英雄と共に挑むVRAINS   作:ゾネサー

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英雄との邂逅

 昼下がりの時間、食事を済ませ仕事に戻る者で混雑した通りの中、人混みを掻き分け慌てた様子で走る1人の青年がいた。

 

「やべぇ! 約束の時間に遅れる……! 遅刻するー!」

 

「だから僕は言ったじゃないか。一つ前の電車に乗れるようにした方がいいとね」

 

「いや、でも電車があんなに遅れるなんて……」

 

「それを考えて余裕を持って行動する。いつもはいる彼が良く言っているだろう?」

 

「うっ……!」

 

 青年はパートナーと会話しつつ人混みを抜けだし、なおも目的の場所へと走り続けた。

 

「…………」

 

「……なあ、もしかして怒ってるのか?」

 

「……どうしてそう思うんだい? 僕は怒ってなんかいないよ。ただ悲しいのさ」

 

 パートナーのぶっきらぼうな言い様に青年は苦笑いを浮かべた。

 

「本当に悪かったって! もう絶対お前の助言は無視しないからさ!」

 

「君はいつもそうやって……」

 

 パートナーは青年の様子に呆れ笑いを浮かべつつ、青年が通り過ぎようとしている建物の正体に気付いた。

 

「ほら。ついたよ」

 

「おっと……ここか!」

 

 青年は慌てて足を止め、雲まで突き抜けてしまいそうなほど高いビルを見上げた。

 

「うおお……でけぇー!」

 

 青年はあまりの高さに圧倒され、目的も忘れ子供のようにビルを楽しそうに見ていた。

 

「……急がなくていいのかい?」

 

「え? ……あっ、時間が!」

 

 パートナーの声で青年は我に返り、再び足をせわしなく動かし入り口へと向かっていった。

 

「まったく……。君は僕がいないとダメなんだから」

 

「へへっ。これからも頼むぜ……ユベル!」

 

「言われなくても。君と僕は一心同体だからね……十代」

 

 2つの魂を一つの体に宿した青年、遊城十代(ゆうきじゅうだい)は今新たな戦いへの第一歩を踏み出した。

 

 彼の戦いはまずその会社の受付から始まった。

 

「14時から会長とアポイントメントをとられている遊城十代様ですね?」

 

「え? ア、アポ……何だって?」

 

 受付の女性が発した聞き覚えのない言葉に十代は困惑の表情を浮かべた。

 

「今は13時50分……急いだおかげでギリギリ間に合いそうだね」

 

 ユベルは困惑している十代を横目に壁に掛けられている時計を確認し、予定通りに事が進むことを確信した。

 

「……14時から会長と約束されている遊城十代様で間違い無いですか?」

 

「ああ! そうそう、俺遊城十代! 会長に呼ばれてきたんだ!」

 

「失礼ですが、ご本人様か確認させて頂きます」

 

「いいぜ。確か会長からはデュエルディスクを持って来れば証明出来るって聞いてきたんだけど」

 

 十代は会長から送られてきた手紙の内容を思い出しながら、やや不安げに受付に確認した。

 

「はい。大丈夫ですよ」

 

「良かったー。これ以外証明出来そうなもの持ってないからな。じゃあお願いします!」

 

 十代はほっと息をつき、デュエルディスクを受付に差し出そうとした。

 

「いえ。ディスクの登録番号で確認するわけではありません」

 

「え……?」

 

 デュエルディスクがあれば何とかなると思い込んでいた十代は安心した表情から一転、焦りの表情を浮かべた。

 

「会長からの言伝(ことづて)によると遊城十代様はデュエリストとして一流の腕を持っているとのこと」

 

 今まで受付として座っていた社員が急に立ち上がり、十代と対面するようにデュエルディスクを構えた。

 

「ならば受付である私にデュエルで勝つことは造作もないはず」

 

「えっ!? いや、俺もデュエル出来るのは嬉しいけど時間が……」

 

「それではご本人様か確認することが出来ないためお通しするわけには参りません」

 

 そう言いながら受付はデュエルディスクを展開していく。それが示すのは十代が取れる選択肢が一つだということ。

 

「……どうやらやるしかないみたいだね」

 

「時間がないのはギリギリで来ちゃった俺が悪いんだもんな……。よし、分かった! やろうぜ!」

 

 十代が腕を天井に向けて伸ばすとデュエルディスクが展開されていった。

 

「「デュエル!」」

 

 デュエルの開始を告げる声が重なりフロアに広がっていった。

 

「先攻は頂きますね。私のターン!」

 

「十代。新しいルールにはもう慣れたかい?」

 

「ああ。えっと……まず先攻はドローが出来ないんだよな」

 

「そうだね。ドローが好きな君は後攻の方が好きかな?」

 

「へへ……まあな」

 

「行きます。私は忍者マスター SASUKE(サスケ)を召喚!」

 

 鉄の甲冑(かっちゅう)を纏った(しのび)がフィールドに降り立つとクナイを構え、戦闘態勢を整えた。

 

