皆さんどうお過ごしでしょうか?
私?ははは、こうして小説を上げてる時点でお察しください(血涙)
卒論からも解放されたし、冬休みは思いっきり遊びぞおおおおお!!!
追伸:いつもならリア充爆発しろ!!とでも叫ぶところですが、親友が結婚しちまったので自重しました。
屋敷の中を全力で駆け抜ける。
目指す場所は力を感じる場所。
屋敷の周囲に張られた結界によって隠されていたのであろうその力は私達が屋敷の中に入った途端に感じ取ることができるほどに大きかった。
目的地への道を妨げる邪魔な襖を斬り裂いていく。
上等に仕立てられていると一目で分かる襖を斬っていくのは心苦しかったが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
最初は竹林で咲夜さんが、次は屋敷の中であの魔法使いが私を先へと向かわせた。
私は先を任されたのではない。私では彼女たちが相手をしているのであろう敵には敵わないと判断されただけ。
不甲斐ない。私は目前にいる敵に相対することすらできないほどに弱いのか――?
そんなことはない。そんなはずはない。私が今まで築いてきたものは私の実力として存在するはずだ。
ならば証明しなければ。私も博麗霊夢のように、霧雨魔理沙のように、十六夜咲夜のように、自らの力を証明してみせる。
決意した私がまた一つ襖を斬り裂くと、そこには不可思議な光景が広がっていた。
月だ。しかしここは室内のはず。
おかしなことに天井に月が浮かんでいた。
いくら部屋が広くとも収まるはずもないそれはしかし、本来の理を曲げてそこに在った。
偽物かと思うが、それを自らの半霊が否定する。この場にある月は、あり得ないことに、本物であると。
そんな不合理に囚われていたからであろう、本来ならば部屋に入った瞬間に気が付くべきだった、部屋の中心にいる人影にようやく気が付く。
そこには美女がいた。私自身、彼女を表す言葉を持ちえない。何かしらの言葉を用いて彼女を表現したとしても、それは陳腐なものに成り下がってしまうことが理解できたからだ。
呼吸すら忘却し、彼女を見つめていたが、不意に彼女が私と目を合わせたことで意識が戻る。
――何をしている魂魄妖夢。この部屋にいるということはつまり、彼女は異変の関係者だ。もしかすればこの異変の黒幕である可能性だって高い。そんな相手を前に何を呆けているのだ――!!
「あら、客がここに来るなんて珍しい。もてなしもしないなんて、永琳ったら何をしているのかしら」
私が自らを叱咤していると、彼女が声を上げる。そこには乱暴に上り込んだ私に対する怒りはない。むしろ、ここにいない誰かを非難するようなものが含まれていた。
「いらっしゃい、お客人。ここに誰かが来るのは本当に久しぶりなの。よかったらお茶でも飲みながらお話しない?」
こちらを見る彼女に敵意はない。むしろ私を歓迎しているようにすら見えるその姿に、もしかしたら彼女は今回の異変には無関係なのかもしれない、とすら考えてしまう。
しかし、この異常な部屋にいて、その異常をなんでもないことのように振る舞っている時点でそれはありえない。
だからこそ、少しの迷いを覚えながらも剣を抜く。
「戯言を。この月は貴方の仕業ですか!」
「私は今回、干渉はしていないのだけどね。この月も偽の月も全部永琳の仕組んだこと。私が言えば止めるでしょうけど、そうするつもりはないわ」
だって、と彼女は妖艶な笑みを浮かべてこちらを流し見る。
「――そのほうが面白いじゃない?」
その言葉を聞いた瞬間、悟る。
彼女――いや、この女は敵だ。
剣を構え、突っ込もうと足を踏み出す。
しかし、それは横から飛び込んできた光線によって停止を余儀なくされる。
――恋符「マスタースパーク」
光線が屋敷に残した大穴から見知った顔が現れた。
「な、だから言ったろ、アリス?「案ずるより生むが易し」ってな!」
「竹林で迷ったからって魔法で道を作る場合はその言葉は合わない気がするけど……。まあ、いいわ。これもまた、人間の可能性でしょう」
かつて、幽々子様と共に異変を起こした際にその後の宴会で知り合った魔法使い達だ。
彼女達も私と同じようにこの異変を解決しに来たのだろうか。
「さて、お前が今回の異変の首謀者だな?この霧雨魔理沙が成敗してや――」
箒から降りた魔理沙が女に指を突き付け、啖呵を切った途端、頭上から膨大な殺気と共に紅い槍が突き刺さる。
そして文字通り悪魔のような翼を広げ、吸血鬼が槍の上に降り立った。
「月を奪ったのは、貴様か?」
吐き出された言葉は冷え切っているのに、そこに込められた感情は怒りで煮えたぎっている。その言葉は私に向けられたものではないのに、震えるほどの恐ろしさがある。
「私ではないけれど、原因は私かしらね」
あの恐ろしい怒気を受けているというのに、女の余裕は崩れない。
「そうか。それだけ分かれば、いい――!!」
吸血鬼の右手に妖力が集まっていく。そしてその収束の果てに、禍々しい紅槍が形作られていく。
「そうね。その言葉で充分よ。あんたをぶっ飛ばすのはね」
天井の穴から降りてきたのは吸血鬼だけではなかった。
ゆっくりと降りてきた博麗の巫女はいつも気だるげそうにしている目に苛立ちを募らせて札を握る。
「おいおい、人の相手は盗るなよな、二人とも。私が先だぜ」
「そうね、ここまで引っ張ってこられて無駄足なんて、私も御免だわ」
臨戦態勢の二人に魔法使い二人が制止の声を投げる。
「わ、私が最初にここに着いたんです、最初にやるべきは私でしょう!」
乗り遅れまいと私も声を上げる。
そんな中、女が未だ笑みを浮かべていることに気が付く。
これ程までの敵意の中にいてなお、その顔は遊びを楽しむ子供のそれだった。
「ここまで私の部屋が騒がしくなったのは久し振りね。それに、五人の客人だなんて、昔を見ているようだわ」
どこか懐古の表情を浮かべた女は口を開く。
「そうね、私はこの事態を解決する術を持っている。でも、ただでそれをするつもりはない」
「……何が言いたい?」
女の言葉に苛立ちを含んだ声で吸血鬼が問い返す。
「簡単なお遊びよ。今から私が五つの問いを貴方達に提示する。貴方達はそれを解けばいい」
――難題「龍の頸の玉-五色の弾丸-」
――難題「仏の御石の鉢-砕けぬ意思-」
――難題「火鼠の皮衣-焦れぬ心-」
――難題「燕の子安貝-永命線-」
――難題「蓬莱の弾の枝-虹色の弾幕-」
五つのスペルが女の周囲に展開する。
それら一つ一つが私達にそれぞれ割り振られていた。
「問いの答えなんて興味ないわ。私はただあなたを叩き潰すだけ」
「この私に問いを投げるか。傲慢だな、貴様は。いずれにせよ、月は返してもらおう……!!」
「実に分かりやすいな、これは。つまり、弾幕ごっこに勝てばいいんだろ?」
「そう簡単じゃないと思うけど。まあ、問いには答えたくなるのが魔法使いの性よね」
「貴方に勝ちます、そしてそれを私の強さの証にする!」
「これから貴方達が挑むのは、かつて誰もが解答しえなかった五つの難題。さあ、貴方達の答えを見せて頂戴」
そして、私達は解答を始めた。