神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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第16話 宣戦布告

“サウザンドアイズ”の門前に着いた四人を迎えたのは例の無愛想な女性店員だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

 

「黒ウサギ達が来る事は承知の上、ということですか?あれだけの無礼を働いておきながらよくも『お待ちしておりました』なんて言えたものデス」

 

「………事の詳細は聞き及んでおりません。中でルイオス様からお聞きください」

 

定例文にも似た言葉にまた憤慨しそうになる黒ウサギだが、店員の彼女に文句を言っても仕方がない。店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に黒ウサギ達が向かう。中で迎えたルイオスは黒ウサギを見て盛大に歓声を上げ、嫌らしい視線で黒ウサギを見ていた。

 

「これはまた………分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

 

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

 

突然の所有宣言に慌ててツッコミを入れる黒ウサギ。

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のものだ」

 

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!!」

 

「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」

 

「売・り・ま・せ・ん!あーもう、真面目なお話をしに来たのですからいい加減にしてください!黒ウサギも本気で怒りますよ!!」

 

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 

スパァーン!とハリセン一閃。今日の黒ウサギは短気だった。一向に話が進まず、ガクリと項垂れてしまった黒ウサギの元に、家屋の外から店員の助け船が出される。

 

「あの………御来客の方も増えましたので、よろしければ店内の客間に移りましょうか?みれば割れた食器の破片も散らかっていますし」

 

「そ、そうですね」

 

一度仕切り直す事になった一同は客室に向かい、話し合う。

 

「―――“ペルセウス”が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

 

「う、うむ。“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に“ノーネーム”の敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

 

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。“ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

レティシアが暴れ回ったというのは勿論ねつ造だ。しかし彼女を取り戻すためにはなりふり構っていられる状況ではない。使える手段は全て使う必要があった。

 

「“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし“ペルセウス”が拒むようであれば“主催者権限”の名の下に」

 

「いやだ」

 

「………はい?」

 

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

 

「それなら彼女に聞けば」

 

「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ。口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?元お仲間さん?」

 

嫌味ったらしく笑うルイオス。

 

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

 

「な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体何処に」

 

「事実、あの吸血鬼はあんたのところに居たじゃないか」

 

ぐっと黙りこむ。それを衝かれては言い返せない。黒ウサギの主張も、ルイオスの主張も、第三者がいないという点では同じなのだ。ルイオスはヘラッと笑って畳み掛ける。

 

「まあ、どうしても決闘に持ち込みたいというのならちゃんと調査しないとね。………もっとも、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど」

 

「そ、それは………!」

 

視線を白夜叉に移した。その時、にわかに廊下が騒がしくなった。女性店員の制止するように呼びかける声が響く。そして客間の襖が開け放たれ現れたのは、大風呂敷を抱えた天真だった。

 

「誰だよ、あんた」

 

ルイオスが訝しげに天真に問う。

 

「潺天真。“ノーネーム”の一員だよ」

 

「今はこいつらと交渉している場だ。部外者は入ってくるな」

 

ルイオスが冷たく威圧するような声音で言う。しかし、天真はそれを軽やかに受け流して黒ウサギ達に一言。

 

「逆転の一手を持ってきたよ」

 

「逆転の一手って何かしら?天真君」

 

「コレだよ。思ったより時間が掛かって申し訳ない」

 

そう言って大風呂敷を広げる。

 

「何を取り出すつもり―――っ!!」

 

ルイオスは口を開いたまま固まった。ルイオスの目に入ったのは、“ゴーゴンの首”の印がある紅と蒼の二つの宝玉。これを見た白夜叉が口を開く。

 

「“ペルセウス”への挑戦権を示すギフトか。姿が見えんと思っていたら、海魔(クラーケン)とグライアイを打倒しておったのか」

 

「一刻で、って言ったんだけどね。一時間も掛かっちゃった。レティシアを助ける為に急いだんだけどね」

 

それが聞こえたレティシアの頬が少し紅くなる。白夜叉の前で宝玉を見せた以上、ルイオスには決闘を受ける以外の道がなくなった。ルイオスは宝玉を見つめて盛大に舌打ちした。

 

(ちっ。下層のコミュニティが相手なら楽に戦えると思って放置していたってのに………!)

 

ルイオスの不快感は絶頂に達していた。

 

「ハッ………いいさ、相手してやるよ。元々このゲームは思いあがったコミュニティに身の程を知らせてやる為のもの。二度と逆らう気が無くなるぐらい徹底的に………()()()()()()()()()

 

華美な外套を翻して憤るルイオス。それを睨み、天真は宣戦布告する。

 

「最も難易度の高いゲームで掛かってこい。レティシアは俺のものだ。“ノーネーム”と“ペルセウス”。全面戦争と行こうじゃないか」

 

初めて見せた天真の獰猛な笑顔に驚く十六夜達。天真の宣戦布告の内容にも驚かされたが、今まで落ち着いた態度しか見せなかった天真の豹変の方が衝撃的だった。

 

ゲームの開始は三日後。白夜叉にレティシアを預け、天真達は本拠へと戻った。

 

 

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