今回からEX編。今回は橙戦となります。
次は他者視点はなしで藍様戦にいきます。
さてと、では恒例の…ちぇええええええええええええええええええええええええええん!!!
異変が終わってしばらくたち、私は今ある平和をかみしめていた。
いつも通りメイドとしての業務をこなし、レミリア様のお世話をして、フラン様の可愛さに癒される。
パチュリー様にト○ビアの泉感覚で色々な知識を教授してもらい、ドジる小悪魔に再び癒される。
妖精たちに指示を出し、美鈴と談笑して癒される。
ああ、いつも通りってこんなにも素晴らしい。
私は遅れてやってきた春の暖かい風に吹かれながら庭園を歩く。
美鈴がお世話をしている様々な花が咲き誇る庭園をゆっくり散歩するのが最近の日課だ。
視界いっぱいに広がる花々はみずみずしく咲き誇り、美鈴の手間を思わせる。
これならあのUSCに見せてもお褒めの言葉をもらえるんじゃないだろうか。
散歩を終え、館に戻ると、何やら図書館が騒がしい。
また魔理沙が来てパチュリー様と魔法談義でもしているのだろうか。
仕事はもう終わってるし……、魔理沙と少しお話しするのもいいよね!
図書館の扉を開くと、予想通り魔理沙がいた。
でも、見る限り魔法談義というよりは何か言い合っているようだ。
「だから行こうぜ、パチュリー」
「嫌よ。そもそも今回の異変にはあまり興味がないもの」
「ちぇー。ん?おお、咲夜。ちょうどいいところに」
見る限りだと魔理沙が誘ってパチュリー様が断ってる感じかな。
パチュリー様、滅多な事じゃ外に出ようともしないからなあ……。
それにしても、ちょうどいいって何が?
「実は今回の異変の黒幕を見つけたんだ。霊夢に先を越される前に私達で退治しようぜ!」
くろまくー……じゃないよねごめんなさい。
たぶん紫のことを言ってるんだろうなあ。でも私としては異変は解決したんだし、あまり関わりたくないんだけど……。
さてどう断ろうか、と思案していると魔理沙に腕をがしっ、と掴まれる。
「じゃ、とばすからしっかりついてこいよ!」
魔理沙の顔を見ると、ニカッ、ととてもいい笑顔をしていた。
ああ、だめだ、嫌な予感しかしない……。
そして――――私は風になった。
私は今魔理沙のスピードをほんのちょっぴりだが体験した
い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
「私は紅魔館の図書館にいたと思ったらいつの間にか冥界近くの上空にいた」
な…何を言っているのか分からねーと思うが(ry
いや本当怖かった……。
飛んでる途中で苦しくなって(ああ…。私ここで死ぬんだな…)って思っちゃうくらいには怖かった。
十六夜咲夜になってからの人生の追体験までしたし。あれが走馬灯ってやつなんだなあ……。
私が生をかみしめていると、小さな影が近づいてきた。
「久しぶりだね、メイドさん♪」
橙だ。ここに彼女がいるということは、藍様やゆかりんもいるってことか。
「ねえ。前に言った約束……覚えてる?」
「ええ、もちろんよ。弾幕ごっこ、でしょう?」
「うん、今度こそ、勝つからね」
「望むところよ。……魔理沙、先に行っててくれる?私は決着をつけないといけない勝負があるから」
「分かった。……咲夜、負けるなよ」
魔理沙は私の言葉に頷くと、飛んで行った。
「この前の私と同じだと思わないでよね。今の私は藍様から妖力の供給を受けている状態。レベルで言うならエクストラだよ。手を抜いたりなんかしたら、一瞬で潰してあげる」
「手を抜いたりなんかしないわ。あなた、獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすという名言を知らないの?」
橙の挑発はともかく、勝手に口が動くこの感覚、久しぶりだなあ。
橙は臨戦態勢をとって膨大な妖力を練り上げている。私もいつでも動けるように構えている。
お互いにタイミングを探りあう。この勝負、先に動いた方が負ける!というわけではないが、うかつに動けば攻め込まれてしまうのは理解できた。
そして、風がやんだ一瞬――――同時にスぺカを発動する。
――鬼神「飛翔毘沙門天」
――幻世「ザ・ワールド」
橙が高速移動しようとするが、私は時間を止めることでそれを阻止する。
時間が止まり、色を失った世界の中で私は橙の進路を潰すようにナイフを配置した。
時が動き出し、橙が動き始めた瞬間、配置されたナイフが彼女めがけて殺到する。
あの高速移動下では避けられない。勝った!EX中ボス編完!と心中で快哉を上げた時、驚くべきことが起こった。
なんと――――橙は高速で動く中、ナイフの群れをたやすく避けていったのだ!
何ぃっ!と、スタープラチナをくらったDIOのごとく驚きで固まった私に、橙からの弾幕が襲い掛かる。
慌ててそれを回避し、パターンを読んで逃げ道を探す。
そして数秒後、私たちはお互いのスぺカをブレイクする。
しかし、モチベーションでは橙の方が上だ。
先程のスぺカで勝とうと思っていた私に対し、橙はまだ余力を残している。
思わず顔を歪めながらも、スぺカを発動した。
――幻幽「ジャック・ザ・ルドビレ」
――鬼符「青鬼赤鬼」
こちらのスぺカに対応してあちらもスぺカを発動してきた。
鬼を模した赤と青の弾幕が私の弾幕を弾いていく。
しかし、対応されるのは承知の上だ。それを承知していたからこそ、私は賭けにでることができる。
この賭けが駄目だったら私は負けるだろう。だがもう腹をくくった。もう何も怖くない!
私は弾幕の中に吶喊する。当たれば負け、当たらなければ零距離からの殺人ドールを撃ちこむ!
極限まで精神を集中させ、向かってくる弾幕の機動を予測する。弾幕が掠っていき、服をボロボロにしていく。
うああ、怖い!めっちゃ怖い!なんでこの子こんなに強いのに2面ボスだったの!?
内心泣きながら弾幕の波を突き進む。
そして私は――――賭けに勝った。
弾幕を抜けると、驚いて固まっている橙が見えた。
私はそんな彼女にニヤリ、と笑い――――スぺカをぶち込んだ。
――幻符「殺人ドール」
至近から放たれたナイフを避ける術はさすがになかったのか、橙はナイフに当たった。
こうして、二度目の戦いも私の勝利で終わったのだった。
「ああー、もう!くーやーしーいー!!」
駄々をこねるように暴れる橙。
今回は彼女も本当に全力だったために悔しさも前より大きいのだろう。
「悔しがることないわ。運が悪かったら負けていたのは私の方だっただろうから」
「慰めなんかいらないよ」
「慰めじゃないわ。本心よ。あなたの本気のスぺカ……冷や汗が出るくらいすごかったわ」
「汗ひとつかいてないくせに?でも、ありがとう。そういってくれると嬉しいな。……この先に藍様がいるの。たぶん藍様には勝てないと思うけど……頑張ってね」
えへへ、と、はにかむ橙に内心デレデレしながらも私は先に進む。
本当はこの勝負が終わったら帰ろうと思ってたけど、こんな可愛い子の応援を受けて引き返せるか?――否!引き返すことなどできようはずがない!
それに藍様にも一度会ってみたかったし、いい機会だろう。
私は橙に手を振りながら先へと進むのだった。