転生者・十六夜咲夜は静かに暮らしたい。   作:村雨 晶

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どうも、永夜抄を買いたいのになかなか金欠で買えない作者です。

今回は永夜抄までのお茶濁し回。
特に意味も伏線もない、そんな話です。




白玉楼にお邪魔してます…

――白玉楼

 

「はあっ!!」

 

「ふっ!」

 

私のナイフと妖夢の刀(楼観剣か白楼剣かどうかは分からない。私に審美眼なんてないんだから仕方ない)がぶつかり合う。

何合かお互いの武器で斬り合うが、どれも決定打にはならない。

 

このままでは埒が明かないと判断して、後ろに飛びのきつつナイフを妖夢へ投げる。

だが、あっさりと弾かれ、妖夢がこちらに一歩踏み込んできた。

上手く誘いに乗ったことに内心で笑みを浮かべ、私は着地の瞬間に前に踏み込んだ。

妖夢は一瞬驚いたようだがすぐに立ち直り、右手の刀を横に一閃する。

私はそれを上体を後ろに反らすことで避け、その勢いのまま、足を振り上げる。

振り上げた足は狙い通りに振った刀の柄に当たり、弾き飛ばした。

 

私はそのまま後ろへ一回転し、着地する。

それと同時に弾き飛ばした刀が少し離れたところに突き刺さった。

 

「そこまでね~」

 

幽々子が間延びした声で試合の終了を告げる。

 

「ありがとうございました」

 

妖夢は頭を下げ、刀を取りに行った。

 

はあっ、試合とはいえ緊張する。

というかなんでこんなことになったんだっけ?

 

 

 

 

――3時間前

 

紅魔館での業務を終え、レミリア様に許可をもらって白玉楼へと向かう。

異変でなんだか迷惑をかけてしまったみたいだし、霊夢がお見舞いに来たとき持ってきた果物の詰め合わせは妖夢が買ってくれたようなのでそのお礼に向かうのだ。

こういう礼儀はきちんとしなくちゃね!

 

途中で博麗神社に寄って、お昼ご飯と夕飯を作って能力で保存してから、改めて白玉楼に向かう。(霊夢はいなかった。妖怪退治に出かけたのか、人里に買い出しに行ったのかは分からない)

手土産として自作のケーキを2ホールほど持ってきたけど、幽々子は大食いだし、足りるかな?

 

白玉楼へと続く長すぎる石段を飛んで登り、白玉楼の大きい庭に足をつける。

異変の時は西行妖にばかり目が行ったけど、この庭もなかなか手入れがされているなあ。

紅魔館の庭と違ってわびさびがあって、趣を感じる。

 

「あら、お客さんかしら?」

 

しばらく庭に見惚れていると、声をかけられた。

顔を向けると、幽々子がこちらに手を振っていた。

 

「久しぶりね~、どうかしたの?」

 

「この前の異変で妖夢に迷惑をかけてしまったようだからそのお礼に。はい、つまらないものだけど」

 

幽々子にケーキの入った箱を渡すと、ぱっと顔を輝かせた。

 

「あら、いい匂いね。お菓子?」

 

「ええ、外の世界のお菓子でね、人里だと洋菓子はあまり見かけないから」

 

「嬉しいわあ、紫も時々外の世界のお菓子を持ってくるのだけど、大体和菓子だから。そうだ、貴方も一緒に食べない?」

 

「え、私は別に……」

 

「いいからいいから。さ、あがって?」

 

幽々子の柔らかい笑顔に断れず、白玉楼に入る。

 

幽々子に案内されたのは広めの居間のような場所で、縁側から庭を一望できる部屋だった。

 

幽々子は机の上に箱を置き、さっそく開けようとしている。

さすがに皿もない状況では食べにくいだろうと彼女を止めようとすると、隣の部屋から襖を開けて怖い顔をした妖夢が入ってきた。

 

「幽々子様?」

 

いつもより若干低く感じるその声で名前を呼ばれた幽々子が体を揺らして動きを止める。

 

「えーっと、妖夢、これはね?」

 

「幽々子様。私、言いましたよね?もうすぐ、お昼ができるって」

 

「はい、言いました。ごめんなさい」

 

幽々子が言い訳をしようとすると、妖夢がさらに低い声で話す。

さすがにまずいと思ったのか、幽々子が正座で謝った。

……主従逆転してないこれ?