忍者マスター SASUKE 攻撃力1800

 

「さらに2枚のカードを伏せ……ターンを終了します」

 

受付 LP4000

 

フィールド 『忍者マスター SASUKE』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札2

 

「このターンからドローが出来るぜ! 俺のターン、ドロー! 俺はE・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマンを召喚!」

 

 彼を象徴するモンスター群の1つ、E・HERO。その中の1体である稲妻の戦士がフィールドに突如発生した放電と共に出現した。

 

E・HERO スパークマン 攻撃力1600

 

「サスケより攻撃力の低いモンスターを攻撃表示?」

 

「デュエルは攻撃力だけで決まるわけじゃないんだぜ! 装備魔法、スパークガンをスパークマンに装備!」

 

 スパークマンの頭上に電子的な銃が出現すると、スパークマンは落ちてくる銃を右手で受け取り標準をサスケに向けて合わせた。

 

E・HERO スパークマン 攻撃力1600→1600

 

「攻撃力が変化していない?」

 

「装備魔法にも色々あるってことさ。スパークガンの効果発動! フィールド上のモンスターの表示形式を3度まで変更することが出来る! 俺はこの効果でサスケを守備表示に!」

 

 スパークガンから2つの荷電粒子が高速で放たれると反応が遅れたサスケに直撃し、甲冑を通して痺れてしまったサスケは膝を地につけた。

 

忍者マスター SASUKE 攻撃力1800→守備力1000

 

「なるほど。守備力の低さを狙ってきましたか」

 

(どうやら噂に違わぬ手腕の持ち主のようね……)

 

「行くぜ。バトルだ! スパークマンでサスケに攻撃! スパークフラッシュ!」

 

 スパークマンは銃を左手に持ち替えると右手から放電による雷撃を放った。

 

「ですがそう簡単に攻撃は通させません。永続トラップ、忍法 分身の術を発動します!」

 

 サスケは(いん)を結んで集中力を高めると高速で移動を始める。肉眼で捉えられる限りでは直撃したように見えたがそれは残像だった。

 

(かわ)された!?」

 

「分身の術によりサスケをリリースし、忍者モンスターをデッキより合計レベルがサスケのレベル以下となるよう任意の数だけ特殊召喚します! よってサスケと同じくレベル4の忍者マスター HANZO(ハンゾー)を攻撃表示で呼び出します!」

 

 サスケが高速移動を終えると黒装束に包まれた姿へと変貌していた。

 

忍者マスター HANZO 攻撃力1800

 

「うっ、スパークマンより攻撃力の高いモンスターか……」

 

「さらにハンゾーが特殊召喚に成功したことで効果を発動します。デッキからハンゾー以外の忍者モンスター……黄昏の忍者将軍—ゲツガを手札に加えます」

 

「スパークガンはこのタイミングじゃ使えない……。攻撃を中断するぜ!」

 

(スパークガンの効果でスパークマンを守備表示にしてダメージを……いや、ここは)

 

「場にカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

「この瞬間、もう1枚のリバースカードを発動します。永続トラップ、宮廷のしきたり! このカードがある限り宮廷のしきたり以外の表側表示の永続トラップは破壊されなくなります」

 

「なるほど……どうやら彼女のデッキは永続トラップを主軸にしているみたいだね」

 

十代 LP4000

 

フィールド 『E・HERO スパークマン』(攻撃表示)

 

セット1 『スパークガン』

 

手札3

 

「私のターン、ドロー。ゲツガはレベル8のモンスターですが忍者モンスター1体をリリースすることで召喚出来ます! よってハンゾーをリリースし……アドバンス召喚!」

 

 ハンゾーが煙玉を地面に投げつけ、煙に覆われることで姿を隠す。やがて時間が経つにつれ煙が晴れていくとそこには緑のマントを羽織った将軍が現れていた。

 

黄昏の忍者将軍—ゲツガ 攻撃力2000

 

「先に上級モンスターを呼ばれちまったか!」

 

「ですがゲツガの本領はここからです。ゲツガの効果発動! ゲツガを守備表示へと変更することで墓地のゲツガ以外の忍者モンスターを2体呼び戻します!」

 

 ゲツガがその場でどっしりと構えると2人の忍者が援軍として駆けつけた。

 

黄昏の忍者将軍—ゲツガ 攻撃力2000→守備力3000

忍者マスター SASUKE 攻撃力1800

忍者マスター HANZO 攻撃力1800

 

「一気にモンスターが3体も……!」

 

「しかもゲツガの守備力は3000。他の忍者を先に倒しても復活させることが出来る。厄介なモンスターだね……」

 

「ハンゾーが特殊召喚に成功したことでデッキより機甲忍者アースを手札に加えます。行きますよ、バトルです! ハンゾーでスパークマンへ攻撃!」

 

 ハンゾーは複数の手裏剣を同時にスパークマンへ向けて投擲した。スパークマンは銃を構えいくつかの手裏剣を撃ち落とすも、全てを撃ち落としきれずに攻撃を食らってしまった。

