転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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感想で要望があった「咲夜が美鈴の看病をする話」です。
ネタを提供してくださったG10.Arvinさん、ありがとうございます。
また、オリジナルキャラ「ユウ」さんを貸してくださった夢物語♪さんにも感謝を申し上げます。




美鈴が風邪をひくなんてねえ…

 

 

 

西行寺幽々子が起こした異変――後に「春雪異変」と呼ばれることになる異変を解決し、紅魔館に戻った私を出迎えたのは、フラン様の強力なタックルだった。

 

助走をつけて飛び込んできたフラン様の頭がちょうど私の鳩尾に直撃し、悶絶しそうになるが、フラン様を抱きしめている手前、それを我慢する。

 

そのあと、レミリア様に美鈴、パチュリー様や小悪魔が出迎えてくれて、家族の温かさに心中で涙した。

そして、異変解決のお祝いということでささやかなパーティーが開かれた。

料理を作ったのは料理班の妖精メイドたちだそうで、彼女たちの料理は本当においしくて涙が出そうになった。

後で料理班の妖精メイドたちにはボーナスをあげよう。

私は料理を味わいながらそう心の中で決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな嬉しいことがあった異変解決の数日後、私は美鈴の部屋にいた。

なぜそんなところにいるかというと、理由は簡単、美鈴が風邪を引いたので看病しているのだ。

 

普段の彼女ならば風邪などひかないくらい元気なのだが、異変解決の日に私にマフラーを渡してしまい、真冬のような寒さの中、外にいたことと、その後の慣れないメイドの仕事で異変解決の次の日にいきなり倒れてしまったのだ。

しかも私の目の前で倒れたものだから本当に驚いた。

心臓に悪いから本当にやめてほしい。一瞬美鈴が死んだかと思ったじゃないか。

 

 

「まったく…、私にマフラーを渡しておいてあなたが倒れたんじゃ意味ないじゃない」

 

 

「あはは…。すいません」

 

 

ベッドの上で上体を起こした状態で苦笑する美鈴に私は説教する。

母のように接してきた彼女に説教するのはなんだか変な気分だけど、こうでもしないと彼女はまた無理をしそうなのだから仕方がない。

 

 

「でも、咲夜さんの看病のおかげでもう大丈夫ですよ、ほら!」

 

 

そう言って立ち上がった美鈴はその場で跳んでみたり回ってみたりする。

私はそんな彼女を無理矢理ベッドの上に押し倒した。

 

 

「っ!さ、咲夜、さん…?」

 

 

「私に押し倒されるようじゃまだ大丈夫とは言えないわね、しばらく安静にしてなさい」

 

 

私は美鈴に乗っかった状態で熱を測るために美鈴の額に自分のそれを合わせる。

あれ、なんだかますます体温が上がったような…?

 

 

「咲夜さん、お水を持ってきま、し…」

 

 

「ああ、ユウ。タオルも持ってきてくれたのね、ありがとう」

 

 

扉が開いて最近よく話すようになった妖精メイド「ユウ」が顔を出した。

彼女の手には水が張られた容器と容器に入れられたタオルがある。

彼女は部屋に入って私たちを見るとびしっ、と動きを止めた。

 

 

「え、あ、あのっ、しっ、失礼しました!これはここに置いていきます!」

 

 

あたふたといきなり慌て始めたと思ったら容器を机の上に置いて逃げるように出て行ってしまった。

 

 

「???どうしたのかしら、変な娘ね…」

 

 

首をかしげながら美鈴から離れ、容器へと歩く。

容器を持って美鈴の方を向くと、先程よりも顔を赤くした彼女がいた。

 

 

「ちょっと美鈴!?さっきよりも顔が赤いわよ!?もう、治りきってない体で動いたりするから…!」

 

 

きっとさっき跳んだり回ったりしたせいで悪化してしまったのだろう。

美鈴をベッドに押し込めると、布団を彼女に被せた。

ベッドのそばに置いた容器からタオルを取り出し、彼女の額に乗せる。

 

 

「しばらく寝てなさい、しばらくしたらお粥を持ってきてあげるから」

 

 

「はい…」

 

 

小さな声で返事した美鈴を見ると、左手で顔を覆っていた。

気分が悪いのかな?早く治ってほしいけど…。

美鈴の心配をしながら私はお粥を作りに厨房へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厨房でお粥を作り、雑用班の妖精メイドたちにお嬢様たちのご飯を持っていくように指示する。

今日はお嬢様に頼んで美鈴の看病のためにお休みをもらっている。

妖精メイドたちが私の指示通りに動いてくれているので仕事が滞ることはないだろう。

 

お粥を持って美鈴の部屋に入ると、彼女は起きていた。

 

 

「美鈴。お粥を持ってきたわ。あと、お湯も持ってきたからお粥を食べたら体を拭いてあげる。汗かいてるでしょ?」

 

 

「へ!?い、いやいいですよ。体くらい自分で拭けますし」

 

 

「背中をどうやって拭くのよ。いいから任せなさい。いまさら裸程度で恥ずかしがるような仲じゃないでしょうに」

 

 

私の体を全身くまなく洗ったくせに、と呆れながらベッド近くの椅子に腰かける。

そしてお粥をスプーンですくい、息を吹きかけて冷ますと、美鈴の目の前に突き出した。

 

 

「はい、あーん」

 

 

「え!?自分で食べられますって!」

 

 

「いいから甘えときなさい。弱ってる美鈴なんて珍しいから甘やかしたいのよ」

 

 

