今回は萃香との戦闘話。
繋ぎの話なのでいつもより大分短いです。
…さて次は狙撃特化の機体でも作るかな…。
――紅魔館近くの森上空
「そらっ!避けてみせな、人間!わざわざあんたらのやり方でやってやるんだからね!」
――萃符「戸隠山投げ」
岩を模した弾幕が高速で襲い掛かってくる。
大玉が多いが、その分弾幕間の隙間も多く、避けることは容易かった。
だが、その隙間を縫うように通常の弾幕が放たれる。
ええい、なかなか厄介な弾幕撃ってくるなあ!
――時符「プライベートスクウェア」
時間を止めて弾幕を回避した後、ナイフを萃香の周囲に展開する。
「そして時は動き出す」
ナイフが一斉に動き出し、萃香を串刺しにせんと殺到するが――
「甘い甘い、鬼にこんな小細工は効かないよ!」
萃香が妖力を全身から放出することでナイフを全て弾き飛ばした。
アイエエ!?あんな弾幕の避け方あり!?
その後もナイフを投擲するが、全て弾かれてしまう。
「ほらほら、最初の威勢はどうしたんだい?もう一回その手品を試してみたらどうだい?」
挑発しながらも弾幕は止まることはない。
萃香は鬼だから力技を使ってくると思ってたんだけど(いや、さっきナイフを弾いたのは完全に力技だったけどね?)弾幕はそういう強引さはなく、まるで綿で首を絞められるような追い込まれるような印象を受ける。
これは私の勝手な思い込みだけど、弾幕は使用者の性格を反映している。
霊夢ならばどんなに回避してもなぜか当たってしまうような理解できない強さと容赦しない弾幕。
魔理沙なら単純だけど強力。だけどお互い楽しめる弾幕。
妖夢は真っ直ぐで堂々とした弾幕。
橙は動物としての本能と子供の柔軟性を感じさせる弾幕。
藍は緻密に計算された完成された弾幕。
そして今戦っている萃香の弾幕から感じるのは、霧のように掴みどころがなく、しかし芯が通った弾幕。
きっとそれは萃香の能力のせいでもあるのだろうけど、彼女は鬼の中でも珍しく技巧派の弾幕を使う。
さて、なんで萃香の性格診断をしているかというと、ぶっちゃけ、勝てる気がしないからだ。
だってこっちの弾幕通用しないんだよ!?その上萃香の弾幕で確実に追い込まれてるの分かるし!絶対萃香分かるように撃ってるよこれ!分かっても避けるのに精一杯な私にはどうしようもないし!
徐々に追い込まれ、弾幕が退路も防ぎつつある。
この状況を打破する手段はあると言えばあるのだが、はっきり言って実行に移したくない。
なにせそれはまだ修行中の技で成功率も高くないうえに萃香という鬼が相手というのがまずい。
相手に接近しなければならない技であるが故にカウンターを喰らう可能性が高すぎるのだ。
でもこのままじゃ負けるのは目に見えてるし……。ええい、やらない後悔よりやる後悔!女は度胸!行くぞ!
――「咲夜の世界」
時間が停止し、萃香の弾幕も止まる。
本来このスぺカは止まってる間にナイフを展開して攻撃する技だけどそれが通用しない以上それをやる意味はない。
私は止まっている萃香の弾幕を抜けて萃香に接近する。
そして萃香の目の前で時間停止を解除した。
「お!?いつの間に近付いたんだい!?でも、鬼相手に接近戦は悪手だよ!」
一瞬驚いたもののすぐに立て直し、殴り掛かってくる。
私はそれを左腕で受け止めた。
「ん!?」
まさか自分の攻撃が受け止められるとは思わなかったのか、萃香が硬直する。
私の霊力では萃香の拳を止めることはできない。だから私の左腕のみを時間停止させることで左腕を動かすことはできないが決して壊れない絶対防御の盾へと変えたのだ。
もちろん簡単な技ではない。少しでもタイミングがずれれば私の体はミンチになっていただろうし、そもそもこのような限定的な時間停止は能力のコントロールが難しい。
(――今だ!)
私はその大きな隙を狙って零距離からスぺカをぶち込んだ。
――傷魂「ソウルスカルプチュア」
萃香を切り刻まんと右手のナイフを振るう。
だがしかし、萃香を切った感触を感じることはなかった。
数瞬の差で萃香が疎となってしまったからだ。
「驚いた。まさか私の一撃を受け止めるなんてね。ますます欲しくなったよ、「十六夜咲夜」」
――酔夢「施餓鬼縛りの術」
萃香から放たれた鎖が私を縛る。
そして徐々に私の霊力が吸い取られていき、霊力を失った私は意識を失った。
(パ…チュ…リー様、こぁ…ちゃん、フラ…ン様……、レミ…リア…様、美…鈴……)
気を失う寸前に脳裏をよぎったのはきっとひどく心配してしまうだろう紅魔館の皆の姿だった。