レティ視点だと思った?残念、チルノ視点でした!
唐突に目が覚めた。
起き上がろうとすると全身に痛みが走ってまた地面に倒れてしまう。
何で地面に倒れているかを思い出そうとして、妙な服をきた女に撃ち落とされたことを思い出した。
痛みが残っているのは一回休みになるほどダメージがなかったからだろう。
思い出して、悔しさがあたいを襲った。
あたいのことを落としたあの女、最後まで私を敵として見ていなかった。
女の周りで浮いていた変な球に攻撃させるばかりで自分は攻撃に参加しなかった。
――まるで、あたいのことを払うべき障害としてみなしていないかのように。
女は最後まであたいのことを冷たく見ていた。
落ちる瞬間は私のことを一瞥すらしないでどこかに行ってしまった。
(悔しい、悔しい、悔しい!)
あまりに悔しくて涙がにじむ。
ここまで悔しかったことは初めてだった。
今まであたいは何度も負けてきた。
今日だってあの女に負けるまでに紅白の巫女や白黒の魔法使いに負けた。
でも、あいつらは私のことを敵として見ていた。
紅白の巫女はうっとうしそうにしていたけどきちんとあたいを見ていた。
白黒の魔法使いはどこか面白そうにあたいを見ていた。
でもあの女は違う。
あたいと戦うまでに撃ち落としていた妖精や毛玉と同じようにそこらの羽虫を払うような感じで、そこらの石ころを蹴り飛ばすような気軽さで、あたいを見ていた。
その視線の冷たさはあたいが慣れ親しんで使っている氷のようだった。
ある程度痛みが引いて、起き上がれるようになったあたいは、近くの木に寄りかかって膝を抱えて座った。
あの女に負けるまではすごく楽しかった。
過ごしやすい冬がいつもより長かったのもあるし、たとえ負けたとしても弾幕ごっこも楽しかった。
でも、あの女のせいで全部台無しだ。
楽しさは吹き飛んじゃって、残ったのは初めて感じる後に続かない悔しさ。
いつもなら今度会ったら倒してやるって意気込めるのに、今回はそんな気持ちにもならない。
ただただうずくまって、地面を見つめながら泣き続けることしかできない。
あたいは寒さには強いはずなのに、吹き抜ける風から冷たさしか感じられなかった。
あたいがただ泣き続けていると、声をかけられた。
「あら、珍しい妖精を見つけたわ。でも落ち込んでいるみたいね、どうしたの?」
聞き覚えのない声に顔を上げると、思った通り見覚えのない顔があたいの顔を覗きこんでいた。
「あんた…、誰よ…?」
泣いていたせいでガラガラになった声で問いかけると、そいつは穏やかに微笑んだまま答えた。
「私はレティ・ホワイトロックよ、氷精さん。あなたはこんなところでなんで泣いているのかしら?」
「あんたには関係ないわ、あっち行ってよ」
「ええそうね、関係ないわ。でも気になるんだもの、教えてくれない?」
このまま黙っていることもできた。
だけど、あたいはレティに全てを話していた。
――変な服を着た女に負けたこと
――その女に敵としてすら見られなかったこと
――それらが悔しくて、ここで泣いていたこと
レティはあたいの話を最後まで黙って聞いていたけど、話し終わると一つ提案してきた。
「ふーん、大体わかったわ。つまりあなたはその人にまともに戦ってもらえなかったことに悔しがってるのね?なら話は簡単よ、あなたがその人が無視できないくらい強くなればいいんだわ」
「あたい…強くなれるかな…?だって今までだって頑張ってきたのにちっとも強くならなかったのに…」
「それはきっと鍛え方が悪かったのよ。私はこれから眠るから付き合えないけど、私の知り合いに強い妖怪がいるからその妖怪に鍛えてもらいなさい。でも気を付けてね。その妖怪、とっても気難しいから門前払いをくらうか消し飛ばされるかもしれないから。それでも強くなりたいならその妖怪の居場所を教えるわ」
もっと強くなれるかもしれない。
その言葉は私にとって喜ばしいものだった。
そして、いつもの気持ちがわいてくる。
次会ったらあいつを見返してやる、という気持ちが。
「行く!だから場所を教えてよ、レティ!」
「そう。ならここから西に進むと、大きな向日葵畑があるわ。そこの中心に木でできた家があるからそこを訪ねなさい。じゃあ頑張ってね~」
レティは妖怪の居場所を教えてくれると、あたいの頭を一撫でして去っていった。
あたいは気合を入れなおしてレティが教えてくれた場所に行くことにした。
「よーし、待ってなさいよ!絶対に次はコテンパンにしてやるんだから!」
私は向日葵畑に勢いよく飛んでいく。
いつの間にか暗い気持ちは無くなっていた。
ちなみにこの後チルノは東に向かいました。