「う、いや、でも…」

 

 

「まあ私の手で食べさせられるのが嫌なら止めるけど…。どうする?」

 

 

美鈴に食べさせるというレアイベントのせいで少し強引になってしまっただろうか。

残念に思いながらもスプーンを引っ込めようとすると、美鈴が私の手をつかんでお粥を食べた。

しかし熱かったのか、あちっ!と言いながら口を押さえる。

 

 

「もう、何やってるのよ。自分で食べたいの?食べさせてほしいの?」

 

 

「食べさせてほしい、です…」

 

 

「最初からそう言えばいいのに。はい、あーん」

 

 

もう一回お粥をすくって差し出すと、今度は素直に口を開けた。

私はその口にお粥を流し込む。

何回か続けるうちにまるで雛鳥に餌をあげている気分になって、微笑んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、すっかり空になった皿を少し離れた机に置き、お湯に浸していたタオルを手にする。(お湯の時間を止めていたのでお湯は温かいままだ。こういう時私の能力は地味に便利である)

 

 

「さあ、服を脱いで」

 

 

「あの、やっぱり恥ずかしいんですけど…」

 

 

「私の裸を何回も見てるのに何をいまさら。いいから脱ぎなさい。でないと時を止めてひん剥くわよ」

 

 

「わ、分かりましたからそれはやめてください…」

 

 

私の脅しが聞いたのかしぶしぶながらも美鈴は服を脱ぎ始める。

私は彼女が服を脱いでいる間じっと彼女を視姦する。

細マッチョ、というべき彼女の肉体は美しい。全体的にバランスよくついた筋肉からは人体の神秘のようなものが感じられるようだ。

案外、彼女から黄金長方形を見出そうとすればあっさり見つかるかもしれない。

…なんで私筋肉フェチでもないのに筋肉に見惚れてるんだろう。

む、前よりも胸が少し大きくなってる。今でも結構大きいのにどこまで成長する気なのだろうか、あの胸は。

 

 

「あの、咲夜さん?脱ぎましたけど…」

 

 

パルパル、と彼女の肉体の一部分に嫉妬していると、美鈴から声が掛けられる。

 

 

「それじゃ、背中を向けて」

 

 

美鈴が言うとおりに背中を向けたので、私は優しく背中を拭く。

程よく筋肉が付いた彼女の背中はすべすべしていた。

もっと感触を確かめたくて後ろから抱きしめてみた。

 

 

「さ、咲夜さん!?」

 

 

「ふふ、あなたの体ってすごく気持ちいいわね。ずっと触っていたいくらい」

 

 

「あ、ちょ、くすぐったいです…!」

 

 

背中を撫でまわすとエロい声を出しながら身をよじる美鈴。

え?何これ。誘ってるの?

まあこれ以上は美鈴の体が冷えそうだからやめるけど。

 

 

「それじゃ前と下は自分で拭いてちょうだい」

 

 

はい、とタオルを差し出すとキョトンとした顔でタオルと私の顔を交互に見る美鈴。

 

 

「どうしたの?まさか、全身拭いてほしかったとか?」

 

 

「い、いえ、そんなまさか!」

 

 

「そう。残念ね、もう少し触っていたかったけど」

 

 

タオルを受け取り、こちらを気にしながら体を拭く美鈴を再び視姦する私。

恥じらいながらも体を拭いていく美鈴はすごく眼福でした。

内心では興奮しながら私は美鈴が全身を拭き終わるまで彼女を見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タオルを片づけ、美鈴と談笑していると、さすがに眠くなってきたのかうつらうつらし始めた。

私はそんな彼女に優しく布団をかけ、離れようとする。

しかし、服が引っ張られる感覚に振り返ると、美鈴が私のメイド服の裾を掴んで眠っていた。

風邪をひくと心細くなるというし、添い寝でもしてあげようと私は美鈴の布団にもぐりこむ。

パチュリー様いわく今回の風邪は妖怪しか罹らないものだという話だし、私にはうつらないだろう。

そう思って私は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、私に気が付いた美鈴が焦る姿を見て(あ、この状況朝チュンみたい)と思うのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

――ユウが部屋を出たころ

 

(さ、咲夜さんと美鈴さん、き、キスしてたよね!?どうしよう、誰かに話すべきかな…!?)

 

 

ユウは混乱していた。

上司として慕っている咲夜と優しいお姉さんとして慕っている美鈴のキスシーンを見てしまったからだ。(実際は額を合わせていただけだが)

思考がぐちゃぐちゃになっている彼女に話しかけたのは紅魔館の主だった。

 

 

「あら、ユウ。美鈴の様子はどうだった?お見舞いをしようと思っているのだけど」

 

 

「え、え~っと、咲夜さんが美鈴さんに乗って、それで――~~っ!?」

 

 

混乱している所に一番上の上司にばったり会ってしまったユウは、説明しようとして先程の光景を思い出してしまいオーバーヒートしてしまう。

 

 

「ねえ、お姉さま。ユウはなんて言ってるの?」

 

 

「うーん、私にもよく分からないけど、今は駄目そうね。また後で出直しましょう」

 

 

ぶしゅう、と完全にフリーズしてしまったユウを見てレミリアはフランに部屋に戻るように言う。

フランは素直に部屋に戻り、レミリアはパチュリーに会いに図書館に向かっていった。

 

後に残されたユウが再起動したのはそれから一時間後のことだった。

 




今回は咲夜さんを暴走させすぎた…。
これじゃまるで咲夜さんが変態みたいじゃないか。

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