 

十代 LP4000→3800

 

「だけど俺もトラップを使わせてもらうぜ。ヒーローシグナル発動! このカードは俺のモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動でき、俺はその効果でデッキからレベル4以下のE・HERO……クレイマンを特殊召喚だ!」

 

 スパークマンが倒される寸前に送った救援信号を受け取った大地の戦士がかけつけた。

 

E・HERO クレイマン 守備力2000

 

「クレイマンの守備力は2000。私のフィールドに攻撃力2000を超えるモンスターはいない。これでしばらく攻撃を防ぐ算段ですか……。ですがそうはさせませんよ。サスケでクレイマンへ攻撃!」

 

「なんだって!?」

 

 サスケがクナイを構えクレイマンへと突進していく。それを見たクレイマンが両手を地面に向けると、地面を突き抜け粘土の壁が出現した。

 

「サスケの特殊能力発動! このモンスターが表側守備表示のモンスターへ攻撃する場合、ダメージ計算を行わずにその相手モンスターを破壊します!」

 

「しまった!」

 

 サスケは突進しながら印を結ぶと再び高速で移動を始める。クナイを交互に刺して壁を乗り越えると素早くクレイマンの死角を取り、確実に任務を遂行した。

 

「クレイマン撃破! これであなたのモンスターは全滅です」

 

「やるな……!」

 

(この状況からどう仕掛けてくるのか……。見せてもらいますよ)

 

「私はこれでターンを終了します」

 

受付 LP4000

 

フィールド 『黄昏の忍者将軍—ゲツガ』(守備表示) 『忍者マスター SASUKE』(攻撃表示) 『忍者マスター HANZO』(攻撃表示)

 

セット0 『忍法 分身の術』 『宮廷のしきたり』

 

手札4

 

「俺のターン、ドロー! ……よし!」

 

 ドローカードを確認した十代の顔に笑みが浮かぶ。

 

(彼のとる戦術は……?)

 

「俺は手札からマジックカード、闇の量産工場を発動し墓地から2体の通常モンスター……スパークマンとクレイマンを手札に戻す! ……そして」

 

 十代はディスクを掲げるとディスクの右側から収納されていたゾーンを展開し、ドローしたカードを勢いよく置いた。

 

「フィールド魔法、フュージョン・ゲートを発動!」

 

 フィールド全体に紫色の霧が充満していくと、突如強風が吹き荒れた。

 

(フュージョン・ゲート……『融合召喚』専用の補助カード。ということはまさか!?)

 

「フュージョン・ゲートによって手札・フィールドから素材となるモンスターを除外することで『融合』なしで融合召喚が出来る! この効果を使って俺は手札のスパークマンとクレイマンを融合!」

 

 十代の場に紫色の渦が発生すると2人のE・HEROがその渦に飲み込まれていった。やがて渦が逆回転しだすと中に飲み込まれた2人が1つの存在となってフィールドに帰還した。

 

「融合召喚! 来てくれ、E・HERO サンダー・ジャイアント!」

 

 クレイマンの強固な装甲を身につけた雷の戦士が一回り大きな姿で降り立った。

 

E・HERO サンダー・ジャイアント 攻撃力2400

 

(なるほど。融合召喚に長けたデュエリスト……というわけですか。会長が期待を寄せるわけですね)

 

 サンダー・ジャイアントは今まで呼ばれたモンスターが配置されていたメインモンスターゾーンとは異なるエクストラモンスターゾーンと呼ばれる場所に配置された。

 

「十代。盛り上がってるところ悪いけどもう1つ新しいルールの確認だ。今までは融合デッキと呼ばれていたこのエクストラデッキからモンスターが呼び出される場合、5つあるモンスターゾーンに呼び出されていた。だけど新しいルールでは……」

 

「5つあるメインモンスターゾーンとは別に新たに加えられた2つあるエクストラモンスターゾーンに呼び出される。このエクストラモンスターゾーンは互いに一つずつしか使えない……で大丈夫だよな」

 

「大丈夫そうだね。ただしエクストラデッキから呼び出させれた場合にエクストラモンスターゾーンに呼び出されるのであって、エクストラデッキ以外の場所から呼び出された時にはメインモンスターゾーンにいくことは忘れてはいけないよ」

 

「ああ、サンキューユベル。もう覚えたぜ!」

 

「ですがサンダー・ジャイアントの攻撃力は2400。ハンゾーやサスケを倒せたとしても守備力3000のゲツガは倒せません!」

 

「それはどうかな?」

 

「えっ?」

 

「俺は手札を1枚捨て、サンダー・ジャイアントの効果発動! 1ターンに1度、元々の攻撃力がサンダー・ジャイアントの攻撃力より低いモンスターを1体選択して破壊できる。俺は攻撃力2000のゲツガを選択するぜ。ヴェイパー・スパーク!」

 

「……! そんな手が……」

 

