※これは1話完結の短編です。
※これは別の短編、『犬と飼い主と戦車道と』の続編となっております。それを読んでからこちらを読んでいただくと少し面白いかもしれません。
これはぬいぐるみと主人が織り成す物語。
ぬいぐるみだって犬と一緒で生きている。そして意識を持っている。
例えその言葉を理解されなくとも、思いが伝わりさえすればいい。
ぬいぐるみだって、人間と同じく……パンツァーフォー!
おはようございますこんにちはこんばんは!シベリアで御座います!
さて、今回はガルパンの短編!『犬と飼い主と戦車道と』という短編も書いたのですが、友人から「また書いて欲しい」と言われたので、シベリアのように広い心を持っている私は……書きました!
まだその小説を読んでいないという方は是非そちらをお読みください!このお話はその短編の続き?みたいな感じなので!
今回の主人公はみなさん知っている、あの大人気キャラクターです!ガルパンを知っている方ならもちろんご存知ですよね?
それではお読みください!
パンツァーフォー!
「お前ら!『ボコられグマのボコ』、はじまるぞー!」
主人公の台詞のあとにイントロが流れ、この番組のオープニングが流れた。
「やってやる、やってやる、やーってやるぜ────」
そしてそんな主人公の良さに惹かれた子供がいた。
「お母様、これ欲しい……!」
「えぇ、いいわよ!」
その母親はとても嬉しかった。小さい頃から戦車道のことを教え込んでいた娘が、それによって他のことにあまり興味を示さなかった娘がこうも興味を持つものが出来ることが嬉しかった。
この西住流を継承するために────
いや失敬、島田流だった。
島田流とは、"西の西住流"と並び"東の島田流"と言われる「日本戦車道ここにあり」と世界に名を馳せた戦車道の流派のひとつ。
臨機応変に対応した変幻自在の戦術を駆使する戦法、『ニンジャ戦法』を得意としている。
その島田流家元、
「はい愛里寿、プレゼントよ」
「ありがとうお母様……!」
愛里寿は嬉しそうに千代からプレゼントされた包装を解いた。
その中身を見て愛里寿はとても喜んだ。その表情だけでも千代は救われたような思いになった。
「お母様ありがとう!大好き!」
「ンン゛ッ……!!い、いいのよ……」
だがこの愛里寿の言葉で完全にノックアウトされた千代であった………
「ふふっ、よろしくね。ボコ……!」
愛里寿はとても嬉しそうにその少し大きめのボコに頬ずりをした。
────それが、おいらと愛里寿の出会いだった。
愛里寿はおいらのことをとても大事にしてくれた。他のぬいぐるみとおいらを闘わせておいらがボコボコにされる遊びをしたりしていたが、いつもおいらを連れ歩いてくれて、一緒にご飯も食べるし、一緒に寝たりもする。
愛里寿は強い。千代……家元の唯一の娘とあって家元から寵愛を受け、島田流の全てを叩き込まれている。しかもそれをしっかりと修得しているからびっくりだ。
そしてその実力が認められ、13歳という若さで大学まで飛び級して、戦車道大学選抜チームの隊長にまで選ばれた。
しかしそれに不信感を覚える者達がいた。それが今となっては愛里寿を支えている3人……メグミ・ルミ・アズミのバミューダ三姉妹だ。
「いくら島田流だからって13歳に隊長が任せられるか!」
「「そうよそうよ!」」
「隊長になりたければその実力、証明しなさい」
「そうよそうよ!」「そうだそうだ!」
「私達、バミューダ三姉妹と1vs.1で勝負よ!」
ルミ、アズミ、メグミは選抜チーム発足直後に愛里寿にそう勝負を挑んだ。だけど、愛里寿はなんて返答したかわかるか?
それはな………
「1vs.1……1vs.3でいい。1vs.1ならすぐ決着が着くから」
「「「な、なにぃ〜!?」」」
「ふふふっ、いいわ!私達3人同時に相手することを後悔しても知らないわよ?」
「そちらこそ、私に戦いを挑んだことを後悔しても知らない」
「言ったわね〜!」
「アズミ、ルミ、行くわよ!バミューダ三姉妹の力、島田流に見せつけるわよ!」
「えぇ!」「あぁ!」
「はぁ……じゃあ行くよ、ボコ」
(おう、やってやろうぜ!)
