転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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やっと書きたかった妖夢戦が書けた。
相変わらず戦闘シーンは駄目駄目ですが (´・ω・`) ショボーン


刀が怖すぎます…

 

 

 

冥界に飛び込んで初めに目についたのは終わりが見えない石段だった。

 

 

「これ結構長そうだな、上るのは骨が折れそうだ」

 

 

「でもこの先に異変の元凶がいるのは確かよ」

 

 

「その根拠は?」

 

 

「勘よ」

 

 

「勘かよ」

 

 

「二人とも、そろそろ行くわよ。早く帰って夕飯の準備をしないと」

 

 

私の後ろで霊夢と魔理沙がコントを繰り広げているので、私はそれをいったん中断させる。

いや、もっと見ていたいんだけど、これ以上帰宅が遅れると夕飯の準備が間に合わなくなりそうだしね。

 

 

 

 

 

私たちが石段を登っていくと、やがて石段が途切れ、踊り場のような場所に出た。

周囲には石灯篭が無数に設置してあり、不気味な雰囲気を醸し出している。

 

一旦そこで止まって足をつけると、奥から半霊を連れたおかっぱ頭の二本の刀を提げた少女が現れた。

 

 

「侵入者か。これ以上先には進ませない!そしてあなたたちが持っている春ももらっていきます!」

 

 

彼女は私たちに気が付くと即座に刀を抜き、臨戦態勢をとる。

それを見て、魔理沙と霊夢が構えるが、私は二人を制した。

 

 

「霊夢、魔理沙、ここは私に任せて先に行きなさい。彼女は私が抑えるわ」

 

 

「え?だけど…」

 

 

「いいから行きなさい。異変の解決を優先すべきでしょ?」

 

 

「咲夜がやるって言うなら別に異存はないわ。行きましょう、魔理沙」

 

 

私が抑えると言うと、魔理沙が戸惑った声を出すが、霊夢に連れられて上を飛んでいく。

そうはさせじと妖夢が二人に弾幕を放とうとするが、私はそれをナイフを投げることで妨害した。

その間に二人は階段を飛んで上って行ってしまった。

 

二人を逃がしたことを悟った彼女は私を睨みつける。

 

 

「何のつもりですか?あなた一人で私を倒せるとでも?」

 

 

「さあ、それは分からないわ。あなたと私は同程度の実力みたいだし。でも、あの二人は私よりも強い。なら、あなたより強いであろうこの異変の元凶のもとに無傷で向かわせるのが最善と判断したまでよ」

 

 

四人の中で一番強いのは間違いなく霊夢。そして次は制圧力のある魔理沙だろう。

ならば、異変の元凶である幽々子に彼女たちを向かわせるのが一番の最善。

 

 

「そうですか…。ですが、私があなたを倒し、彼女たちに追いつけば問題はない」

 

 

「そうかしら?私と戦えば少なからずあなたは消耗する。そうすれば一瞬で霊夢あたりにやられるだけよ?それに…」

 

 

私は言葉を切って挑発的に笑い、ナイフを構える。

 

 

「私は昔から時間稼ぎが得意なのよ…。なにせ、時間を止めてでも時間稼ぎができるもの」

 

 

よしっ、言えた!言いたかった台詞が言えたよ!霊夢の時は言う暇もなく戦闘になったからね!

 

私が脳内ではしゃいでいると、目の前の彼女はふう、と一つ息を吐き、刀を構えた。

 

 

「今は一刻も早くあなたを倒し、二人を追いかけるのが最優先。構えなさい、侵入者」

 

 

「十六夜咲夜、よ。紅魔館でメイドをやってるわ。よかったら今度遊びに来て頂戴」

 

 

私が微笑みながらそういうと、毒気が抜かれたような顔をして返してきた。

 

 

「あなたと話していると調子が狂います…。魂魄妖夢です。この先の白玉楼の庭師を務めています。では…いざ!」

 

 

妖夢が刀を構え、切っ先をこちらに向ける。

私もナイフを構え、いつでも動けるようにする。

 

 

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」

 

 

「あなたの時間も私のもの…あなたは時間を斬れるかしら、庭師さん?」

 

 

一瞬の後、私たちはぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の私たちの戦いを霊夢か紫が見ていたらこう言うかもしれない。

「おい、弾幕ごっこしろよ」と。

 

