転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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今回の話で紅魔郷編は終了です。
これから妖々夢をプレイするのでしばらく更新が止まります。

今回は魔理沙視点。
いつもの二倍以上の分量になりました。
…これは魔理沙に対する愛なのかそれともフランに対する愛なのか…?


吸血鬼との弾幕ごっこ(魔理沙視点)

 

 

私は今日、パチュリーから借りた魔道書を返しに紅魔館へ来ていた。

 

 

「つまり、ここの術式はこの術式とその術式を繋げる役割を担っているの。この二つの術式が繋がっていなければ魔法がうまく発動しないのよ」

 

 

返しに来たついでにパチュリーに分からなかったところを聞いている。

パチュリーの教え方は上手く、独学で学んできたせいで用語に詳しくない私にも理解できるほど分かりやすかった。

人里で先生でもやればすぐに人気が出るだろうな。

 

 

「あー、あとこの術式の意味が分からないんだ。この術式、さっきの術式を応用すれば魔力の燃費が良くなるんじゃないか?」

 

 

「よく気が付いたわね、魔理沙。魔理沙が疑問を持った術式はおよそ300年前に作られたものなの。そしてさっきの術式は100年前に作られたものなのよ。魔法は古来の方法を使い続ける物だと思われがちだけど、技術である以上進化するものよ」

 

 

よくできました、とパチュリーに頭を撫でられるが、照れくさくなって思わず手をはねのける。

そんな私の気持ちも分かっているかのようにパチュリーは素直になれない子供を見るかのような目でこちらを見続ける。

うう、そんな目で見るなよ…。

 

私がパチュリーの視線にいたたまれなくなっていると、入り口が開き、宝石のような羽をもった少女がこちらに向かってきた。

 

 

「パチュリー!この本読み終わったから次の魔道書貸して!」

 

 

少女は3冊ほどの本を抱えてパチュリーに話しかける。

 

 

「おいおい、魔道書は子供が読むような物じゃないぜ?」

 

 

「いいえ、魔理沙。彼女はあなたより年上だし、あなたよりも魔法に精通してるわよ?」

 

 

私が少女を茶化すとパチュリーが私の言葉を否定する。

 

 

「…冗談だろ?」

 

 

「残念ながら本当よ。紹介するわ、彼女はフランドール・スカーレット。紅魔館の主人の妹よ。もちろん吸血鬼。年齢は…少なくとも495年は生きてるわ。フラン、彼女は霧雨魔理沙。この図書館の数少ない利用者ってところかしら」

 

 

「あ、私知ってるよ!咲夜が教えてくれたもん!」

 

 

「え、咲夜ってあのメイドだよな。私のことなんて言ってたんだ?」

 

 

あのメイドの名前を聞いて少しドキッとする。

あの時の彼女の言葉を思い出すと今でも顔が熱くなるのだ。

 

 

「えっとね、猫みたいな可愛らしいパチュリーの新しいお友達だって!」

 

 

この前彼女から聞いた言葉と似たような評価にまた顔が熱くなり始めた。

パチュリーも何か反応しているかと見てみるが、意外なことに落ち着いて紅茶を飲んでいた。

 

 

「あれ、何も反応しないのか?」

 

 

「ええ、だってあなたのことは出来の悪い弟子のようなものだと思っているもの。あながち間違った評価でもないじゃない?」

 

 

弟子って…。いやまあ、魔法を教わってるんだし、確かにそうとらえることもできるだろうけど。

 

複雑な気持ちを抱いていると、フランが私の膝の上に乗っかってきた。

 

 

「魔理沙も魔法を使うの?」

 

 

「ああ、私も魔法使いだからな。フランも使うんだろ?」

 

 

「うん!元々は目的があってパチュリーに習ってたんだけど、今は私が好きだからやってるの!」

 

 

「フランは頭がいいからね、優秀な生徒で助かるわ」

 

 

「それは私が落ちこぼれってことか?」

 

 

「違うわよ。あなたの場合、能力に頼って魔法を使っているせいで理論とかそういうものをすっ飛ばしてるのよ。普通そんな滅茶苦茶な方法だと魔法は発動しないんだけど、問題なく発動している所を見るとあなたにも才能はあるわ。ただフランはあなたとは逆方向に才能があるというだけよ」

 

 

「ねえ魔理沙、これは何?」

 

 

そういうものかとパチュリーの話を聞いてると、フランが机の上に出してあった私のスぺカを手に取って聞いてきた。

 

 

「なんだ、スペルカードを知らないのか?今幻想郷で一番流行ってる遊びなんだぜ?」

 

 

「うん、初めて見るよ」

 

 

「よーし、なら一つ見せてやるぜ。パチュリー、いいよな?」

 

 

「ここは強力な結界が張ってあるから大丈夫よ。でも念のため本棚には当てないでね」

 

 

パチュリーに了解をとると、私はフランから受け取ったスぺカを発動する。

 

 

――魔符「スターダストレヴァリエ」

 

 

星形の弾幕が飛び交い、図書館を明るく照らす。

このスぺカはマスタースパークと同じく私の自作魔法で、パワーを重視したマスタースパークとは違い、コントロールを主眼に置いたスぺカだ。

スターダストレヴァリエで相手の動きを制限してマスタースパークで薙ぎ払う。それが私の得意戦術なのだ。

 

フランは私のスぺカに目を輝かせて見入っている。

そして私に振り向き、笑顔を浮かべた。

 

 

