神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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第13話 決着

―――箱庭二一◯五三八◯外門。ペリドット通り・噴水広場前。

 

天真達は“フォレス・ガロ”のコミュニティの居住区を訪れる道中、“六本傷”の旗が掲げられた昨日のカフェテラスで声をかけられた。

 

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

 

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 

ウェイトレスの猫娘が近寄ってきて、飛鳥達に一礼する。

 

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この二一◯五三八◯外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「おお!心強い御返事だ!」

 

満面の笑みで返す猫娘。だがしかし、急に声を潜めてヒソヒソと呟く。

 

「実は皆さんにお話があります。“フォレス・ガロ”の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

 

「居住区画で、ですか?」

 

答えたのは黒ウサギ。

 

舞台区画とは、コミュニティが保有するギフトゲームを行う為の土地だ。白夜叉のように別次元にゲーム盤を用意できる者達は極めて少ないのである。

 

「しかも!傘下に置いてあるコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

 

「………それは確かにおかしな話ね」

 

「でしょでしょ!?何のゲームかは知りませんが、とにかく気を付けてくださいね!」

 

熱烈なエールを受け、一同は“フォレス・ガロ”の居住区画を目指す。

 

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 

黒ウサギ達は目を疑った。居住区が森のように豹変していたからだ。ツタの絡む門をさすり、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「………。ジャングル?」

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

 

「いや、おかしいです。“フォレス・ガロ”のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動の様なものを感じさせた。

 

「やっぱり―――“鬼化”してる?いや、まさか」

 

「ジン君。ここに“契約書類”が貼ってあるわよ」

 

飛鳥が声を上げる。門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。

 

『ギフトゲーム名  “ハンティング”

 

・プレイヤー一覧

久遠 飛鳥

春日部 耀

ジン=ラッセル

 

・クリア条件

ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 

・クリア方法

ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約(ギアス)”によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 

・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・指定武具

ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム“はギフトゲームに参加します。

“フォレス・ガロ”印』

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

ジンと黒ウサギは悲鳴のような声をあげる。飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります………!」

 

「………どういうこと?」

 

「つまり“恩恵”ではなく“契約”によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに“契約書類”を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

 

天真はジンの肩に手を置き、

 

「次は失敗しないように気を付ければいい」

 

「………はい!」

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

「気軽に言ってくれるわね………条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

飛鳥が挑んだゲームに責任を感じているのに気付いた黒ウサギと耀は、飛鳥の手をギュッと握って励ます。

 

「だ、大丈夫ですよ!“契約書類”には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されてなければ、ルール違反で“フォレス・ガロ”の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

 

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

 

「………ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためには、コレぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

飛鳥を励ますその陰で十六夜達はジンに昨夜の事を話していた。

 

「この勝負に勝てないと俺達の作戦が成り立たない。だから負ければ俺はコミュニティを去る。予定に変更はないぞ。いいな御チビ」

 

「………分かってます。絶対に負けません」

 

こんなことで躓くわけにはいかない。参加者三人は門を開けて突入した。

 

 

 

 

門前で待っていた天真達の元に、獣の咆哮が届く。

 

「GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

 

森に忍び込んだ野鳥達は一斉に飛び立ち、一目散に逃げて行った。

 

「い、今の凶暴な叫びは………?」

 

「ああ、間違いない。虎のギフトを使った春日部だ」

 

「あ、なるほど。ってそんなわけないでしょう!?幾ら何でも今のは失礼でございますよ!」

 

「じゃあジン坊っちゃんだな」

 

「ボケ倒すのも大概なさい!!!」

 

黒ウサギがハリセンでツッコミを入れる。

 

「違うよ十六夜。これは飛鳥の魂の叫びだ」

 

「なるほど!」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

再度、十六夜と天真の頭にハリセンが炸裂する。よっぽど暇を持て余していたのだろう。十六夜は門からはみ出た奇妙な樹の枝をへし折って笑う。

 

「今の咆哮といい、この舞台といい、前評判より面白いゲームになってるじゃねえか。見に行ったらまずいのか?」

 

「お金をとって観客を招くギフトゲームも存在しておりますが、最初の取り決めにない限りは駄目です」

 

