神であり魔王である者も異世界から来るそうですよ?   作:ケミ

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第25話 造物主達の決闘・決勝

―――境界壁・舞台区画。“火龍誕生祭”運営本陣営。

 

割れるような歓声の中、“ノーネーム”一同は運営側の特別席に腰かけていた。一般の席が空いていないらしく、舞台を上から見る事のできる本陣営のバルコニーに席を用意してくれるよう、サンドラが取り計らってくれた。

 

「ところで白夜叉。黒ウサギが審判をする許可は下りたのか?」

 

「うむ。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させてもらったぞ」

 

「そうか。けど“箱庭の貴族”の審判が無くてもギフトゲームを進行する事が出来るだろ?なら審判をする事に意味がある?」

 

十六夜が質問するとサンドラが答える。

 

「ジャッジマスターである“箱庭の貴族”が審判をしたゲームは、“箔”付きのゲーム。ルール不可侵の正当性は、箱庭の名誉ある戦いに昇華され、記録される。箱庭の中枢に記録される事は両コミュニティが誇りの下に戦ったという太鼓判。これは、とても大事」

 

「へえ?じゃあサンドラ………いや、サンドラ様の誕生祭は見事に箔付きのゲームに認定されたってことだ」

 

サンドラを呼び捨てにしようとした十六夜をマンドラが睨み、肩を竦めて改めていた。そして飛鳥は珍しく落ち着きのない様子で大会を見守っている。

 

「どうした、お嬢様?落ち着きないぞ」

 

「………昨夜の話を聞いて心配しない方がおかしいわ。相手は格上なのでしょう?」

 

うむ、と返す白夜叉。手を翳すと、空中に対戦相手の名が刻まれる。

 

「“ウィル・オ・ウィスプ”と“ラッテンフェンガー”―――両コミュニティは本拠を六桁の外門に構えるコミュニティ。通常は下位の外門のゲームには参加しないものだが、フロアマスターから得るギフトを欲して降りてきたのだろう。魔王の一件を抜きにしても、一筋縄ではいかんだろうな」

 

「そう。………白夜叉から見て、春日部さんに優勝の目は?」

 

「ない」

 

即答する白夜叉に、飛鳥は苦虫を嚙み潰したような顔をする。飛鳥は耀が心配なのだろう。もしかしたら舞台の上で魔王に襲われる可能性もあり得るのだから。飛鳥がずっとそわそわしている様子を見た天真は、

 

「大丈夫だよ飛鳥。もし魔王が決勝中に現れても、耀が狙いってわけではないしね。いきなり襲われる可能性は少ないと思うよ」

 

「そうだけど………」

 

「安心せい。ジャッジマスターが取り仕切る以上、殺し御法度の今ゲームで命を落とす事は無い。春日部にも、無理だと思えば降参するように諭してある。大事に至る事はあるまい」

 

「それに参加するには

―――“主催者権限を持つ者は、参加者となる際に身分を明かさねばならない”

―――“参加者は主催者権限を使用する事が出来ない”

―――“参加者でない者は祭典区域に侵入できない”

このルールがある限り一応は安心できるよ」

 

そう、と相槌を打つ飛鳥だが、とんがり帽子の精霊の事も懸念の一つだった。そんな飛鳥を余所に決勝の準備は進み、黒ウサギが舞台中央に現れ、胸一杯に息を吸うと観客席に向かって満面の笑みを向ける。

 

『長らくお待たせいたしました!火龍誕生祭のメインギフトゲーム・“造物主達の決闘”の決勝を始めたいと思います!進行及び審判は“サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』

 

黒ウサギの宣言に観客たちの奇声が舞台を揺らす。

 

「うおおおおおおおおおお月の兎が本当にきたあああああああぁぁぁぁああああああ!!」

 

「黒ウサギいいいいいいい!お前に会うため此処まできたぞおおおおおおおおおお!!」

 

「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおお!!」

 

割れんばかりの歓声を上げる観客達の中に、幾人か変態が混ざっていた。黒ウサギを見るとへにょり、とウサ耳を垂れさせて怯んでいた。身の危険でも感じたのだろう。

 

「………………………………………………。随分と人気者なのね」

 

熱狂的な歓声奇声を上げる観客の中で一際輝く『L・O・V・E黒ウサギ♥』の文字。飛鳥は生ゴミの山を見るような冷めきった目で一部の観客席を見下ろす。

 

「これも日本の外の異文化というものなのかしら………頭を柔軟にして受け入れないと……」

 

飛鳥の非常に小さい呟きが聞こえた天真は遠い目をしていた。あれは異文化では無く、飛鳥の時代より少し未来の日本で生まれた物だと。そんな中十六夜はハッと思い出したように白夜叉に問う。

 