「私もスペルカード作ってみたい!」

 

 

「そう言うと思ったぜ。幸い、白紙のスぺカを何枚か持ってる。これを使って作ろう。パチュリーも手伝ってくれよ!」

 

 

「ええ、いいわよ。フランの魔法に関してなら私の方が詳しいしね」

 

 

その後、フランのスぺカを作るために3人で話し合って、3時間ほどで数枚のスぺカが出来上がった。

 

 

「ねえねえ、私早くこれで遊んでみたい!」

 

 

早くスぺカを試してみたいのか、フランはうずうずしている。

 

 

「よし、それじゃ最初は私が相手になるぜ。ルールは簡単、弾幕かスぺカを相手に当てれば勝ち。もしくは相手のスぺカが無くなっても勝ちだ。使うスぺカの数は戦う前に宣言するんだ。ちなみに私は4枚だぜ。フランはどうする?」

 

 

「うーん、じゃあ私も4枚!」

 

 

「よし、じゃあさっそく始めるか!」

 

 

私は箒に乗って飛ぶ。フランも空を飛んで構えている。

下で観戦しているパチュリーが開始の合図を出した瞬間、お互いに弾幕を繰り出した。

 

大玉の弾幕の隙間を縫うように細かな弾幕が襲い掛かってくる。

それをギリギリで避けながらもこちらも弾幕で応戦する。

大胆ながらも無駄のない弾幕は、霊夢から聞いた咲夜の弾幕にそっくりだった。

 

 

「なかなかやるなあ、初めてだとは思えないぜ」

 

 

「えへへ、咲夜の特訓に付き合ってたから弾幕の撃ちあいなら慣れてるの。じゃあそろそろスぺカいくね!」

 

 

――禁弾「スターボウブレイク」

 

 

虹色の弾幕が展開し、迫ってくる。

私はそれを余裕をもってかわし、こちらもスペルを発動しようとしたその瞬間、弾幕がはじけた。

はじけた弾幕はさらに細かな弾幕となってシャワーのように降り注ぐ。

不意を突かれた私は慌ててスペル宣言を中止すると、箒を切り返して回避に徹する。

とっさの判断が功を奏したのか、掠っただけで済んだ。

 

 

「今のは驚いた。とっさに避けなかったら当たってたぜ」

 

 

「むう、今のは当たったと思ったのに」

 

 

「そう簡単に当たるわけにはいかないぜ。次はこっちの番だな!」

 

 

――魔符「スターダストレヴァリエ」

 

 

星形の弾幕がフランに迫る。

しかし、フランはそれらをひょいひょいと余裕をもって避ける。

だがそれでいい。私の本命はそれではないのだから。

ミニ八卦炉の照準をフランに定める。

 

 

――恋符「マスタースパーク」

 

 

極大のレーザーがお互いの弾幕を薙ぎ払いながらフランを襲う。

フランもこれはまずいと感じたのか、先程よりもはやい速度で横に跳んだ。

その結果、爆風に吹き飛ばされはしたものの、フランには当たらなかった。

 

 

「うわあ、すごい威力だね、今のスぺカ。今のが魔理沙の切り札?」

 

 

「まあな、当たったら確実に撃ち落とせるぜ?」

 

 

その後も弾幕の応酬は続き、私は「スターダストレヴァリエ」を一発撃ち、フランは「クランベリートラップ」、「カゴメカゴメ」を撃ったが、お互いに決定打にはならなかった。

 

しかし、お互いにそれなりに消耗し、ボロボロになっていた。

 

 

「なあ、そろそろ終わりにしないか?」

 

 

「うん、いいよ。私もお腹すいちゃった」

 

 

同時にスぺカを取り出し、宣言する。

 

 

――恋符「マスタースパーク」

 

 

――禁忌「レーヴァテイン」

 

 

私の砲撃とフランの炎剣を模した紅いレーザーがぶつかり合って拮抗する。

そこからは純粋な力のぶつかり合いだ。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

 

 

「はああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 

 

凄まじいエネルギ-のぶつかり合いにより、衝撃波が周囲を襲う。

力を出すための咆哮が響き、そして――同時にスペルが消失した。

 

 

「えっと、同時にスぺカが切れた場合はどうなるの?」

 

 

「あー、その場合は引き分けだな。初心者相手に引き分けとは、ちょっとショックだぜ…。」

 

 

ここで気付いたのだが、どうやら私たちはいつ間にか図書館を出て、館中を飛び回りながら戦っていたらしい。

私たちの通ってきた道を振り返ると、結構ボロボロになっていた。

…悪い、咲夜。お前の仕事増やしちまった…。

 

地面に降りてフランを見ると、いつの間にか来ていた咲夜に抱きついているのが見えた。

 

あー、あいつに情けない姿見られちまったな。

 

 

「そんなことないわ、あのフラン相手によくここまで戦えたのだから胸を張りなさい」

 

 

「…私、声に出してたか?」

 

 

「いいえ、でもそんな顔をしていたわ」

 

 

内心落ち込んでいるといつの間にか近づいていたパチュリーに慰められた。

そんな分かりやすい表情してたか?

 

そのあと、フランをだっこした状態の咲夜が図書館でおやつを食べようと提案してきたので、図書館で咲夜のお菓子を堪能してたのだが、いつの間にか咲夜がいなくなっていた。

もう少し話したかったんだがな。

 

その後はパチュリーやフランと5時間ほど楽しい時間を過ごしたのだった。

 


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