転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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どうも、就活に行ってきた作者です。
ついでに欲しかっためーさく本を秋葉で買ってきました。

今回は魔理沙視点。
彼女は作者の中で一番書きにくいキャラだったりします。


人里にて(魔理沙視点)

――人里

 

「よっ、と。さて、咲夜に関してなんか話を聞ければいいが……」

 

箒から降りて人里を見渡す。

人里に来るのはなんだかんだで久し振りだ。

最近は紅魔館の方に入り浸ってからこっちに来る暇もなかったし。

……まあ私自身、人里にあまり近付かないようにしてる節もあるんだが。

 

(とりあえず霧雨商店は避けて情報を集めるか)

 

親父に勘当されて以来、あの店には近付かないようにしている。

わざわざ顔を合わせて喧嘩するのも馬鹿らしいし。

 

『なあパチュリー、咲夜は何の用で人里に来てたんだ?』

 

『食料の買い出しと、医療品の補充ね』

 

魔石を通してパチュリーと会話する。

声を出して会話する必要がないのはありがたい。端から見れば独り言をぶつぶつ言ってるようにしか見えんからな。

パチュリー曰く、「これも念話のちょっとした応用よ」とのことだが…、専門外の魔法のことはあまり分からない。アリスならもしかしたら知ってるかもしれないけどな。

 

しばらく魚屋や肉屋、八百屋などを中心に聞き込んでみたが、手掛かりは0。

これは避けてた霧雨商店に行くしかないか……?

そんなことを思った時、あることを思い出した。

 

(そういえば、薬も買いに来たって言ってたな。行ってみるか)

 

人里には薬屋が一つしかない。

ずっと昔からある、ばあちゃんが店主の店だ。

 

「おーい、ばあちゃん、いるかー?」

 

店先で呼びかけてみる。

するとすぐに店主のばあちゃんが出てきた。

 

「おや魔理ちゃん!久しぶりだねえ、こんなに大きくなっちゃって!」

 

「魔理ちゃんは止めてくれよ。そんな柄じゃないし。ところで、今日私と同じくらいの年のめいど服ってやつを着た咲夜って女がここに来なかったか?」

 

「うーん、名前は分からないけど、ずいぶん別嬪な娘が薬を買って行ったよ。そういえば着てた服もその娘の顔も見かけないものだったねえ」

 

「たぶんそいつだ。どこに行ったか分かるか?」

 

「寺子屋の方に歩いて行ったよ。それ以上は分からないねえ」

 

「いや、充分だ。ありがとな、ばあちゃん!こんどお礼になんか持ってくるぜ!」

 

「楽しみにしてるよ、じゃあねえ」

 

ばあちゃんに手を振りつつ教えてもらった道をあるく。

なんだかあのばあちゃんには頭が上がんないだよなあ。

小さかった頃よく可愛がってもらったのもあるんだろうけど。

 

やがて寺子屋に着いたが、寺子屋は真っ暗で誰もいないようだった。

この様子だと慧音もいないかな。試しに慧音の家に行ってみるか……?

 

「おや、貴方は……」

 

私が慧音の家に行こうと振り返ると、見覚えのある顔があった。

 

「宴会の時以来になりますか、こんにちは」

 

「ああ、買い物か?妖夢」

 

少し前の異変で知り合った半霊の剣士が買い物袋を両手にぶらさげて立っていた。

 

「ええ。幽々子様は健啖家なので定期的に食料を買いに。魔理沙さんは?」

 

「あー、……『パチュリー、妖夢に今回のことを話しても大丈夫か?』」

 

『問題ないわ。むしろ人手が増えるのなら喜ばしい限りよ』

 

「魔理沙さん?」

 

パチュリーと通信していると、妖夢が急に黙ってしまった私を不審に思ったのか首をかしげて問いかけてくる。

 

「あー、悪い。実はな、咲夜の奴が妖怪に攫われちまってな。今そのことに関する情報を集めてたんだ」

 

「咲夜さんが!?彼女を攫うということは相応の実力者でしょう、犯人は?」

 

「それが全く分からなくてな、妖夢は何か聞いてないか?」

 

「いえ、私は特に何も……。あ、そういえば」

 

言葉を終えようとした妖夢が何かを思い出した表情になる。

 

「なにか思い出したか?」

 

「いえ、今回の件と関係あるかは分かりませんが、慧音さんから最近妙に宴会が多いことと、何やら微弱な妖力が人里全体に流れているらしいことを聞きまして」

 

「宴会はともかく、妖力?人里に来てる妖怪のものじゃないのか?」

 

「いいえ、人里にまんべんなく流れているらしくて。なにかあるんじゃないかと警戒していました」

 

人里は紫の手によって守護されている。

そんな人里に入り込んで妖力を流している?確かに人里に入り込むことは簡単だ。妖怪でも悪さをしなければ入れるようになってるしな。

だが妖力を流す意味はなんだ?人に害をなさないほどの弱い妖力を流して一体何を……?

私が考え込んでいると、妖夢が話しかけてきた。

 

「あの、魔理沙さん。私も咲夜さんを探すのを手伝っていいですか?」

 

「ん、ああ、それは助かるけど、いいのか?」

 

「ええ、私も心配ですし、それに咲夜さんを攫った妖怪にも興味があります」

 

「そうか、じゃあ頼むぜ」

 

「はい。あ、ちょっと待ってください、荷物をよく行く店の方に預かってもらうので」

 

「そうか、私は阿求のところに行ってるぜ」

 

「阿求さん?何でです?」

 

不思議そうに聞いてくる妖夢に私はニヤッと笑って答える。

 

「あそこには色んな妖怪の資料がある。もしかすれば人里の妖力の正体が分かるかもしれないぜ」

 

「成程、そしてその妖怪が咲夜さんを攫った妖怪だったとしたら……」

 

「そいつの行きそうな所に行けば見つかるかもしれないってわけだ」

 

「分かりました!では後ほど!」

 

妖夢は白玉楼の方へと飛んでいく。

私はそれを見送ると、稗田邸の方へと足を進めるのだった。

 


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