『ギフトゲーム名 “FAIRYTALE in PERSEUS”
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
潺 天真
・“ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル
・“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス
・クリア条件
ホスト側のゲームマスターを打倒
・敗北条件
プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。
プレイヤー側のゲームマスターの失格。
プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・舞台詳細・ルール
*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。
*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。
*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に
*姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。
*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
“ペルセウス”印』
“契約書類”に承諾した直後、六人の視界は間を置かずに光へと呑まれた。時空の歪みは六人を門前へと追いやり、ギフトゲームへの入口へと誘う。白亜の宮殿の周辺は箱庭から切り離され、未知の空域を浮かぶ宮殿に変貌していた。
「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」
「それならルイオスも伝説に倣って睡眠中だという事になりますよ。流石にそこまで甘くは無いと思いますが」
「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずデス。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。伝説のペルセウスと違い、黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」
「先に言っておくけど、転移のギフトはギリギリまで使わないよ」
天真のギフトを使えば一瞬でルイオスの元に行けるが、それではつまらない。なので、先に釘を刺した天真。今回のギフトゲームは、ギリシャ神話に出てくるペルセウスの伝説を一部倣ったものだ。“契約書類”に書かれたルールを確認しながら飛鳥が難しい顔で復唱する。
「見つかった者はゲームマスターへの挑戦資格を失ってしまう。同じく私達のゲームマスター―――ジン君が最奥にたどり着けずに失格の場合、プレイヤー側の敗北。天真君のギフトが使えないとなると、大きく分けて三つの役割分担が必要になるわ」
「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割」
「春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」
十六夜の提案に黒ウサギが続く。
「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですからゲームマスターを倒す役割は、十六夜さんと天真さんにお願いします」
「あら、じゃあ私は囮と露払い役なのかしら?」
む、っと少し不満そうに声を漏らす飛鳥。だが飛鳥のギフトがルイオスを倒すに至らない事は既に知れている事だ。何より飛鳥のギフトは不特定多数を相手にする方がより力を発揮できる。しかしそれが分かっていても不満なものは不満なのだろう。
「悪いなお嬢様。俺達も譲ってやりたいのは山々だけど、勝負は勝たなきゃ意味がない。あの野郎の相手はどう考えても俺達が適してる」
「………ふん。いいわ。今回は譲ってあげる。ただし負けたら承知しないから」
飄々と肩を竦める十六夜。だが黒ウサギはやや神妙な顔で不安を口にする。
「残念ですが、必ず勝てるとは限りません。油断してるうちに倒さねば、非常に厳しい戦いになると思います」
黒ウサギの言葉に飛鳥がやや緊張した面持ちで問う。
「………あの外道、それほどまでに強いの?」
「いえ、ルイオスさんご自身の力はさほど。問題は彼が所持しているギフトなのです。もし黒ウサギの推測が外れていなければ、彼のギフトは―――」
「「隷属させた元・魔王様」」
「そう、元・魔王の………え?」
十六夜と天真の補足に黒ウサギは一瞬、言葉を失った。しかし素知らぬ顔で天真達は構わず続ける。
「もしペルセウスの神話どおりなら、ゴーゴンの生首は戦神に献上されているはずだから、この世界にないはずなんだ」
「それにもかかわらず、奴らは石化のギフトを使っている。―――星座として招かれたのが、箱庭の“ペルセウス”。ならさしずめ、奴の首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってところか?」
「………アルゴルの悪魔?」
天真達の話が分からない飛鳥達は顔を見合わせ、小首を傾げる。しかし黒ウサギだけは驚愕したままで固まっていた。
「十六夜さん、天真さん………まさか、箱庭の星々の秘密に………?」
「まあな。このまえ星を見上げた時に推測して、ルイオスを見た時にほぼ確信した。後は手が空いた時にアルゴルの星を観測して、答えを固めたってところだ。まあ、機材は白夜叉が貸してくれたし、難なく調べる事が出来たぜ」
「俺はいつも神話と星座の本ばかり読んでいたからね」
フフンと二人は自慢げに笑う。
「天真さんはともかく、そういえば十六夜さんってば、知能派でございましたっけ?」
「何を今さら。俺は生粋の知能派だって言ったぞ。黒ウサギの部屋の扉だって、ドアノブを回さずに開けられるぜ」
「………いえいえ、そもそもドアノブ付いていませんから。扉だけですから」