「何だよつまんねえな。“審判権限”とそのお付きってことにすればいいじゃねえか」

 

「だから駄目なのですよ。ウサギの素敵耳は、此処からでも大まかな状況が分かってしまいます。状況が把握できないような隔絶空間でもない限り、侵入は禁止です」

 

天真と十六夜は舌打ちをしながら呟く。

 

「「………貴種のウサギさん、マジ使えね」」

 

「せめて聞こえないように言ってください!本気でへこみますから!」

 

ペシペシペシと叩く黒ウサギ。だが状況が分かってしまう黒ウサギは、内心ハラハラしながら三人の無事を祈っていた。

 

(この鬼化植物………必ず彼女が関わっているはず。ならこのゲームは公平なルールで提示されているはずです。三人ともどうかご無事で)

 

 

 

 

しばらくするとゲーム終了を告げるように、木々が霧散した。黒ウサギは慌てて走り出す。天真と十六夜はその後に着いて行く。

 

「おい、そんな急ぐ必要がねえだろ?」

 

「大ありです!黒ウサギの聞き間違いでなければ、耀さんはかなりの重傷のはず……!」

 

「黒ウサギ!早くこっちに!耀さんが危険だ!」

 

風より速く走る三人は瞬く間にジン達の元に駆けつけた。黒ウサギは耀の容体を見て思わず息を呑む。

 

「すぐにコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器が揃ってますから。御三人は飛鳥さんと合流してから共に帰って来てください」

 

「待って黒ウサギ」

 

「何ですか天真さん?黒ウサギは急いでいるのですよ!」

 

「落ち着け。俺のギフトで運んだ方が早いし、耀に掛かる負担も小さい」

 

天真は黒ウサギの手をとって耀の元に近付き、ギフトを発動する。天真達がコミュニティに戻った後、十六夜がジンに問いかける。

 

「おい御チビ。コミュニティには治療用のギフトがあるのか?」

 

「はい、あります。しかし扱いが難しい為、彼女しか使えない物ばかりです」

 

それはつまり、黒ウサギでなければ救えないのと同義である。十六夜はその結論に満足そうに喉を鳴らして笑うと、独り言のように呟いた。

 

「やっぱりアイツは面白いな。俺や天真並みには程遠いも、“ノーネーム”じゃ明らかに別格だ」

 

しかしそんな彼女が何故、地を這う虫ケラに等しい“ノーネーム”に献身の全てを捧げるのか。十六夜はそれを知りたかった。

 

「恋愛感情とかだったら納得しやすいんだがな………肝心のリーダーがこれじゃなあ」

 

チラ、とジンを見下ろす。目が合うと、ジンは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「ん?どうして頭を下げる?」

 

「だって僕は結局………何も出来ず仕舞いでした」

 

「ああ、そういうこと。でもお前達は勝っただろ?」

 

不思議そうに十六夜を見上げと、彼は続けて補足した。

 

「お前達が勝った。なら、御チビにも何か要因があったんだろ。少なくとも春日部が生き残ったのは御チビが的確な処置を施したからだ。そうだろ?」

 

「は、はい」

 

「ならそれでいいじゃねえの?それより、初めてのギフトゲームだったんだろ?御チビは楽しめたのか?」

 

「………いえ」

 

苦い顔で首を振る。勝利を飾ったものの、ジンにとってのデビュー戦は危機の連続ばかりで華やかさとは程遠い結果だ。その内容は幼さもあるのだろうが、それを差し引いても自分自身の無力さに失望していた。

 

「昨夜の作戦………僕を担ぎあげて、やっていけるのでしょうか?」

 

「他に方法は無いと思うけどな。御チビ様が嫌だと仰るのなら、止めますデスヨ?」

 

からかうような尊敬語で話す。ジンは一拍黙り、首を横に振った。

 

「いえ、やっぱりやります。僕の名前を全面に出すという方法なら、万が一の際にみんなの被害も軽減出来るかもしれない。僕でも皆の風よけぐらいにはなれるかもしれない」

 

「………あっそ」

 

その後、ジン達は“フォレス・ガロ”に奪われたコミュニティの“名”と“旗印”を返還し、ジン=ラッセルという名を広めることに成功したのだった。

 

 

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