「そういえば白夜叉。黒ウサギのミニスカートを絶対に見えそうで見えないスカートにしたのはどういう了見だオイ。チラリズムなんて趣味が古すぎるだろ。昨夜に語り合ったお前の芸術に対する探究心は、その程度のものなのか?」

 

お馬鹿じゃないの?という天真と飛鳥の声は二人に届かない。白夜叉は双眼鏡から視線を外し、落胆していた。

 

「フン。おんしも所詮その程度の漢であったか。そんな事ではあそこに群がる有象無象となんら変わらん。おんしは真に芸術を解する漢だと思っていたのだがの」

 

「………へえ?言ってくれるじゃねえか。つまりお前には、スカートの中身を見えなくすることに芸術的理由があるというんだな?」

 

無論、と白夜叉は首肯する。まるで決闘を受けるかのような気迫で白夜叉は凄む。

 

「考えてみよ。おんしら人類の最も大きな原動力はなんだ?エロか?成程、それもある。だが時にそれを上回るのが想像力!未知への期待!知らぬことから知ることの渇望!!小僧よ、貴様程の漢ならばさぞかし数々の芸術品を見てきたことだろう!!その中にも、未知という名の神秘があったはず!!例えばそう!!モナリザの美女の謎に宿る神秘性ッ!!ミロのヴィーナスの腕に宿る神秘性ッ!!星々の海の果てに垣間見るその神秘性ッ!!そして乙女のスカートに宿る神秘性ッ!!それらの神秘に宿る圧倒的な探究心は、同時に至る事のできない苦渋!その苦渋はやがて己の裡においてより昇華されるッ!!何物にも勝る芸術とは即ち―――己が宇宙の中にあるッ!!」

 

ズドオオオオオオオオオオン!! という効果音が似合いそうな雰囲気で、十六夜が固まった。

 

「なッ………己が宇宙の中に、だと………!?」

 

天真と飛鳥は冷めきった目で十六夜と白夜叉を見ていた。サンドラ達はスカートを中身を熱く語る白夜叉に別の意味で衝撃を受けていた。

 

「し、白夜叉様………?何か悪いものでも食べたのですか………!?」

 

「サンドラ。コレが白夜叉の素だよ………衛生教育上よくないから見ないことをお勧めするよ」

 

天真はサンドラの視線から白夜叉達を隠した。サンドラを呼び捨てにした事にマンドラは鋭い視線を一瞬向けたが、

 

「………助かった。後で話くらいは聞いてやろう………」

 

「今度黒ウサギとジンも連れて行くよ」

 

「………構わん」

 

マンドラに感謝と同情の目を向けられた。そして当の本人達はまだ話し合っていた。

 

「そうだッ!!真の芸術は内的宇宙に存在するッ!!乙女のスカートの中身も同じなのだ!!見えてしまえば只々下品な下着達も―――見えなければ芸術だッ!!!」

 

ズドオオオオオオオオオオン!! という効果音が似合う顔でいい切る白夜叉。ただの変態トークに天真達は二人を冷たい視線を向けるが白夜叉達は気にせず、白夜叉は十六夜に双眼鏡を渡す。

 

「この双眼鏡で、今こそ世界の真実を確かめるがいい。若き勇者よ。私はお前が真のロマンに到達できる者だと信じておるぞ」

 

「………ハッ。元・魔王様にそこまで煽られて、乗らないわけにはいかねえな………!」

 

十六夜は双眼鏡を受け取り、白夜叉と共に黒ウサギのスカートの裾を目で追う。もう何をしても無駄だと悟った天真達は、二人を空気だと割り切って決勝を見ることにした。

 

白熱していた決勝が終わった。結果は残念ながら耀の負け。途中までは“ウィル・オ・ウィプス”の篝火の正体を見抜きリードしていた耀だった。しかし“ウィル・オ・ウィプス”のコミュニティのリーダー・ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作のジャック・オー・ランタンが立ち塞がった。不死の怪物はさすがに倒すことが出来ない、と判断した耀が降参してゲームが終了した。サンドラと白夜叉がゲームの講評をしていると、十六夜が怪訝な表情で白夜叉に問う。

 

「………白夜叉。アレはなんだ?」

 

「何?」

 

天真達が上空を見上げると、黒く輝く“契約書類”が降っている。

 

「黒く輝く“契約書類”………ま、まさか!?」

 

黒ウサギが手に取り笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開けると“契約書類”にはこう書かれていた。

 

『ギフトゲーム名 “The PIED PIPER of HAMELIN”

 

・プレイヤー一覧

・現時点で三九九九九九九外門・四○○○○○○外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

・ホストマスター側 勝利条件

・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

 

・プレイヤー側 勝利条件

一、ゲームマスターを打倒。

二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。観客の一人が膨張した空気が弾けるように叫び声を上げる。

 

「魔王が………魔王が現れたぞオオオォォォォ―――――!!!」

 

 

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