愛里寿はそう囁くとおいらを戦車の中の空いているところに座らせた。
その試合の愛里寿は凄かった。周りの人達は皆驚いていたからな。
確かにバミューダ三姉妹は連携すると厄介な相手だが、愛里寿はその連携に戸惑うことなく的確にルミ車の履帯を外して身動きを取れなくなったところで弱点を攻撃して撃破した。そしてアズミ車、メグミ車も順番に撃破されて試合はすぐに決着がついた。その動きはまさに島田流そのものだった。
「「「参りました〜!」」」
「いやぁ〜流石島田流!」
「くっ、まさか私達の連携が意図も簡単に破られるなんて……!」
「完敗だわ……!」
「これで私が隊長って認めてくれる?」
「「「もちろんです!」」」
そうしてバミューダ三姉妹は愛里寿を今のように慕うようになった。
愛里寿はボコが大好きだ。だからボコの数もどんどんと増えてきていた。
だが愛里寿はおいらのことを1番大事にしてくれていた。その理由は………やっぱり
「やってやる、やってやる、やーってやるぜ────」
「隊長はずっとその歌うたってますよね〜」
「なんていう歌なんですか?」
「『おいらボコだぜ!』って曲なんだよ。これはね、『ボコられグマのボコ』っていう番組の歌でね!それでね────」
この日、愛里寿はバミューダ三姉妹の3人と散歩をしていた。もちろん、おいらも一緒に。
ボコのことを話す愛里寿はとても楽しそうだ。バミューダ三姉妹はボコのことを聞いているが、その本当の目的は楽しそうに話す愛里寿をみていたいだけだ。へっ、おいらにはバレバレだ!
「あ、ちょっとあそこの公園で休憩しませんか?」
「そうね」
「私、砂場で遊んでくる」
「いってらっしゃ〜い」
愛里寿はおいらを抱えて砂場に向かった。
う〜ん、これはなにを作っているんだろう?砂を積み上げてるから……山かな?
「今ね、ボコの玉座を作ってるの!」
(おいらの玉座か……悪くない)
愛里寿は『おいらボコだぜ!』を歌いながらおいらの玉座を作っていた。
それは何の変わりもない日常だった。バミューダ三姉妹は愛里寿をしっかり見守ってるし、愛里寿も楽しそうに遊んでいる。
だがおいらは気配を感じ取った。
(────上か)
上を見上げると黒い鳥、カラスがこちらを見つめていた。狙いは………愛里寿のネックレスか?カラス共は光るものに目が無いらしいならな。
(────まずい!)
するとずっとこちらを見ていたカラスが愛里寿のネックレス目掛けて急降下してきた。
このままじゃ愛里寿が危ない!しかもバミューダ三姉妹も、愛里寿もこのことに気付いていない。
こうなったら、おいらがやるしかねぇ!愛里寿には恩があるしな!
おいらは立ち上がりカラスにこう言ってやった。
(おい黒いの!おいらが相手だ!おいらのご主人を狙うとは命知らずめ!おいらがボコボコにしてやる!)
「カー!(あ?なんだてめぇ!舐めんじゃねーぞ!)」
「え……?」
「「「っ……隊長!?」」」
カラスが鳴いてくれたおかげで愛里寿とバミューダ三姉妹もカラスの存在に気付いたようだ。さ、ここからが見せ所だ!
カラスは舌打ちをして狙いをおいらの目ん玉に切り替えた。きっと愛里寿に気づかれたことが分が悪いと思ったんだ。
(よし、かかってこい!)
「カー!(ぬいぐるみの癖に生意気な!お前の目ん玉をえぐりとってやる!)」
「あ、ボコ!」
(あ、愛里寿!?なにやってやがる!)
