前略、ほっぽを拾いました。   作:鹿頭

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感覚を取り戻さねば


六話

特に大した事を伝えないラジオが珍しく仕事をするには、どう言う理由かは一切不明だが、通航が非常に安易化した北方海域を通じての海外諸国との通商が復活した。

 

これには国民も大喜び。

 

 

 

まず初めに、米国との交流が復活したのを皮切りに、英国、独国、仏国や伊国など、並み居る欧米諸国との連絡も復活。

 

一応露国とも連絡が復活した。

 

その後、米国主導で結成されていた、各国の艦娘達による多国籍連合艦隊への参加が決まった。

 

風の噂では当初、日本海軍の一部(講話派)は激しい抵抗を見せたのだが、日本にはない潤沢な資源で殴られた日本政府は、何処からか『大権』を引っ張り出してきたので、上から下まで色んな人の首を飛ばしながらも成立した。

 

どうにかして一抜け出来ないか、と考えている陸軍にとっては、この流れは頂けない。

 

現在、生活をそれなりに豊かにしてくれた米国のお陰で国民様の好戦ゲージが爆上がりすると共に陸軍の影響力が爆下がりしてるからね、仕方がないね。

 

以前の厭戦ムードは何だったんだ。

 

「いつの時代もこんなものさ」

 

なんて事を友人は呟いていた。

米国のせいでイフはもう無理なんてのも言ってたか。相変わらずよくわからん。

 

 

我が家のグレムリンは「まあましにはなった」と呟いたきり、ごっそりと数が減っていったのは実に、実に素晴らしい出来事だった。

 

武官の上層部はそれなりに日米同盟時代を経験している世代が多い。

今残っている人材の中の範疇では、混乱は防げているようだ。

 

しかし、対照的に同盟を経験していない艦娘はうまく行ってないそうだ。

一部艦艇レベル、で見るとまた別の話なのだが。

 

ちなみに今の旗艦はサブカルが好きなダイナマイトな戦艦とかなんとか、いつのまにか数を元に戻していたグレムリンが言っていた。

 

戻って来なくていいよ。頼むから帰ってくれ。

 

それにしてもサブカルか。

ほっぽを拾った時に大半しまったからな。

 

……もう引っ張り出す機会もそうそうないし、現在では検閲されてる物もあるから、売るにも売れないのだが。

今は、妖精が勝手に拵えた箱にしまってある。

 

 

まあ、それよりも。

目下、ちょっと予想してなかった出来事が起きていて──

 

「アネキ ヲ カエセ!」

 

ほっぽに、妹がいたらしい。

ちょっとやんちゃそうだが、ほっぽよりもより幼さを見せるこの妹。

北方棲妹、だそうだ。

深海棲艦のセンスは一体どうなっているんだ。

 

どんな手段でこの場所を突き止めたかは判らないが、早朝からやって来たこの子の言うことに、どうしたものかと頬を掻く。

 

北方海域がほぼ解放されたようなもんらしいし、その関係かとふと思ったが、真相はわからない。

 

「ベツ ニ イインジャナイ?」

 

いつのまにか居た軽巡棲鬼が耳元で囁きながら、そのまま手を俺の首に絡めるように回そうとしてきた。

 

「カエレ」

 

俺をいつもの様に抱きかかえてる港湾棲姫がその巨大な手で軽巡棲鬼の顔面を押しのけた。

 

前までは、それはもう思いっきり吹き飛ばしては壁を破壊していたので、加減を覚えてくれるようになったか、とミシミシと言う音を聴きながらしみじみとした気分になった。

 

そろそろやめなさい。

 

 

 

「ホッポ ハ──」

 

いつも膝を占領しているほっぽが、自分から降り立った。

 

「ココ ニ イタイ」

 

「アネキ……」

 

ほっぽの言う事は嬉しい事には嬉しいのだが、今にも泣きそうな北方棲妹の事を考えると、流石に思う所が有った。

 

「なぁ……」

 

声をかけた途端、ギョロリと北方棲妹に睨みつけられる。相当に嫌われているようだ。

 

「──!」

 

ガチャンと鈍い金属音が鳴ったかと思うと、

睨みつけるその眼を血走らせながら、北方棲妹は二基四門の砲口を此方に向けていた。

 

「オモシロクナイヨ?」

 

軽巡棲鬼が自分の主砲を顕現させ、北方棲妹に向ける。

港湾棲姫は俺を囲むように一部の艤装を展開させた。

ほっぽは、ただ自分の妹を見つめている。

 

「……テイトク デモ ナイノニ」

 