 サンダー・ジャイアントは頭上に球形のプラズマを発生させると投げ下ろすように放った。2人の忍者をかばうように前に構えていたゲツガに直撃し、ゲツガは仁王立ちのまま消えていった。

 

「さらにマジックカード、アームズ・ホールを発動! このターン通常召喚を行えない代わりにデッキの1番上のカードを墓地に送ることでデッキから装備魔法アサルト・アーマーを手札に加えるぜ。そしてサンダー・ジャイアントに装備!」

 

 サンダー・ジャイアントの体が光の粒子で包まれていくと装甲となって装備された。

 

E・HERO サンダー・ジャイアント 攻撃力2400→2700

 

「アサルト・アーマーは俺のフィールドにいるモンスターが戦士族1体のみの場合そのモンスターに装備することができ、攻撃力を300上げる! だけど俺はもう1つの効果を発動するぜ。アサルト・アーマーを墓地に送ることでサンダー・ジャイアントはこのターン2回攻撃出来る!」

 

「なんですって……!」

 

 光の装甲がサンダー・ジャイアントから離れていくと装甲を軸に粒子によってもう1体のサンダー・ジャイアントが形成された。

 

E・HERO サンダー・ジャイアント 攻撃力2700→2400

 

「バトルだ! サンダー・ジャイアントでハンゾーとサスケに連続攻撃! ツイン・ボルティック・サンダー!」

 

 2体のサンダー・ジャイアントが同時に電撃波を放つ。サスケとハンゾーは二手に分かれて回避を試みるも不規則な動きを予測しきれずにくらってしまった。

 

受付 LP4000→2800

 

「まさかあの状況から今度はこちらのモンスターが全滅させられるとは……」

 

「これで形成逆転だぜ! 俺はこれでターンエンド!」

 

 粒子により形成されたサンダー・ジャイアントが風によって流されて散っていった。

 

十代 LP3800

 

メイン 無し

 

エクストラ 『E・HERO サンダー・ジャイアント』(攻撃表示)

 

セット0 『フュージョン・ゲート』

 

手札0

 

(やはり……会長の期待している通り彼は強い。でも、あの依頼をこなすに足る実力があるかどうか……。まあ、それはデュエルの勝敗が教えてくれるわね)

 

「私のターン、ドロー!」

 

(戦士の生還……これなら!)

 

「相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札の機甲忍者アースは特殊召喚出来ます!」

 

「カイザーのサイバー・ドラゴンみたいな効果か……!」

 

 黒装束の帯に懐刀を挟んだ忍者が大地に降り立った。

 

機甲忍者アース 攻撃力1600

 

「そしてマジックカード、戦士の生還を発動!」

 

「戦士の生還……自分の墓地にいる戦士族1体を手札に加えるカードだね」

 

「墓地の忍者はどれも戦士族。ゲツガを加えてさっきのターンのようにモンスターを展開する気か!」

 

(その場合サンダー・ジャイアントが倒せずさっきのターンの二の舞になってしまう。ここは……)

 

「私が加えるのは忍者マスター HANZO! そしてハンゾーを通常召喚!」

 

 アースの横に並び立つようにハンゾーも地に降り立った。

 

忍者マスター HANZO 攻撃力1800

 

「ハンゾーが召喚されたってことは……またデッキから忍者を手札に加えるのか?」

 

「ふふ。忍の術はそこまで一辺倒なものではないですよ。ハンゾーは確かに反転召喚、特殊召喚に成功すればデッキより忍者を手札に加えられます。ですが通常召喚に成功した場合には異なる特殊能力が発動されます!」

 

「何!?」

 

「ハンゾーの効果発動! デッキより忍法カードを1枚手札に加えることができます。私は……このカードを手札に加えます」

 

 ハンゾーが巻物を開きそこに書かれた秘術を会得すると、(あるじ)のもとに1枚のカードを授けた。

 

「また永続トラップか……!」

 

「彼女の場に存在する宮廷のしきたりによって、永続トラップの弱点の一つである発動時の破壊による効果の無効を狙うことが出来ない……。これは厄介だね」

 

「私は場にカードを1枚伏せてターンを終了します」

 

受付 LP2800

 

メイン 『機甲忍者アース』(攻撃表示) 『忍者マスター HANZO』(攻撃表示)

 

エクストラ 無し

 

セット1 『忍者 分身の術』 『宮廷のしきたり』

 

手札3

 

「俺のターン!」

 

 十代はカードをドローした後、少し考え込んだ。

 

(サンダー・ジャイアントの効果と攻撃の両方が通ればまた相手モンスターを全滅させることが出来る。だけどあの伏せカードは明らかにトラップだよな……)

 

(トラップであることが分かっている以上、十代は攻撃しないという選択肢もある。だけどこの局面なら……)

 

 ユベルが無言で見つめる中、十代はすぐに結論を導き出した。

 

「……ここはサンダー・ジャイアントの効果を使わずにバトルだ! アースに攻撃、ボルティック・サンダー!」

 

 サンダー・ジャイアントが拳を地面に叩きつけると電撃波が地面をえぐりながらアースに向かっていった。

 

(効果を使用してくれた方が私としてはありがたかったですが、それでも条件は満たしました。私の……エースモンスターを出す条件を!)

