件の二科生の後をつけることにした。二科生なのにこんな時間にいるのか。
失礼な内容かもしれないが、四季は気に留めることもなかった。恐らく、あいつはこちら側の人間だ。表の世界より裏が似合う人間だ。そういった直感が働いていたからだ。先ほど思いついた質問もわりかしどうでもよく、なにを考えて生きているのかが単純に気になっただけだった。
相変わらず体にブレを作ることなく歩き続ける少年を四季は隠れるそぶりも見せずについて行った。
「なにあの子、
「こんなに朝早くからもよろしく…………無駄なのにね」
(阿保らしい)
妹を見送り、入学式まで時間があるものだからどこか座ってゆっくりしようかとベンチを探していたところで耳に入った言葉。
司波達也は無意識のうちにため息をついた。
実に馬鹿馬鹿しい。優越感に浸っているだけの女子生徒に対しては憐れみすら覚える。
今の言葉が
そんなことを考えている時、達也は自分のことをつけるものがいることを察知した。
(曲がってみる………………ついてきているな。足音も小さい。こいつ……)
フェイントをかけて見たりするが、どうやら自分の後をつけているのは本当のようだ。
考えても仕方がない。周りの目もあるこんな場所で行動を起こすとはとても考えられない。
そんなことを考えながら達也はベンチに腰を下ろし、スクリーン型の携帯端末を懐から取り出し、起動させ、ライブラリを開く。ダウンロードされている全て既に頭の中に入っているため、ただただ時間を潰すためだけに適当にファイルを開く。
「隣に、座るぞ」
最初の一行目を焼き読み終えたあたりのタイミングで先ほど後をつけてきたやつだろうか、誰かが自分の座る場所の隣に返事も待たずに座った。
横目で隣の人物を観察する。
黒髪の短髪に眼鏡をかけた少年。その制服には花弁のエンブレム。
「勝手につけたりして悪かったな。俺は両儀四季。お前は?」
「司波達也。見ての通り二科生だ」
司波達也、そう繰り返す四季。
「どうして俺のことなんかをつけた?」
たかがニ科生だぞ?といあ意味合いを込めて聞いてみる。
「なに、単純に気になったことがあったから聞きにきただけだ。俺は一科・二科制度なんて別に気にしてないしな」
「そうか」
拍子抜けだった。別段気に障ったとかそういったこともなに一つないんだが、先程色々言われた反動か、目の前の少年の言葉がやけに強く達也の中に残った。
「早速聞こう。お前、
「どういうことだ?」
目の前の少年、両儀四季から放たれた言葉は達也の考えていたものと全く違った。
そして四季の眼が達也を覗き込んでいるのに、無意識に鳥肌を立ててしまっていたことに達也は気付くことはなかった。
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