今回は橙との戦闘。
さあみなさんご一緒に…ちぇえええええええええええええええええええええええええん!!!!
「どうしましょう…迷ってしまいました」
只今、吹雪の中遭難中です。
マジでどうするのこの状況!?
やだよ、どこかも分からない場所で凍死するなんて!
やっぱりさっきのレティが起こした吹雪のせいで方向が分からなくなってたんだ…。
どうしよう、遭難したら動かない方がいいって言うけど、このままじゃ凍死しちゃうし…!
私が少しパニックになっていると、誰かに声をかけられた。
「あれ?ここに人間が迷い込むなんて珍しい。どうしたの?迷ったの?」
顔を上げるとそこには猫耳を生やし、緑色の帽子をかぶり、二つの尻尾を持った猫又がいた。
そんな状況じゃないのは分かってるけど、あえて言おう。
ちぇええええええええええええええええええええええええええええええん!!!!!
うん、彼女に会ったらこれは鉄板だよね。
「ん?良く見たらあなた、吸血鬼のところの従者よね?あなたのことは藍様から聞いてるよ。すごく強くて完璧な従者って名乗ってるんだよね?」
藍様から私のことを聞いてる?
紅魔館が八雲家に監視されてることは知ってるけど、紫にも藍にも会ったことがないんだけどな。
それに完璧で瀟洒な従者って呼び名は私が名乗ってるんじゃなくて、レミリア様が面白がって呼んでるだけなんだけど…。
「同じ従者として勝負を申し込むよ!あなたを倒せばきっと藍様が褒めてくれるだろうし!いざ勝負!」
橙はキラキラした瞳でスぺカを取り出してこちらがスぺカを出すのを待っている。
やめて!そんな純粋な目で見ないで!浄化されちゃうから!
「分かったわ。勝負を受けましょう。ただし、貴方が負けたらここから出る方法を教えてもらうわよ」
橙がいるということはたぶんここはマヨヒガだろう。
今はとにかくここから出て冥界を目指さなくては。
「やった!そう来なくっちゃね、じゃあ行くよ!」
橙は弾幕を張るけど、それは随分とムラがある弾幕で目に見えて隙間が多い。
私は難なくそれを避け、マジカル☆さくやちゃんスターの弾幕に乗せて、ナイフを投擲する。
橙はそれを身軽な動きで避け、スぺカを発動した。
――仙符「鳳凰展翅」
橙が縦横無尽に飛び回り、弾幕をばらまいていく。
これにはさすがに回避に徹するほかなく、未だに慣れない三次元駆動を以て避けていく。
うう、気持ち悪い。これだけの速さで動き回るとさすがに酔うんだよね…。
やられっぱなしでいるわけにもいかないので、こちらもスぺカを発動する。
――幻符「殺人ドール」
ナイフの群れが橙に向かって殺到するが、橙はそれらをひょいひょいと避けていく。
その身軽さはまさしく猫のようだった。
「そんな遅い弾幕当たらないよ!そしてこれで終わり!」
――翔符「飛翔韋駄天」
私の視界が弾幕に埋め尽くされる。
橙の動きのように自由に動き回る弾幕を避けきるのは難しいだろう。
しかも橙自身も動き回っているため、こちらの弾幕が当てにくい。
そこまで考慮して私はスぺカを発動した。
――時符「プライベートスクウェア」
橙からの弾幕が停止する。
このスぺカは相手の弾幕のみを停止させ、その間に攻撃するという、どちらかと言えば防御寄りのスぺカだ。
「うにゃっ!?私の弾幕が止まった…!?あ、しまっ…!」
橙が自分の弾幕が止まったことに驚いて動きが止まったところにマジカル☆さくやちゃんスターの弾幕と私のナイフを当てた。
「うー、負けちゃったー!悔しいー!」
弾幕が晴れると、ところどころ小さな傷はあるものの、元気そうな橙が見えた。
涙目になりつつも悔しさを全身で表している。可愛い。
…藍に会ったら頼んで橙のこと抱っこしようかな…。
「いいえ、なかなかいいスぺカだったわよ。少し焦ったし、あのスぺカを使わされるとは思わなかったわ」
「…本当?」
「ええ、本当よ、あなたも従者としてなかなかみたいね。あなたの主人も誇らしいでしょう」
「えへへ、もちろんだよ!私はできる子だもん!」
「ええ、そうね、偉い偉い」
橙の頭を撫でて褒めるとえへへ~と言いながら擦り寄ってくる。可愛い。
「じゃあ、ここから出る方法を教えてくれる?そろそろ私の主人が心配するわ」
「うん、いいよ!あそこに大きな廃墟があるでしょ?あそこの近くに大きな樫の木があるんだけど、その側に獣道があるから、そこに行けば出られるよ!」
「そう、分かったわ。ありがとう」
「あ…、ねえ!また会えるかな?」
私が礼を言って歩き出そうとすると、橙が呼び止め、不安そうに聞いてくる。
「大丈夫よ。私たちの主人は知り合い同士なんだから、また会う機会はあるわ」
「本当!?じゃあ次会ったらまた弾幕ごっこしよ!」
「ええ、分かったわ。じゃあ、また」
「うん、またねー!」
冥界へ向かうため、教えてくれた方へ飛んでいく。
振り返ると、橙が手を振ってくれていた。
そんな姿に癒されながらも私は手を彼女に振り返すのだった。