 

「私は永続トラップ、忍法 超変化の術をサンダー・ジャイアントとアースを対象に発動します!」

 

「……!」

 

 電撃波が届く前にアースが秘術を解放し、発生した地割れによってサンダー・ジャイアントと共に墜落していった。

 

「このカードにより相手の場の表側表示モンスター1体と私の場の忍者モンスターを1体を墓地に送ることでその合計レベル以下のドラゴン族モンスターをデッキより呼び出します!」

 

「俺のモンスターを墓地に送ってさらにモンスターを呼び出すのか……!?」

 

 地の奥底からドラゴンの咆哮が木霊(こだま)した。

 

「合計レベルは11。よってレベル8のこのドラゴンを呼び出します! 来て、青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)!」

 

 身体が氷によって形成されたドラゴンが地の底から紫色の霧を突き抜け天空へと飛翔すると、咆哮をあげ周囲の空気を震わせた。

 

青氷の白夜龍 攻撃力3000

 

「攻撃力3000……! しかもそのモンスターは!」

 

 十代は1度だけこのモンスターと相対したことがあった。破滅の光によって洗脳された仲間の1人を救うために倒さなくてはならなかった最後の壁であり、洗脳される前からその仲間が所持していた強力な切り札。そのドラゴンが再び十代の前に出現した。

 

「これが私のエースドラゴンの一角、青氷の白夜龍です。どうやらこのドラゴンをご存知のようですね」

 

「ああ。……それにしてもあんたのエースはドラゴンだったのか」

 

「忍者が前線の戦力を維持しつつ、エースを出す瞬間までドラゴンの存在を相手に悟らせない。そして気付いた時には相手に打つ手は残されていない……今のように」

 

 エースドラゴンが呼び出された受付の場に対し、十代の場は超変化の術によりサンダー・ジャイアントを失い、残されたカードはフュージョン・ゲートのみとなってしまった。

 

「やるな……! だけど俺にはまだ手が残っているぜ」

 

「ですがあなたの場からモンスターがいなくなったことでバトルは終了。そして青氷の白夜龍は魔法・罠カードの対象になった時、その発動を無効にして破壊する絶対無効能力を備えています」

 

 青氷の白夜龍の周囲の水分が凍っていき、細かな氷が霧のようにドラゴンを覆った。

 

「相変わらず厄介だな……。俺はマジックカード、天よりの宝札を発動する! このカードは俺の手札・フィールドのカードを全て除外することで2枚のカードをドロー出来る。フュージョン・ゲートを除外して2枚ドローするぜ!」

 

「手札増強カード……!」

 

 紫色の霧が消滅していくと天から2枚のカードが十代に授けられた。

 

「……よし! 俺はマジックカード、ミラクル・フュージョンを発動! 俺のフィールド・墓地からモンスターを除外してE・HERO融合モンスターを融合召喚する!」

 

 墓地へと通じる穴が出現すると同時に上空に光の渦が発生した。

 

「ですがあなたの墓地のモンスターはサンダー・ジャイアントのみのはず。融合召喚には素材となる2体以上のモンスターが必要……。条件が満たされていません!」

 

「……それはどうかな? 俺は墓地のフェザーマンとバーストレディを除外して融合!」

 

「な……!?」

 

 穴から2体のモンスターの魂が解放され、光の渦に吸い込まれていくと目視出来ないほどの閃光が放たれる。

 

「現れよ! E・HERO フレイム・ウィングマン!」

 

 光が収まるとフェザーマンの翼とバーストレディの持つ炎の発射口となる竜の如き腕を兼ね備えたモンスターがフィールドに見参した。

 

E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力2100

 

「未知のモンスターが2体も墓地に……。一体いつのまに……?」

 

「フェザーマンはサンダー・ジャイアントの効果を発動するために、バーストレディはアームズ・ホールの効果を発動するために墓地へ送られていたのさ」

 

「……なるほど」

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

十代 LP3800

 

メイン 無し

 

エクストラ 『E・HERO フレイム・ウィングマン』(攻撃表示)

 

セット1

 

手札0

 

(あの状況から融合モンスターを呼び出したのは見事でしたが……フレイム・ウィングマンの攻撃力は2100。このまま押しきれます!)