折角狙いが愛里寿からおいらに切り替わったのに愛里寿はおいらをかばうように抱きかかえた。このままじゃ愛里寿も………
「愛里寿、ごめんな……」
「え……?」
────おいらは愛里寿の腕を抜け出してカラスの攻撃を全身で受け止めた。
おいらの目ん玉はもちろんえぐられ、それに加えて他の部位もカラスのクチバシで攻撃された。
おかげで腕も耳も取れた。それに体中が痛い。ところどころから綿が飛び出ていた。
「ボコっ!ボコー!」
「隊長っ!?」
「怪我は有りませんか!?」
「私は大丈夫!それより、ボコが!」
「あ、このっ!あっち行け!」
「カー!カー!(ちっ、撤退するか。ざまぁ見やがれぬいぐるみ!)」
カラスは駆けつけたルミによって追い払われ、ルミはおいらを抱えて残念そうな顔をしていた。きっと今のおいらを見たら愛里寿が悲しむと考えているのだろう。
「ルミ、ボコは!?」
「隊長……残念ながら……」
「っ……ボコっ……!」
愛里寿はルミの抱えていたおいらを見て、慌てておいらを手に取った。
「腕と、耳……ここに落ちてました。でも目は……」
アズミはおいらの腕と耳を拾って手のひらに乗せて愛里寿に見せた。
愛里寿は……愛里寿は悲しそうな顔をしていた。おいらの顔に水滴が落ちたことは今でもよく覚えている。
「「「隊長………」」」
バミューダ三姉妹もなんと声を掛けていいのか分からないみたいだ。
でも愛里寿は腕で涙を無理矢理拭き取ってアズミの持っていたおいらの腕と耳を掴んでからおいらをギュッと抱きしめた。
「
「「「隊長!?」」」
愛里寿が走り出すとバミューダ三姉妹は驚いてそのあとを急いで追いかけた。
愛里寿は息を切らしながらさっきまでバミューダ三姉妹と歩いた道を必死に走って戻った。
「ただいま!」
愛里寿は家に着くと急いで2階の自室に駆け込んだ。その大きな音に家元は驚いたようで愛里寿の名前を連呼していたが返事はなかった。きっとその後に来たバミューダ三姉妹から事情は聞いているだろう。
そして愛里寿は自分の部屋で………
「今度は私の番……!治してあげるからね、ボコっ……!」
愛里寿は裁縫箱を取り出しておいらの体を縫い始めた。
まず愛里寿はおいらの取れた耳、腕を縫い付けた。それを縫い付けると今度は開いているおいらの傷口を塞いだ。
その間、愛里寿は何度も何度も自分の指に針を軽く突き刺していた。
愛里寿は痛がっていた。きっとドアの向こうで見つめている家元やバミューダ三姉妹は飛び込んで止めたかったのだろう。だが最後まで4人は愛里寿を邪魔することはなかった。これほどに愛里寿が真剣においらを治していることに感動していたんだ。
愛里寿は目から零れる涙を拭きながらおいらを必死に縫い続けた。
(愛里寿……ありがとう……)
そのとき、おいらの目からは流れるはずのない水滴が1滴流れた。
(愛里寿がおいらを治し終わると家元は愛里寿の部屋に突入して愛里寿の手に絆創膏を貼ってたな。あの時の家元、感動して大泣きしてたなぁ……)
(そんなことがあったのか。おいらは新人だからそこら辺のことはよくわかんねぇや)
(でも先輩が1番大事にされてることはおいらにもわかるぜ!)
(そりゃそうだ!)
愛里寿や家元が家にいない間、おいらは後輩のボコ達においらと愛里寿の話を聞かせていた。
今日、愛里寿は戦車道の試合があるみたいだからな。帰りは遅くなるみたいだ。今回おいらはお留守番で、愛里寿はボコミュージアムで手に入れたレアボコを連れて行っていた。
理由はこの前負ったこの怪我のせいで、愛里寿に「全治1年だから安静にしていないとダメ」って言われたな。ま、おいら達ボコにとっては傷も名誉だからな!
さて、愛里寿の勝利報告が楽しみだ!
おいらは今ショックを受けている。
愛里寿率いる大学選抜が高校生相手に負けたらしい。それにあのレアボコは敵の大将にあげたらしい。
愛里寿があのレアボコをあげるほどの逸材……一体どんなやつなんだ……!
「ここ、私の部屋」
「わぁ……!ボコがいっぱいだ〜!」
誰だこいつ?愛里寿の友達か?
(おいおいあいつまさか……)
(なに、知ってるのか?)
後輩の1人はあの愛里寿の友達を知っているらしい。いや、おいらも見覚えがあるんだがな。
(あぁ、だってあいつは……!)
(へっ、この方を誰と心得る!)
(お前は……!?)
すると愛里寿の友達の持っていたボコがなんか偉そうに話しかけてきた。
(この方はあの西住 みほであらせられるぞ!)
(な、なにぃーーー!?)
西住みほだって!?あのボコ界でも愛里寿と並ぶ屈指のボコ愛好家と噂され、あの人の手に渡ったボコは幸せになれるというあの西住みほなのか!?
(島田愛里寿もどれ程かと思えば……ふん、みほには到底及ばぬな)
(なんだと!?)
(だって……島田愛里寿にこのような素晴らしい胸はないだろう!)
(くっ……!)
こいつ……なんと羨ましい……西住みほに抱きしめられて、その丸い2つのお山の感触を味わってやがる……!確かに愛里寿にはないものだが、それは当然。だって愛里寿はまだまだこれから成長していくのだから!
(ほれ〜悔しかろ〜?)
(ふん、だが愛里寿はこれからが楽しみなのだよ!西住みほの胸は今が絶頂期。もう成長せぬわ!)
