彼女たちのファンの方々はご注意ください。
ごめんよ、プリズムリバー…。
作者の技能がもっと高ければこんなことにはならなかったかもしれないのに…。
アリス、上海と別れてしばらくすると、魔法の森を抜けた。
そういえば、魔理沙も魔法の森に住んでいるはずだけど、見かけなかったなあ。
もう異変を解決しに冥界に行ってしまったのだろうか。
マジカル☆さくやちゃんスターが妖精や毛玉たちを撃ち落としていくのを眺めながら進んでいくと、前方に亀裂が見えた。
空中に空間が割れたような亀裂があるというのはなかなか違和感があるが、あれが冥界へと続く道なのだろう。
「ょー…」
ん?今何か下から声のようなものが聞こえたような…。
気のせいかな?
「ですよー…」
今度ははっきりと聞こえた、では誰が?
私が疑問に思って下を見ると、大量の弾幕がこちらに向かって放たれている光景が見えた…って嘘おッ!?
私が慌てて回避すると弾幕は上空に向かって飛んでいき、消えていった。
危なかった…。何なんだ一体?
少しすると、下から赤いラインの入った白いワンピースに揃いのとんがり帽子をかぶった少女が現れた。
「春ですよー!」
彼女がそう言った途端、彼女から弾幕が放たれた。
どうやら先程の弾幕は彼女――リリーホワイトから放たれたものだったらしい。
「私はずっと春だって言ってるのに、何で誰も聞いてくれないんですかー!」
うわーん、と涙目のリリーから放たれる弾幕は意外に隙がなく、私は回避に徹するしかなかった。
慰めてあげたいけど、あの弾幕を突破するのはなかなか骨が折れそうだ。
リリーは泣きながら弾幕を撃ち続けている。
私としては見た目少女のリリーが泣き続けているのは心苦しいものがある。
私は溜息を一つ吐くと、意を決して弾幕に正面から突っ込んだ。
こちらからは撃たない。
どうやらマジカル☆さくやちゃんスターは敵と判断するかどうかを私の霊力によって判断しているらしく、弾幕を撃てばリリーを自動的に撃ち落としかねないのだ。
私は腕を交差させて頭を守りながら弾幕を突っ切る。
絶え間なく当たる弾幕は強烈で気を抜くと落とされそうだ。
それでも何とか耐え抜き、弾幕を抜けた。
抜けた正面にはリリーがおり、彼女は攻撃されると思ったのか目をぎゅっと瞑った。
私はそんな彼女を優しく抱きしめる。
「え…?」
「大丈夫よ、もうすぐこの長い冬は終わるから。そうしたらまた、あなたは人々に春を告げて頂戴」
実際彼女の役割は幻想郷では重要だ。
幻想郷には暦がない。もちろんカレンダーなんてものもない。
だからこそ、こうやって季節の移り変わりを教えてくれる存在は貴重なのだ。
「ごめんなさい、私…」
リリーは落ち着いたのか、私の姿を見て申し訳なさそうに謝る。
「いいのよ、この位は慣れてるしね。それじゃ、ちょっと待っててくれる?今夜中には冬が終わると思うから」
ぽんぽん、と彼女の頭を撫でて私は冥界へと向かう。
すると、後ろから声が聞こえてきた。
「あの、ありがとうございましたー!」
私はそれに後ろ手を振ることで答え、その場を立ち去るのだった。
「結構ボロボロになったわね。帰ったら縫わないと…。」
先程弾幕をまともに受けたことで着ていたメイド服がボロボロになってしまった。
まあ、スぺアのメイド服が何着かあるからしばらくはそれを着ればいいかな。
もう冥界はすぐそこだ。このまま何事もなく進めればいいけど、少なくとも妖夢は私の前に立ちはだかるだろう。霊夢か魔理沙が先にいて、倒していれば話は別だが。
「あら」 「お?」 「ん?」
亀裂に近づくと、霊夢と魔理沙が同じくここに近づいている所だった。
「あなたたちも異変を解決にここに?」
「ええ、いい加減寒いのは嫌だしね」
「私はこの花びらが気になってな」
私が問いかけるとそれぞれの答えが返ってくる。
「あんた、どうしたのよその恰好」
霊夢が私の姿を見て問いかけてくる。
「ああ、来る途中でちょっとね。でも大丈夫よ、怪我はないから」
私が答えると霊夢は一つ溜息を吐くと、着ていた上着を脱いで私に被せた。
「あんたの恰好見てるとこっちまで寒くなるわ。それ着てなさい」
「でもそれじゃ霊夢が…」
「私は能力である程度緩和できるから大丈夫よ」
私が上着を返そうとすると、間髪入れずにそれを断ってくる。
これ以上言うのも失礼だろうからありがたく借りることにする。
霊夢の体温で温まっている上着は心地よかった。
「ありがとう、霊夢」
「…ふん」
お礼を言うと霊夢はそっぽを向いてしまった。
「それじゃ、そろそろ行こうぜ、二人とも」
魔理沙が仕切りなおしたところで冥界に突入しようとすると、どこからか音楽が聞こえてきた。
「そこのお姉さん方!私たちの演奏を聴いていかない?」
「花見大会前の肩慣らしにちょうどいいしね」
「それじゃあ、いくわよー」
楽器(バイオリン、トランペット、キーボード)をそれぞれ持った姉妹らしき少女たちが目の前に現れて演奏を始めた。おそらく彼女たちはプリズムリバー三姉妹だろう。
その音色はすごく綺麗で、私はしばらく聞き惚れていたのだけど、霊夢と魔理沙はゆっくり聞くつもりはないらしく、それぞれスぺカを取り出している。
「ちょうどこっちも、あっちも三人。一人ずつ相手をすることにしましょう」
「異論はないぜ。寒いから早く帰りたいしな」
「あなたたち、この演奏を聞こうという気はないの?」
「「ない(ぜ)」」
ですよねー。
こんな素晴らしい演奏をしている途中で邪魔をするのは気が引けるけど、私も早く帰りたいというのには同感なんだよね。
私たちがそれぞれスぺカを取り出すと、三人は気付いて演奏をやめる。
その瞬間、それぞれスぺカを発動した。
――霊符「夢想封印・集」
――恋符「マスタースパーク」
――幻符「殺人ドール」
色とりどりの弾幕がルナサに、極大のレーザーがリリカに、ナイフの群れがメルランに襲い掛かる。
「え、待っ…騒葬「スティジャン――」」
ルナサがなにやらスぺカを発動しようとしたようだが間に合わず、三人はそれぞれの弾幕に飲み込まれ、そのまま墜落して行った。
やっといてなんだけど不意打ちをくらわしたみたいですごい罪悪感が…。
「さ、邪魔者はいなくなったし、先に進みましょうか」
「ああ、この花びらもこの先から来てるみたいだしな、早く行こうぜ!」
二人はプリズムリバー三姉妹のことなど気にも留めず、先に進む話をしている。
私も一旦彼女たちのことは置いておくことにして、異変のことを考えよう。
…あとで謝って演奏を聞かせてもらえるか聞いてみよう。綺麗な音楽だったし。
そして私たちは同時に冥界へと飛び込むのだった。