 

「私のターン、ドロー! 漆黒の黒い(ブラック)忍者を追撃のモンスターとして呼び出します!」

 

 ハンゾーが竹で作られた縦笛を吹くと黒装束を纏った忍者が駆けつけた。

 

漆黒の黒い忍者 攻撃力1700

 

「総攻撃で私の勝ちです! バトル! 青氷の白夜龍でフレイム・ウィングマンに攻撃!」

 

 青氷の白夜龍が大きく息を吸うと口の周りに冷気が集まっていき、氷弾が形成されていった。氷弾はみるみるうちに大きくなっていき、やがて自身の顔をも覆う大きさとなったところで放たれた。

 

「十代!」

 

「くっ、リバースカード——」

 

「無駄です! 青氷の白夜龍に魔法・罠カードは効きません!」

 

「……!」

 

 氷弾が着弾した衝撃で爆風が発生し、その周囲に氷の破片が飛び散る。やがて爆風が晴れていくにつれ見えてきた光景に彼女は驚きの声をあげた。

 

「そんな……!?」

 

 彼女がまず目に入ったのは傷一つ付いていないフレイム・ウィングマン。そしてフレイム・ウィングマンの前で不自然に途切れた氷の破片だった。彼女は慌てて目を上げ十代の様子を伺った。

 

「へへっ……」

 

十代 LP3800→3800

 

「ライフが減っていない……!?」

 

「俺は青氷の白夜龍が攻撃してきた時にこのカードを発動していたのさ。トラップカード、ヒーローバリアをな! こいつは俺の場にE・HEROがいる場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にすることが出来る!」

 

「トラップカード……? ですが青氷の白夜龍は魔法・罠カードの対象には……」

 

「俺はあんたのモンスターにトラップカードを使ったわけじゃない。俺のフィールドに1度だけ攻撃を防げる壁を作ったのさ」

 

「……! 対象を取らないトラップカード……」

 

 彼女がフィールドに目を向けるとフレイム・ウィングマンの前に張られていた半透明の障壁が役割を終え消滅していくのが見えた。

 

「間一髪……といったところだね」

 

「ああ、危なかったぜ……。忍者モンスターの攻撃力じゃフレイム・ウィングマンは超えられない! バトルは終了だぜ」

 

「くっ……! 私はカードを1枚伏せてターンを終了します」

 

(ライフの優位は覆せませんでしたが……まだフィールドの優位は私にあります。次のターンが勝負!)

 

受付 LP2800

 

メイン『青氷の白夜龍』(攻撃表示) 『忍者マスター HANZO』(攻撃表示) 『漆黒の黒い忍者』(攻撃表示)

 

エクストラ 無し

 

セット1 『忍法 分身の術』 『宮廷のしきたり』 『忍法 超変化の術』

 

手札2

 

「俺のターン……」

 

(仕掛けるならこのターンしか残されていない。彼の実力が本物かどうか見定めるには丁度いいですね……会長)

 

 彼女は十代に気づかれないよう隠れながらデュエルを見守っていた会長を横目でちらりと見た。

 

(いいのですか『ドラゴンテール』。今こそ彼の方を見るべきですよ)

 

(……! わ、笑ってる……!?)

 

 十代はカードをドローする前にデッキに向かって小さく呟いた。

 

「信じてるぜ。俺のカードたち。………ドロー!」

 

(この状況で彼に逆転の一手があるとしたら青氷の白夜龍の攻撃力を超えること。でも私は……忍者とドラゴンの力を合わせて難攻不落の布陣を作り上げる!)

 

「ここで私はリバースカードを発動します! 機甲忍法ラスト・ミスト!」

 

 ドローカードを確認しようとした十代の目に4枚目の永続トラップが映った。

 

「このタイミングでさらに永続トラップ……!?」

 

 青氷の白夜龍が氷弾を放つと2人の忍者が素早いクナイさばきで削り、十代のフィールドを冷気によって満たした。

 

「このカードにより私の場に忍者が存在する限り、以後あなたが特殊召喚したモンスターの攻撃力は半減されます!」

 

「つまり俺が青氷の白夜龍を超えるモンスターを特殊召喚するには攻撃力6000以上のモンスターを呼び出すか、忍者モンスターを全員倒すしかないってわけか……!」

 

「そうです。前者は手札1枚の状況では言うに及ばず、後者も不可能と言っていいでしょう。何故なら青氷の白夜龍のもう1つの効果により忍者モンスターを攻撃しても私の場の魔法または罠カードを1枚墓地に送ることで攻撃対象を青氷の白夜龍自身へと誘導することが出来るからです!」

 

「彼女の場には使用済みの忍法 分身の術が残されているからその効果に必要なコストは悩む必要がない。宮廷のしきたりにより彼女の場の永続トラップは破壊から守られ、忍者モンスターはあの氷のドラゴンにより守られ、ドラゴン自身も特殊能力により対象とする魔法・罠カードから守られている……」

 

 フレイム・ウィングマンが青氷の白夜龍を見上げると力の差を示すように雄叫びをあげた。

 

「この絶対的な布陣……どうしますか?」

 

「凄いな……この布陣は忍者だけでもドラゴンだけでも完成しない。自分のデッキのカードを全て心から信頼しているからこそ出来るんだ。そんな相手と戦えて俺は楽しいぜ! ……でも」

 

 十代はドローカードを確認すると迷うことなく発動させた。

 

「デュエルに絶対はない。最後まで何が起こるか分からない……だからデュエルはワクワクするんだ!」

 

「これは……」

 

