神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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第2話 箱庭の説明を受けるようですよ?

十六夜は苛立たしげに言う。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

(全くです)

 

物陰からこちらを伺っていた者は、出て行くタイミングを見失っていた。ふと十六夜がため息交じりに呟く。

 

「―――仕方がねえな。こうなったら、()()()()()()()()()()()()話を聞くか?」

 

物陰に隠れていた者は心臓を摑まれたように飛び跳ねた。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちのお前らも気づいていたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「まぁ、あれだけこっちを見ていたらな」

 

「………へえ?面白いなお前ら」

 

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。天真を除く三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を物陰に向ける。すると、怯みながら一人の女性が出てきた。

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「聞いてやれよ」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪あ、最後の方はありがとうございます」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども。最後の方が扱いやすいといいですけどねえ)

 

黒ウサギが考えを張り巡らせていると

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

耀が黒ウサギのウサ耳を根っこから鷲摑み、力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

「………じゃあ私も」

 

そう言って、十六夜と飛鳥は左右の耳を片方づつ摑んで引っ張る。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!そこの貴方も止めて下さいよ!」

 

黒ウサギが助けを求めてきたが、

 

「俺にそいつらは止められねえ。あきらめてくれ」

 

黒ウサギは顔を青くし、言葉にならない叫び声が近隣に木霊した。

 

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

十六夜が黒ウサギをせっつく。黒ウサギは気を取り直し、両手を広げて、

 

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?さあ、言います!ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

両手を大きく広げて説明する黒ウサギ。

 

(俺にもギフトがあるのか?元の世界では特異なことがなかったからわからねえな。よく機嫌が悪いときに悪天候になっていたけど………これがギフトの力なのかな?)

 

ここで飛鳥が手を挙げて質問する。

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

「………“主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵(ギフト)”を手にするのとも夢ではありません。後者は参加するためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然―――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ♪」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

飛鳥が黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

 

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不遜な輩は悉く処罰します。―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出す。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくには忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

「………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなものは()()()()()()。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、巨大な天幕に覆われた都市に向け、何もかもを見下すような視線で一言、

 

「この世界は………()()()()?」

 

「「「――――――」」」

 

天真達は無言で返事を待つ。元の世界を全て捨ててきた天真達にとって、それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、一番重要な事だった。

 

「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

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