お正月ということで番外編。
ただし、最初に言っておきましょう。ど う し て こ う な っ た … !
正月らしいほのぼのした小説を書こうとしたら最終的に正月が関係なくなったうえに霊咲になってた。いや本当、どうしてこうなった。
ガキ使見てそのまま深夜テンションで書き上げたのが悪かったのだろうか。
この話は本編とは関係ないうえに時系列も考えてません。
ありえた未来の話ということで一つお願いします。
本編の咲夜さんのイメージを崩したくない人は見ない方がいいかもしれません、と保険をかけておきます。
ゴーン、ゴーン、と遠くの方(たぶん命蓮寺)から除夜の鐘を鳴らす音が聞こえる。
大晦日ということで年越しそば製作中。
紅魔館の皆は今食堂に集まって新年を迎えるパーティーをしている真っ最中。
飛び込み参加の魔理沙も加わり、なかなか賑やかにやっている。
霊夢も誘ったのだけれど、大晦日と正月の間は稼ぎ時ということで不参加。
後で賽銭代わりのお年玉でも持って行って遊びに行こう。
全員分のお蕎麦ができたのでお盆に乗せて持っていく。
廊下には妖精メイドの姿はない。よく話す妖精メイドであるユウに聞いてみたら、妖精メイドは妖精メイドたちでパーティーをするのだとか。
「プレゼント交換とかもあるんですよ、咲夜さん!」と言ってはしゃいでたけど、それって正月というよりはクリスマス……、まあいいや。本人たちが楽しいならいいだろう、たぶん。
益体もないことを考えていると、食堂に着く。
中に入り、声をかける。
「皆さん、お蕎麦が出来ましたよ」
そういうと席を立っていたフラン様や小悪魔、魔理沙が席に着く。
私は蕎麦を全員に配り、私も蕎麦を持って席に着く。
全員が座ったことを確認したレミリア様は立ち上がり、話しはじめた。
「さて、今年もそろそろ終わりを迎えようとしている。今年もまた様々な出来事があった。まあ主に異変だがな。それでもこうしていつもの面子で新年を迎えられることを嬉しく思う。来年もまた素晴らしい一日一日を重ねていこう。それでは終わりゆく今年に、乾杯!」
「「「「「「乾杯!!!!」」」」」
全員が乾杯をし、蕎麦を食べ始める。
全員が今年あったことを思い返し、笑いあう。
ああ、和気あいあいとしてるなあ。こういう正月って素晴らしいよね。
全員が蕎麦を食べ終わり、レミリア様はフラン様と、パチュリー様は魔理沙、小悪魔と、私は美鈴と談笑をしている中、ちらりと銀時計に目をやると、あと数分で年が明けることに気が付いた。
私は美鈴から離れ、レミリア様にそのことを伝える。
レミリア様は一つ頷くと、声を張り上げた。
「皆!あと数分で今年が終わる!皆で来年へのカウントダウンをしようじゃないか!」
私が時計を見ながらレミリア様に時間を教える。
「一分前だ!………………30秒前!………10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、皆!あけましておめでとう!」
「「「「「「あけましておめでとうございます!!!!!!」」」」」」
皆が一斉に挨拶をする。
こういうカウントダウンはやっぱり気持ちがいいね!
一体感を感じられるというか、テンションが上がるよ!
その後もテンションが高いままパーティーは続き、お開きになったのは朝日が出るころだった。
「皆、準備はできた?」
玄関前でレミリア様が私達に確認する。
これから皆で博麗神社へと初詣に行くのだ。
ちなみに魔理沙は初詣の準備をすると言って自分の家に帰りました。
レミリア様は銀粉を散りばめた紅い着物に包まれている。
うむ、やはりこの着物を選んだ私の目に狂いはなかった、何とも可愛らしい!
