今日の投稿が一回だけだと思った?
残念、二連続投稿でした!
……せっかくのクリスマスに何やってんだろ、自分……
メリークリスマス!!
というわけでやってきました、12月25日!
皆さんご存知クリスマスだよ!
ん?クリスマスならそんなテンション上げる必要ないって?
実は紅魔館でクリスマスを祝ったことはありません!
なのですごくテンションが上がっています!!
紅魔館の皆はクリスマスに何もしようとはしなかったし、私は仮にも吸血鬼の館でキリスト教の神様を称えるのはどうなのかと思って言わなかったからね。
それで、なんで今年はクリスマスを祝うのかというと……
♢
――12月10日
う~、忙しい、忙しい。
冬は洗濯物が乾きにくくていけないよね。
こんな時の私の能力は本当便利だなあ。すぐ乾くから。
そういえば図書館に常備してる紅茶がもうそろそろ切れる頃かな。補充しに行かなくっちゃ。
紅茶を持って図書館に入ると、魔法で部屋を暖めているのか、冷えきった廊下と比べてかなり快適だ。
図書館には忙しそうに駆け回る小悪魔と、図書館中央に座るパチュリー様、その向かいにフラン様がいた。
珍しい。フラン様が本を読むときは自分の部屋に籠ってるんだけど。
「あ、咲夜。お疲れ。ねえ、聞きたいことがあるんだけど」
少し近づくとフラン様は呼んでいた物から顔を上げ、私に話しかけてきた。
聞きたいこと?なんだろう。魔法関係なら私よりパチュリー様の方がいいんじゃ……。
「クリスマスって何?」
そう聞きながら読んでいた物――私がとっている文々。新聞――の記事の一つを指さす。
「クリスマスにオススメ!冬のスイーツ特集!」と銘打たれたその記事には人里の冬限定のスイーツが紹介されている。……今度買いに行こうかな……
「幻想郷に来る前、町の人間たちがそのことで騒いでいたことは知っているのだけど、何なのかは知らないのよね。レミィもあまり興味がなさそうだったし」
なるほど、パチュリー様も知らなかったから私に聞いてみたと。
……でも私に前世の記憶が無かったら知らなかったと思うけど……。
紅魔館でクリスマスを祝ったことなんてないし。
「えーと、たしか外の世界の神様の誕生を祝う日、だったと思います。一般的にはプレゼントを配ったり、ケーキやごちそうなどを食べる日、という認識もされていますが」
「へえ、面白そう!私達もクリスマスを祝いましょ!」
「あー、それはどうでしょう?一応神様の誕生を祝う日ですし、悪魔やその従者がそれを祝うのは……」
「大丈夫だと思うわよ?」
うわっ!いきなり背後から声をかけられたからびっくりしたあ。
レミリア様、せめて足音を立てて近づいてもらわないとさすがに心臓に悪いです……。
「大丈夫なんですか?一応キリスト教の行事ですが……」
「いいのよ、あっちが勝手に私達を敵視しているだけだし、こっちとしては神とかどうでもいいしね。やりたいときにやりたいことをやる。それだけよ」
うーん、なんとも悪魔らしいお言葉。まあそういうことなら遠慮なくやりますか。
「……じゃあ、やりましょうか。クリスマスパーティー」
「本当!?やったー!!」
目を輝かせて喜ぶフラン様マジ天使。この笑顔のために生きてるなあ、私。
フラン様を見て癒されながらクリスマスに向けて私は準備を始めた。
♢
フラン様のためなら何でもやれるよ、私は。
というわけでパーティー会場作成終了!
料理もできたし、シャンパンも用意した。紫に連絡して外から七面鳥も手に入れた!完璧だね、我ながらいい仕事したわ。
妖精メイド達も今日は休みを取らせたし、今頃クリスマスパーティーをしてる頃かな?