そんな光景に暫し瞠目した北方棲妹は、砲を収めた。

 

「ジャアナ」

 

そのまま踵を返し、鍵の壊れた玄関へと向かっていく。

 

「いやーいまはあぶないですよ」

 

そんな時。今にも外に出ようとする北方棲妹に妖精が声をかけた。

「?」

 

「あめこうのかんむすがきてるです」

 

多国籍艦隊の事だろうか。

 

「おのれきちくべいえい」

 

「せんめつするです」

「わたしのじだいはかれらからまなんだのだぞ」

 

「ろうがいはすっこんでろ」「うるせーやるのか」

 

「お前らは帰っていいぞ」

 

相変わらず喧しい。

心なしか数が増えてるような気がするが、考えたく無い。

 

「ジャア、ココニ イルトイイ」

去ろうとする妹にほっぽが語りかける。

ほっぽの妹なら、身内も同然だし、別に家にいたって構いはしない。

資源もなんとかする……友人が。

 

「……アネキ」

 

そんなほっぽの提案に、北方棲妹が振り向いた。

 

 

「エー? アブナイヨ?」

 

そこに隣から飛び出すように話し出したのは、口角を吊り上げた軽巡棲鬼。

艤装こそ出していないものの、その眼は笑っていなかった。

 

「ダイジョウブ…ワタシガ マモル…」

 

こーわんにひし、と抱きしめられる。

背中になにかが当たるのは、もう慣れた。

 

「ソレハモット アブナインダケド?」

 

港湾棲姫に食ってかかる軽巡棲鬼。

目が血走り、港湾棲姫の腕を引き剥がそうと掴んでいる。

 

「ハン、ヤッテミロ ケイジュン」

 

「ノゾム トコカナ」

 

「良い加減にしてくれ」

 

「「ハーイ」」

 

これ以上喧嘩が起きるといよいよこの家にあの妖精達の手が入っていない部分が無くなってしまう。

とっくに手遅れなような気がするが、兎に角やめて欲しい。

 

 

「ドウシテ、ソノ ニンゲン ヲ カバウンダ?」

 

そんなやり取りを尻目に北方棲妹がほっぽに尋ねる。

 

「ヤサシイカラ!」

 

そんな妹の問い掛けにほっぽが胸を張って言う。

 

「ちがうぜやつはえむえむけーだ」

 

「ちまつりにあげたほうがいいですよおじょうさん」

 

「ウルサイ」

 

「ぬわー」 「おうぼうだ」

 

茶々を入れて来た妖精達は、ほっぽに窓から投げ飛ばされていった。

 

「ナットク イカネーヨ…」

 

座わりこんだ北方棲妹は天を見上げる。

 

……個人的にも、ここまで好かれる理由はあまり良く分かっていないのが現状なだけに、共感できる部分があった。

特にあのグレムリンは一体何故ここにいるのか。

 

「ハァ……アネゴ モ ドウシテ…」

 

「ベツニ リユウ ナンテ……」

 

北方棲妹に答える様に呟く港湾棲姫。

「むこうもむこう」

 

「こっちもこっちですよ」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

あれからそれなりに時が経過したある日。

資源が入るようになってから、色々と規制が緩和されたらしく、俺は久々に一人で買い物にと出かけていたら、何やら見慣れぬ人を見つけた。

 

「Oh…」

 

深海棲艦の出現から数十年。邦土に於いては少数派になってしまった金髪碧眼──ましてや見目麗しい女性。

 

衆目を集めているのにも関わらず、娯楽品売り場で何かを探しているらしい。

 

「ニッポンはRegulationも入らないGameの聖地だと聞いていたのだけれど……充分されてるじゃない…!」

 

Fコードに入るであろう言葉を吐き捨てながら、踵を返していく女性。

どうやら、目当ての物がなかった様だ。

 

「…Bad luck. Portには無いからわざわざこんなとこまで来たのに…」

 

溜息をつく。遠くの港からわざわざゲーム目当てに来たらしい、という事がわかった。

 

「○○のthree、Statesじゃもう手に入らないから期待してたのに…」

 

どうやら探している作品は○○と呼ばれる物だ。確か、随分前に「人間が化け物に負けているとはけしからん」といった理由で規制対象となったものだ。

 

現状持ってる人は、規制以前に所持して、そのままこっそり持ってる人だけだろう。

 

俺は、頼れる友人様から手に入れたが。

 

「あのー…」

 

「Yes?」

 

「あの、良ければあげましょうか? もう要らないですし…」

 