私がいつもと違う妖夢の様子に驚いて固まっていると、妖夢がこちらに顔を向ける。

一連の様子を見ていた私にとっては少し怖い。

 

「すいません、お見苦しいところを……」

 

「それは別にかまわないけど、いつもこうなの?」

 

「幽々子様は食べることに関しては注意が必要なので。周囲の霊達に見張ってもらっています」

 

いつもこうなんだ……。苦労してそうだね、妖夢。

 

「妖夢~、食べちゃダメ?」

 

幽々子がケーキをちらちら見ながら涙目で見上げる。

ぐはっ、完全に不意打ちだった……。可愛すぎるでしょ幽々子。

 

「まだ駄目です。ですが、お昼を食べたら頂くことにしましょう。……咲夜さんも、どうです?すこしお昼には遅いですが」

 

「頂くわ。他の人の料理を食べる機会なんてなかなかないしね」

 

妖夢は台所に向かい、昼食の準備を進めた。

その間、妖夢の残していった半霊が幽々子を監視していたのは言うまでもない。

 

 

 

 

お昼ご飯を終え、縁側でまったりする私達。(ご飯の内容?お手本のような和食でした。普段洋食を食べてる身としては少し新鮮だった)

私の持ってきたケーキを切り分け、お茶を飲みながら庭を漂っている幽霊を眺める。

 

見慣れない人物がいるのが珍しいのか(そもそもそんな意識があるのかは知らないけど)幽霊たちは私に擦り寄っては離れていく。猫のようなその動作に少し可愛いと思ってしまった。

 

「そういえば、咲夜さんは何故こちらに?」

 

妖夢が思い出したように問いかける。

あの騒動で忘れてたけど、お礼に来たのにこんなに持て成されちゃっていいのかな。

 

「この前の異変で魔理沙と一緒に私を探してくれたと聞いてね。そのお礼に来たのだけど……。このケーキ以外になにかしてほしいことはある?私にできることならするわよ?」

 

さっきご相伴にあずかったしね、と妖夢に尋ねる。

妖夢は少し考え込んで、答えた。

 

「では、鍛錬に付き合ってくれませんか?試合などは一人ではできないもので」

 

「いいわよ、スペルカードは何枚?」

 

この前は有耶無耶のまま弾幕ごっこが中断されたし、再戦のチャンス!

ウキウキしながらスペルカードを取り出すと、妖夢は申し訳なさそうな顔で首を横に振った。

 

「いえ、弾幕ごっこではなく、斬り合いで」

 

…えっ。

 

 

 

 

まあこんな感じで試合が始まったわけだけど、結果は私の勝ち。

でもまあ、美鈴から体術の鍛錬を受けてなかったら負けてたね!ありがとう美鈴!

何気に妖夢膂力強いんだよね、鍔迫り合いになると押され気味になるし。

まともに斬り合ったら負けるとか、同じ刃物使いとして自信無くすなあ。

 

「足技とは予想外でした。まだまだ鍛錬が足りませんね」

 

「まともに戦ったら私が負けるでしょうけどね。攻撃を受けるたびに手が痺れそうだったわ」

 

「咲夜さんは一撃が軽い分、手数が多いので捌くのに苦労しました。貴方は正面からの斬り合いより奇襲からの一撃必殺の方が合っているかもしれませんね」

 

なるほど、暗殺者スタイルか。確かに私の戦い方ってそういうものが多いよね。

 

妖夢の言葉に納得していると、幽々子が手を振っているのが見えた。

妖夢が苦笑して手を振り返し、私も小さく振り返す。

 

そんな私達を幽霊たちがぼんやりと照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後観戦していた幽々子がケーキを1ホール丸々食べてしまい、妖夢に怒られるのは別の話。

 




今日はエイプリルフールらしいので嘘次回予告を作ってみました。
では、どうぞ。








「私はっ、人間を止めるぞ、お嬢ォォォォォォォーーーーーーーっっ!!!!」

――これはある一つの仮面が、一人のメイドを変えてしまった物語――

「あの仮面は、石仮面。被った者を吸血鬼に変えてしまう、恐ろしい代物よ」

「今のあいつは、間違ってる。だからぶん殴ってでも止めてやるぜ」

――主への反逆――

「咲夜……。あなた……!?」

「もう貴様に従う十六夜咲夜は死んだ…。今の私は、そうね、SAKUYAと言ったところかしら?」

――仲間との離別――

「咲夜さん、もうやめてください、こんなことっ!!」

「美鈴、あなたなら私についてきてくれると思っていたけれど、違うようね!」

――幻想郷を守る者達――

「咲夜、貴方はこの博麗霊夢が、直々にぶちのめす」

「私、射命丸文の本来のスピードをお見せしましょう!」

――幻想郷を支配しようとする者達――

「全部無駄なのよ、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッッッ!!!!!!!!」

「今こそ、覚妖怪の本領発揮と行こうかしら?さあ、あなたのトラウマを見せて頂戴、私に!」

――それぞれの思いがぶつかり合う――

「霊夢、これが私の最後の魔法だ…、受け取ってくれええええええっ!!」

「これがっ、私の、「夢想天生」よ!」

「ケリをつける、龍神像だッ!!」

――明かされる衝撃の真実――

「あなたのその肩のアザ…まさか…!?」

「ええそうよ。私の父親は――」

村雨晶 新物語
「咲夜の奇妙な冒険」
4月1日 連載開始!!







念のためもう一回、これは嘘予告ですよ?

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