転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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どうも、最近アーマードコアvdにはまっている作者です。
火力による蹂躙は基本。(←脚部タンクで右がオートキャノンに左がキャノンの火力厨)

今回は萃夢想導入編。
といっても前半が全く関係のないシーンになりましたが(汗)



人里は活気がありますねえ…

 

 

 

本日も晴天なり。

とある事情で短かった春もそろそろ終わり、夏を感じさせるものが見えてくる今日この頃。私は初めてとなる人里を訪れていた。

紅霧異変前までは紅魔館を出ることはできなかったし、春雪異変までは館の備蓄も豊富だったために行く必要がなかった。

だが春雪異変のために予想以上に備蓄の量が減り、こうして買い出しと相成ったわけだ。

(ちなみに紅霧異変以前の備蓄供給は紫がやってたのだとか。レミリア様に教えてもらわなかったら気付かなかったと思う)

人里に入ると、予想以上の活気が私を包む。

集落みたいなものをイメージしてたけど、江戸時代の城下町が一番近いかもしれない。

 

とりあえず食料と生活必需品、あと(主に私用の)医療品を買っていかないと。

医療品といえば永遠亭が最初に思い浮かぶけど、この時まだあったっけ?

 

一番最初に見つけた「霧雨商店」に入り、商品を見る。

どうやら値段などは外の世界とさほど変わらないらしい。幻想入りした人達への配慮だろうか?とにかく半年分の食料と必需品を買わないと。

生ものは私の能力でどうにかできるからいいとして、医療品は置いてないのかな?見当たらないけど。

 

「ねえ、貴方」

 

「はっ!はい、何でしょう」

 

「ここに医療品は置いてないの?」

 

「はっ、はい!薬なんかは向こうの通りの薬屋に売ってます!」

 

「そう、ありがとう。じゃあこれを買いたいのだけど」

 

「えっ、これ全部、ですか?」

 

ボーっとしてたり顔を赤くしたりとなんだか挙動不審な店員に声をかけ、薬のことと会計について聞く。

会計をするのであろう台に買うもの全部乗せると、驚いた顔でこちらを見てきた。

ああ、こんな量の荷物、普通は持てないよね。でも大丈夫!私には能力研究の過程でできた秘密兵器があるから!

じゃーん!四次元鞄~!(ドラ○もんの声で)

紅魔館の空間を広げられるなら鞄の空間も広げられるんじゃないか、と考えた私が作り上げた鞄である。作成にはパチュリー様の知恵を貸してもらったけどね!

今まで出かける機会が無かったから使う機会がなかったけど、初めての買い物でようやく日の目を見たよ!

 

「大丈夫よ、ちゃんと持ち帰るから。お代は?」

 

「え、えっと五万八千二百円になります!」

 

「はい、ちょうどね。じゃあ持って帰るから」

 

お金を払って私は四次元鞄に買ったものを詰め込んでいく。

明らかに質量保存の法則を無視した量を詰め込んでいくと、店員さんが目を白黒させていた。

甘いね、幻想郷では常識に囚われちゃいけないんだよ?

 

「じゃあ、また来るわ」

 

「あ、ありがとうございました~!!」

 

私が店を出ると、店員さんが掛け声をかけてくれる。

うんうん、接客態度もいいし、品揃えもいい。また来ることにしよう。

良い店を見つけられたことに上機嫌になりながら教えてもらった薬屋へと歩を進める。

辿り着いたのは古いながらも趣のある店だった。

 

「いらっしゃい。おやまた別嬪さんだねえ。何が欲しいんだい?」

 

私を出迎えたのは白髪の優しい顔をしたおばあちゃん。

べ、別嬪さんだなんて、正面から言われたら照れるじゃないか、もうっ!

 

「そうね、傷薬と包帯、風邪薬に胃薬に増血剤が欲しいのだけれど、あるかしら?」

 

「もちろんだよ。うーん、言われたものはこれだけあるけど、どれにするんだい?」

 

出されたのは様々な種類の薬。予想以上の数に少し驚く。ここまで品揃えがいいなんて、今日は運がいいなあ。

 

「じゃあこれとこれと、ああ、この薬も頂くわ」

 

「はい、じゃあお代はこれ位だねえ」

 

そろばんを差し出されてそれを見るが、そこには値段よりも少ない数が示されている。

 

「値段が低いようだけれど?」

 

「お嬢ちゃん別嬪さんだからおまけしといたよ!よければまた来てねえ」

 

なんて優しいおばあちゃんなんだろう。ここは常連にならざるを得まい!