最後の料理を持って大部屋に入ると、すでにみんな席に座っていて、特にフラン様は待ちきれないのかそわそわしていた。
「咲夜も来たようだし、始めるか。外の世界の神官どもが聞けば憤死するだろうがそんなことは関係ない!存分に楽しもう!メリークリスマス!」
「「「「「メリークリスマス!!!!!」」」」」
レミリア様の音頭でパーティーが開催される。
プレゼント交換の後、私達は思い思いの場所で楽しんだ。
「咲夜さん、このシャンパンおいしいですね!どこから買ってきたんですか?」
「紫に頼んで七面鳥と一緒に買い付けてもらったのよ。……あまり飲み過ぎないでよ?明日の仕事に支障が出ても知らないから」
「ふふふ、二日酔いになった時は咲夜さんに看てもらいましょうかね?」
「妖怪のあなたがそんな簡単に二日酔いになるわけないでしょう?もう……」
七面鳥を取り分けつつ美鈴と話していると、フラン様が駆け寄ってきた。
「ねえねえ咲夜!サンタさんは来るかしら?」
「フラン様はいい子ですからきっと来ますよ。明日が楽しみですね。そういえば、サンタさんへの手紙は書けましたか?」
「うん!……でも今から出して間に合うかな?」
「大丈夫ですよ、紫に頼んで一瞬で届けてもらいますから。私が渡しておきましょう」
「うん、お願いね!……中は絶対に見ちゃだめだからね!」
そうしてフラン様から手紙を預かる私。
先程のフラン様に念押しに少し罪悪感がわくものの、部屋の外へ出て手紙を確認する。
えーっと、何々……?
「皆と一緒に仲良く寝てみたい」……いい子だ。フラン様は本当にいい子。
レミリア様に頼んで今日だけ大部屋で皆と雑魚寝だね!
部屋に戻り、レミリア様と相談する。
レミリア様はそれを聞いて少し嬉しそうな顔をした後、声を上げた。
「さて、今日のパーティーはここまでとしよう!そこで一つ私から提案がある!今日はいつもより寒い、そこでみんな一緒にここで眠るのはどうだろうか」
「はい、賛成です!」
「今日は冷えるしね、たまにはこういうのもいいかもね」
「皆と寝れるんですか?やった!こういうの、憧れてたんです!」
「お姉様、本当?……っ、やったー!!」
大喜びのフラン様を尻目に、寝具を取りに行くために部屋を出る私。
うんうん、今回のクリスマスは大成功だね。
廊下を歩いていると、ふと、視界の端で人影が動いた。
今私は時間を止めて動いている。そんな中、一体誰が――?
即座に臨戦態勢を整え、ナイフを構える。
誰だ、と声をかけようとした瞬間、その人影は現れた。
――サンタだ。
赤い服に、赤い帽子。胸まで伸びるもじゃもじゃの白い口髭に背中に背負った大きな袋。
誰がどう見たってサンタだった。
「メリーィ、クリスマァース。十六夜咲夜ちゃんだね?今年いい子だった君にもプレゼントをあげよう。他の子たちのも部屋にあるから安心しなさい」
優しげな低い声と共にプレゼントを手渡される。あまりのことにフリーズした私がされるがままにそれを受け取ると、サンタさんはポンポンと私の頭を撫でた。
呆然と綺麗にラッピングされたプレゼントに目を落として、ハッとする。
何か言おうと顔を上げたが、先程までいたサンタさんはいつの間にか消えていた。
私の手の中に納まっているプレゼントがさっきのことが現実だったことを教えてくれる。
時が止まった空間の中で私は今年一番の叫びをあげたのだった。
♢
後日談というか、今回のオチ。
あの衝撃的な出来事のせいか、次の日目覚めるまでクリスマスの記憶はそこから無かった。
隣にはレミリア様とフラン様が寝ていたから、あの後きちんと寝具を持って大部屋に戻れたのだと思う。
サンタさんから渡されたプレゼントに入っていたのはずっと欲しかった外の世界の軍用ナイフだった。
他の皆も宛名不明のプレゼントが部屋に置いてあったらしい。
皆首をかしげていたが、フラン様だけは「サンタさんが来てくれた!」大喜びだった。
しばらくして紫と話す機会があったため、今回のことを話してみると、どうやらサンタさんの存在を彼女は知っていたらしい。
「毎年厳重に結界を張っているのに、いつの間にかやってきていつの間にかいなくなってるのよ……。悪事を働くわけじゃないけど、そう簡単に博麗大結界を抜けられると自信無くすわ……」とかなり疲れた顔で言っていた。ちなみに紫が渡されたプレゼントは新しい扇子だったそうだ。
幻想郷では常識が非常識に、非常識が常識になるとは言うけど、まさか本物のサンタさんに会うとは思ってもみなかった。
だけどまあ、ああいう皆を笑顔にする非常識なら大丈夫かな、なんて来年のクリスマスを思うのだった。