神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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YES!ウサギが呼びました!
第1話 問題児たちとの邂逅


ここはとある大学の講義室。潺天真(せせらぎてんま)は、その中でひときわ目立っていた。彼の周囲には人がいないのだ。彼がそのことを気にしているのかと言えば、

 

(今日も講義が聴きやすいな)

 

そんなことはなかった。ただ、この世界はとてもつまらない、虚しさが募るだけだと思っていた。

 

天真の年齢は二十歳。180cm、70kgの少し痩せ形で、瑠璃紺色の珍しい髪を除けば、何処にでもいる普通の大学生だ。ただ、虚空を見つめるように何も映していない漆黒の瞳とつり目が災いして、彼の周囲には人気がない。

 

教授の長い話を聞き終えて、天真は図書室に来た。いつも通り宇宙の誕生についての本を読み、知らず知らずの内に星座の本に脱線し最終的に神話の本にたどり着く。星座の本から神話の本に脱線する場合、大抵はギリシャ神話かローマ神話に行く。しかし、今日はいつもと様子が違う。

 

(また神話の本に脱線しちゃったよ。何回目だコレ?今回は全く星座に関係ないクトゥルフ神話だし。………へえ。虚空にいる神性もいるのか。何もない空間にいる神―――か。ハハッ、規模はかなり違うがまるで今の俺のようだな)

 

自分自身に呆れながら、本棚に読み終わった本を片付ける。外も暗くなり、荷物を取りに天真はロッカー室に来た。すると誰にも鍵の番号を教えていないのに、なぜか手紙がある。怪しいとは思いつつ、退屈な生活に嫌気が差してきた天真は、

 

「誰からだ?ただのいたずらにしては不自然だ」

 

そうつぶやきつつ、差出人のない手紙を躊躇いなく開ける。

 

―――『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』―――

 

(異才?そんなものを俺が持っているはずがないじゃないか。そして俺は少年というより青年だろう)

 

読み終えそう思った直後、天真の視界は急激に変わった。

 

上空4000mほどの位置に投げ出された天真の眼前には、見た事のない景色が広がっていた。視線の先に広がる地平線は、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。眼下に見えるのは、縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。天真の前には異世界としか呼ぶことのできない景色があった。ふと視線を変えると、自分と同様に自由落下する少年少女たち三人の姿が見えた。

 

「「「「ど………何処だここ!?」」」」

 

―――それが天真と問題児たちとの邂逅だった。

 

上空に投げ出された天真と問題児達三人は、幾重にも重ねられた緩衝材と思われる水膜にぶつかりながら湖に着水した。

 

全員が湖から出て落ち着いた頃、問題児達は不満を口にしていた。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。身勝手ね」

 

金髪で学ランを着ている、いかにも『問題児』な雰囲気を醸し出している少年と、頭に赤いリボンをつけた『お嬢様』な雰囲気を醸し出している少女が話している。

 

(石の中に呼び出されて動けるってどんな体しているんだよ)

 

天真はそう思わざるを得なかった。すると、感情の起伏の乏しそうな少女が言う。

 

「此処………どこだろう?」

 

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

猫を抱えた少女の言葉に少年が答える。

 

「じゃあ、大亀の下には蛇がいるかもな」

 

天真が何気なしに呟く。

 

「へぇ、お前面白いな」

 

少年に聞こえたのか、天真の呟きに反応した。天真は誰にも気づかれない程度のため息をはいた。

 

(面倒なやつに目をつけられたかな)

 

「まぁ、それは置いといて。まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

「………春日部耀。以下同文」

 

「そう。よろしく春日部さん。で、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

「最後に、もの静かだけど目つきがかなり悪いそこの貴方は?」

 

「俺は潺天真(せせらぎてんま)。呼び方は名前でも渾名でも好きに呼んでくれて良いよ」

 

「そう。よろしく天真君」

 

「こちらこそよろしく頼む、飛鳥。あっ、久遠の方が良いか?」

 

「私のことは飛鳥でいいわ。みんなもね」

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

我関せず無関心を装う春日部耀。

興味深そうに観察する潺天真。

 

そんな彼らを物陰から見ていた者は思う。

 

(うわぁ………なんか問題児ばっかりですねぇ………)

 

 

 

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