 

「ええ、薬が切れたらまた来るわ。それじゃあね、おばあちゃん」

 

「気を付けて帰るんだよ~!」

 

手を振って見送ってくれるおばあちゃんに手を振り返しながら人里の出口へと向かう。

すると途中で子供の集団を見つけた。

 

「せんせい、さようならー!」

 

「またあしたー!」

 

「ああ、また明日。気を付けて帰るんだぞ?」

 

子供の集団に囲まれている女性が微笑みながら子供たちに手を振る。

人里の守護者「上白沢慧音」だ。

 

「おや?見ない顔だな、外来人か?」

 

こちらに気付いた慧音が話しかけてきた。

しかし、でかい。何がとは言わないけど。……私もあれくらい欲しいなあ。

 

「いいえ、向こうの湖にある館のメイドをしているわ」

 

「っ!紅魔館の……!?」

 

紅魔館について話すと警戒を露わにする慧音。

まあ予想通りと言えばそうだけど、やっぱり傷つくなあ。

 

「そう警戒しないでちょうだい。何も無差別に人を襲ったりしないわ」

 

「あ、ああ。すまない、不快にさせたか?」

 

警戒を解くように言うと、すまなそうな顔で謝ってくる慧音。

うーん、いい人だ。幻想郷の中でも数少ない常識人だけはある。

 

「いえ、大丈夫よ。それにしてもここは賑やかね。いつもこうなの?」

 

「いや、いつもはもっと静かなんだが。何故か最近宴会を開くことが多くてな。そのせいだろう」

 

宴会?そういえば萃夢想だとそんな話があったような。

ここまで萃香の能力が及んでるんだ。

 

「そう。…それじゃ私はこれで。飛んで行ってもそれなりに距離はあるのよ」

 

「ああ。気を付けてな」

 

笑顔で外まで見送ってくれる慧音マジ天使。

私は内心デレデレしながら人里を後にするのだった。

 

 

 

 

 

(帰ったら夕飯の下拵えに、干してあった洗濯物を取り込んで、妖精メイドたちの掃除の出来具合のチェックかしらね。後、霧雨商店で買った新しいぬいぐるみをフラン様に渡す!ふふ、喜んでくれるかな?)

 

フラン様の癒される笑顔を思い浮かべながら紅魔館へと飛んでいく。

甘やかしている自覚はあるものの、可愛いのだから仕方ない。

 

しかし、その途中で背後に微小な妖力を感じ取った。

 

(そこっ!)

 

すぐさま振り返り、ナイフを投げるが、そこには誰もいない。

あれ?このボディのチートセンサーが外れた?今までそんなことはなかったのに。

 

予想が外れて辺りをきょろきょろと見渡していると、声をかけられた。

 

「驚いたね。疎になってる私の妖力を感じ取るなんてさ。久々に面白い人間を見つけたねえ」

 

私の前に霧が集まっていき、一つの姿をとり始める。

その姿は私が一方的に知っている姿。「伊吹萃香」だった。

 

「人間。ちょいと一勝負しようじゃないか。あんたが勝ったら良いものをやろう。負けたら私はあんたをさらう。どうだい?」

 

「断るわ。私には急ぎの用があるし、それに必要がなければ戦うこともしないの」

 

穏便に断ろうとしたら口が勝手に挑発した。

まただよちくしょう!なんで肝心な時に勝手に動くんだこの口は!

だけどまあ戦いたくないし。萃香って確か原作でも強キャラに分類されるから弾幕ごっこでも勝てるかどうか。それに戦ってたら家事が回らなくなる。ただでさえ能力使ってギリギリなのに!

 

「うーん、そうかい。そいつは残念だ。じゃあ――」

 

萃香は大型の弾幕を自分の周りに展開する。

もしかしてこれって「残念!鬼からは逃げられない!」ってやつですか?

 

「力づくで戦わせるとしようか!」

 

うわああ、やっぱりいいい!

ここで逃げたら確実に背後から弾幕撃たれるよね。

下手したら紅魔館まで突っ込んでくるかも。

……それは駄目だ!紅魔館の皆を危険にさらすわけにはいかない!

例え紅魔館最弱が私だったとしても!私にだって従者としての意地がある!

女には戦わなくちゃいけない時がある!

 

「分かったわ。そこまで言うなら相手をしましょう。あと、人間って呼び方は止めて頂戴。私には「十六夜咲夜」という大切な方から頂いた名前があるのよ」

 

「ははっ、やる気になったか!私に勝てたら名前で呼んであげるよ、人間!」

 

「鬼退治はいつだって人間の役目。古き時代の鬼に、勝ち目はない!」

 

(やってやる、やってやるぞ!でもやっぱり怖い!)

 

内心涙目になりつつ、能力を使ってナイフを展開する。

 

甚だしく不本意だが、萃香との勝負が始まった。

 


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