ほっぽが来てから、教育的にも戦場を思い出させる様な系統のゲームはしなくなった。

 

押入れで腐らせるよりは、わざわざ遠い異国から来たであろうこの女性に渡した方が、ゲームも本望だろう。

 

「……Pardon me?」

 

「○○の三番目なら、家にあるんで、あげますよ」

 

「Really!? uhh…あー…良いの?」

 

「はい。もう遊ばないんで。そうですね、家から取ってくるんで、──分くらい待ってもらえますか?」

 

「No problem!But,その時間過ぎたらmeは帰るわよ?」

 

「もちろん」

 

 

◆◆◆

 

 

家に戻り、押入れの中から目当てのゲームを取り出し、ほっぽ達の視線を背中に浴びながら女性の下へと戻っていったのだった。

 

「WOW!本当にPart threeだわ!」

 

ゲームを見せると女性はその星の様な瞳を一層輝かせた。

 

「ね、ねぇ、本当にもらって良いの?これ、規制品じゃない?」

 

恐る恐る尋ねる女性。

 

「売る訳にも行きませんし、同居人が居る手前、遊ぶ訳にもいきませんから」

 

「……OK,ワケありって事ね。わかったわ!」

 

ゲームを受け取り、その豊満な胸元へとしまい込む女性。一体どうなっているんだ。

 

「Thank you very much!今日は本当に助かったわ!あー…その、一つ、question」

 

「なんですか?」

 

「他にも、持ってたり……するの? Game」

 

「うん? ええ、まぁ…」

 

「Please!お金なら幾らでも払うから、私に売って!」

 

胸の上に両手を乗っけるように合わせる女性。しかしこーわんで鍛えられてる俺は動じなかった。

 

「……別にお金は兎も角。差し上げても良いですよ」

 

「!!!」

 

女性はこちらに飛びつくようにハグをしてきた。顔にその実りが押し付けられ、息が苦しくなる。

 

「Jesus!貴方がカミね!」

 

色々と不味い言葉を話す女性。

良い加減に離れて欲しい。

 

「Oh,sorry. ついついexciteしちゃって…」

 

やっと手を離した女性は、バツが悪そうに言った。

 

「でも、本当に良いの? もう貴重なモノでしょ?」

 

「遊ばない人よりは、遊んでくれる人に渡した方が良い、と思いまして」

 

「……OK.とりあえず今日は帰るわね! また来週取りに来るわ!出来ればstockが溜まるから…数本ずつね?」

 

「あ、はい」

 

いきなり要求が増えた。

いやまぁ、理屈は分かるから別に構わないが。

「それと、敬語禁止。meにはチョット難しいのよ」

 

「あー…なるほど。わかった」

 

「ええ!じゃ、See you again!」

 

手を振りながら凄い速さで走り去っていく女性。

そういえば、名前聞いていなかった。

 

……まあいいや。

 

 

◆◆◆

 

「ただいまー」

 

「オカエリ…!?」

 

いつもの様に迎えにきたほっぽが固まる。

 

「ダレ ト アッテイタ ノ?」

 

「え?」

 

いつになく真剣な表情を浮かべたほっぽ。

ほっぽの後ろにいる港湾棲姫も目を細めている。

 

「えっと…ゲーム好きな外国人?」

 

「ガイコクジンネェ」

 

吐き捨てるように言ったのは、すっかり馴染んできた北方棲妹だった。

 

「うん。名前知らないけど……」

 

「フーン……」

 

ソファーに寝っ転がっていた軽巡棲鬼が丸で品定めするように此方を見つめている。

 

「……コッチ ニ クル」

 

港湾棲姫が手招きする。

仕方もないので誘われるままに向かう。

 

「……モウ アッチャ ダメ」

 

そう言ったかと思うとこーわんはいつもにも増して強く抱きしめてくる。

 

「え?」

 

「ホッポ カラ モ オネガイ」

 

いつもの様に前から抱きついてきたほっぽがそう言った。

 

「イチオウ、ワタシ カラモ イットク」

 

てしてしと俺の太ももの部分を突いてくる北方棲妹。

 

「えーっと……」

 

どうしたものかと目を泳がせると、軽巡棲鬼と目が合った。

 

「ネェ」

 

軽巡棲鬼はにっこりと微笑んでから。

 

「ゼッタイ アッチャ ダメダヨ?」

 

今まで見た事無い様な、獰猛な雰囲気を纏いながら、彼女はそう言った。

 

 

……どうしよう。




「やっぱりたらしです」「しかもよりによって」
「ゆるすまじ」「こむらがえりにしてやる」
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