 彼女が地面が揺れを感じるとあっという間に複数の高層ビルが地面から天に向かって伸びるように立ち並び、彼女や十代を取り囲んだ。

 

「フィールド魔法、摩天楼(まてんろう)—スカイスクレイパー—。ヒーローの戦う舞台さ」

 

「ヒーローの……舞台」

 

「行くぜ、バトルだ! フレイム・ウィングマンで青氷の白夜龍に攻撃!」

 

「攻撃力で劣るモンスターで攻撃……!? それに……フレイム・ウィングマンはどこに……!」

 

 立ち並ぶ高層ビルによってフレイム・ウィングマンを見失った彼女は辺りを見渡した。すると高層ビルの中でもひときわ高いビルに気付いた。

 

「あっ……!」

 

 そのビルのまさに頂きにフレイム・ウィングマンは佇んでいた。そこは空を飛ぶ青氷の白夜龍がいる位置よりも遥かに高く、フレイム・ウィングマンは見下ろすように目標を定めると、勢いよく身を宙に投げ出した。

 

「そこよ、青氷の白夜龍! 反撃して!」

 

 青氷の白夜龍をめがけて飛ぶフレイム・ウィングマンを撃ち落とすべく、青氷の白夜龍は進路を塞ぐように氷弾を連続で放った。

 

「いけぇ! フレイム・ウィングマン! そのまま突き進め!」

 

 フレイム・ウィングマンは素早い身のこなしで次々と飛んでくる氷弾を避けていき、ついには全ての氷弾を避け青氷の白夜龍に接近した。青氷の白夜龍は何とかフレイム・ウィングマンに攻撃を仕掛けようとしたが身体の大きさが仇となり、小回りの効くフレイム・ウィングマンに背後を取られてしまった。

 

「スカイスクレイパーの効果発動! E・HEROが自身の攻撃力より高いモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算時のみ攻撃力が1000上がる!」

 

E・HERO フレイム・ウィングマン 攻撃力2100→3100

 

「しまった……!」

 

「撃ち抜け! スカイスクレイパー・シュート!」

 

 青氷の白夜龍が振り返る前にフレイム・ウィングマンは右手を突き出し、火炎弾を放った。死角からの攻撃を避けることは叶わず、青氷の白夜龍は周囲が水蒸気で満ちていくと共に消え去った。

 

受付 LP2800→2700

 

「そしてフレイム・ウィングマンの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! 青氷の白夜龍の攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ」

 

 火炎弾が放たれ、水蒸気を切り裂き彼女に真っ直ぐ向かっていった。

 

「私の負け……ね」

 

受付 LP2700→0

 

 フロアが静寂に包まれた直後、誰かが示し合せるわけでもなくデュエルを見守っていた社員達が拍手を送った。

 

「なあ!」

 

「……?」

 

 十代は彼女に近づくと人差し指と中指を自分の額に向けるように向け、

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

 

 かけ声と共に力強く指先を彼女の方に突き出し、隠れていた笑顔を見せた。

 

「……ええ、私も楽しかったです」

 

 彼女は一瞬驚きで目を大きく開いたがすぐに表情を緩め、そう答えた。

 

(なるほど……これが彼の強さというわけね。戦ってよく分かったわ)

 

「……あっ!」

 

 十代は壁に掛けられている時計を見た瞬間、デュエルに夢中で忘れていたある事を思い出した。

 

「時間過ぎちまってる……。ち、遅刻だー!」

 

 あたふたする十代の様子がおかしかったのか受付はクスッと笑った。

 

「う、受付さん! 俺どうしたら……」

 

「……いえ、その……まだお気づきになられないんですね」

 

「へ?」

 

 彼女は少し困ったように十代を見るとその視線を会長が隠れている場所に移す。すると会長は拍手をしながら十代の前に姿を見せた。

 

「グッドゲーム! 2人ともいいデュエルでした。……久しぶりですね、十代ボーイ」

 

「ペガサス会長!?」

 

 その正体はペガサス・J・クロフォード。インダストリアル・イリュージョン社の名誉会長であり、またデュエルモンスターズの創造者である。彼は驚く十代と微笑を浮かべる彼女を連れていき、会長室へと場所を移した。

 

「……つまりあのデュエルは今の俺の実力を確かめるためのものだったのか?」

 

「騙すような形でごめんなさい。自然体のあなたの力が見たかったのよ」

 

 そういうと彼女は帽子に隠していた長い茶髪を広げ、首のあたりで1つに結んだ。

 

「ということはもしかして受付さんは……本当は受付じゃないのか?」

 

「その通りデース。彼女は私が雇い……そして依頼しました」

 

「あなたがあの異質な決闘者(デュエリスト)と戦える実力を持っているか確かめてほしい……それが依頼だったわ」

 

「い、異質なデュエリスト……それって誰なんだ?」

 

「誰という表現は正確ではアリマセーン。そのデュエリストは……人ではないのデース。ただその正体は伝説の……」

 