ちなみにレミリア様だけでなく、私を含めた紅魔館メンバー全員が着物を着ている。
フラン様が金粉を散りばめた甘い赤色の着物、
美鈴が花の模様があしらわれている薄い緑色の着物で、髪はアップされて結わえられている。
パチュリー様は月の模様の入った紫色の着物で、髪は美鈴と同じように結わえられている。
小悪魔は黒と赤が混じったような色の着物で、髪は以下同文。
ああ、全員可愛かったり綺麗だったりで素晴らしい。高性能咲夜ボディでなければ鼻血出して倒れてたね、絶対。
ん、私?私の恰好は藍色で桜があしらわれた着物だよ。メイド服と部屋着しか着たことない私にはなかなか新鮮だね。ちょっと動きにくいけど。
「全員準備できてるみたいね、じゃあ行きましょうか」
こうして、私達は初詣へと出かけるのだった。
博麗神社へと着くと、いつもの閑散とした境内ではなく、それなりに人であふれた境内が目に入る。出店も出ており、それなりに繁盛しているようだ。
お正月は稼ぎ時という霊夢の言葉は本当らしい。
まあ霊夢は異変以外でも妖怪退治とかも請け負ってるから人里で名を知られているからこの位のお参りは当然と言えば当然か。
人に紛れてルーミアやリグル、ミスティアなど妖怪達もいるためか、私達を見ても騒ぐ人はいない。
先頭にいるレミリア様のカリスマに押されてか、人ごみが割れたりはするけど。
おかげで苦労せずに本殿に辿り着いた私達を待っていたのは、相変わらず腋が空いた奇抜な巫女服を着た霊夢だった。
「あんたら、参拝客を威圧しないでくれる?せっかくのお賽銭が逃げちゃうじゃない」
心配するのが参拝客ではなくその懐のお金とはまた霊夢らしい。
年が明けてもやはり霊夢は霊夢のようだ。
「私達は先にお参りしてるわね。咲夜はしばらく霊夢と話してなさい」
「咲夜、後で出店一緒に回ろうね!」
レミリア様達は気を使ってくれたのか、先に行ってしまう。
そんなに気を使ってくれなくてもいいのに、と苦笑しながらも霊夢にお年玉袋を渡す。
「ん?何これ?」
「お年玉よ。お参りの時にお賽銭も入れるけど、あれはここの神様へであって霊夢へじゃないからね。まあ、日頃の礼のような物よ」
「お年玉って、あなた私と年同じくらいじゃない。まあくれるならもらってあげるけど、お返しなんてできないわよ?」
「じゃあ、そうね、今夜は時間空いてるかしら?」
「え?ええ、夜には参拝客もいないでしょうけど、それが?」
「じゃあ夜にまた来るわ。大晦日は一緒に過ごせなかったけど、今夜は一緒に月見酒でもしましょう」
そう言って私は霊夢と別れ、レミリア様達のもとへと向かう。
すると、もうすでにお参りを済ませたのか、賽銭箱の横で私を待っていた。
レミリア様が手でお参りするように指示してきたのでお言葉に甘えてお参りしてしまうことにする。
きちんとお賽銭を入れ、鈴を鳴らして二礼二拍手一礼をしてお参りする。
(今年も皆で無事に一年乗り切れますように。……そしてできれば霊夢と……)
お参りを終え、レミリア様達のもとへと向かうと、フラン様が駆け寄ってくる。
「ねえ咲夜!あっちでなんだかおいしそうな物見つけたの!「たこやき」って言うんだって!早く行こっ!」
フラン様が私の腕を引っ張って急かす。
私は苦笑しながらついていく。
後ろを振り返ると、レミリア様、美鈴、パチュリー様、小悪魔はおみくじを引いていた。
まあそこまで広いわけじゃないしすぐに合流できるだろう。
よーし、可愛いフラン様のためにおねーさん頑張っちゃうぞー!なんて内心でネタに走りながらも私はフラン様と屋台巡りを始めるのだった。
やがて私達が紅魔館に戻り、フラン様と小悪魔ははしゃぎ過ぎたのか就寝、パチュリー様は図書館へ、美鈴は自室へ向かい、レミリア様も自室に向かおうとしている所でレミリア様を呼び止めた。
「お嬢様、夜に博麗神社へと行ってもよろしいですか?」
「夜に?……ああ、霊夢ね。いいわよ。帰りはいつになってもいいから」
「ありがとうございます。では失礼します」
「咲夜、あなたは…紅魔館のメイドよね?これからも」
部屋へと戻ろうとすると、レミリア様に呼び止められる。
えーと、それはこれからもメイドとしてよろしく、という意味なのかな?