ナイフと刀がぶつかり合って火花を散らす。

鍔迫り合いとなるが、武器の差と種族の違いによる贅力の差によって私の方が吹き飛ばされる。

私は空中で体勢を立て直すと、再び妖夢に接近し、近距離戦を仕掛ける。

妖夢は刀を上手く触れない距離まで私に詰められたことで顔を歪める。

 

戦いにおいて間合いという物は重要だ。

最近は弾幕ごっこの普及によって注目されるのは弾幕を避ける回避力と相手を落とす火力、そして敵すら魅了する美しさだが、そこには間合いという考えはあまりない。

それは当然、弾幕は基本遠距離攻撃だからだ。

例えるならば重さの無いガトリングを背負って動きながら撃ち合っているようなものなので、せいぜい弾幕が届く距離にいる、という程度の認識だ。

 

しかし、今私たちがやっているのは、弾幕を撃ちあわない近距離戦だ。

故に妖夢は自分の間合いを保とうとするし、私はもぐりこんで密着状態でナイフを振るいたい。

今の状態はお互いの間合いの最善の距離を足して二で割ったような感じだ。

妖夢には近すぎてうまく刀を振れないし、私には少し遠くてナイフが届かない。

 

何故私が近距離戦を仕掛けているのかというと、妖夢に弾幕を撃たせないためである。

妖夢の弾幕は斬撃の後に弾幕が飛んでくるという形なのだが、この斬撃が厄介で、しばらくその場に残り続けるという性質を持っているのだ。

そのせいで私は避ける範囲が狭まり、当たる確率が高くなってしまう。

 

そこで私は考えた。なら弾幕を撃たせなければいいじゃない?

原作のモーションを見る限り、あの斬撃は刀を振るという工程をたどらなければ発動しない。

ならばあえて接近戦を仕掛けることで刀を振りきれなくしてしまえばあの斬撃は出せない。

 

しかしこの作戦、実行した後に気が付いたのだが、一つ欠点があった。

それは――すごく怖いのである。

 

いやだって目の前を真剣の切っ先がびゅんびゅん通っていくんだよ!?

真剣だから弾幕と違って当たったらただじゃ済まないだろうし。

うああ、怖い、怖いってば!

 

私は心の中で叫びながらも妖夢に接近し、ナイフを振るう。

ナイフは妖夢の喉の直前で止まる。

楼観剣が私の心臓の直前で止まったからだ。

動けばやられる――そんな予感がするのは妖夢も同じなのか、お互いに見つめあって動けなかった。

その時、上空、つまり白玉楼から力がぶつかり合う気配を感じた。

その瞬間、私たちはお互いに後ろに下がり、距離をとる。

 

 

「どうやら上でも戦いが始まったみたいね」

 

 

「そうみたいですね。あなたとの戦いを早く終わらせなければならないということでもありますが」

 

 

――獄炎剣「業風閃影陣」

 

 

妖夢が半霊から出た青の大玉を斬ると、赤い弾幕が私に襲い掛かってきた。

それを回避すると、警戒していた斬撃が飛んでくる。

斬撃を回避するが、斬撃はそのままそこに残り、こちらの動きが制限される。

 

接近して次の斬撃を阻止しようとするが、残った斬撃が邪魔でうまく近付けない。

するとまた斬撃が放たれ、避け…。

この後はこの繰り返しだった。

動ける範囲がだんだん狭まっていき、弾幕を撃っても残った斬撃に阻まれ、妖夢に届かない。

このままではじり貧だ。いずれは弾幕に当たってしまうだろう。

そう思って無理矢理弾幕の間を突破しようとした瞬間――

全身が重くなり、地面に墜落した。

 

 

(何?何が起こったの?)

 

 

動かないというわけではないが、感覚が鈍っている。

妖夢がやったのかと彼女に目を向けたが、彼女もまた私と同じように地面の上で膝をついていた。

 

 

(まさか、西行妖?そんな、あれは封印が解けないまま異変が終わったはずなのに…)

 

 

そう考えていると、首に巻いていた美鈴のマフラーが薄く光り、体が軽くなった。

美鈴はこれに気でも込めていたのだろうか。

何はともあれこの状況で動けるようになったのはありがたい。

 

動けなくなっている妖夢には悪いが、ここは白玉楼へと急ぐべきだろう。

先に行った霊夢と魔理沙も心配だし。

 

私は階段の先――白玉楼へと全力で飛ぶのだった。

 


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