 デュエリストでありながら人ではない者。その正体に心当たりがあった十代はユベルに問いかけた。

 

「伝説って……」

 

「ああ。君は精霊を思い浮かべたようだけど……違うだろうね。茶髪の彼女に精霊が見えるとは思えない。恐らく、僕たちが考えてるものとはベクトルが違うんじゃないかな」

 

「そうなのか……」

 

「あえて彼を人というのならばユーもミーも知っています。ただ彼の正体は……AI(エーアイ)。いわゆる人工知能なのデース」

 

「AI!? ……ってなんだ?」

 

「厳密な定義は実は定まっていないのだけれども……そうね。人間のように振る舞うことが出来る機械……といえば伝わりやすいかしら?」

 

「なるほど……それなら何となく分かるぜ」

 

「そしてそのAIが我が社がネット上に作り上げているデュエルワールドに突如出現したのデース。デュエルワールドはまだ一部にしか公開されていないのですが……そのAIは次々と人間のデュエリストを襲い、圧倒的なデュエルエナジーによって負傷するデュエリストが続出しました」

 

 ペガサスは腰掛けていた椅子から背中を離すと窓際の方に歩いていった。

 

「私はそれを止めようと彼にデュエルを申し込みました。あくまで彼はAI……プログラムされている以上のことは出来ない。そう思っていました」

 

 窓際からペガサスは景色を見下ろしながらため息を吐くと、こうつぶやいた。

 

「ですが……ミーでは歯が立ちませんでした」

 

「ペガサス会長が!?」

 

 デュエルモンスターズの創造者であり実力も高いペガサスが敗北した。それが指す意味は決して小さくなかった。

 

「ミーはネットワークから帰還して1ヶ月ほど意識を失っていたようなのデース。その1ヶ月の間にもAIに襲われるデュエリストが後を絶ちませんでした。そこで私は彼を止められるデュエリストを探すことにしたのデース。最初は海馬ボーイに助けを求めたのですが何故か連絡が取れず……次に助けを求めたのがユーでした」

 

 そこまで言ったところでペガサスは十代の方に顔を向けた。

 

「もしかして手紙に書いてあった頼みって……」

 

「そう……ユーにそのAIデュエリストを倒して貰いたいのデース。ただ彼はあまりにもストロング。ユーでも勝てるかどうか……」

 

「そんなに強いのか!?」

 

「命の危険まではないと思うけれど安全とは言い難い。会長の頼みとはいえ……断るのも手よ」

 

 被害を止めるためにやむを得ないとはいえ十代にとってはあまりに急な依頼。彼女はデュエルモンスターズの生みの親であるペガサスの依頼ということで十代にとって断りづらい状況であることを察し、拒否することが出来る道を示した。

 

「俺は……この依頼受ける! あのペガサス会長でも勝てなかったデュエリスト。どんなデュエルをするのか……想像するだけでもワクワクするぜ!」

 

(強いデュエリストと聞いて十代が退くはずもない……か。キミらしいけどね)

 

「サンキュー……十代ボーイ」

 

 ペガサスは十代に頭を下げ謝意を示し、十代が持つ旧式のデュエルディスクをネットワークに接続できるように改良した。

 

「これで俺もネットワークに入れるようになったんだな」

 

「そうデース。私の方で今彼がいる付近の位置に座標を設定しておきました。ユーは私が見ないうちにさらに強くなっていました。ユーなら彼に勝つことが出来るかもしれません……幸運を祈りマース」

 

「ああ! じゃあ、行ってくるぜ!」

 

 十代はディスクを掲げるとネットワークへ飛び込んだ。

 

「よっと……」

 

 地面に着地した十代は周りを見渡すと既視感を覚えた。

 

「あれ? この時計台……それにこの風景。もしかしてここは童実野町なのか」

 

「どうやらこの区画は童実野町を参考に作られているみたいだね」

 

「そうみたいだな。ペガサスさんはこの近くにAIがいるって言ってたけど……」

 

 その時一陣の風が吹き荒れ、思わず十代は身構えた。

 

「現実の世界じゃないのに風が!?」

 

「仮想空間をここまで現実のように感じさせるなんてね。……! 十代!」

 

「えっ……後ろか!」

 

 気配に気付いた十代はとっさに振り返り、その瞳にAIデュエリストの正体を映した。

 

「なっ……!? あ、あなたは……」

 

 信じられないといった様子で十代は困惑した。何故ならその正体は……

 

「遊戯さん!?」

 

 デュエリストの頂点とも言えるキング・オブ・デュエリストの称号を持つ武藤遊戯。彼にとって憧れの英雄(ヒーロー)だった。

 




ヒーローバリアは場にE・HEROがいればフリーチェーンで発動出来るのと対象を取らないという特徴を持っているのでよく比較対象として挙げられる攻撃の無力化の完全下位互換とは言い切れないところはありますが、威嚇する咆哮あたりには敵いそうになくOCG化の際に効果盛って欲しかったなぁというカードの1枚ですね。
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