「あ、そうか。だけどドアノブが付いていても、俺はドアノブを使わず扉を開けられるぞ」
「…………………………………。参考までに、方法をお聞きしても?」
やや冷ややかな目で黒ウサギが見つめる。嫌な予感しかしない。十六夜はそれに応えるかのようにヤハハと笑って門の前に立ち、
「そんなもん―――
轟音と共に、白亜の宮殿の門を蹴り破るのだった。
(思いっきり力業なんだよなあ)
天真はそう思いながら白亜の宮殿に突入した。正面の階段前広場は、飛鳥の奮戦による大混戦となっていた。真正面から挑んだ十六夜達を捕らえに来た騎士達は、飛鳥が持ち出した水樹によって阻まれていた。
「ええい、小娘一人に何を手間取っている!」
「不可視のギフトを持つ者は残りのメンバーを探しに行け!此処は我々が押さえるぞ!」
彼女の役割はあくまで囮。だが逃げ回る事など彼女の性分ではない。彼女の持つギフトで同士討ちをさせるのも考えたが、それでは些かゲームの華に欠ける。だから飛鳥は騎士達が飛鳥を無視できないようにと―――白亜の宮殿を破壊することにしたのだ。
「左右から来るわ!まとめて吹き飛ばしなさい!」
一喝、水流が騎士達を襲う。
「ふふ………不可視の人間を除けば、あらかた集まったかしら?」
飛鳥は周囲を見回す。飛鳥の言葉に従う水樹を見ながら思う。
(ギフトを支配するためのギフト………か。けれど今はこの水樹を操るのが精一杯というのはいただけないわ)
己の才能の使い方を悟ったというのに、飛鳥の顔には不満があった。飛鳥が水樹を使っているのは、コミュニティの宝物庫にあるギフトには力を発揮できなかったからだ。“是”しか答えない世界が嫌いだった飛鳥だが、プライドの高い彼女にとって、支配できないのというのもまた不満の種なのだ。
(けど今はいいでしょう。だって支配できるのが当然だったんだもの。コレぐらい反発してくれないと張り合いがない。これからは、様々な奇跡を支配できるようになってみせるわ)
フン、と息を吐く。飛鳥は精々大暴れしてやろうと真紅のドレスを靡かせ、従順な水樹の上で右腕を掲げた。
*
飛鳥と二手に分かれた天真達は、飛鳥と対照的に息を殺して状況を窺っていた。耳を澄まして周囲の気配を探っていた耀は、ピクリと反応を示して全員に目配せし、
「人が来る。皆は隠れて」
緊張した声で警告する。耀の高性能の五感は、不可視のギフトに対抗する唯一の手段なのだ。獣のように腰を落とした耀は、見えない敵に奇襲を仕掛けた。
「な、なんだ!?」
驚愕の声。耀はすかさず後頭部を激しく強打する。騎士は一撃で失神し、前のめりに倒れた時に兜を落とす。すると虚空から騎士の姿が現れた。
「この兜が不可視のギフトで間違いなさそう」
「ホレ、御チビ。お前が被っとけ」
「わっ」
十六夜がジンの頭に兜をのせる。するとジンの姿は瞬く間に色を無くして姿を隠す。その様子を見ていた天真は、
「やっぱり不可視のギフトがゲーム攻略の鍵になっているね。そうなるとあと二つは欲しいな………」
贅沢を言えば耀を含めた四人全員の分があれば文句はないのだが、欲をかいては仕損じることもある。最悪十六夜とジンの分を確保したら、転移することも視野に入れておく。
「十六夜、作戦変更しよう。十六夜が兜を被って連中を叩いてくれ。耀には悪いけど囮になってもらうよ」
「気にしなくていい。埋め合わせは必ずしてもらうから」
耀は平淡な声音で、取り立てを断言する。
「御チビは隠れとけ。死んでも見つかるな」
「はい」
「大丈夫だよ。俺がついている」
「それもそうだ」
ヤハハと笑う十六夜の姿が消え、耀と十六夜の二人は白亜の宮殿を駆け巡る。
「いたぞ!名無しの娘だ!」
「これで敵の残りは四人だ!」
「よし、その娘を捕らえろ!人質にして残りを炙り出せ!」
耀に襲いかかる騎士達。それを姿の見えない十六夜が白亜の宮殿の外まで殴り飛ばす。
「邪魔だ!」
殴り飛ばされた騎士達は悲鳴を上げながら壁を幾層も突き破り、揃って第三宇宙速度を維持したまま雲海の向こうまで吹き飛ばされた。
「どうだ、春日部。分かるか?」
「ううん………飛鳥が暴れている音や、他の音が大きすぎてちょっと………わ!?」
突然、前触れもなく耀が吹き飛んで壁に叩きつけられる。耀の五感を持ってしても気付かれず接近し、十六夜も感知できなかった事から、一つの可能性が浮上した。
(まさか………レプリカじゃなく、本物を使っている奴がいるのか………!?)
姿、臭気、熱量、物音まで消す、完全な気配消失を可能にするギフトを託された騎士が、付近で息を潜めている。一度引くべきだと判断した十六夜は、倒れた耀を抱き上げる。それを見計らったように不可視の騎士は十六夜を襲う。巨大な鈍器らしきもので横なぎに吹き飛ばされる十六夜。
「あぶねえなオイ!兜が取れるところだったぞクソッタレ!つーかカウンターでも入れてやろうかと思ったのに、ホントに感知出来ねえ。いっそ手当たり次第に殴ってみるか?」
「待って」
肺を強く打ったのか、ケホッと辛そうに咳き込んだ声で耀が呼びとめる。
「なんだ?方法があるのか?」
「うん。だけど聞かれるかもしれない。今は一度逃げて」
頷いた十六夜は再度抱きあげる。直後、また鈍器のようなもので殴られたが、カウンターに成功し鈍器らしいものを弾く。
「回廊端、隅で待ち構える。行って」
指定された位置に耀を下ろす。回廊の隅に身を寄せた以上、敵が襲ってくるのは左右正面の三方向に限られる。十六夜が五感を研ぎ澄まして敵を待ち構えていると、耳鳴りの様なものが聞こえた。
(この音波………なるほど、そういう事か)
不可視のギフトは透明になるだけで、透過ではない。つまり、イルカや蝙蝠のように音波を出し、反響する音波で敵を感知することが可能なのだ。
「左方向、今すぐ!」
耀が叫ぶ。声に応えた十六夜はすかさず拳を叩きこむ。
「ぐ、ぬぅ………!」
虚空から漏れる苦痛の声。十六夜は急いで騎士に跳びつき、兜を剥ぐ。不可視の騎士はルイオスの傍で控えていた側近の男だった。
「無鉄砲な一撃で負けたならともかく、ギフトを真正面から打ち破られての敗北だ。―――見事。お前達には、ルイオス様に挑むだけの資格がある」
膝を突き、倒れる側近の騎士。十六夜達は不可視のギフトを手に、先を急ぐ。