それなら答えはもちろん、
「ええ、この身が朽ち果てるまで私はお嬢様の従者です。これは今までも、そしてこれからも変わらない事実でございます」
「……ならいいわ。楽しんでらっしゃい」
レミリア様は私の答えに満足そうに微笑むと、部屋へと向かっていった。
さて、レミリア様の許可ももらったし、どのメイド服を着ていくか選ばないと!
私はルンルン気分で自室へと戻るのだった。
日が沈み、月が煌々と地面を照らす頃、私は紅魔館を出た。
門に立っていた美鈴が少し寂しそうに見送ってくれたけど、どうしたんだろう、新年早々センチメンタルかな?
美鈴の心配をしていると、いつの間にか博麗神社に着いていた。
出店はもうなく、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。
本殿への石畳の途中で霊夢が出迎えてくれた。
霊夢は持っていた酒瓶を持ち上げる。
「萃香が地底に飲みに行く前に置いてったのよ。一緒に飲みましょう?」
私も自家製のインスタントビンテージワインを持ち上げた。
「私も持ってきたわ。さ、月見酒と行きましょう」
場所を神社の縁側へと移し、霊夢と私は静かに酒盛りを始める。
私は話がうまい方じゃないし、霊夢は自分から話しはじめるような性格じゃない。
だから最初は二人とも話さない、とても静かな酒盛りだった。
やがてお酒の酔いが回ってきて、気分が高揚してきたところで今の私ならいける、いけ、いけっ、と自分を鼓舞する。
「あの、ね。霊夢。今日こうやって時間をとってもらったのは話をしたかったからなの」
緊張で声が震えるかと思ったが、意外に冷静な声が出た。
霊夢は私の声音に真剣なものを感じ取ったのか杯を置く。
そして私の顔をじっ、と見つめた。
「霊夢、私、ね。貴方のことが、好きなの。友人とかそういう好きじゃなくて、愛してるの。その、だから、結婚を前提に付き合ってくれないかしら」
心臓がバクバク言ってる、息が乱れる。
どうだろう、気持ち悪いとか思われてないかな、女同士だし、嫌われちゃう、かな。
私が不安で霊夢の顔を見られないでいると、霊夢がクスクス、と笑い始めた。
「やっぱり、咲夜、貴方ぬけてるわね。普段は気が付かなくてもいいことに気が付くくせに肝心なことに気づいてないんだもの」
霊夢は私のすぐそばへ寄ると、下を向いている私の顔を上げ、目をしっかり合わせ、そして――抱きしめた。
「えっ……?」
「もう、私が咲夜のことずっと見てるの気が付いてなかったの?異変の時に何回かあなたを助けられたのも、あなたから目を離せなかったからなのよ?……私も大好きよ、咲夜。愛してる」
抱きしめられながら霊夢の言葉を聞いていた私は涙を流す。
それは、十六夜咲夜になって初めて流した涙だった。
「もう、何泣いてるのよ、そういえば、あなたの泣き顔って初めて見るわね」
「だって、私、嬉しくて、涙が止まらないのよ。自分じゃ、どうにもできないわ」
涙をぬぐいながら霊夢と向き合う。
なんとか涙を止め、霊夢に顔を近づけていく。
霊夢も何がしたいのか分かったのか、目を閉じて顔を近づけてくる。
そして、私達は今年最初の月に見守られながら、初めてのキスをした。
ちなみに最後らへんのレミリアとの掛け合いで従者をやめる的なことを言ってたら即監禁ルートでした。
その話も考えましたが、完全に十八禁になるのでやめました。