(な、なにを〜!)
「あ、そのボコかわいい〜!抱いてもいい?」
「うん、いいよ。西住さんは特別」
「ふふっ、みほでいいって」
「う、うん……みほ、さん」
(ぬぉっ……)
「あ、かわいい〜!」
西住みほに抱かれた!?し、しかも………いい感触じゃねぇか……
「あ、あまり強くしないでね?その子、怪我をして全治1年なの」
「えぇ!?ご、ごめんなさい……」
(どうだ、いいだろう?)
(わ、悪くない……うん……)
西住みほは愛里寿からおいらの事情を聞いているみたいだ。
しかし、なかなかいい感触だった。愛里寿の今後が楽しみだ。
「────それでね、私が治したんだ」
「えぇ!?愛里寿ちゃんが!?すごーい!」
「ありがとう……」
「よかったね〜ボコ〜」
(あぁ、当たり前だ!)
西住みほもいいが、やっぱりおいらは愛里寿に買われてとても幸せだ。
「あの、ね……これはまだ誰にも話してないんだけど、みほさんには話してあげる」
「え?」
ん、何のことだ?
「絶対、誰にも言わないでね?」
「う、うん……」
「あのね……」
一体愛里寿は何を話すっていうんだ?なにか秘密でもあるのか?
「あのね、実はそのボコ……話せるの」
「え?」
「実はカラスに襲われた時、このボコが『ごめんな』って言ってたの。それに私はしっかりこの子を抱きしめてたのに、そこから抜け出して私を助けてくれたの」
あれ、バレてる?てか聞こえたのか?動いたのはいくらでも誤魔化せるが……言葉は……ちょっと。
(おいお前、あの島田愛里寿って何者なんだ?お前の言葉が聞こえたことがあるって……)
(……そう言えばあのとき、聞こえてた感じの反応をしてたな)
(これはビッグニュースだぞ……人の中にもおいら達の言葉を理解する人がいるって)
(都市伝説じゃなかったんだ……)
そう、これは有名な都市伝説だ。
ぬいぐるみなどのおもちゃの声を聞くことが出来る人間がいるというな。偶に動物の声を聞ける人間はいるが、ぬいぐるみなどのおもちゃの事案はなかなか見ない。
実は島田流家元も動物と会話することが出来る。この家では猫を飼っているのだが、その猫と家元は会話できるそうだ。確か……"島田流動物会話術"。島田流家元しか知らない極秘の奥義らしい。
ちなみにこの情報は猫から提供されたものだ。猫とおいら達は会話できる。だけどおいら達は家元とは会話出来ない。
「そうだとしたら、私のボコも喋れるのかな?」
「た、たぶん……」
そう言うと西住みほと愛里寿はじーっとおいら達を見つめていた。
「でもいつか、ちゃんとお話できるといいね?」
「うん……!そのときはもう1度ちゃんとお礼を言うんだ。あのとき助けてくれてありがとうって」
「うん、それがいいと思う!」
愛里寿……その言葉、おいらにはしっかりと聞こえてるからな………
(ったく、お前は幸せ者だな……)
(ふん、羨ましいだろ?)
(羨ましいよ。おいらもいつか、ご主人と……みほと話せたらいいな)
(きっと話せるさ……西住みほとお前の心が通じ合えばな)
(なんだそれ……)
あのとき、愛里寿においらの言葉が伝わっていたとするのなら……それは、奇跡以外のなにものでもない。それにあのときおいらの目からは水が流れた。それもまた、愛里寿とおいらの心が繋がったことによって起こった奇跡なのだろう……
これは後に分かったのだが、動物会話術と一緒でぬいぐるみとも心を通わせることができれば会話出来るらしい。それが出来るのは、ぬいぐるみに対して深い愛情を持ち、ぬいぐるみからも慕われている人間のみなのだ。
おそらく愛里寿だけじゃなく、西住みほもきっとぬいぐるみと話すことが出来るのだろう。
「ボコ、あのときは助けてくれてありがとう」
「こちらこそ、おいらを治してくれてありがとう。愛里寿」
おいらは………いや、おいら達は一生この人に大切にされた。
おいら達のご主人……
────島田流家元、島田愛里寿に。
読了ありがとうございました!
この短編、いかがだったでしょうか?
バミューダ三姉妹のあのエピソードは完全に妄想ですが、こんな設定あったらいいな〜とか思ってたり。
そんなことより、ボコと愛里寿のお話は自分で思いついたのですが、自分的にはなかなか感動できるものでしたね!はい!
それでは自分の他のガルパン作品、そして他作品も是非お読みください!ではでは!